一年後に死ぬ予定の悪役令嬢は、呪われた皇太子と番になる

兎束作哉

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第3部4章

04 初夜◇

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 結婚式を挙げたその夜に、初夜を――避妊魔法が解除され、私は陛下のまつ寝室へと通された。
 寝室はいつも以上に清潔感が増しており、ウエディングドレスのようなシミ一つしわ一つないシーツに、花瓶に花が添えられていて、準備万端! セッティングしましたからどうぞ! という使用人たちの気合が伝わってくるベッドメイキングがされていた。そこに、バスローブ姿の陛下の姿があり、彼はベッドに腰を掛けずに立って待っていたようだった。


「へい……アイン」
「来たか、ロルベーア」


 薄暗い部屋の中で光る夕焼けの瞳。しんなりとした真紅の髪に、バスローブから覗く鍛えられていると一目でわかる肉体。もう見慣れているくせに、何度だってときめいてしまうのは、もう病気だろう。
 私もまたバスローブの下には何も着ていない。かわいいネグリジェとか、質素ながらも高級感のある下着とかいろいろ考えてはいたのだが、そんなもの必要ないです! と、これまたメイドたちに押される形でバスローブ一枚で送り出されてしまった。どうせ貴方たちは、性行為に及ぶんでしょう? と言われているようで恥ずかしい。まあ、すでに何度も体を重ねているので、こんな日に体を重ねないわけもないと思われているのかもしれない。また、これは夫婦となって初めての夜……愛を確かめ合う日々の性行為とは意味が違うのだ。避妊魔法が解除された初めての夜でもある。


(陛下が、子供を望んでくれているんだから、いいじゃない。何かが変わるわけじゃないのよ!)


 何かが変わるわけじゃないとわかっていても、特別な意味を持つというだけで緊張してしまうのは仕方がないことだ。


「何だ、緊張しているのか?」
「うるさいです」
「ひどいな。夫婦となってのはじめての夜に、パートナーにそんなことを言われるなんて、心外だ」


 と、陛下は肩をすくめてやれやれと首を横に振る。
 陛下は余裕そうで、それがちょっとムカッときた。陛下にとってはいつもの夜で、緊張もしなければ特別感もないのかもしれない。私もそう思えればいいのだが、変に意識してしまうともう駄目だった。


(でも、まあ、その、理解はしているのよね……陛下も)


 夫婦となって、と言っているところを見ると、いつもとは違うことくらいは陛下もわかっているらしい。彼が、ロマンチストではないことは知っているし、こういう時にムードを作れない男であることもよく知っている。別に、ロマンチストであってほしいわけでも、ムードを作ってほしいわけでもない。ただ、彼の手のひらの上で転がされているような感覚は好きじゃないのだ。
 かといって、こちらが主導権を握って、バリバリ彼を……とも思わない。


(あのお風呂場での一件は楽しかったけれどね……)


 この話をしたらまた陛下に弄られるからしないが、あの時得た高揚感というか、陛下が自分の手で乱れる感覚というのはまた味わいたいとは思っている。以前、彼のあれを舐めて攻め立てたことはあったが、結局は形勢逆転され流されてしまったが、多分あの時から陛下を自分の手で! とは思っていたのだろう。そこまでしてリードしたいとは思わないけれど、でも――


(私にかき乱される陛下の顔は、とっても素敵だと思うのよね)


 言ったら倍返しされそうだからこれも言わないけれど。


「アインには、特別感がないんですか? 私たちが夫婦になってのはじめての夜なんですよ」
「いつものように体を重ねているからな……」
「アイン!」
「冗談だ。避妊魔法が解除され、そして俺たちが夫婦になった初めての夜だ。俺もこう見えてかなり興奮しているし、緊張している」


 そういって、陛下は自分の胸に私の手を持ってきてどうだ? とたずねてきた。確かに、彼の心臓の鼓動は早い。以前も同じようなことをされたが、彼も顔に出ないタイプなのだろうか。
 私だけじゃないということがわかり安心し、とりあえずは謝罪した。
 それから、二人でベッドサイドに腰かけ、お酒で乾杯する。すぐにも行為に及んでもよかったのだが、ムードを作れない代わりに私がムードを作ろうとやけになった結果、回りくどい方法をとることになった。それに対し、陛下は何も言わなかったし、それが楽しいとでも言わんばかりに頬をほころばせていたので、私もうれしくなった。こうやって、ゆっくりと解けるように夜を過ごすのもいいと思ったからだ。
 しかし、お酒が入るとポヤポヤとし始め、一層大好きな彼の顔がかっこよく見えてしまい、自分からキスをねだるのも恥ずかしく、こん、と彼の肩に頭をぶつける。


「これだけで酔ったのか?」
「少し度数がきついんです! いつもなら、こんなことには……」
「そうだな。だが、酒に酔って暴れたこともあったからな。あまり信用できん」
「ひどくないですか!? もう、一年前以上の話ですよ!」
「ははっ、ロルベーアのことならなんでも覚えている。特に、お前が積極的になった時のことは……印象に残るものだろ?」


 と、彼は意地悪そうに笑っていた。でも、愛おしそうに私を見て頬を撫でるから許してしまう。私も対外この人に弱い。いや、自覚的にこの人になら何をされても許せるし、怒れないと思ってしまうのだ。
 それが陛下に伝わっていればいいと常に思う。
 それからしばらく見つめあっていれば、それがキスの合図だというように私たちは互いの頬に手を当て、引き寄せられるように唇を重ねる。ほんのり甘いお酒の匂いが鼻腔を抜け、うっすらと開いた唇を割って彼の舌が入ってくる。いつもは激しいのに、ねっとりと歯を一本一本なぞるようなキスにぞわぞわと背筋がくすぐったくなる。上あごをなぞり、そして舌の上をなぞるように舐める。お互いの唾液を交換しあうようなキスに変わり、そうして離れていった陛下の唇と私の唇の間に銀色の糸が伸びて、ぷつんと切れる。
 これだけのキスでも頭も心も彼でいっぱいになってしまうのに、でももっと彼に酔いたいと、感じたいと、私は彼のバスローブにてをかけ、彼の鎖骨に、たくましい胸筋にキスを落とす。


「痕はつけないのか?」
「つけてもいいんですか?」
「大歓迎だ。だが、ロルベーアにできるか?」


 と、また彼は挑発的に笑うので、私は彼の襟をぐっとつかんで、彼の首筋に吸い付いた。確かにうまく吸えなくて、ちゅ、ちゅぷっ、と情けない音を立ててしまったが、その後うまく彼の皮膚を吸い上げ、真紅の髪の下に赤い花を咲かせることができた。


「どうです? 私にだって、これくらい……きゃああっ!?」
「合格点だ。たどたどしくてくすぐったかったが、かわいくて許せる」
「それって、合格って言わないです! あ、ああっ」


 手本を見せるといわんばかりに、彼は私の首筋に吸い付きキスマークを付ける。執着の塊である彼は、それだけでは終わらず、鎖骨に、胸の上にと体が真っ赤になるくらい痕をつけていく。しばらくは、露出の少ないドレスを着なければ恥ずかしいくらい彼に埋め尽くされてしまった。


「戯れもこれくらいにするか。夜が明けてしまう」
「……い、ですよ。朝まで」
「そのつもりだが?」
「ひっ、あの、アイン?」
「何だ?」
「その……ですね、初夜は、優しくするものなんです。あと、ほんとーは! アインをリードしたくて、アインをヒンヒン言わせたいんですけど、今日はアインの好きなように……優しく抱いてください」
「ハッ、優しくなのか、好きなようになのかどっちかにしてくれ。どっちもはかなえてやれないぞ?」
「初夜ということをお忘れなく」
「もう、何度もしているだろう。それに、ロルベーアは激しいのが好きだろ?」
「……」
「大事に抱く。大切な俺の妻のことを」


 そういって、彼は私を押し倒した。額にちゅっと優しい音を立てて、彼はバスローブの紐をゆっくりとほどくと、私の胸を再度から持ち上げるように揉み始めた。彼の大きな手が私の胸に沈んでいく。大きくなったその胸は、彼の指の隙間からはみ出していた。


「大きくなったな……」
「そんな真剣に言わないでください。誰のせいだと……」
「俺のせいだな」


 クスリと笑って、彼は谷間に顔を埋める。ふう、と温かい息を吹きかけられびくっと体が跳ねてしまう。そして、胸の頂上には触れずに、まわりにぐるぐると円を描くように舌を這わせたり、やわやわと乳房を揉みしだく。それを何度も何度も繰り返すものだからじれったい快感にあえぎ声が漏れ始める。


「ぅあっ……やっ……」


 もっと直接的な刺激が欲しい。そう思っていれば、彼はピンと指の先で、先端を弾く。その刺激に私の体はわなないた。


「あ、ぁあっ」
「敏感だな」


 陛下は嬉しそうにそういうと、片手で私の胸を弄りつつ、かぱっと開いた口の中に先端を含んで口の中で転がし始めた。彼の分厚い舌が、私の胸を這いずり回る。彼の歯が少し強めに噛む刺激も、ちゅううううっと思いきり吸い付かれれたときに内側から押し上げられるような刺激も、耐えられるものではなくあっけなく絶頂を迎えてしまう。胸だけで達してしまうなんて……と呼吸を整えながら彼を見れば、これまた糸を引きながら彼の口が胸から離れていく。てらてらと光る胸を見て、卑猥だ! と羞恥心にかられるが、その先ももちろん望んでしまう。
 彼が早くほしいのだ。


「あい、ん、もういいから……下も、触って」
「素直だな。そういうところも愛おしい」


 お腹の上をすべるようにゆっくりと指を這わしながら、彼は私の割れ目にぴたりと指をあてる。すでに濡れていて彼を今すぐに受け入れたいと素直なそこは、ひくひくと動き彼を誘った。
 しかし彼はそこをつぅとなぞるだけで、その指を入れてくれることはなかった。だが、私の体はそんな微々たる刺激にも震わせ喜んでしまう。陛下は割れ目を何度も往復し、あふれ出た蜜を指に絡めては手をはなす。そんなことを繰り返していた。私の反応を楽しんでいるのは容易に想像ができ、じれったい。


「んん、ああっ」
「まだ触ってもいないぞ?」


 と、彼はくすくすと笑う。
 気持ちいいとバレるのは恥ずかしいことだった。自分があさましい女になったような、淫乱になったような気分であまり好きな感情ではない。それでも、彼に暴かれるうちに、彼になら暴かれて、そして彼に気づいてほしいとも思うようになった。もちろん、気持ちいいなんていうのは今でも恥ずかしい。けれど、それに彼が興奮し、愛してくれるならと、私は閉じていた太ももをゆっくりと左右に開く。


「じれったい、早く、触って……貴方が欲しいの」
「積極的だな。ロルベーア……」


 満ち足りた声色でそうささやかれ、キスをされながら私は下を彼の指で弄られていく。すでにしっとりと濡れたそこは、彼の指を簡単に飲み込み、そして中はもっととせがむように締め付けてしまう。


「ああっ、ん」
「ロルベーア……かわいい」
「あっ、あんんっ!」


 くちゅくちゅと水音を立てながらも、彼は私の中を優しくほぐす様に指を動かす。その指が私の気持ちのいいところをかすめるたびに体が跳ねて、腰を振ってしまう。もっとそこを弄ってほしいのに、彼は私の中をいじるだけで激しくはしてくれない。もどかしくて私はキスをねだるように彼にしがみつくと、彼も応えてくれたのか舌を絡めてキスをしてくれた。その間も彼の指は中に入ったままで、時折びくりと指が跳ねるように動くのでそれに合わせて私の体も震えた。


「ああっ! ん……んっ」


 彼がいつも攻める場所を重点的に責められながらも達するまでの刺激にはならない。大切にする、優しく抱くと宣言し、それを律儀に守る最高の男がそこにいるだけだった。
 けれど私は欲張りで、めんどくさい女だからそれじゃあ足りないと思ってしまう。
 もっと激しく求めてほしい。自分がムードが、とか、初夜が、とか言ったのがばかばかしく、枷になっていることに気づき、私は快感にふるえる腕を陛下の首に回し、荒んだ息を整える余裕もなく彼の耳元でささやいた。


「ありがとう、もういいわ。好きにして、アイン」
「ハッ、ハハッ、本当に、ロルベーアは最高な女だな」


 ぬぽんっと指を引き抜いて、陛下は私の肩を押さえつける。少し強引に、痛いくらいに。見上げれば、ぎらついた瞳で私を見下ろす陛下の双眼があった。長い真紅のカーテンが揺れ、陛下は、はあ……と熱っぽい吐息をこぼす。


「後悔するなよ?」
「二言はありません。私の要望に応えてくれたんですから、今度は私が貴方の要望に応えたい」
「お前が激しくされたいだけだろ、ロルベーア」
「アインだって、私を無茶苦茶にしたいって顔してます」
「そうだ。よくわかったな」


 と、彼は己のそれを私の秘部にこすり付ける。何度も私を泣かせてきた大きなそれが、厭らしい音を立てながら私に快感を植え付けていく。抱かれるたび上書きされるような感覚に、私の体は従順になりもっともっととせがむように腰を浮かせてしまっていた。


「やらしいな。もっと、俺に乱されてくれ、ロルベーア」
「んん……ああっ!」


 ぐぷ、と陛下は熱く固いそれを私の中へと埋める。何度受け入れても圧迫感のあるそれが、ミチミチと肉を割って中へと入り込んでくる。快感で脳が支配され、体の奥深くまで暴かれるような感覚に襲われて、私は彼のものを締め付けた。彼も私の腰を掴みながら吐息をこぼす。
 そして彼はゆっくりと腰を動かしていく。それはもう馴染むほど何度もした行為だからわかっているはずなのに、彼が腰を打ち付けるたび、初めての感覚というように腰がはねる。ゆっくりだったのがだんだん激しくなり、私の腰を掴む陛下の手にも力が入っていく。自分の側に引き寄せて、奥を穿つように何度も何度も私の子宮口まで突き上げる。


「ああっ、ア……んあっ!」
「ロルベーア、かわいいな。愛おしさで、爆発するっ」


 そういうと彼は体を倒し、また私へキスをする。体制が変わったことで当たる部分も変わり私は声にならない声を上げたが、すぐにその声ごと彼に飲み込まれた。舌をからませながら彼のものが何度も出し入れされ、そのたびに中はきゅうきゅうと締め付けてしまう。


「ん……んんっ、ひ、あ、あ、あ、ああっ!」
「ロルベーア……」
「はあっ、アインっ」


 キスの合間に名前を呼び合う。そしてまた深く口づけをされると同時に彼のものが私の中で弾けた。ドクドクと脈打つそれに私はまた達し、陛下も何度か腰を打ちつけながら私の中に欲を吐き出す。その感覚でさえも気持ちよくて、私は体を震わせる。彼はそれを出し切るまで私の中をこすり続けた。


「ああ……んっ、ア……アインっ」
「まだだ。まだ満足しない」
「朝まで付き合うって言いました。貴方をもっとください」
「ああ、もらってくれ。俺を……受け止めてくれ、ロルベーア」
「言われなくても、貴方のすべてを受け止めますよ」


 彼は私の頬に手を添えてまたキスをする。私は彼の首に手を回し、そのキスを受け入れながら、再び始まった行為に身を委ねる。
 行為中、体制を何度も変えたが、今日は一段と密着したものが多いというふうに感じた。バックからのほうが奥に突き刺さるのに、彼はそれをしなかった。膝の上にのせて下から突きさしたり、対面座位だったり、彼は本当に私を気遣った。いや、離れたくないというようにわざわざそれを選んでいたようにも思う。
 それでも彼は時折意地悪で私の中を乱暴にかき乱し、何度も何度も絶頂を味あわされた。強すぎる快楽は苦痛にも等しいのに、陛下によって刻み込まれた体はもっともっとと求めてしまうのだ。


「あっ、ああっ」
「ロルベーア……っ」


 もう何回目かもわからないほど私は達して、そのたびに彼のものを締め付ける。彼もまた何度も私の中に欲を吐き出したがその勢いは衰えなかった。一夜で孕まされてしまいそうな勢いで。もしかしたら、それが目的だったのかもしれない。


「貴方が、好き、っ、アイン、アインっ、ずっと、これからも」
「ああ、俺も、お前が好きだ。ロルベーアっ、これからも、ずっと」


 絶頂のタイミングでのキスは比べ物にならないほどの快感を得れた。こぼれた唾液まで彼は舐めとって、ねじ込んで。私が最後の一滴まで絞ろうとしなくても、彼は自ら最後の一滴まで私に注ぎ込んだ。
 互いに疲れ果て、ベッドに沈み込むころには太陽の部屋に差し込み、乱れ、二人の匂いに包まれた部屋に朝の光が甚割と広がっていった。夜が明けたことに気づかないほど、私たちは互いを求めあい、貪りあい、愛し合った。彼は散々愛し合ったのに、私を放してくれず、私は彼の匂いに包まれる。途端、襲ってきた眠気に瞼を閉じ、彼の匂いに包まれながら夢の中に意識を落としたのだった。
 最高の夜を、そして最愛の人と朝を迎えた。そんな人生で忘れない初夜になっただろうと、私は彼の胸の中でふふ、と笑みをこぼした。

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