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第3章 一難去ってまた一難
05 大満足のようで
しおりを挟む「あははっ! 滅茶苦茶ロブロイスッキリした顔してるーウケる~。昨日はお楽しみだったようで、何より」
「ありがとうございました。カーディナル。おかげで楽しい夜を過ごせました」
早朝、調査も終わり家に帰ることになった私達は、何かとお世話になったカーディナルにお礼を言うために彼女の元を訪れていた。
彼女は昨晩あの部屋の近くに屋敷にいなかったはずなのに、全て知っているように見えて魔女には透視能力があるのかと私は、腰をさすりながら彼女を見ていた。
昨日は、想像以上に盛り上がってしまい、最後らへんは意識が無かったと思う。ロイの満足そうな顔が見れてよかったと思うと同時に、ああいうのは小出しにするか、回数を決めないと、ロイが暴走するなあ何て遠い目で私は見ていた。ロイのこと舐めていたかも知れない。正確には、ロイの性欲というか体力に。それは、彼が悪魔とのクオーターだから、っていうのも関係しそうだけど。
(……はあ、でもこれでロイに飽きられずにすむかな)
そう思って、お世話になったカーディナルの方を見れば、彼女と目が合った。彼女は、何だか嬉しそうに、私の方に近付いてきて、何か吟味するように顎に手を当てじっと顔を覗いてきた。
「うん、うん。シェリーちゃんも何倍も魅力的になってる。これは、シェリーちゃんを私が貰うしかないかな」
「え、え?」
「だって、ロブロイには勿体ないほど魅力的じゃない。どう? アタシは、どっちでもいけるけど」
と、冗談交じりにそう言われ私は赤面する。
冗談なんだろうなっていうのは分かったけれど、こんなに綺麗で、それこそ魅力的な女性に言い寄られたら女性の私でも頷いてしまいそうになる。浮気だ! と、頭では訴えているけど、それでも、目が離せなくなった。さすがは魔女。
しかし、ロイがすかさずぴしゃりとダメです。とカーディナルに言った。ロイは私を抱き寄せて、牽制するように彼女を睨む。そこまでしなくても、と思ったが、口に出してあとからロイが拗ねたら怖いので何も言わずにいた。そんな私達を見て、カーディナルは、一瞬だけ目を丸くしたがすぐに腹を抱えて笑出す。
「あーあ~、ロブロイ。嫉妬深い男は嫌われるよ」
「……」
その言葉に何故だか私も、ロイと同じくビクッと肩が跳ねる。
確かに、最近ロイは少し束縛気味になっている気もするが、私にはロイしかいないのだから束縛すらも愛だと感じられる。そんな思考になってしまっている私はもう完全にロイの虜なのだ。
ロイは、図星だったようで、少し腕の力が緩んだ気がする。彼は、私を傷つけたくないと、嫌われたくないと言った。だから、嫉妬深い男と言われて、私に嫌われるのを恐れたのだろう。分かりやすくて助かる。そう思いつつも、嫉妬深くても、欲深くても良いよ、と私は彼の手を握ってあげる。
それを見てか、カーディナルは満面の笑みを浮べた。
「まっ、いいや。またいつでもおいで~アタシはいつでも大歓迎だよ」
「あ、ありがとうございます」
「……カーディナルであっても、シェリー様は渡さないので」
と、ロイは再び私の肩を抱き寄せてそう宣言する。その言葉にカーディナルはニヤリと笑みを浮かべた。
でもその笑みは何だか、息子が独り立ちを決意し、それを受け入れた母親のようにも見えた。少し寂しいというそんな気持ちが伝わってきた。
「あ、あの、本当にありがとうございました!」
「良いって。これからも、末永くお幸せに」
と、カーディナルはウィンクする。
守護者である魔女にそんなことを言われちゃあ、幸せにならないわけがないだろうと、何だか祝福を貰った気がして、私は心が温かくなった。初めこそ、嫉妬してごめんなさいって謝りたくなるぐらいに。でも、彼女のおかげで、ロイとこれからも上手くやっていけそうと希望がもてた。
そうして、カーディナルに別れを告げて、私たちは馬車に乗り込む。小さくなっていくカーディナルに手を振りながら私は、また来ます。と彼女に伝えロイと向き合った。
「調査も無事すんで良かったね。まさか、ロイの許嫁が魔女だったなんて」
「はい。何も言わずにすみませんでした」
「ううん、いいの。目標も出来たし」
「目標?」
ロイはこてんと首を傾げた。
今回の調査というのは、魔女狩り、悪魔狩りが巷で噂され貴重な戦力である魔女、カーディナルが暗殺されるのではないか、また既に衰え死んでしまったのではないかと、生死の確認のためにここまで来ていたのだ。それがまさか、ロイの許嫁だったなんて。今でもこんな偶然ってあるんだ……と感心している。
そして、私はカーディナルのことを頭に浮べながら彼女のような魅力的な女性になろうと決心した。
「今回もまた、シェリー様の魅力を改めて実感しました」
「そ、そう?」
「はい、シェリー様はとても魅力的ですよ。誰よりも魅力的で、美しい」
ロイは私の頬に触れ、愛おしそうな瞳を向ける。
それは、私のことを愛しているという感情が込められていた。それに、私は照れて視線を逸らすとロイはクスっと笑い私の耳元に唇を寄せてくる。
私は思わず、ピクリと反応してしまう。
「俺がもっとシェリー様の魅力を引き出して上げますからね。だから、また昨夜のように俺を誘惑してください」
「……ッ! き、気が向いたらね!」
「はい。俺はいつでも待ってますから」
私は、恥ずかしくてロイの顔を見れずにいた。きっと今頃ロイは嬉しそうに微笑んでいるに違いない。
でも、あんな恥ずかしいのは、当分したくないなあと思った。だって、本当に恥ずかしかったから。今思い出しても、あんな大胆に、積極的にロイを誘って。今更ながら、ロイが年下だったことを思い出して、私はさらに恥ずかしくなった。これじゃあ、いけない女なんじゃないかと。カーディナルに唆されたって、思い始めて複雑だった。ロイもそれを怪訝していたんだろう。
何はともあれ、ロイもロイで昨晩の事で味を占めちゃったかもだし、これからも飽きさせないように頑張らないとと思った。
「シェリー様?」
「あ、ううん。何でもないの」
「顔が赤いですが、大丈夫ですか?」
と、心配されてしまい、私は全身で大丈夫だと伝える。それがオーバーだったのか、ロイは揺れる馬車の中立ち上がり、私の横に座った。そして、抱き寄せて、私の頭を撫でる。
「昨晩は無理させてしまったので、公爵邸につくまで休んでいてください。貴方が眠っている間、俺が見張っているので、安心してください」
「う、うん。ありがとう」
ロイには敵わないなあ、と思いながらそれでも年下にこんなに心配されて、本当に私にはロイしか居ないのだと自覚させられてしまう。
そうこう考えているうちに、うとうとと睡魔が襲ってきて、私は夢の中へ潜り込む。
これからもずっとロイと一緒にいれれば良いなと思いながら、そろそろ結婚式のことを本気で考えようと思うのであった。
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