9 / 45
第1章 こんな転生聞いてません!!
08 そういう問題ではありません
しおりを挟む「――――えっと、話をまとめると、僕と君はその『そういう関係』ってことだよね」
「はい、そうです」
「はあ……一体誰が言い出したのだか」
セフレと言うと何だか生々しく感じるため、どちらもそれを口にしなかったし、そもそもその言葉がこちらの世界にあるかどうかも不明だった。だが、その言葉をキャロル様が言うと思うと耐えられないので、私は取り敢えず『そういう関係』である、と濁した。
これ自体やましいことなので、やましい関係ではないと言い切れないし、ふしだらな女だと私は周りから白い目で見られるかも知れない。このことが広まるのも時間の問題だろう。貴族は噂が好きだから。
「それで、君は……アドニスはそれでいいのか?」
「それで、大丈夫です。キャロル様が大丈夫なのであれば」
私が笑って返せば、キャロル様は再度頭が痛いというように額に手を当てていた。
「頭痛いんですか?」
「うーん、君のせいでね」
「わ、私のせいですか!?」
何か不味いことしただろうかと、思い返してみるがこれと言って覚えがなかった。そんな風にあたふたとしていれば、キャロル様は乾いた笑みを零す。
「君は、鈍感なんだね」
「鈍感ですか……? 初めて言われました」
寧ろ、鋭い方だと思っていたんだけど。
目をぱちくりさせれば、キャロル様は大きなため息をついた。ため息をつく姿も絵になるなあ何て馬鹿な事を思っていると、キャロル様は立ち上がって私の方へ歩いてきた。思わず身体が反応してしまう。
(えっと、えっと、何かした!?)
怒ってるのか、何なのかも分からず身構えて居たら、キャロル様は私の隣に座って私を抱きしめてきた。
(えっ、キャロル様?)
突然のことで思考が追いつかず、されるがままになっているとキャロル様は私を離し、真剣な眼差しで見つめてくる。
私は、何を言われるかドキドキしながら待った。
「こんなことになってしまって責任は取ろうと思っている。この間は勝手に呼び出して悪かった。君との初めての夜の時もそうだったけど、君に何度も謝りたかったんだ」
「謝りたかったってそんな、滅相もないです……私がしたくて、しただけのことですから」
いや、今の発言は何だか誤解を生みそうだ。そう思った時には遅くて、キャロル様も目を丸くしていた。
私は慌てて訂正するためにキャロル様から少し距離を取る。
「ああ、えっと、そのひ、人助けっていうことです!その、身体を重ねたい……とか、そう言うんじゃなくて、ただたんに、そのさっきも言ったみたいに、キャロル様のことを思っての行動で」
これで何とかごまかせただろうか。
キャロル様を放置したら本当に死んでしまうかも知れない。そう思ったら、自分の身体のこととかよりも推しであるキャロル様のために尽くしたいと勝手に動いてしまったのだ。だから、キャロル様が負い目を感じることも、何もない。そう私は伝えたかったのだが、キャロル様の顔は暗いままだった。
もしかしたら、こんな言い訳聞きたくなかったのかも知れない。それか、私に失望したか。
どっちにしろ、もともとアドニスは不遇令嬢でキャロル様にも避けられていたし……
そう思っていると、キャロル様は私の手をそっと取って口づけをした。まるで、忠誠を誓うかの様な仕草でどきりと心臓が跳ねる。
「アドニス、君はもっと自分を大切にしてくれ」
「へ?」
「君に酷いことをした自覚はある。でも、嫌なら嫌だって言ってくれ……歯止めが利かなくなるんだ、君を見ていると」
「ええっと、どうしてです?」
「どうしてって、僕は君のことが」
そう言いかけたキャロル様の口を思わず塞いでしまった。
その後、何となく言われる言葉が分かってしまったから。自意識過剰かも知れないし、そんなこと言わないかも知れないけど、もし言われてしまったら……そう思うと、この言葉を言わせるわけにはいかなかった。
もごもごと、口を動かすキャロル様。くすぐったくて、私は手を離してしまった。
「ぷは……アドニス?」
「あ、あの、自意識過剰かも知れませんし、自惚れかも知れないんでけど! 私はそういう関係にはなれません」
「……どうして?」
「きっと、キャロル様にはもっといい人が現われるからです!」
ヒロインとか……
望みは薄いけれど、キャロル様が生きていると言うことはヒロインが攻略できる可能性もあると言うことだ。だから、ヒロインが私の前に立ちふさがったとき、私は何も出来なくなるだろうから。なら今のうちに割り切っていた方がいいと思ったのだ。
恐る恐るキャロル様を見れば、彼は呆然としていて。私はその隙にキャロル様から離れようとした。
だけど、腕を掴まれてしまいそれは叶わなかった。
「アドニス、僕の何処がダメなのか教えて欲しい」
「ダメなところ何てないですから!」
くぅん、と捨てられた子犬のような目で見られたため、直視して目がつぶれかけてしまった。
そんな顔も出来るなんて反則だと、私は歯を食いしばる。
ダメなところが何処か教えて欲しい? そんなの無い。見つけようと思っても一生見つかる気はしなかった。でも、ダメなのだ。何でキャロル様が私に興味を持ったか分からないけれど、シナリオから外れることは決してないだろうから。シェリー様が、皇太子を攻略できなかったように、きっとヒロインハーレムがその内形成されると私は思っている。
キャロル様の一時期の気の迷い。そういう風にして思っておかないと、後々後悔することになりそうだと。
「じゃあ、何で」
「私は、ただの性欲処理係なので。それ以上でもそれ以下でもありません。なので、キャロル様とはお、お付き合いできません」
「…………分かった。なら、僕が君を落とせば良いんだね?」
10
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
【R18】オトメゲームの〈バグ〉令嬢は〈攻略対象外〉貴公子に花街で溺愛される
幽八花あかね・朧星ここね
恋愛
とあるR18乙女ゲーム世界で繰り広げられる、悪役王子×ヒロインのお話と、ヒーロー×悪役令嬢のお話。
ヒロイン編【初恋執着〈悪役王子〉と娼婦に堕ちた魔術師〈ヒロイン〉が結ばれるまで】
学院の卒業パーティーで敵に嵌められ、冤罪をかけられ、娼館に送られた貴族令嬢・アリシア。
彼女の初めての相手として水揚げの儀に現れたのは、最愛の婚約者である王太子・フィリップだった。
「きみが他の男に抱かれるなんて耐えられない」という彼が考えた作戦は、アリシアを王都に帰らせる手配が整うまで、自分が毎晩〝他の男に変身〟して彼女のもとへ通うというもので――?
オトメゲームの呪い(と呼ばれる強制力)を引き起こす精霊を欺くため、攻略対象(騎士様、魔法士様、富豪様、魔王様)のふりをして娼館を訪れる彼に、一線を越えないまま、アリシアは焦らされ愛される。
そんな花街での一週間と、王都に帰った後のすれ違いを乗り越えて。波乱の末に結ばれるふたりのお話。
悪役令嬢編【花街暮らしの〈悪役令嬢〉が〈ヒーロー〉兄騎士様の子を孕むまで】
ゲームのエンディング後、追放され、花街の青楼に身を置いていた転生令嬢シシリーは、実兄騎士のユースタスに初夜を買われる。
逃げようとしても、冷たくしても、彼は諦めずに何度も青楼を訪れて……。
前世の記憶から、兄を受け入れ難い、素直になれない悪役令嬢を、ヒーローが全力の愛で堕とすまで。近親相姦のお話。
★→R18回 ☆→R15回
いろいろいっぱい激しめ・ファンタジーな特殊行為有。なんでもござれの方向けです! ムーンライトノベルズにも掲載しています。朧星ここね名義作
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です!【R18/完全版】
鶴田きち
恋愛
★初恋のスパダリ年上騎士様に貧乏令嬢が溺愛される、ロマンチック・歳の差ラブストーリー♡
★貧乏令嬢のシャーロットは、幼い頃からオリヴァーという騎士に恋をしている。猟犬騎士と呼ばれる彼は公爵で、イケメンで、さらに次期騎士団長として名高い。
ある日シャーロットは、ひょんなことから彼に逆プロポーズしてしまう。オリヴァーはそれを受け入れ、二人は電撃婚約することになる。婚約者となった彼は、シャーロットに甘々で――?!
★R18シーンは第二章の後半からです。その描写がある回はアスタリスク(*)がつきます
★ムーンライトノベルズ様では第二章まで公開中。(旧タイトル『初恋の猟犬騎士様にずっと片想いしていた貧乏令嬢が、逆プロポーズして電撃婚約し、溺愛される話。』)
★エブリスタ様では【エブリスタ版】を公開しています。
★「面白そう」と思われた女神様は、毎日更新していきますので、ぜひ毎日読んで下さい!
その際は、画面下の【お気に入り☆】ボタンをポチッとしておくと便利です。
いつも読んで下さる貴女が大好きです♡応援ありがとうございます!
ドS騎士団長のご奉仕メイドに任命されましたが、私××なんですけど!?
yori
恋愛
*ノーチェブックスさまより書籍化&コミカライズ連載7/5~startしました*
コミカライズは最新話無料ですのでぜひ!
読み終わったらいいね♥もよろしくお願いします!
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
ふりふりのエプロンをつけたメイドになるのが夢だった男爵令嬢エミリア。
王城のメイド試験に受かったはいいけど、処女なのに、性のお世話をする、ご奉仕メイドになってしまった!?
担当する騎士団長は、ある事情があって、専任のご奉仕メイドがついていないらしい……。
だけど普通のメイドよりも、お給金が倍だったので、貧乏な実家のために、いっぱい稼ぎます!!
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる