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番外編SS
プライベートビーチ◇
しおりを挟む「さすがですね。公爵家のプライベートビーチは」
「そうね。新婚旅行は、海が見える所がいいわね」
「スティーリア様、あまり日傘から出られると日焼けします……」
休暇、という言い方があっているのか分からなかったが、お父様にこれまで色々あっただろうと、公爵家の別荘がある離島に案内して貰った。といってもお父様は家の方で仕事があるといって、きたのは、数名の使用人と、侍女のラパン、そしてファルクスだけなのだが。使用人たちは別荘の方の管理やら掃除やらがあるので、ビーチにいるのは私とラパンとファルクスだけだった。
結婚式は無事終わり、その後憎たらしくもメイベと殿下の結婚式にも参列し、手続きやら、書類仕事やらでファルクスとの時間が取れなかった。といっても、いつもよりは、ということなのでファルクスを視界に移さない日はなかった。しかし、まだ新婚旅行というていで何処かに行ったことはなく、海が見える所が……という話だけで収まっている。
ファルクスは私がいいって言ったのに、自ら日傘持ちに立候補し、私の隣を歩いてくれるのだが、またそこでラパンと揉めてしまい、一悶着合った。私を思ってくれるラパンと、ファルクスは度々ぶつかってしまうらしい仲がいい……ように私は見えるので、怪我さえしなければ二人とも私の為に争っていてくれてもいいんだけど。
それにしても、プライベートビーチを持っているなんて、公爵家様々だと思った。誰もいない、コバルトブルーの海。潮風、カモメの鳴き声……後ろで揉めていなければ、本当に最高の場所。少し暑いのも、着替えればどうにかなるだろう。
「ラパン、着替えるから手伝って頂戴」
「はいっ、スティーリア様」
「スティーリア様、俺が――」
「ファルクスはダメ」
「何故ですか。俺は、貴方の婚約者で……」
「着替えを手伝って貰うの。それは侍女の仕事よ。それに、後でファルクスにしかできないことをお願いするから。ね?」
「……っ、分かりました」
少しだけ顔を赤らめてファルクスは下がった。持っていた日傘をラパンにわたし、私はラパンと共に着替えに行くことにした。少し、忌々しそうにラパンを睨んでいるファルクスが怖かったけれど、ラパンには手を出さないだろう。出したら、それこそお触りも接近も禁止令出してやろうと思っている。
ラパンもラパンで、何処か勝ち誇ったような笑みで私の周りを歩く。
「ファルクス様寂しそうでしたね」
「嬉しそうね、ラパン」
「え、ええっと、はい。スティーリア様の近くにいたくて! それに、今日のために準備した特注の服ですから、私が最初に見たいです。スティーリア様に似合うと思うので」
「ありがとう」
今日のため、というか、海で遊ぶために用意して貰った特注の服。水着……といえば、そうなのだが、露出はそこまで多くないはずだ。さすがに、プライベートビーチといっても使用人たちがいるわけで、そこまで露出はできない。それに、そんな人だと思われたくないし、ファッションショーなら、公爵家の自室でもできる。
だから、今回は露出ではなく、いつもと違う服でファルクスを驚かせよう作戦なのだ。
どうせ、未来はみえているけれど、それでもファルクスに可愛いとか、綺麗とかいって欲しい……いつもいわれているけれど、あっとさせたかったのだ。
私は、ラパンに手伝って貰いながら服を着た。露出少なめだったはずなのに、今思えばかなり露出しているような気がして恥ずかしくなってきた。ラパンには、これでファルクス様もいちころですね! 血の海にしちゃいましょう! とか物騒な、元暗殺者の言葉を貰って、私はファルクスが待っているビーチへと戻った。
「ファルクス」
「スティーリアさ……っ」
「ど、どうかしら。これ……海に入っても大丈夫な服なんだけど」
そんなに赤面されては、こっちも恥ずかしくなってくる。早く感想が欲しいのに、彼は珍しく固まってしまった。
「えっと、変……かしら」
不安になって私が尋ねれば、彼ははっとしたように首を横に振り出した。そんな、反応が可愛くて、私は吹き出してしまう。
「ふふっ……」
「わ、笑わないで頂けますか? その、スティーリア様……が綺麗すぎて、見とれていただけなのに」
「ごめんなさい。そんなに喜んで貰えると思わなくて。ご褒美、欲しくない?」
「もう十分ご褒美ですが」
と、ファルクスはちらりとこちらを見る。
私は、ラパンから受け取った日焼け止めのオイルをファルクスに渡した。彼は、それで察したのか、日焼け止めクリームと私を二度見する。既に用意されているパラソルの下のシートに私が寝転がれば、ファルクスは慌てたように私の元に近付いてきた。
「物わかりのいいファルなら、言わなくても分かるでしょ? さ、早く」
「いいのですか?」
「ご褒美だっていってるじゃない。まあ、婚約者だし……そこまで私にいちいち許可取らなくてもね。それに、さっき貴方にしかできないことをやらせてあげるって言ったじゃない。いやならいいけど」
「やります」
そういうと、ファルクスは日焼け止めクリームの蓋を取って、中身を手に取る。そして、私の手をとり、手のひらにそれを塗りつけた。
「ファル?」
「……貴方は知らないでしょうが、俺はいつも……この手で貴女に触れるとき緊張しています」
そういいながら、彼は私の肌に手を滑らせる。ファルクスは微笑みながら私に優しく触れてくれていたけれど、私はこれまでの行為を思い出してしまって恥ずかしくて仕方がなかった。まさかこんな風に触ってくるなんて思ってもみなかったし、そもそもオイルで塗ってくれているだけなのに意識してしまう自分がおかしいのだ。自分でいいだしておいて、そういう雰囲気になるかもって分かっていたのに。だから、プライベートビーチ……
(緊張なんて……私だっていつもしてるわよ)
どんなふうに触れられるのかなとか、私の声、気持ち悪くないかな……とか。でもそれら全てファルクスは肯定してくれてそれに甘えてしまっている自分もいて。
「ん……ふっ」
「スティーリア様、その声、えっちです」
「えっちとか、いわないで。ファルの、手つきが……!」
「俺の? どんな?」
「だから、そのっ、それ……よっ!」
ファルクスは、分かっていてやっているのだろう。たまに、こうして意地悪をするから質が悪い。私を虐めて楽しんでいるのだ。そして、私は彼に敵わない。負けっぱなしなのだ。
その間もずっとオイルを塗る彼の手は止まることなく私の腕や足の裏、背中の方までやってくるのだ。あまりに優しく触れるものだからくすぐったいような身体がぞわぞわっとくるような感覚が私を襲うのだ。
「こうなるの期待してたんでしょ? スティーリア様……貴方は酷い人だ」
「酷くないわっ、よ……っ!」
胸に伸びた手は、いつもと違ってオイルが塗られているからかぬるぬると胸の上を滑っていく。乳首まで絶妙なタッチで触れられ、私は身体を震わした。
「感じてるですよね? オイル塗ってるだけなのに?」
「分かってるわよっ」
分かっているのだ。でも、普段の触れ合いのせいで既にファルクスに発情している身体は言うことを聞いてくれない。次第に足をすり合わせるようになっていく私を見て、彼はニヤリと笑ったような気がした。そして、私の首筋に顔を埋めるとそこにキスをしたのが分かった。それも強く吸って跡を残していくようなキスだ。そのまま手は下に――
「だ、ダメ!」
「何故ですか?」
「そこ、そこは……あと、まずは海を楽しまなきゃ」
私はこれ以上は不味いと切り上げて、ファルクスをしっしっ、と手で追い払う。すると、ファルクスはムスッとした顔で、物足りなさげに私を見てきた。そんなかおをされてもダメなものはダメと、私は起き上がってぬるぬるになってしまった身体を太陽の光でどうにかしようとした。しかし、チリッと肌が焼けるような痛みでパラソルの下に入る。多分、肌が敏感なんだろう。だからといって、海を楽しまないわけにはいかないし、泳ぎたいし……という思いもあって、私は砂浜をかけだした。
「ファルクスは泳がないの?」
「いえ、俺は――」
「もしかして、泳げないの?」
と、私が聞くとファルクスはスススッと目をそらしてしまった。もしかして、もしかするのだろうか。
ラパンも戻ってきて、ビーチには三人。今度は入れ替るようにファルクスが着替えに行った。泳げないからと時間を稼ぐつもりなのだろうか。そうはいかない! と思ったが、案外あっさり帰ってきた。
「それで、ファルクス、泳げないの?」
「いえ、泳げます」
「本当に?」
「……」
「可愛いところあるじゃない」
水が嫌いな犬もいるしね、とまた犬扱いしながら、私はファルクスの頭を撫でた。可愛いと、胸の奥がキュッとなるようなそんな母性に似たものが生れる。
ファルクスの可愛いところを見つけてしまった、これは私だけが知っている彼の秘密、そう思うとにやけてしまう。ファルクスは、海の方を見ながら、青いですねーなんて、虚無感満載の顔で言っている。
「フフ、特別に教えてあげましょうか? ファルクス」
「スティーリア様が、俺に、泳ぎ方を?」
「ええ。特別によ。泳げないのは別に恥ずかしいことじゃないけど、ファルがどう思うか次第ね」
「……っ、じゃあ、あっちの岩場で教えて貰えますか。足もつきますし。さっき下見してきたんです」
「そうなの?」
「す、スティーリア様!」
私が、それなら以降かしら、と思っていればラパンがいきなり声を上げた。何? と思えば、ソワソワしたように、ファルクスの方を見る。
「だ、騙されちゃダメです」
「だから何に?」
「た、多分ですが、ファルクス様は――」
「ラパンさん」
「はい」
「スティーリア様が、善意で教えてくれるので、邪魔しないで貰えますか?」
と、吹雪くような目で、彼はそう言うと私の手を引いて歩き出した。後ろでまだラパンが何か言っている気がしたけれど、彼女の言葉の意味が理解できず、私はファルクスの方を見る。
(およげ……ないのよね?)
ときめきから、何だか雲行きが怪しくなってきて、私は振返ることなく歩く彼の背中を追っていた。
「確かに、波も穏やかで、ギリギリ足がつくかなってところかしら……ファルクス、水は大丈夫?」
「水に入ることくらいなら」
チャポンと足をつけ、そのまま腰あたりまで入ってくるファルクス。その動作がいちいち、水に怯える子犬のようで可愛くて、つい頬が緩んでしまう。ここは、私がリードしてあげなくちゃ、と彼の手を引いて、水の中を歩いてみる。水の中を歩くのは、陸を歩くのと違って、重力がないからふわふわとしていて楽しい。それに、足に何かが当たることもなくてとても気持ちよい。
「大丈夫? 歩けてる?」
「はい、でも岩に捕まってでもいいですか?」
「いいわよ。ああ、でも気をつけてね」
「はい」
そういって、ファルクスは岩に捕まりながら水に慣れようとしているようだった。そんな彼を少しだけからかおうと、私も岩に捕まって彼の方へ歩く。しかし、そこは私の足がつかない場所で、岩に捕まっていなければ私は海の中に沈んでしまっていただろう。
「スティーリア様、危ないですよ。足、つかないでしょ?」
「あ、あの、ファルクス……きゃぁっ!?」
何だか、はめられた気がした。ファルクスの方に私が歩いて行くように、誘導されたようなそんな気がしたのだ。
足がつかず、岩に捕まっている私を後ろから抱きしめると、その手は、水着の中に入り、胸を揉み出したのだ。
「さっきの続き……ここなら、誰もいないので大丈夫ですよね」
「ファルクス、もしかして泳げないっていうのは嘘?」
「さあ、どうでしょうか。スティーリア様のご想像にお任せします。ああ、スティーリア様、こんなになって……やっぱり、期待していたんですね」
「してないわよ! 勝手に、いいように想像……んっ、してぇっ!」
私は、胸への愛撫に耐えながら否定をするが、水着をずらしたファルクスに直に胸を触られ、私は感じてしまう。体は正直で、ファルクスの言った通り、既に出来上がってしまっていた。先ほどの日焼け止めクリームをぬっていたときからずっと……腰が浮くような、地に足がつかないような感覚だった。
彼は楽しそうに私の胸の突起を摘んできた。その間にも、身体を密着させていて彼のものがもう硬くなっているのが分かった。それが押し付けられている私には分かる。抵抗しようにも岩から手を離してしまえば、足がつかなくて、足がつかない状態で、お尻にファルクスのが当てられていて。
(そ、外でするの? それも、水の中で?)
そんなプレイ考えたこともしたこともなかった。だから、恐怖もあり、しかし、それを上回る好奇心が湧いてきた。
ファルクスは器用に、水着の間から、自身の堅くなったそれを滑り込ませてきた。
「んっ、あ、だ、だめっ!」
「ああ、このまま入ってしまいそうですね」
「ふああっ、やっ!」
そういってファルクスは私の腰を持ち上げた。足はつかず、水の中ということで浮遊感もある。お尻を掴まれている私は慌てて岩にしがみつくように捕まる。
「どうですか、スティーリア様。欲しくなってきたんじゃないですか」
「うう……」
私がそういっても彼は手を離してくれそうにない。岩にしがみつき、足がつかないまま、私はされるがままだ。でも、それが気持ちよくて、彼のものが当てられるたびに体の奥がきゅーっと締まるようなそんな感覚がした。
「ああ……スティーリア様のここ……俺が欲しくてヒクついてる」
「やだぁ! そんな言い方っ!」
「だって、本当ですもん。いつもと少し感覚が違うでしょうが、我慢して下さいね」
「あああっ!」
ズプププ、と海水と一緒に私の中に入ってくるファルクスのそれ。その熱さと、海水の冷たさに私は身体を震わせる。そして、ビクビクと震える腰を掴みながらファルクスは後ろからズンズン突いてくるのだ。
「やっ! やだっぁあっ! お腹の中、おかしくなる!」
「ああ、凄い……スティーリア様、中がきゅうきゅうしてて……ああ……」
パンパンと肌と肌がぶつかり合う衝撃と水が波打つ音。
確かにいつもと違う感覚と、体位に私は翻弄されていた。岩場に捕まっていた手もいつしか離れて、向き合うようにして互いを求め合う。ファルクスのが奥まで突き上げられて、私は息も絶え絶えだった。
「あぅうっ! あ……ああっ!」
「っ……スティーリア……!」
最奥に熱いものが放たれて、そして私は目の前が真っ白になった。ドクンドクンと脈打つようにファルクスのものは中に出される。その感覚にすら反応してしまうくらい体は敏感になっていた。次第に硬さを失っていくそれを私の中に収めたまま、彼はキスをする。水の中だからか何だかいつもよりキスはしっとりしているようなそんな気がした。しかし、彼は離してくれず、再びかたさを取り戻したそれは、私の中で律動を再開した。たぷ、たぷんと揺れる水面の中、私はファルクスの腰に足を絡ませるしかなかった。
「スティーリア、このまま少し歩きましょうか」
「こ、このままって、入れたま……あうっ」
「はい」
一体どんな神経をしているのだろうか。もちろん、先程イッたばかりなので足はガクガクと震えている。だというのに、ファルクスはお構いなしに私の中を穿ち、歩くのだ。
しかし、体勢的にはさっきよりも楽になった。このまま何度か揺すられればイきっぱなしになってしまうかもしれない……と思うがそんなことはなく、しばらく私は中を擦られるだけで絶頂まではいけなかった。だが、何度も何度も休みなく揺さぶられ、突かれればやがて限界が来るもので――ぶるぶるっと身体が震えて制御ができなくなるくらいの絶頂を迎える。それと同時にまた中に温かいものが広がっていくのが分かった。
水の中でしかできないようなそんな行為……ファルクスは私に一体何を教えたいのだろうか。私の身体に色んなプレイを刻み込もうとしているのだろうか。
「もう少し、このままで……」
「……ええ」
私の中で果てても尚、私を離そうとしないファルクスに私は微笑んでキスをしてあげるのだった。
その後、ラパンと合流したが、ラパンは分かっていたようなかおをして、ファルクスを睨んでいた。ファルクスは悪気ないようにラパンを見ていたが、水が好きではないのは本当だったらしい。泳げないわけではなかったが……また、ファルクスにしてやられたな、と思いながら、たまには外で、というのも視野に入れていこうかな、と私も完全にファルクスとの行為の虜になってしまったな、と羞恥心に駆られるのであった。
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きょん様
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駄犬ファル、、、好きです!!!
きょん様
感想ありがとうございます。
駄犬ファル……いいですよね☺️☺️