闇属性で虐げられたけど思い切って魔神になってみたら ~冥府魔界と地獄の祀り上げ~

雲水風月

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1章 魔神引っ越し

第8話 ギルドマスター

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 洞穴に突入し、連れ去られた少女を力技でスマートに救出した俺達。
 この救出劇、実際には間一髪で少女を守る事が出来たのだけど、なぜだろう、ロアさんにはいまいち緊張感に欠けた感じがすると言われてしまう。
 俺は精一杯がんばっただけなのだが。

 そんな事を思いながらも、その洞穴の奥に発見した地下へと続く道を見つめる。

「この女の子、聖女さんの親戚筋の家の子みたいですね。とりあえず外傷はなさそうです」
 ロアさんが少女の無事を確認する。なにはともあれ無事で良かった。

 新種の魔物の生態も興味深い。
 人面獣は少女を半裸にしてまたがっていたが、繁殖相手に選ぶには、いくらなんでもまだ早いのではないだろうか。


 少女を担ぎ洞穴の外に出ると、ちょうど町から兵士達が到着したところだった。
 少女の事も内部の後処理も彼らに引継ぎ、俺とロアさんは町へと帰る。

「私、さっきまでエフィルアさんの力を読み違えてました。思った以上の強さです」
 帰り道、町に向かって歩いているとロアさんがポツリと語り始めた。

「ロアさんはたしか、他人の強さが読み取れるって言ってましたか」
 普通は探知や索敵スキルを使っても他人の魔素濃度レベルまでは見えない。
 ロアさんはそれが出来ると言う。

 ギルドや関所なんかにあるステータスチェッカーという魔道具が唯一、外部からそれを判別できる手段のはずだ。
 それにこの魔道具にしたって、解析を受ける人がチェッカーから流れ込むマナを受け入れないと成功しないので、結局は外部から他人の強さやステータスを覗く事は出来ない、はずなのだ。

「私のユニークスキルなんです。特別な探知スキルで、大雑把にですが魔素濃度レベルが分かります。それから非常に広域の精密探知なんかも得意ですね」
「なるほど、人面獣の行方も早い段階で分かってたみたいですしね」

「そんなわけでご忠告です。私は他言しませんが気をつけたほうが良いですよ。私のように分かってしまう人もいますからね、エフィルアさんの特異性に」

「そうなりますね」
「あまり派手に力を使うのも危険です」

「気をつけます。ただ今日の探索では、ロアさんだから見せても良さそうな気がしちゃったんですよね」

「えっ…… え? 私だからって…… そんな、ちょっとうれ」

「はい、魔素濃度レベルについては既にばれてたみたいでしたから」

「あっ、あ~なるほど。そうっそうですよね~。そうだそうだっ、ちなみに私のユニークスキルについても秘密でお願いします。エフィルアさんだから教えたんです」

「ふぅむ。分かりました」
 俺は秘密を守るのは得意だ。もちろん、口が堅いとかそういう理由ではない。俺の話など聞くやつはいないからだ。
 ああ、そういえば最近は話し相手がいたな。あの変なトカゲだ。あいつは俺の無駄話に付き合ってくれる。実際のところ聞いちゃあいないのだろうが。

「最後にもう1つ。冒険者ギルドのマスターは私たちにとって頼りになる人です」
 ギルマスか。
 彼女については俺も、いくらか感謝しているところもある。
 もちろん全面的に信用出来るような間柄ではないが。

 今日は随分と長話をしたな。
 町の西門を通ってギルドまでの道を帰る。
 次第にいつもの受付嬢ロアさんの雰囲気に戻っていく。

 ギルドに戻ってみると町の中の探索も終了していたようだった。
 よく分からないあの蝶はほとんど焼き払い、潜伏していた5匹の人面獣を発見して駆除したそうだ。
 ひとつ気になる情報があった。不気味なトカゲに、人面獣のもとへ案内されたという冒険者が何人かいたらしい。あいつか? うちに遊びに来ているあのトカゲか?
 そのトカゲから人に対する害意は感じられず、人面獣の駆除に役立ったようではある。

 最終的に複数の探知スキル使いが町中を調査したので、もう安全だろうという事になってる。
 洞穴対策は明日に持ち越し。
 それでも衛兵さんたちは今日は寝ずの番だろう。ご苦労様である。
 俺はボロ家に帰って寝る。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 一晩あけて、俺は自分の状態をチェックする。
 とんでもなく色々な出来事があったけど、俺が闇属性のマナを開放したのはまだ昨日の昼間だ。

 自分の手足を眺める。昨晩と特に変わりはなさそうだ。
 一晩眠って夢でしたなんて事もあるかなと思ったんだけどね。

 そうそう、1つだけ違いがあった。
 といっても寝る前にはもう分かっていた事なのだけど、新しくスキル“ジャミング”を習得していて、ステータスにも記載されている。

 “ジャミング”は昨日、人面獣が使っていたものだ。
 洞穴の中でそのスキルの発動を“魔導視”で見たときに、自然とその構造ややり方が分かってしまったのだ。

 “魔導視”っていうのは普通は目に見えないマナの動きや構造が見えてしまうから、スキルが発動しているところを観察できれば、かなーり良いお勉強になってしまうようだ。

 昨日寝る前に見よう見まねでやってみて、なんとなく上手くいったなと思っていたら、今朝ちゃんとスキル一覧に表示されていた。

 無属性:第1階級
  ジャミング:C-LV1

 これは他者の探知スキルを撹乱するスキルだ。
 ただし完全に気配を遮断するような効果はない。あくまで撹乱するだけ。

 覚えたてだからLVは1。
 俺の持っている他のスキルのLVが異常だから貧弱に見えるけど、育てていけばかなり有用なスキルだと思うよ。


 さて、今日はまず一度ギルドの様子を覗いてみるか。
 外に出ようと準備をしていると、ささくれ立ったテーブルの上に小さなトカゲ。
 いつもの人懐っこい、手のひらサイズのあいつだ。
 鉱物結晶のように輝く髑髏どくろ模様が今日もキマッテいる。

 それにしてもどこから入ったのやら……?
 あ、いや、隙間だらけの我が家ならどこからでも入り放題か。

 残っているオークの肉を指先で摘んで食べさせてみる。
 しかし食わない。この贅沢なオーク肉をスルーし、俺の指にかぶりつく。

 どういう食性をしているのやら。もしや、生餌しか食べないのか? まさか俺を丸呑みにでもするつもりなのだろうか?

『うまいですー』
 俺の指にかぶりつくトカゲ君に、なんとなくだが、そんなふうに言われた気がした。

 トカゲ君はパタパタと俺の指先を駆け上り肩の上に。
 前足を上げてドアのほうにビシッと向ける。そしてぺこりと頭を下げるような仕草。

「なんだ? 一緒に行くのか?」 
『昨日は助かりました、あの少女の件』
 おん? 幻聴が酷い。今度はずいぶんハッキリとトカゲ君の声のようなものが聞こえた。気がする。ん~、まあいいか。

 とりあえず肩から降りる気も無いようだし、別に邪魔になるものでもないので気にせず出かける事にしよう。

 俺の住む墓場地区から、町の中心にあるギルドまでの町並みはいつもと変わらない。

 さて、昨日は昼間の狩での収穫も多かったし、夜の件でギルドから少しばかり一時金をもらえたから、今のうちに家賃も払っておくとしよう。
 あの墓場横のボロ家の持ち主である商人の家へ寄っていく。

「家賃を持ってきましたよ」
「ひっひっひっ まいど」
 いかにも悪そうな笑顔で金を受け取る女主人。
 世間からは、金さえ儲かれば何でもやるという扱いになっている存在だ。
 例えばそう、この俺に家を貸したりといった事だな。

 ギイっと裏口の木戸が無愛想に閉められかけるが、隙間からソロリと紙袋を渡される。
 バタン 完全に閉じられる。

 渡されたのはパンだった。中に具まで挟んであるという代物だ。
 ツンデレおばさんである。

「ありがとう、大家さん」
 俺は小さな声で木戸の奥に語りかけた後、パンをかじりながら歩き出した。

 ギルドは近い。すぐに到着。
 すると、扉の前にギルドでは見慣れない女の子が居た。
 なんだ? 目が合ったかと思ったら、こちらに向かって駆けてくる少女。
 なんだなんだ?
 今日はやけに他人と絡むな日だな。

 トットットット
「あ、あの、お兄さんがエフィルアさんですか?」
「そうだけど?」
 おそらくバツゲームか何かで俺に声をかけてくるようにでも言われたのだろう。
 とも思うのだが、彼女の後ろで母親らしき女性がとんでもなく苦々しい顔をして立っているのが見えた。

 なに? 親子で一緒にバツゲームやらされてるの? 大丈夫かな、それ。村八分とかにされてないよね?


「お兄ちゃん! ありがとう!!」
 ふいに、少女の明るい元気な声が発せられた。

 あ、ああ~、分かった。昨日の子か?
 昨日さらわれてた子だ。それでわざわざお礼を言いに来たのか?
 まじめすぎだろ。そんな真人間みたいな事をしてたら、世知辛い世の中やっていけないぞ。

「あー、まー、その、あれだ、世の中、危ないから気をつけろよ」

「うん、分かった、お兄ちゃん。昨日は助けてくれてほんとにありがとっ、あのねっ、わたしねっ・」
「ほらっ! もういいでしょ?! いくわよ!!」
「え、ママ、まって! まだわた・ まってよ~」

 そしてあっという間に母親と思わしき女性に連れて行かれてしまった。
 なにがなにやらだ。

 母親のほうは俺を良く思ってはいないだろうね。
 ほんとうなら闇属性野郎なんかに娘を近づけたくないのだろう。
 それでも一応、娘に礼を言う許可を出したのだから、だいぶ好意的な対応と言っても良い。
 下手したら、俺が娘をさらったんだとか言い出しかねないヤツもいるのだから。

 それからギルドの中へ入ろうとすると、今度は中から騒がしい声が聞こえてくる。ギャオの声か? まったくこの町の連中は賑やかなもんだ。

「ロアァ、昨日洞穴へ入って何をしてやがった、あ~~のっ、エフィルアの野郎なんかと仲良くなぁっ。さてはお前もバケモノなんじゃないのか? 町にモンスターを呼び寄せていたのもおまえ――」

 受付カウンターのロアさんに向かって騒ぎ立てているギャオ。

 ギャオを取り巻いてるのは、昨日ロアさんに袖にされてた連中だろう。一緒になって煽り立てている。
 その後ろには少し離れて聖女と剣聖達もいる。

 それにしても案の定のイベントが発生している。まずいね、俺のせいでロアさんが面倒な事に巻き込まれてしまっている。
 彼女は今にもカウンターから引っ張り出されて、どこかに連れ出されでもしかねないという雰囲気だ。ギャオなんかよりロアさんのほうが遥かに強いだろうから、俺が心配する必要もないかもしれないが……



「ギャオ、俺がどうかしたか?」
「んん~? ああ、来たかよ、エフィ~~~ルア」

 騒いでいた連中の視線が俺に集まる。

「エフィルアさん、私、ごめ・」
 口を開きかけたロアさん。その言葉にかぶせるように俺も声を出す。

「だまれ」
 それから俺は適当なセリフをならべる。


「分かってるんだろ? 昨日はせわになったからな。人を弾除けか釣り餌みたいに扱ってくれてな、報酬があれだけじゃあ納得がいかない」

 そんな感じで、俺はロアさんに向かって詰め寄る。
 あまりに酷い自分の三文芝居に我ながら少し寒気を感じるのだが、ギャオ君は単純なので助かる。

「てめぇエフィルア、何してやがるっ」
 ギャオが俺につかみかかる。軽く振り払う。

「おいっ」「馬鹿が」「グエェ」
 それからはもう、もみくちゃだ。良い感じだな。

「ロアに何しやがるエフィルア! やっていい事と悪い事ってもんがあるだろうが!」

 そうのたまうギャオ先生。本当にアホで助かる。
 彼女に襲いかかろうとしていたのはお前だろうと思うのだが、さっきまで自分でやっていた事も、やろうとしていた事も、もうすっかり忘れてくれているギャオ先生。流石である。

 あとはこのまま外に流れ出して、適当にやられておけば収まるか? 今後ロアさんに悪いことが起こらなきゃいいが。

 そんな事を考えながら、しばらくなんだかんだやって、ギルドの出入り口へと移動したところで、

「何をしている、お前たち」
 扉を開けて立っていたのは、勇猛な美女戦士を絵に描いたよう人物、ギルドマスターだった。

「ちっ」
 舌打ちするギャオ。
 なんだか最近、こいつのチンピラ感が酷くなってる気がする。大丈夫だろうか? 
 俺が甘やかしすぎてしまったせいもあるかもしれない。少しは痛い目にもあわせておいた方が・・ ああ、違う違う、今はこんなやつはどうでもいい。

 ギルドマスターの傍らにはロアさんが立っている。どうやら、隙を見てギルマスを連れてきてくれたようだ。


 集まっていた連中が散らばっていく。残ったのは、ギャオと聖女御一行様。
 聖女様が近づいてきて何か話をしようとするが、割り込むようにギルマスが声をあげる。

「エフィルア 殿、上で話があるのだが」
 エフィルア 殿・?
 ギルマスは妙に丁寧な態度で俺の名を呼んだ。

 それにしたって殿ってなんだよ殿って。誰にもそんな呼ばれ方をされた事はない。

 ギルマスとはお互いに、直接的なやり取りをしようとはしてこなかった。
 だから話をするのは初めてなのだが、彼女はそんな丁寧な人物ではなかったように思う。
 ささっと階段を駆けあがってしまう彼女を追って、俺も2階へと向かう。

 ロアさんはカウンターの中へと戻っていった。
 少しばかり居心地が悪そうにしているが、ギルマスも戻ってきているし、とりあえず今は、また騒動になるようなことはないだろう。


 タンタンタンタン
 2階へと続く階段を上りきる。

 さて、変な話じゃないと良いけどな。
 さくっと昨日の事を話して、さくっと帰ろう。

 開け放たれた両開きの大きな扉の向こうでギルマスは待っていた。

「よく来てくれた。エフィルア殿」
 美人女戦士はデスクの前に仁王立ちして俺を迎え入れる。
 いかにもパワータイプの女戦士といった感じだが、鍛えられ、引き締まった肢体の中に女性らしいしなやかな物腰も感じさせる。


「何かお話が?」
 俺は応接用のソファに案内される。
 いや、出来れば立ち話で済ませたいんだけどな。
 そうもいかないらしい。おとなしくギルマスと向かい合わせに座る。

「まずは、良く救出を成功させてくれた。感謝する。それから昨日の洞穴の話は既にロア君から聞いている。今一つ腑に落ちない点もあるのだが、ことさら君から何かを聞き出そうとは思っていない」
 うーん、微妙に何かを感じさせる言い回し。
 分かってるけど聞かないよ的な雰囲気。

「それより大事なのはこれからの話だ。昨日の洞穴なのだが、奥への通路が発見され、新たにダンジョン認定された」
「ほうほう」

「それでだな、あそこは新種の魔物まで沸いてくるような場所だ。ある程度の探索が必要だと考えている。また問題が起きないとも限らない」

 ふむ是非ともがんばってほしい。
 だけど俺はなんで呼ばれたのかがまだ分からない。

「あ~、うん、それで本題なのだが……。エフィルア殿、力を貸してもらえないだろうか」

「はあ」

「洞穴内の現場確認に行って来たのだ。そこで見たものは圧倒的な力の痕跡だった。ロア君も何かを隠している様子だったし、どう考えてもアレはおかしい」

 うーん、やっぱり? おかしいとは思うだろうね。
 だけど時は一刻を争ったし。女の子を助けるためにはあれが最善の策だったんだからしょうがない。

「大量の人面獣が全て爆散していたうえに、魔法障壁となっていた厚さ1mの岩壁が木っ端微塵に吹き飛ばされていたのだ。壁の破壊は奥からではなくこちら側からだ」

 証拠隠滅のために洞穴ごと破壊して埋めてしまえば良かったのだろうか。

「この町の安全を守る責務を負う私としては、まかり間違ってもあの力の主と敵対する事態はさけたい。そして出来る事なら友好的に関係を進めたいのだ」

「ほ~、それが良いでしょうな。俺にはなんの事やらわかりませんが」
 とりあえず、すっとぼけてみる。

「エフィルア殿。今すぐにこの町での待遇を全て改善するのは難しいが、私と協力関係を結ぶのはけして損ではないと思うのだ。さっそくギルド内の私の私室で良ければ使えるように手配しよう。そして今後順調にギルドの依頼をこなしていってもらえれば、発行できる身分証のランクも上げられる」

 うーん。なるほど。そうか。
 今まで直接的に関わりがあったわけじゃないけど、俺としてはこの人に悪い印象があるわけではない。
 この町では俺と取引してくれない店も多いが、数少ない利用可能な施設が冒険者ギルドなのだ。

 これはギルマスが多少なりとも手を回してくれていなければ出来ない事。
 聖女の家と、剣聖の家からの圧力を考えればね。

 それを考えれば、俺の数少ない協力者たりうる人かもしれない。もっとも、そこまで信用している相手でもない。
 なにせ、これまでのこの町での俺の状態を知っていながら、積極的な介入まではしてこなかった。いや、出来なかったというほうが適切だろうが。
 それが今の状況になってから、協力しようというのだ。


 ふうむ。

「それで、 そのギルドからの最初の指名依頼がダンジョンの探索というわけですね」
「そうなる」


「まっ、分かりました。やってみましょうか」
「おお! そうか! 受けてくれるか、ありがたい!」

 彼女は一応この町の実力者なわけだしな。
 まっ、もし何か不都合があったら、町ごと灰燼かいじんにすればいいさ。


 それにだ、他のやつ等なら今の俺の力に気がついた瞬間どんな態度をしめすだろうか。まず間違いなく町を挙げての討伐対象に設定してくるだろう。

 しかし、このギルマスには、何か社会通念や個人的な感情よりも、清濁併せ呑んで事に当たる豪放さがある。
 未知の力を目の当たりにして、とりあえず仲良くしておこうと判断できるくらいにはだ。

 何も互いに信頼関係などなくても、とりあえず協力することにデメリットはない。
 そういう事になる。

「それで探索のパーティーメンバーは、エフィルア殿と私、それにロア君で進めようと思う」
 ギルマスは少しだけ安心したような様子で、話を進める。

「やはりロアさんも行くのですね。LV高いですからね」

「ああそうだ、そうだった、その事もあるのだエフィルア殿。ロア君は自分のLVの事は私以外には隠していたはずなのだが昨日皆の前で言ってしまったそうだな? 何があったのだ?」

 そうか、そういえばあの時聞いてたやつらは皆、衝撃を受けて固まってたもんな。
 俺も知らなかったけど結構な秘密だったんだ。でもなぜそれを?

 などと考えていると、ギルマスが武具の準備をし始めた。
 あれ? 探索ってもしかしてすぐに行くつもり?

 今までの軽装を脱ぎ捨てて、本格的な探索の準備を始めたようだ。

 俺の目の前では、無造作にぼろんぼろん着替え始めた彼女の勇士が繰り広げられている。



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