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第4章 元悪役令息と元駄犬

05 好きすぎだろ、俺のこと◆

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「な、な、なっ! 何を言っている、ラーシェ」
「いや、おっぱい揉むかって……この場合、おっぱい吸うか? のほうが正しいのか」
「そんな細かいことどうでもいいだろう!」


 キャン! とゼロは顔を真っ赤にして叫んだ。実際には、真っ赤なのかわからないが、興奮したようにはっはっはと舌を出しながら息を切らし、尻尾を思いっきり振っていた。やめろとか、見せるな、とか口で言うくせに体はバカみたいに反応している。それが面白おかしかったが、ゼロが理性のあるやつだったことをすっかり俺は忘れていた。
 ゼロは、グルグルと喉を鳴らしながら俺をじっと見つめていた。だが、俺のおっぱいには屈しないというように言葉を一言も発しなくなった。


(…………はず過ぎるだろ!? なんか喋れよ、この駄犬!)


 なんでこんなとき、我慢をするのだろうか。我慢は毒だと知らないのだろうか。
 俺だって勢いでやってしまったが、あまりにも恥ずかしいことをしている自覚はあったので、早く飛びつくなり、食らうなりしてほしかった。しかし、ゼロは変なところで理性を保つように、興味ないと首を横に振っている。だが、その首の動き以上に尻尾が揺れているから格好がつかない。
 こっちがせっかく、ゼロが好きなおっぱいを見せてやってるっていうのに。ポメから戻りたくないのかとすら思ってしまう。それとも、律儀に俺の嫌がることをしないという約束を守ってくれているのだろうか。


(もう、俺が折れたほうがいいのか? 俺だって、別にゼロのこと……)


 こいつの求愛行動はもうたくさんだった。こんだけ、執着されてべたべたされれば、意識しないわけがなかった。俺ってゼロのこと好きだっけ? って、毎日自問自答する日々だ。そして、思い出してはゼロとの抜きあいとか、素股とか。思い出さなくてもいいエロいこと思い出して、勃起したことだってあった。それくらい、俺はこいつのことを意識してしまっていたのだ。
 折れる、なんて言い方はゼロにとっては嫌な言い方かもだけど。まんまと、こいつの策略にハマったというか。いや、ゼロは策略とか考えるタイプじゃない。ただバカ真面目にまっすぐに求愛してきただけだ。


「おい、ゼロ。俺も恥ずかしいんだけど…………何とか言えよ!」
「恥じらいはないのか」
「だから、恥ずかしいっつってんだろ!? その、耳は飾りか!?」


 聞こえないってことはないだろう。ピンとまっすぐ立った耳が、俺の言葉を一言一句聞き逃してなるものかと動いているのだから。


「ラーシェの嫌がることはしないといった。これは、俺が試されているのだと」
「なんでこんなときにそんなことしなきゃならねえんだよ! そんなお気遣い俺ができると思ってんのか!?」
「じゃあ、ラーシェは好きで俺にぷっくり陥没乳首を差し出しているっていうのか?」
「ぷっくり陥没乳首っていうな! こうなったのは半分お前のせいだからな!? つか、真面目な顔してそんなこと言うなよ!」


 はあ、はあ……と、言っているこっちが恥ずかしいし疲れてくる。
 お気遣いで胸を差し出すわけねえだろ、と俺は額に青筋が立ちそうになる。ゼロの忍耐を試すためのハニートラップなんて死んでもしない。つか、する意味がない。こいつは、ハニートラップなんて仕掛けなくても勝手に発情して襲い掛かってくるから。まあ、それも自分で理性で制御できる賢い犬ではあるが……タガが外れると、再度リードをつけることはかなわない。
 外気にさらされた俺の胸は、寒さに部瑠璃と震えていた。陥没乳首の先端が外に出たいとうずうずしている。バカみたいに敏感な身体が嫌になる。


「それで、吸わないのかよ。いつもみたいに、ぺろぺろしろよ。犬らしく」
「……いいのか」
「ハッ、かかって来いよ。ゼロ」


 このセリフだけだと、何かの試合をするみたいだったが、俺が胸を突き出した瞬間、もう我慢できないとゼロは俺に飛びついてきた。あまりにも勢いのあるタックルだったため、俺はそのままベッドに押し倒される形でのけぞる。非力なポメラニアンに押し倒されるとかどんなんだよ、と思ったが中身がゼロだから非力でも、火事場のバカ力くらいは人間のゼロ涙せるのかもしれないと思った。
 ゼロは、はっはっと息を切らして、俺の胸にむしゃぶりついた。


「ん……っ、がっつきすぎだ、ゼロ」
「ラーシェがいいっていったんだろう。言質はとってある」


 思わず声が漏れる。ゼロの舌が、俺の陥没した乳首をほじくり出すように舐めまわす。そして、そのまま吸い付かれると、俺はもうダメだった。


「あっ、ああ……っ! あぅ……っ!」


 ちゅぱちゅぱと音を立てて吸うゼロは、俺が気持ちいいところを全部知っているかのように的確に攻めてきた。円を描くようにして乳輪を舐めまわしたかと思えば、舌先でぐりぐりとこねくりまわす。犬のくせに、どんなテクニシャンだよ、と俺は感じながら笑えて来てしまう。しかし、あっという間に笑う余裕も吹き飛んで、ふかふかした肉球でもう片方の乳首を摘ままれると腰が勝手に動いてしまう。さわさわした毛も、微妙に俺の乳首を刺激する。


「あ、ああっ、そこばっかやめろ……っ」
「なんでだ、気持ちいいんだろ? そのわりにはこんなになっているが?」


 そう言ってゼロは俺の勃起した性器を衣服の上からぎゅっと後ろ足で踏みつける。
 声は低い成人男性、だが体はポメラニアンと、姿を見ると脳がバグりそうになる。
 そんな俺の気持ちはさておいて、ゼロは小さい身体で俺を蹂躙し続ける。


「あっ、はぁっ! くぅっ、んあっ」


 ゼロがグリグリと足で刺激すればするほど、俺の性器は圧迫される。こうなるんだったら、服を脱いでおくべきだったと後悔した。


「あ……っ、ゼロ、いい加減」
「いい加減なんだ?」
「……戻れよ、人間に。ちょっと、もどかし、から」


 俺は恥ずかしさに顔を赤くした。こんな犬相手に興奮して勃起しているなんて、とんだ変態だ。認めたくないが、イケボポメラニアンに攻められる快感に……変な扉が半分以上ひらいてしまっている。
 それでも、決定的な快感がなく、ほしいと体が求めてしまっている。
 こんだけぺろぺろしてれば、人間に戻ると思っていたが、まだ戻らないのだろうか。そう思ってゼロを見れば、幸せそうに目を細めた後、ポンと音を立てて人間の姿に戻った。ようやく戻ったか、と喜ぼうとしたが、俺の上に乗ったままの状態で人間に戻ったので先ほどまで感じなかった重量に俺は身体が圧迫される。


「戻ったぞ、ラーシェ」
「も、んんん…………わかったから、退け。重すぎる」


 すまない、と言ってゼロは俺の上から一時退いた。だが、俺の近くからは離れようとせず、まだ足りないと物足りなさを目で訴えかけてくる。
 そんな目で見られなくったってわかっている。それと、俺もこのままの状態で放置されるほうがつらい。けれど、自分で口にするのはなんか癪で、ポメラニアンに興奮していたという事実も隠したくて俺は口にできなかった。
 そんな俺を見てか、俺の気持ちを受け取ったゼロが俺の頬を撫で、堅い親指で俺の唇をなぞった。 


「もう少しだけ……いいだろ、ラーシェ」
「言わなくったってやったくせに」
「だから、俺はラーシェの嫌がることはしない。それに、待てと言われたら待てる犬だと自負している」
「へいへい。けど、『よし』っつったら、歯止め効かねえだろ。そこまでできて利口な犬だぞ。ゼロ」
「……それで、いいのか?」
「待てができるんじゃなかったのかよ」


 早くくれといわんばかりに、ゼロは尻尾を振る。振っているように見えるだけで厳格だったが、俺は犬と人間の間の野郎を手懐けるように頭を撫で、こいよ、と挑発気味に言う。すると、ゼロは再び俺への愛撫を再開した。


「お前、そんなに俺の、っ、胸、好きか?」
「ああ。こんなにエロい陥没乳首は見たことない。それに」
「あっ、なに言って!?」


 ピンと突然、陥没した乳首が外に露出される。そして、ゼロは舌の先を尖らせてその先端をつつく。


「ラーシェも好きなんだろ? いい反応をする」
「……っ! この、駄犬……っ!」
「でも、好きだろ? ラーシェの身体も素直だ」 


 そう言ってゼロは俺の乳首を強く吸い上げる。その瞬間に俺の腰は浮くように跳ねあがり、女みたいな甲高い嬌声が口から漏れる。


「ああっ! あ……っ!」
「いい声だな、ラーシェ」


 ゼロはそのあとの言葉を言わない代わりに強く俺の乳首を吸い上げる。
 乳首でこんなに気持ちよくなっている自分が恥ずかしい。声だって、腰だって浮いてる。こんな乱れて恥ずかしいのに、先ほどよりも強い刺激に体は喜んでいた。そして、ついには乳首だけでイってしまい、パンツの中がグチョグチョになる。


「やりすぎ…………だ、ゼロ」
「……そうか?」
「そうだ…………って、何でしご……っ!? 俺、今イったばっかで。ひぎぃ!?」


 ずるりとズボンとパンツを一気におろし、ゼロはイったばかりの敏感なチンコに触れるとその大きな手で包み込んでしごき始めた。まだ中に残っていた精液がぴゅく、ぴゅっ、と出て、その様子をまじまじと見つめている。どんな性癖だと思いつつも、ゼロはもう片方の手でいつの間にか開いたズボンの中心で勃起している己の凶悪チンコをしごいていた。


「ははっ、やっぱり、俺だけじゃイケないみたいだな」
「そーいう、呪いだからな! んなら、俺にしごかせ……」
「ラーシェ、挿入ちゃいけないか?」
「はあ!?」


 ぴとりと、俺の穴に己の先端を宛がいながらゼロは尋ねてくる。


「ダメに決まっているだろ!? 慣らしてもねえし、きたねえし」
「別に構わない」
「俺が構うわ! やめろ! 今はダメだ!」 


 ぬるぬると、先走りを軟膏代わりにして、ゼロは執拗に穴に己のチンコを擦りつけてくる。ぐちゅりと水っぽい音がしたり、ツンと熱いものを押し付けられたりで、俺のそこも段々濡らされていくのを感じた。だが、俺の『今はダメ』という言葉が効いたらしく、ぴたりと動きを止めて俺を見下ろした。それはもう、恐ろしい顔だった。言葉にするのも怖い。

「今は、ということは、いつかは、ということか」
「いいように、解釈すんなよ」
「ラーシェ」


 と、ゼロは必死になって聞いてくる。
 ここまで来たら、引き返せないと俺は一瞬戸惑いの表情を顔に浮かべてから、こくりと頷いた。というか、うなずかざるを得なかった。
 それを聞いて、ゼロはほっとしたような表情の後、俺を自分の膝の上に乗せるとチンコと己のチンコを合わせて優しく握り込んだ。


「そうか、じゃあ、いつだ?」
「気がはえーよ。そうだな。あいつが犯人だって証拠が見つかって、突き出せたらな」
「……諦めてなかったのか」
「今俺はやる気なもんで。つーことで、早く抜いて終わろうぜ」
「ただの作業にするな、ラーシェ。だが、そうか…………俺も、やる気を出さなければな」


 ゼロはぶつぶつ言ったかと思うと俺の唇に噛みつくようにキスをした。ゼロの熱い舌が捻じ込まれ、口の中を蹂躙される。それが気持ちよくて、俺も対抗するように舌を絡ませる。その間にゼロの手は俺の亀頭を包むようにして撫でまわしてくる。
 キスは許してないはずなのだが。


「はぅ、んぐ……っ」


 鼻で息を吸っても息が苦しくなるくらいキスが激しい。だけど、それすらも頭がふわふわして気持ち良くなるのだからもう末期だ。
 だが、俺がしごかなければこいつはイケない。だから、俺も必死にこいつのチンコを握ってたどたどしい手つきで上下にしごいた。上から降ってくるゼロの熱っぽい声にあてられながら、俺は手と舌が気持ち良くてすぐにイってしまう。そして、ゼロも俺に合わせてイク。


「んん…………んあっ! ああーッ!」
「はぁ……っ」


 気持ちよくなった後で倦怠感を感じながら、俺はしばらく何も考えられなくなる。ゼロは、息を整えながら俺の耳たぶを優しく触ってくる。それが心地よくてうつらうつらしてしまっていると、ふとゼロが声を漏らす。


「……悪かったな」
「何がだよ」
「なかなか、人間に戻れなくて」
「お前が謝ることじゃねえだろ。俺がかけた呪いのせい」
「だったとしてもだ。まあ、長い時間ラーシェを拘束できるのは、少しうれしいが。ラーシェがそれを嬉しく思ってくれないのであれば、それはただむなしいだけだからな」
「何言ってんだ、お前」


 わからないわけじゃなかったが、ちょっと怖いことを言っているので、きかないふりをした。
 そうして、俺は突然襲ってきた睡魔に勝てずに目を閉じる。瞼が落ちる寸前、見えたゼロの顔はやっぱり、愛おしいものを見るような笑みで、ふっと笑ったその顔が、バカみたいにかっこよく見えたのは気のせいじゃないのだろう。

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