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第2部2章 フラグが次々立つ野外研修
06 緊急事態
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(食人植物か、厄介だなあ……)
一度、過去に戦ったことはあるがここまで大きな食人植物の魔物は見たことがない。魔物か、魔法植物かで分類が難しいところだが、敵意を持って襲ってくる場合は魔物とみてまず間違いない。
しかも、発達した触手のようなツタに、あのグロテスクな歯……見ているだけでも身震いする。
こいつも、俺たちの魔力に誘われてやってきたパータンか。セシルの魔力は離れていっているような感覚がする。どこに向かっているかは不明だが、これ以上はなれられると合流できなくなるかもしれない。
(この魔物の面倒なところは、再生能力……火の魔法がつかればいいけど、得意じゃないし。でも――)
「魔法なら任せてください、ニーくん」
「アルチュール?」
「そうだぜ。ニル。お前、あいつがみてないからって魔法使おうとしただろ? やめとけ。俺たちに甘えてろ」
「あはは、心強いなあ、ほんと。でも、魔法がなくとも倒せるよ。ちょっと、面倒だけど。さっき二人とセシルに任せっぱなしだったからね、ここは一人で――」
二人を下がらせ、地面を蹴って駆ける。
食人植物の魔物はグォオアォオォォとよくわからない奇声で威嚇し、その触手を俺にめがけて伸ばしてくる。俺は、それらをよけ、急所に当たりそうな部分だけは剣ではじいた。しかし、切り落とすことはできても再生は早い。それに、一つ一つの攻撃もやはり重量があって、素早い。
前に戦ったものとは比べ物にならないほどの強敵。だが、以前戦った魔物も、大きくなればそれほどの力を持つようになるんじゃないかとも思った。育てば、食人植物の魔物なんていくらでも強くなる。
(へえ、一筋縄ではいかない……ね)
かといって、しり込みするわけでもなく、むしろそれが楽しく思えた。
俺はあの大会で、セシルとゼラフが戦ったあの場には立てなかった。もし、俺がセシルに勝ったとして、ゼラフと十分に戦えたのかと思う日もあった。でも、今ならわかる気がする。
強敵を目の前にすると、しり込みじゃなくて、こんな強敵と戦えるんだっていう興奮する。その緊張から得られる高揚……それらがいい具合にマッチして、俺をさらなる高みへと押し上げる。
二人の助けなんていらない。俺一人でいい。俺にやらせてほしい。
戦いたい、今はこの剣をふるって――
長い触手は地面をえぐるように叩きつけられ、浪打ち、俺に襲い掛かる。だが、俺はタッと軽く飛び跳ねてその触手の上に乗る。そして、その不安定な職種の上を駆けあがり、さらに飛躍する。触手が俺を上へ押し上げたこともあって簡単に魔物の上をとることができた。
魔物は顔を上げ、無数の細かい歯の見える大きな口を開いていた。俺はその巨大な口めがけて剣をつきたてようとした。急所はそこだ。他の場所はいくら切っても再生する。核となるのは、花の中心部分。そこに剣を突き立て、抉り取ればこの魔物は絶滅する。以前の実戦経験が生きる。
だが、魔物もバカではないので、必死に無数の触手を伸ばし、そのすべてが俺をとらえようと狙いをすましていた。
しかし、こちらのほうが早い。
落下速度を利用し、俺は狙いを定めてそのまま剣を魔物に突き刺した。剣は、魔物の口の中に入り、その中にあった黄色い花粉の塊を破裂させる。これが、こいつの核だ。
ガアアアアア! と、ビリビリと空気が震えるほどの大きな悲鳴を上げてこれまた紫色の液体をまき散らす。剣は確実に急所をとらえ、その体は再生することはなかった。あれだけ俺をしつこく追い回していた触手も力を失い、だらんと地面に横たわる。
俺は、頬についた魔物の体液をぬぐいながら、魔物の身体から降りた。魔物は絶命したが、まだぴくぴくと体が動いている。これは、虫が死んだあと動いている現象と変わらない。
俺は、剣を横にふるってから鞘にしまる。やはり、俺の剣はかなり切れ味がいい。というか、オーダーメイドなだけあって、俺の手にも、戦い方にもフィットする。大切に使わなきゃな、と俺は、優しく柄を撫でる。きらりと、俺に応えるように剣が光った気がした。
もう少し手こずるかと思ったが、この程度か。まあ、楽しめたには楽しめたが……
「ニーくん」
「ニル!」
「あっ、二人とも、大丈夫だった――って、おわ」
ドンと、ぶつかるように抱き着かれ、俺はそのまま後ろへ倒れた。
頭を軽くぶったが、それ以外に痛みはなく、顔を上げればよかったとほっとしている二人の顔がある。俺のこと、強いとか言いながら心配してたのか……と、ふてくされそうになったが、それでも心配してくれる二人に俺は温かい気持ちになる。セシルにはよく心配されるけど、周りの大人に心配されたことはなかった。
あの騎士団長の息子だから、これくらいなんてことないだろうとのこと。
それがとても嫌で、俺を俺として見てくれない周りの大人には飽き飽きしていた。でも、この学園で俺を見てくれる人に出会えて、俺は幸せだ。それはきっと、セシルも同じことを思っている。
「もう、大袈裟。俺だってこれくらい倒せるよ」
「わかっていたんですけど、ハラハラさせる戦い方をするので。ニーくんは、本当に針に糸を通すような戦い方を得意とするんですね」
「どうだろ。でも、確かにそういう戦い方かも。今回の場合は、急所が分かっていたし……うん」
「ハッ、お前ならやると思ってたぜ、ニル。お前と、あの大会で戦えなかったのは本当に残念でならねえな」
「はは……それは、俺が一番よくわかってる。でも、あのときも仕方なかったんだって」
アイネが襲われて、俺はそれを助けるために禁じ手を使った。その魔法を使った反動で、俺は……
ゼラフにそういってもらえるということは、実力を認めてもらえたということで。俺だって、あの日ゼラフと戦いたいとは思っていた。もちろん、セシルもだが。決勝戦に上がってくるのがゼラフだとわかっていた以上、絶対に勝つと意気込んでいたのに。
過去のことをどうこう言っても仕方がない。俺は、今目の前のやるべきことをやろうと、二人に俺の上から退いてもらうよう言って立ち上がる。パンパンと服についた土を払いながら、俺はもう一度セシルの居場所を確認する。先ほどの場所から動いていないようだ。
この魔法はどこにいるかという位置情報はわかるが、どんな状況かはわからない。動いていないということは休息をとっているか、あるいは負傷して倒れているかの二択。後者でないことを祈るがなんとも。
俺は、二人を先導しながら歩く。先ほどの戦いでの体力の消耗は、自分でも思った以上に少なかった。だから、まだ歩ける。
二人の前で倒れるなんて恥ずかしいことはしない。
そんなことを考えながら歩いていると、また足元に違和感を覚えた。さすがに、先ほどのような大きさの食人植物の魔物ではないが、何か妙だった。
来る――と思い、剣を引き抜けば、地面から出てきたのは赤黒いぐにょぐにょした生き物だった。
見たことのない形状で、先ほどの魔物に付属していた触手のようにも見えたが、それよりもグロテスクで、それ自体に意思があるようにも思えた。俺は反応に遅れつつも、それらを切り裂いたが、それはすぐに再生し、俺の身体に巻き付いた。
「んなっ、に、これ……うわぁっ、ぬるぬるして、きもち、わる」
「――おい、ニル! 今すぐそいつら引きはがせ。死ぬぞ!」
「は? 死ぬって……っ!?」
ゼラフの足元にも、同じようなものがうめいており、俺はそれを伝えるため叫んだ。だが、ゼラフはそんなことお見通しのようにそいつを足で踏みつぶす。彼の足元に魔法陣が現れたからきっと魔法で殺したのだろ。見えなかったが、無詠唱ではなかった。そこにはほっとする。
だが、俺の身体に巻き付いたグロテスクな物体は、俺の身体を這うようにして上ってくる。
てか、死ぬってなんだ?
ゼラフは何をそんな必死になって俺に叫んでいる?
とにかく、俺はこの気持ち悪いやつを引きはがすために必死につかむが、掴めばつかむほど、掌にくっついて体がぬめる。それに、なんだか吸われているような気もするのだ。
「……は、これ、ヒル?」
ようやくそこで、これの正体について分かったような気がした。じゅ、じゅぅっと俺の血を吸っている……いや、血を吸われている感覚はない。だが、何かを吸っているのだ。何かが分からなくて気持ち悪さはあるし、血を吸われているわけでもないのに、頭が痛いし気持ちが悪い。一瞬だけ視界が反転した気がした。
だが、血出なければ無害では? と思ったが、一応引きはがしたほうがいいだろうともがく。だが一向に俺から離れてくれない。ぬっ、ぬっと、地面から這い出てきた他の個体も俺のほうへとにじり寄ってくる。目も鼻もないただのぶよぶよとした物体。それには変わりがないのに、量が多いと気持ち悪いし何よりも……
「クソ、離れろよっ……か、っ」
そのヒルたちは、俺が引きはがそうとすると俺から離れるどころか体を擦りつけるようにしてきた。ぬめっているので気持ちが悪いし気味が悪い。
「ニーくん目を瞑っておいてください!」
と、アルチュールの声が響き、俺はその指示に従う。すると、カッと目の前が光り、次に目を開けたときには俺の身体にまとわりついていたヒルたちは跡形もなく消えてなくなっていた。
「今の魔法?」
「火の魔法の応用です。光だけで蒸発させたんです。ニーくん、本当に大丈夫ですか?」
「え、ああ、うん。何とも……え?」
不意に足に力が入らなくなり俺は前のめりに倒れる。そんな俺を抱き留めてくれたのはゼラフだった。
「おい、ニル!」
「え、ぜら、なん……」
声がうまく出ない。というか、寒い。
指先も、足の先も凍えるように冷たい。吐く息も白くなって、呼吸が浅くなる。心臓部分がぎゅっと圧迫されるような痛みが継続的にやってくる。
(寒い、寒い、寒い、寒い、寒い――ッ! 痛い、いたい…………これ……て)
俺はそこで気付くことができた。あのヒルが吸っていたものが何なのか。
あの時の感覚と一緒だ。俺があの時使った魔法の反動。でも、あれよりも酷い。
俺は、温もりを求めるようにゼラフにしがみついて、彼の服をきゅっと引っ張る。とにかく、寒くて凍え死にそうだった。だが、ただ温めてもらうだけでは、俺のこれは解消されないだろう。なぜなら、これは魔力不足だからだ。
「ニーくんッ!」
「……あのヒルの魔物は、ニルの魔力を吸ってたんだよ。テメェも気づいてただろ、王太子」
「はい……ニーくんの魔力を狙っていたんでしょうね。このままでは、ニーくんは」
「わかってんだよ、そんなことは」
二人が俺の頭の上で会話をしている。だが、それも水の底に入ったようにうまく聞こえなかった。膜が張っているみたいで聞こえずらい。
心臓がひどく痛み、肺も酸素がないと悲鳴を上げていた。頭もガンガンにいたいし、唇もカタカタと震えている。なのに、目玉はやけどしそうなほど熱くて、飛び出しそうだった。目を開けているのもやっと。言葉なんて俺の口から出やしない。
状況はわかったが、どうしようもない。
それに、未だに魔力が漏れ続けている感覚がするのだ。
またすぐそこまで迫っている死神の鎌に俺の身体は恐怖で震える。何で俺ばっかりこんな目に合わなきゃいけないんだと文句を言いたい。でも、そんな文句を言えるような気力もなかった。
死にキャラだからだろうか。
あんな小さなヒルに油断したばかりに、俺は。まだまだ、警戒心が低すぎる。鍛錬も、何もかも。自身の弱さを痛感して涙が出てくる。死にかけている、死ぬのだろうか。頭にはそればかりが浮かんでは消えて、また濃くはっきりと浮かんでくる。
震えて、寒くて、誰かに温めてほしい。
(セシル……せしる……)
こんな時に頭に浮かぶのは愛しい人の顔で、彼を求めて体が動こうとする。しかし、それはゼラフによって押さえつけられてしまった。
「ぜら、なに……」
「あまり動くな、それ以上魔力が外に出てったら、本当に死ぬぞ。死にたいのか?」
「死にたくない、しにたい、わけが、ない……」
かすれかすれに声が漏れる。それは息を吐いているだけのようにも思えた。
じゃあ、どうすればいいんだと俺はゼラフを見るが、ゼラフは何かを決意したように、俺の顎を掴んだ。何をするんだ、と俺は精一杯目を見開いて、ゼラフのほうを見る。ローズクォーツの瞳と目があって、俺は呼吸が止まりそうになる。こんな時に、キレイだ、なんて思ってバカみたいだ。
「いいんですか。もし、魔力があわなかったら。それこそ、血管が破裂して、ニーくんは死にますよ」
「大丈夫だ、こいつとは波長が合う。テメェよりも半年こいつと長くいるからな。だが、アルチュール、テメェの魔力はダメだ。ニルとは合わない」
「……なぜわかるんです?」
「そもそも、国がちげえだろ。確実を選ぶなら、俺だ」
と、ゼラフは言うと俺に唇を近づけてくる。
ゼラフがキスを、何で? と、それだけが頭の中を回って、反射的に俺は、思わずそれを拒んで、ゼラフの口を手でふさいだ。プルプルと震えて情けない手が目に映る。
そこは、セシルにしか許していない。セシルじゃなきゃ嫌だ。
「いや……せしる、じゃない……だめ」
「はあ…………んなこと言ってる場合か? ここに、あいつはいねえ。死ぬか、俺に魔力供給されるか選べ。選ばせてやる」
「…………まりょく、きょうきゅ……う?」
「前に説明しただろうが。性行為は魔力を分け与えるのにうってつけだって、キスもそれができるってな。んで? ちんたらしてる間に、テメェの魔力は抜けてすっからかんになって死ぬぞ」
どうする? と、ローズクォーツの瞳は俺を射抜く。
ああ、そんなことを言っていた気がする。いつだったか思い出せないけど。
そうか、これは魔力供給なんだ。セシル以外に唇を許すつもりはないが、緊急事態だ。そんなことで、意地を張って無様に死ぬつもりはない。ゼラフは、俺に選択肢を与えてくれている。死ぬか、魔力供給をするか。
(そんなことじゃ、ないけど……)
俺にとってはそんなことじゃない。意地を張るのもわかってほしい。
それが意味するのが性愛や、恋愛じゃないことが分かっていても、それでも心が拒んでしまう。バカな恋愛脳だと、俯瞰してみて俺は自分自身を笑う。笑うけど、笑えない。
俺は、「熱」とだけ口にして目を閉じる。目を閉じれば一瞬で終わるだろうと、後はゼラフに任せた。
もう一度、俺の顎を掴みなおして引き寄せる。その間にも俺の魔力は大概に出て指先の感覚がなくなっていく。確かにこのままじゃ死ぬな、と俺は彼にゆだね、託した。
「……ん」
「我慢しろよ。あいつじゃねえけど……ちゃんと、あげるからな」
優しく労わるような声。
セシルとは違う、さらに少し低い声が耳元をくすぐる。ゼラフのちょっとざらついた唇が触れ、そして緩く開いた口を舌で割って入ってくる。前に、粘膜に直接魔力をすり込ませたら気持ちいとか、そっちのほうが供給がスムーズにいくとか言っていた気がする。
知らない舌の感覚。でも、それは俺を気持ちよくさせるために動いているんじゃなくて治療で、焦ったような舌使いに俺は口の端から唾液がこぼれる。しかし、しばらくすると、体の内側から温められるように熱がともり始める。
何とも言えない感覚に俺はゼラフにしがみつくように服を引っ張る。セシルとは違う魔力。それでも相性はいいのか指先の感覚が戻り、頭もすっきりと冴えてくる。
けれどまだ寒い、絶えず外に出ていくような感覚は治らない。まあ、ヒルに吸われたわけだから、吸われたところが塞がらない限りは漏れ出るんだろうなとは思った。
「ぜら……ぅ……」
「……チッ。あいつは、この顔を独り占めしてるんだろ、クソが」
「……ぁえ?」
先ほどとは違って激しく魔力を俺の粘膜にねじ込む。熱い、さすがにやけどする。俺は戻ってきた体温に、剣を握れるほど回復した手を握ってゼラフの胸を叩いた。これ以上は、死ぬ、やけどする。
んんん! と、叫んだが、結局俺が舌を噛むまでゼラフは俺を離してくれなかった。かなり思いっきり噛んでしまったが、ゼラフはフッと満足げに笑っていた。
「ハッ、すっかり元気だなぁ、ニル。ごちそうさま」
「な、にが、ごちそうさまだ……ゼラフ!」
すっかり元気を取り戻した俺はゼラフの胸ぐらをつかむ。
血の流れた舌で口の周りを舐めたその色気たっぷりの表情が憎たらしくて、俺は感謝の言葉を言うのを忘れてしまった。体はもう、寒くない。だが、少しだけまだ魔力が流れ出る感覚があり、足元で死神が上げ足をとろうと狙っている気がしてならなかった。
一度、過去に戦ったことはあるがここまで大きな食人植物の魔物は見たことがない。魔物か、魔法植物かで分類が難しいところだが、敵意を持って襲ってくる場合は魔物とみてまず間違いない。
しかも、発達した触手のようなツタに、あのグロテスクな歯……見ているだけでも身震いする。
こいつも、俺たちの魔力に誘われてやってきたパータンか。セシルの魔力は離れていっているような感覚がする。どこに向かっているかは不明だが、これ以上はなれられると合流できなくなるかもしれない。
(この魔物の面倒なところは、再生能力……火の魔法がつかればいいけど、得意じゃないし。でも――)
「魔法なら任せてください、ニーくん」
「アルチュール?」
「そうだぜ。ニル。お前、あいつがみてないからって魔法使おうとしただろ? やめとけ。俺たちに甘えてろ」
「あはは、心強いなあ、ほんと。でも、魔法がなくとも倒せるよ。ちょっと、面倒だけど。さっき二人とセシルに任せっぱなしだったからね、ここは一人で――」
二人を下がらせ、地面を蹴って駆ける。
食人植物の魔物はグォオアォオォォとよくわからない奇声で威嚇し、その触手を俺にめがけて伸ばしてくる。俺は、それらをよけ、急所に当たりそうな部分だけは剣ではじいた。しかし、切り落とすことはできても再生は早い。それに、一つ一つの攻撃もやはり重量があって、素早い。
前に戦ったものとは比べ物にならないほどの強敵。だが、以前戦った魔物も、大きくなればそれほどの力を持つようになるんじゃないかとも思った。育てば、食人植物の魔物なんていくらでも強くなる。
(へえ、一筋縄ではいかない……ね)
かといって、しり込みするわけでもなく、むしろそれが楽しく思えた。
俺はあの大会で、セシルとゼラフが戦ったあの場には立てなかった。もし、俺がセシルに勝ったとして、ゼラフと十分に戦えたのかと思う日もあった。でも、今ならわかる気がする。
強敵を目の前にすると、しり込みじゃなくて、こんな強敵と戦えるんだっていう興奮する。その緊張から得られる高揚……それらがいい具合にマッチして、俺をさらなる高みへと押し上げる。
二人の助けなんていらない。俺一人でいい。俺にやらせてほしい。
戦いたい、今はこの剣をふるって――
長い触手は地面をえぐるように叩きつけられ、浪打ち、俺に襲い掛かる。だが、俺はタッと軽く飛び跳ねてその触手の上に乗る。そして、その不安定な職種の上を駆けあがり、さらに飛躍する。触手が俺を上へ押し上げたこともあって簡単に魔物の上をとることができた。
魔物は顔を上げ、無数の細かい歯の見える大きな口を開いていた。俺はその巨大な口めがけて剣をつきたてようとした。急所はそこだ。他の場所はいくら切っても再生する。核となるのは、花の中心部分。そこに剣を突き立て、抉り取ればこの魔物は絶滅する。以前の実戦経験が生きる。
だが、魔物もバカではないので、必死に無数の触手を伸ばし、そのすべてが俺をとらえようと狙いをすましていた。
しかし、こちらのほうが早い。
落下速度を利用し、俺は狙いを定めてそのまま剣を魔物に突き刺した。剣は、魔物の口の中に入り、その中にあった黄色い花粉の塊を破裂させる。これが、こいつの核だ。
ガアアアアア! と、ビリビリと空気が震えるほどの大きな悲鳴を上げてこれまた紫色の液体をまき散らす。剣は確実に急所をとらえ、その体は再生することはなかった。あれだけ俺をしつこく追い回していた触手も力を失い、だらんと地面に横たわる。
俺は、頬についた魔物の体液をぬぐいながら、魔物の身体から降りた。魔物は絶命したが、まだぴくぴくと体が動いている。これは、虫が死んだあと動いている現象と変わらない。
俺は、剣を横にふるってから鞘にしまる。やはり、俺の剣はかなり切れ味がいい。というか、オーダーメイドなだけあって、俺の手にも、戦い方にもフィットする。大切に使わなきゃな、と俺は、優しく柄を撫でる。きらりと、俺に応えるように剣が光った気がした。
もう少し手こずるかと思ったが、この程度か。まあ、楽しめたには楽しめたが……
「ニーくん」
「ニル!」
「あっ、二人とも、大丈夫だった――って、おわ」
ドンと、ぶつかるように抱き着かれ、俺はそのまま後ろへ倒れた。
頭を軽くぶったが、それ以外に痛みはなく、顔を上げればよかったとほっとしている二人の顔がある。俺のこと、強いとか言いながら心配してたのか……と、ふてくされそうになったが、それでも心配してくれる二人に俺は温かい気持ちになる。セシルにはよく心配されるけど、周りの大人に心配されたことはなかった。
あの騎士団長の息子だから、これくらいなんてことないだろうとのこと。
それがとても嫌で、俺を俺として見てくれない周りの大人には飽き飽きしていた。でも、この学園で俺を見てくれる人に出会えて、俺は幸せだ。それはきっと、セシルも同じことを思っている。
「もう、大袈裟。俺だってこれくらい倒せるよ」
「わかっていたんですけど、ハラハラさせる戦い方をするので。ニーくんは、本当に針に糸を通すような戦い方を得意とするんですね」
「どうだろ。でも、確かにそういう戦い方かも。今回の場合は、急所が分かっていたし……うん」
「ハッ、お前ならやると思ってたぜ、ニル。お前と、あの大会で戦えなかったのは本当に残念でならねえな」
「はは……それは、俺が一番よくわかってる。でも、あのときも仕方なかったんだって」
アイネが襲われて、俺はそれを助けるために禁じ手を使った。その魔法を使った反動で、俺は……
ゼラフにそういってもらえるということは、実力を認めてもらえたということで。俺だって、あの日ゼラフと戦いたいとは思っていた。もちろん、セシルもだが。決勝戦に上がってくるのがゼラフだとわかっていた以上、絶対に勝つと意気込んでいたのに。
過去のことをどうこう言っても仕方がない。俺は、今目の前のやるべきことをやろうと、二人に俺の上から退いてもらうよう言って立ち上がる。パンパンと服についた土を払いながら、俺はもう一度セシルの居場所を確認する。先ほどの場所から動いていないようだ。
この魔法はどこにいるかという位置情報はわかるが、どんな状況かはわからない。動いていないということは休息をとっているか、あるいは負傷して倒れているかの二択。後者でないことを祈るがなんとも。
俺は、二人を先導しながら歩く。先ほどの戦いでの体力の消耗は、自分でも思った以上に少なかった。だから、まだ歩ける。
二人の前で倒れるなんて恥ずかしいことはしない。
そんなことを考えながら歩いていると、また足元に違和感を覚えた。さすがに、先ほどのような大きさの食人植物の魔物ではないが、何か妙だった。
来る――と思い、剣を引き抜けば、地面から出てきたのは赤黒いぐにょぐにょした生き物だった。
見たことのない形状で、先ほどの魔物に付属していた触手のようにも見えたが、それよりもグロテスクで、それ自体に意思があるようにも思えた。俺は反応に遅れつつも、それらを切り裂いたが、それはすぐに再生し、俺の身体に巻き付いた。
「んなっ、に、これ……うわぁっ、ぬるぬるして、きもち、わる」
「――おい、ニル! 今すぐそいつら引きはがせ。死ぬぞ!」
「は? 死ぬって……っ!?」
ゼラフの足元にも、同じようなものがうめいており、俺はそれを伝えるため叫んだ。だが、ゼラフはそんなことお見通しのようにそいつを足で踏みつぶす。彼の足元に魔法陣が現れたからきっと魔法で殺したのだろ。見えなかったが、無詠唱ではなかった。そこにはほっとする。
だが、俺の身体に巻き付いたグロテスクな物体は、俺の身体を這うようにして上ってくる。
てか、死ぬってなんだ?
ゼラフは何をそんな必死になって俺に叫んでいる?
とにかく、俺はこの気持ち悪いやつを引きはがすために必死につかむが、掴めばつかむほど、掌にくっついて体がぬめる。それに、なんだか吸われているような気もするのだ。
「……は、これ、ヒル?」
ようやくそこで、これの正体について分かったような気がした。じゅ、じゅぅっと俺の血を吸っている……いや、血を吸われている感覚はない。だが、何かを吸っているのだ。何かが分からなくて気持ち悪さはあるし、血を吸われているわけでもないのに、頭が痛いし気持ちが悪い。一瞬だけ視界が反転した気がした。
だが、血出なければ無害では? と思ったが、一応引きはがしたほうがいいだろうともがく。だが一向に俺から離れてくれない。ぬっ、ぬっと、地面から這い出てきた他の個体も俺のほうへとにじり寄ってくる。目も鼻もないただのぶよぶよとした物体。それには変わりがないのに、量が多いと気持ち悪いし何よりも……
「クソ、離れろよっ……か、っ」
そのヒルたちは、俺が引きはがそうとすると俺から離れるどころか体を擦りつけるようにしてきた。ぬめっているので気持ちが悪いし気味が悪い。
「ニーくん目を瞑っておいてください!」
と、アルチュールの声が響き、俺はその指示に従う。すると、カッと目の前が光り、次に目を開けたときには俺の身体にまとわりついていたヒルたちは跡形もなく消えてなくなっていた。
「今の魔法?」
「火の魔法の応用です。光だけで蒸発させたんです。ニーくん、本当に大丈夫ですか?」
「え、ああ、うん。何とも……え?」
不意に足に力が入らなくなり俺は前のめりに倒れる。そんな俺を抱き留めてくれたのはゼラフだった。
「おい、ニル!」
「え、ぜら、なん……」
声がうまく出ない。というか、寒い。
指先も、足の先も凍えるように冷たい。吐く息も白くなって、呼吸が浅くなる。心臓部分がぎゅっと圧迫されるような痛みが継続的にやってくる。
(寒い、寒い、寒い、寒い、寒い――ッ! 痛い、いたい…………これ……て)
俺はそこで気付くことができた。あのヒルが吸っていたものが何なのか。
あの時の感覚と一緒だ。俺があの時使った魔法の反動。でも、あれよりも酷い。
俺は、温もりを求めるようにゼラフにしがみついて、彼の服をきゅっと引っ張る。とにかく、寒くて凍え死にそうだった。だが、ただ温めてもらうだけでは、俺のこれは解消されないだろう。なぜなら、これは魔力不足だからだ。
「ニーくんッ!」
「……あのヒルの魔物は、ニルの魔力を吸ってたんだよ。テメェも気づいてただろ、王太子」
「はい……ニーくんの魔力を狙っていたんでしょうね。このままでは、ニーくんは」
「わかってんだよ、そんなことは」
二人が俺の頭の上で会話をしている。だが、それも水の底に入ったようにうまく聞こえなかった。膜が張っているみたいで聞こえずらい。
心臓がひどく痛み、肺も酸素がないと悲鳴を上げていた。頭もガンガンにいたいし、唇もカタカタと震えている。なのに、目玉はやけどしそうなほど熱くて、飛び出しそうだった。目を開けているのもやっと。言葉なんて俺の口から出やしない。
状況はわかったが、どうしようもない。
それに、未だに魔力が漏れ続けている感覚がするのだ。
またすぐそこまで迫っている死神の鎌に俺の身体は恐怖で震える。何で俺ばっかりこんな目に合わなきゃいけないんだと文句を言いたい。でも、そんな文句を言えるような気力もなかった。
死にキャラだからだろうか。
あんな小さなヒルに油断したばかりに、俺は。まだまだ、警戒心が低すぎる。鍛錬も、何もかも。自身の弱さを痛感して涙が出てくる。死にかけている、死ぬのだろうか。頭にはそればかりが浮かんでは消えて、また濃くはっきりと浮かんでくる。
震えて、寒くて、誰かに温めてほしい。
(セシル……せしる……)
こんな時に頭に浮かぶのは愛しい人の顔で、彼を求めて体が動こうとする。しかし、それはゼラフによって押さえつけられてしまった。
「ぜら、なに……」
「あまり動くな、それ以上魔力が外に出てったら、本当に死ぬぞ。死にたいのか?」
「死にたくない、しにたい、わけが、ない……」
かすれかすれに声が漏れる。それは息を吐いているだけのようにも思えた。
じゃあ、どうすればいいんだと俺はゼラフを見るが、ゼラフは何かを決意したように、俺の顎を掴んだ。何をするんだ、と俺は精一杯目を見開いて、ゼラフのほうを見る。ローズクォーツの瞳と目があって、俺は呼吸が止まりそうになる。こんな時に、キレイだ、なんて思ってバカみたいだ。
「いいんですか。もし、魔力があわなかったら。それこそ、血管が破裂して、ニーくんは死にますよ」
「大丈夫だ、こいつとは波長が合う。テメェよりも半年こいつと長くいるからな。だが、アルチュール、テメェの魔力はダメだ。ニルとは合わない」
「……なぜわかるんです?」
「そもそも、国がちげえだろ。確実を選ぶなら、俺だ」
と、ゼラフは言うと俺に唇を近づけてくる。
ゼラフがキスを、何で? と、それだけが頭の中を回って、反射的に俺は、思わずそれを拒んで、ゼラフの口を手でふさいだ。プルプルと震えて情けない手が目に映る。
そこは、セシルにしか許していない。セシルじゃなきゃ嫌だ。
「いや……せしる、じゃない……だめ」
「はあ…………んなこと言ってる場合か? ここに、あいつはいねえ。死ぬか、俺に魔力供給されるか選べ。選ばせてやる」
「…………まりょく、きょうきゅ……う?」
「前に説明しただろうが。性行為は魔力を分け与えるのにうってつけだって、キスもそれができるってな。んで? ちんたらしてる間に、テメェの魔力は抜けてすっからかんになって死ぬぞ」
どうする? と、ローズクォーツの瞳は俺を射抜く。
ああ、そんなことを言っていた気がする。いつだったか思い出せないけど。
そうか、これは魔力供給なんだ。セシル以外に唇を許すつもりはないが、緊急事態だ。そんなことで、意地を張って無様に死ぬつもりはない。ゼラフは、俺に選択肢を与えてくれている。死ぬか、魔力供給をするか。
(そんなことじゃ、ないけど……)
俺にとってはそんなことじゃない。意地を張るのもわかってほしい。
それが意味するのが性愛や、恋愛じゃないことが分かっていても、それでも心が拒んでしまう。バカな恋愛脳だと、俯瞰してみて俺は自分自身を笑う。笑うけど、笑えない。
俺は、「熱」とだけ口にして目を閉じる。目を閉じれば一瞬で終わるだろうと、後はゼラフに任せた。
もう一度、俺の顎を掴みなおして引き寄せる。その間にも俺の魔力は大概に出て指先の感覚がなくなっていく。確かにこのままじゃ死ぬな、と俺は彼にゆだね、託した。
「……ん」
「我慢しろよ。あいつじゃねえけど……ちゃんと、あげるからな」
優しく労わるような声。
セシルとは違う、さらに少し低い声が耳元をくすぐる。ゼラフのちょっとざらついた唇が触れ、そして緩く開いた口を舌で割って入ってくる。前に、粘膜に直接魔力をすり込ませたら気持ちいとか、そっちのほうが供給がスムーズにいくとか言っていた気がする。
知らない舌の感覚。でも、それは俺を気持ちよくさせるために動いているんじゃなくて治療で、焦ったような舌使いに俺は口の端から唾液がこぼれる。しかし、しばらくすると、体の内側から温められるように熱がともり始める。
何とも言えない感覚に俺はゼラフにしがみつくように服を引っ張る。セシルとは違う魔力。それでも相性はいいのか指先の感覚が戻り、頭もすっきりと冴えてくる。
けれどまだ寒い、絶えず外に出ていくような感覚は治らない。まあ、ヒルに吸われたわけだから、吸われたところが塞がらない限りは漏れ出るんだろうなとは思った。
「ぜら……ぅ……」
「……チッ。あいつは、この顔を独り占めしてるんだろ、クソが」
「……ぁえ?」
先ほどとは違って激しく魔力を俺の粘膜にねじ込む。熱い、さすがにやけどする。俺は戻ってきた体温に、剣を握れるほど回復した手を握ってゼラフの胸を叩いた。これ以上は、死ぬ、やけどする。
んんん! と、叫んだが、結局俺が舌を噛むまでゼラフは俺を離してくれなかった。かなり思いっきり噛んでしまったが、ゼラフはフッと満足げに笑っていた。
「ハッ、すっかり元気だなぁ、ニル。ごちそうさま」
「な、にが、ごちそうさまだ……ゼラフ!」
すっかり元気を取り戻した俺はゼラフの胸ぐらをつかむ。
血の流れた舌で口の周りを舐めたその色気たっぷりの表情が憎たらしくて、俺は感謝の言葉を言うのを忘れてしまった。体はもう、寒くない。だが、少しだけまだ魔力が流れ出る感覚があり、足元で死神が上げ足をとろうと狙っている気がしてならなかった。
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