闇属性で虐げられたけど思い切って魔神になってみたら ~冥府魔界と地獄の祀り上げ~

雲水風月

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1章 魔神引っ越し

エピローグ①

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 いま、俺のやりたい仕事ナンバー1は、コボルトの街での菓子職人パティシエである。
 それがなぜ、こんなことになるのやら。

「みんな聞いてほしい。このままでは俺は、全世界に向けて戦線布告した大魔王か何かみたいになってしまう」

「エフィルア様。もう既にそうなっているかと」
 ダフネさんがセクシーメガネをくいっと上げる。

「そんな冷静に返さないで下さい。ああ、あの鬼のおっさんらは何を考えているんでしょうかね。勝手が過ぎます」
「まあ神ですからね。そんなものですよ」
 
 神よ、言われてるぞ。

 とにかくだ。町の周辺は一見とんでもない事になってはいるが、これはただただ、偶発的におきてしまった城のお引越しに過ぎないのだという事を世に広く伝えねばならない。

 何か戦いを仕掛けようとしてるだとか、そんな誤解をされては良くない。
 町の周囲も景色は変わってしまったが、もちろん引き続きこの地域の統治は剣聖の家にやってもらう。(少なくとも表面上は)
 とうぜん税も適切に納める。
 そういった事を偉い人にお話しにいこうじゃないか。

 いや、しかし待てよ…… そんな事をしてもアンデッドの居住権を認めてもらえるわけもないか?
 ならばもしコボルト族だけなら? 亜人として通用するだろうか。
 人間たちは、ドワーフやエルフとなら少なからず交流があるのだから、似たようなものだろう。

 それも難しければ、交渉で時間稼ぎをして、どこか別な地下にでも移住することもありえる。そういえば、この古城は元々どこにあったんだ? いっそそこにいくか?

 あるいは、その前に王国が問答無用で討伐軍を動かしてきたらどうする? やるしかない?
 いや、あいつらも常に誰かしらと戦争中だったはずだ。動かせる兵力に余裕などない状態だと聞く。ならばやはり話をする余地はある。

 この先どう転がるか分からんが、複数の事態を想定してすぐに動き始めなくてはいけない事だけは確かだろう。
 
 トカマル君が俺の傍らで心配そうに見上げてくる。
 ポンポンしておく。ふう。


 神殿での一件のあと俺たちは一度城に帰還してきたわけだが、それは、肉体の損傷がいちじるしいギルマスを回復させるためだった。

 しかしなんと、ウチには回復術の使い手はいない。しかたなく神殿で石になっていた神官を適当に捕まえてきて、回復魔法を施してもらえるように丁寧にお願いしてみた。

 すこし混乱していた神官連中に対して、フェンリル状態になったロアさんから話をしてもらった。
 やはりこういう時は可愛い女性巨大なケモノから言ってもらった方が事がスムーズに運ぶな。
 必死の形相で治療にあたってくれているから回復は早いだろう。

 それでもギルマスの身体の損傷はあまりに激しい。戦える状態にまで戻るには時間がかかりそうだ。
 出来ればギルマスには仲介役としてだけでも動いてもらいたいのだが、今はそうもいかないな。

「よし、それじゃあロアさんとトカマル君。まずは剣聖のところに引っ越しのご挨拶に行こう。2人とも完全体になってついて来てくれるかな?」

「「ハハッ!!」」

 2人は身体を変化させる。
 そしてフェンリル狼は口を裂くようにニヤリと嗤い、冥界の騎士はギラついた大剣を胸に掲げる。

「ダフネさん。こっちはお願いしますね」

「はい。かしこまりましたエフィルア様」
 彼女の後ろには竜牙兵スパルトイの一団が控えている。

 アンデッドがモリモリである。
 この様子を人間に見られると、また面倒な騒ぎになりそうだ。
 当面の間、アンデッド達の事は外に知られないようにと話をまとめておく。
 

 逆に一番友好的に見えるのはコボルト族だろうな。ほぼ獣人みたいなものだ。
 この圧倒的な犬感。モフさ。可愛らしさ。

 やはり一度地下に回って、じょいぽんさん達にも声をかけよう。
 こうして俺たちは引っ越しの完遂を目指すべく、人の町に向かう。
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