不遇令嬢は発情皇子に溺愛される ~私は世界一不幸な女の子だったはずなんですが!?~

兎束作哉

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第1章 こんな転生聞いてません!!

10 何を企んでいるんです?

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「うぅ~~~~」


 腹の底から絞り出したような声を上げて、私はベッドに飛び込んだ。
 絶倫男子にがつがつ突かれまくって、腰を痛める……何て言う描写が二次元にはあるけれど、あれって本当だったんだ、と実感させられる。
 痛い、ものすごく。
 そりゃそうだ。あんなに激しくされたら、痛くないわけがない。というか、意識を飛ばさず、耐えきれた私が凄いと思った。


(いや、違うな……私が耐えたんじゃない)


 手加減はしなくて言いといった。そして、キャロル様もその言葉を受けてそういうつもりで抱くと宣言した。でも、彼の中に残った理性が、彼が自分にストップをかけて私が辛くないようにと抱いてくれていたんだ。だから、私が意識を飛ばさなかったのは、キャロル様が私を気遣ってくれたからである。
 魔力が暴走して辛いというのに、人のことを気遣えるキャロル様は紳士のかがみなのだ。でも、絶倫なことには変わらないし、もしかしたら満足しきれていないかもと思ってしまう自分もいるわけで。


(でも、あれ以上は無理、絶対無理!)


 避妊魔法をかけてくれていたらしいが、そんな魔法がきれてしまうぐらいには中に出された。
 それは、もうぐちゃぐちゃになるぐらいまで。何回したか分からないぐらい、何時間も何時間もしていた。思い出すだけで顔から火が出そうになる。


(思い出すな、私!)


 私は、首を横に振って、記憶を消そうと頑張った。それでも、私に触れるキャロル様の手の体温や息づかいをはっきりと思い出してしまって、一人からだが熱くなってしまう。あれだけやったのに、まだ求めているの? と自分の身体のはしたなさに驚いた。本当のアドニスもこんな子だったのだろうかと。それとも、私が性欲が強いだけ? とか、色々考えを巡らせた。こんなの考えたところでどうしようもないのだけど。
 侍女を呼ぶ気にもなれず、今日は部屋でゆっくりしていようと考え、私はごろんと仰向けになる。こっちの体勢の方が身体に負担がかからないし、腰をベッドに押さえつけているから、痛みも無かった。ゆったりとしたドレスに着替えているから、全身の締め付けがなくてそれも楽。けれど、身体が痛いのは変わりなかった。


「はあ……」


 推しに抱かれたいという願望を持ったことがある人は、少なからずいるだろう。でも、よく設定を読んで欲しい。そのキャラが……(R18の物語についてだけど)、どんなプレイが好きで、どんな性格で、そこまでしっかりと頭にたたき込んだ上で、現実的に考えるのがベストだと思う。ただ、抱かれたい~とかいう思いだけじゃ、推しの相手はつとまらない。と言っても、こんなの現実ではあり得ないわけだし、そもそも転生という物がイレギュラーなのだが。


「何で、私なんだろう……」


 本来、キャロル様は、アドニスではなくてヒロインのキールを好きになる。でも、キールは皇太子ルートを進んでいるらしいし、でも、キールに攻略キャラ達は狂わされていくというのが、本ストーリーのシナリオである。だから、その一人であるキャロル様も叶わない恋だと分かりつつもキールを好きになるはずなのだ。そして、キールが現時点出てきている異常、少なからず彼女に興味を持つはずなのだ。でも、そういう素振りが一切無い。
 そして、キールも。


「アドニス様、いらっしゃいますか?」
「はい。どうしたの?」


 コンコンと部屋をノックされ、私は身体を起き上がらせた。ジンジンと体中筋肉痛だったが、扉付近まで歩く。扉の向こうには、メイドがいるらしく、用件は何だと私は尋ねた。


「キール様がお見えなのですが」
「え、キールが? 今すぐいきます……ええっと、お茶の準備をお願いします。外でお茶出来るように、準備を……」


 これでよかったのかな、とか思いつつも私はメイドに指示を出した。
 キールが今日尋ねてくるなんて聞いてなかった。どういう風の吹き回しだろうと、この間会った、ヒロインらしからぬ顔をした彼女のことを思い浮かべた。でも、アドニスとキールは親友同士だし、この間の事とか、話したい事なんて山ほどあるんじゃないかと。私はそう思うことにして、支度を済ませ、庭園へと出る。外に出れば既にキールが椅子に座っており、その桃色の髪を揺らしていた。黙っていれば、本当にヒロインで。


「あ、来た来た。遅いじゃない。私が尋ねてきたって言うのに」


 でも、口を開いた瞬間、『ヒロイン』という単語は何処かに飛んで行ってしまうぐらい私を嘲笑うようにして満面の笑みを浮べた。


「え、ええっと。ごめん。今日約束していたっけ?」
「していないわよ。私がきたいから、来てやったのよ。感謝しなさい」


と、絶対にヒロインが言わないであろう言葉で、口調で言うと、フンと鼻を鳴らすキール。いったい、可愛いヒロインは何処に行ってしまったのかと思うぐらいの悪役っぷりに私は呆然とした。悪役というか、悪役がするようなかおをするものだから、何て反応をすればイイか分からなかった。


(矢っ張り、見間違えじゃなかった?)


 まさか、彼女も転生者じゃないだろうかと思えるぐらいの豹変ぶりに私は彼女を見つめることしか出来ない。でも、それがしゃくに障ったのか、彼女は「何?」とドスのきいた声で私を睨み付けてくる。もう、可愛いさは何処にもない。


「う、ううん。キールってそんなのだったかなあ……って思って」
「私が可笑しいって言いたいの?」
「ち、違う……そうだね。キールはそういうこだった」


と、私は、圧をかけてくるキールに耐えられなくてそう答えた。

 それで、キールは「初めからそうしておけば良いのよ。不遇令嬢が」と悪態をつく。矢っ張り、転生者だよね、と思えるぐらい彼女からキールらしさが感じられない。私が、転生者なんて事はあっちは知らないだろうから、自分に従順な口答えしない都合の良い親友、というように私を見ているのだろう。
 ならば、私も彼女が転生者だと仮定して、私が転生者であるとバレないように振る舞おうと思った。彼女が何を考えているか探るためにも。


「そ、それで、今日は何かあったの? きたいだけっていっていたけど……何かあるんじゃないかな、と思って」
「別に何もないわよ。でも、アンタの顔を見に来てあげたの」
「何のために?」
「どーもね、私の知っている人物がね、私の邪魔をしてこようとしているの。だからね、親友としてお願いしたいことがあって」


 そう言うと、キールはニッと口角を上げた。


「シェリー・アクダクトについて情報を集めて欲しいの♡」


 その顔は、まさに悪女といった感じに歪んでいた。


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