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番外編SS
あの日の妄想と熱◆
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ポチャン……と広がった波紋はゆっくりと、広い大浴場に広がっていく。
「ニル、さっきの動きはよかったぞ。一本取られたな」
「あはは、それこそセシルとゼラフが戦ったみたいに、タッチの差だったよ。少しでも剣をふるうのが遅かったら、俺は確実に負けていたし。まあ、久しぶりにセシルに勝ったって感じがしてよかったけど」
「久しぶりだったか? ああ、確かに最近はしていなかったからな」
医師には様子見と言われたが、身体を動かしてもいいという許可はもらえたので、俺たちはこそこそと稽古場に足を運び手合わせをした。久しぶりということもあって入念に準備体操を行ってから、セシルと向かいあう。この手合わせのピリリとした空気かんは好きで、まっすぐと彼と向き合うこの瞬間が何よりもよかった。いつもは、言葉で通じ合っている俺たちだけど、ここでは剣を交え通わせあうことができる。相手の考えていることが、剣を通して伝わってくるのが何とも不思議で、心地がいい。
それで、久しぶりだったのにも関わらず、勝負は俺の勝ち。もちろん、セシルが手を抜いたからというのではなく、本当にタッチの差。
あの日、俺はセシルと戦うことなく棄権を余儀なくされた。そして、見た決勝戦。セシルとゼラフの戦いを目で追っているうちに、ああなりたいという理想像が形成されていった。そして、研究に研究を重ねた結果が、今日出たというわけだ。
そりゃ勝ったら心地いいわけで、アドレナリンがまだ出ているような気もする。いわゆる、興奮状態。もう一戦やりたかったが、さすがに体に来るので、それはやめにし、早めに風呂に入ることにした。だが、セシルと話しているうちに、春休みみたいだ問う話になって、大浴場に入ることになった。思えば、そこから今の俺が始まっているというか……
(そうか、もう半年くらいたつのか……)
前世を思い出してから怒涛の日々。
本来ならば、春休み中に退場する予定だった死にキャラ。だが、いろいろあって生き残って、今に至る。その間に、ゼラフに追っかけまわされたり、これまた本来なら攻略キャラじゃないはずなのに、主人公アイネの攻略キャラになってしまったり。リューゲ・ライデンシャフトという後輩に敵意と殺意を向けられて、心中しかけてしまったり。
本当にこれが数か月の間に起こった出来事とは思えないほど濃厚だ。だが、セシルと一緒にいなかった日はなくて、毎日のように昨日も、おとといも思い出せるからこれも不思議だ。
俺は、うーんと湯船につかりながら伸びる。ちょっと熱いくらいのお湯も心地がいい。自分の黒髪から滴る水滴を眺めながら、ふと、鬱陶しい……熱烈な視線に気づいて、横を向いてやる。
「なーに、みてんの。セシルのエッチ」
「え……っ、じゃない、いや。その、ニル」
「エッチしてる時に、俺の身体みてるじゃん。今さらでしょ」
セシルは、バッと両手で顔を覆いながらフルフルと首を横に振った。今さら何を恥ずかしがっているのだろうか。
(かくいう俺も、恥ずかしいけど)
あまりに熱烈に、嫌らしい目を向けられるので鈍感でも気づく。
こういうことがあるからと、俺たちは一応、夏休み前につながってから今日まで風呂を別々にしてきた。いろんな理由はあるが、一番はそこで盛らないため、もう一つはゆっくりと入れないから。お風呂は基本的にリラックスできる空間だし、日々の疲れをとるには、心拍数の上がる互いがいるよりも、一人のほうがいいと持ったのだ。だが、今日は流れで入ってしまったわけで。
それがだめだとは一言も言っていないけど。
「に、ニルはエッチとかいうんだな」
「いや、いうけど? 俺も健全な男子だし……というか、そんな目で見られてたら、うかつに一緒に入れないじゃん」
「仕方ないだろ! 俺は、春休みからずっと我慢していたんだからな!」
「へ?」
なぜそこで春休みの話が出てきたのだろうか。
俺が口をぽかんと開けていれば、セシルはしまったといわんばかりに口を閉じる。これは問い詰めなければいけない案件な気がしてきた。
「セシル~白状したほうが楽になるけどどうする?」
「ぐっ……ニルは尋問が得意だな」
「いや、得意じゃないけど。セシルが、俺に弱いだけでしょ?」
「それも、事実だが」
まあ、俺の弱点もセシルなわけだが。互いが互いの特攻になっているのは笑えない。どちらかが倒れれば共倒れになってしまう関係では意味ないのだ。一人でも生きていける……本来であればセシルはそうだったはずなのに。俺が生きていることによって、その矢印も感情もすべて俺に注がれている。独占できてうれしいという反面、俺がもしまた死にかけたらセシルのガラスのハートは木っ端みじんに吹き飛んでしまうだろう。そうなったとき、どうやって彼は立ち直るのだろうか。
アイネが彼を支えてくれるとは思わないし。ここまで、俺に依存しているセシルは、代わりに依存できるものがいないように思う。
――と、いうのはいいのだが。
「春休みに、ほら、お前が頭をぶつけたことがあっただろ? あの日も、同じように風呂に入ったなと……その話は先ほどしただろ」
「うん、したね。だから一緒に風呂に入ってるんでしょ?」
「そうだ……そのときかずっと思っていたんだ。ニルは気にしているようだが、お前の肌も、その程よい筋肉のつき方も、全部えろ……その、だな、と思って」
「濁したね? てか、そのときからずっとそう思っていたの?」
「あ、ああ。気の迷いかと思った。あの時までは親友という認識で。でも、お前は俺の中で一番だったし、特別だったし。それと、下半身が反応しそうでまずかった」
と、セシルは正直に白状した。そういえば思い出したのだが、セシルはあのときも確かにしどろもどろだった気がする。
『セシルがいう? というか、男同士だし。てか、そっち?』
『……か』
『何?』
『いや、何でもない。その通りだと思っただけだ』
よくよく思い出せば、あのときの「か」はかわいいとか言いかけていたのかもしれない。未だに、何でかわいく見えるのかは知らない。セシルフィルターを通すと、俺はかわいく見えるらしい。
まあ、あの日俺も前世を思い出したばかりで混乱していて、変な気を起こしそうになったし。セシルの身体を見て、鼻血を出しかけたのでおあいこだが。
「そろそろ出るか。変な気が起きないうちに」
「そ、だね……というか、そういったってことは、ここじゃなく? ってこと」
「バレたか……いいか?」
セシルは、夜色の瞳を俺に向けて問いかけてきた。嫌じゃない、というのを言葉で返さず、セシルの手を自分の頬に持っていく。しっとりと濡れた手が俺の頬を撫でるのが気持ちいい。
「……っ、く、そうやって、ニルは俺を煽って。どうしたいんだ」
「セシルの反応が面白いから」
「悪魔か、ニルは! 優しくできなくても、お前のせいだからな!」
お手柔らかに、と俺は言って湯船から上がる。体にまとわりついたお湯が一気にざぶんと下に落ちていき、ペタペタと大理石の床を踏みしめれば音が鳴る。
そうやって、出口に向かって歩いていると、先ほどどこかに行ってしまった石鹸があろうことか足元に落ちていた。俺はそれに気づかずに、踏んづけてしまう。
「っ」と声を発した時にはすでに遅く、後ろへ倒れかける。だが「ニル!」と、声が後ろから声が聞こえ、気づけばつるりと足を滑らせた俺はセシルの腕の中にいた。
「あ、ごめん……ありがとう、セシル」
「いいや。でも、ニルが怪我をしたら……おわっ!?」
「へっ?」
受け止めてくれたはいいものの、まだぬるついた床に足をとられ、俺たちはそのまま倒れてしまう。体を打ち付けつつも、セシルは大丈夫かと彼の身を案じ顔を上げると、そこには、タオルが落ちさらけ出されたセシルのアレが目の前にあった。
「な、あ、あ、あ……っ」
「す、すまない、ニル。にっ……!?」
痛そうに頭を押さえながら、セシルは俺に謝罪の言葉を述べる。しかし、自分の息子と向かい合っている俺を眼前に顔を真っ赤に染めた。
俺はすぐに退こうとしたが、むくりとセシルのそれが立ち上がったので、ひっと悲鳴を当てる。あまりにも近い距離で、いつもはしない石鹸の匂いと雄の匂いにあてられくらくらとする。
「に、ニル……あの、今だけは顔をずらしてくれないか。このままだと、その、だな」
「あ、ぇ……っ?」
セシルは恥じらいの表情で俺を見下ろしていた。とろりと垂れた欲の目が俺を射抜く。
いや、顔……と言いかけて、俺はごくりとつばを飲んだ。
ずれろとか、どけとかいう割に反応しているセシルのペニスを見て、俺は好奇心に勝てなかった。するりと、指を這わせば、わかりやすくセシルの身体震える。そして、自分の頬にセシルのペニスを当てれば、さらにセシルは声にならない悲鳴を上げた。
「や、やめろ、ニル!」
「やめろって、感じじゃ……いてっ」
動いた拍子に、さらに硬さを増したセシルのペニスが、俺の頬を叩く。元気がいいなって騒ぎじゃない。
すでに熱を持ち、がちがちに上に向かって勃ち上がっている。俺は、恐る恐るもう一度指先でペニスをつんと触れば「ニル……」と切羽詰まった声が降ってくる。
「セシルの、もうガチガチじゃん」
「……っ、だから、そういうことを言うな!」
「でも、俺のせいでこんなになったんでしょ? 期待してるってバレバレ」
「そ、そうだが……って、おい!?」
俺はセシルの制止の声を無視して、彼のそれを口に含んだ。石鹸の味はしないが、匂いは爽やかで、でも雄特有の匂いと混ざって今まで嗅いだことのない匂いが鼻腔を通り抜けていく。
熱を持った、それは堅いし、大きいから口に入り切るかわからない。そういえば、セシルのを口でしたことはなかったと、初体験が風呂場よかったのかはおいて置いて、貴重な体験だと思っていた。他の人は舐めたいと思わないけど、セシルのだし。
はむはむと唇で軽く食みながら、舌で裏筋をなぞれば「ん……っ」とセシルの声が漏れた。
「に、る、本当にやめてくれ。これ以上は……」
「なんれ?」
「……部屋まで待て」
「俺だけがやりたいみたいで、癪だなあ……」
俺は口にくわえたままもごもごとしゃべれば、さらにそれは質量を増していく。そして、俺の頭を離そうと手を置いてくるが、力が入らないのか添えているだけになっているし、むしろもっとしてとねだるように頭を押し付けてくるようにも感じる。
「あ……っ、ニル、はあ」
「ん……んん……しょっぱ……」
あふれてきた先走りがもったいなくて、舐めれば何とも言えない味がした。味と言っていいのかわからない。でも、それと自分の唾液を絡めて、下を這わす。全部口に入れてみようかと試みてみたが、質量を増したセシルのは、口に収まりきらない。
「に、る、も……でる、離せ」
「いいよ、口に出しなよ」
気持ち的には、あの日拘束プレイした時のお返しだ。あの日は、自分の精液を舐めさせられたけど、セシルにフェラしてもらったわけで。今度は俺が、と意気込んで、頑張って入るところまで口に入れてみる。だが、やはりどうも口に入りきらなくて、残りの部分は扱こうかと思ったとき、ガッとセシルに頭を掴まれた。先ほどは、弱々しく添えていただけのそれは、今は明らかに俺の頭を固定して自分の好きなように動かしている。
「ん、ンんー! ンーッ! ンンンッ!」
「は、あ……ニルっ」
(バカセシル!)
入っちゃいけないところまではいってる。喉の奥をトントンと犯され、呼吸ができない。セシルので串刺しになっている感覚だ。
苦しいし、息ができない。目もほとんど上に向いちゃっている。焦点が合わない。
必死になって、俺の頭を掴んで動かして。口の中でさらに膨張していくのが分かった。俺の口で気持ちよくなっているんだと、バカになった頭がそれも含めて快感ととらえる。
だが、苦しさもあった。
「ン、ンンプッ、ンンンッ!」
あまりの息苦しさに涙が浮かんできたころ、俺の口内に熱いものが流れ込んできた。
「ん……っ」
「はあ、はー……すまない、ニル」
ずるりと口からセシルのペニスが抜かれる。俺はむせながらも必死に酸素を肺に取り込むと、セシルが頭を撫でてきた。
「ひど、俺がしたかったのに」
「してくれただろ? だが、あんな一生懸命頬張るニルを見ていると、抑えがきかなかった」
「……もう」
俺が始めたことなので、文句は言えない。そのため、俺は、口の端から垂れた精液を手で拭って、セシルを見上げる。セシルは、呼吸を整えるよう息を吸っていたが、その下半身は、先ほど出したくせにもう立ち上がっていた。
「元気なことで……」
「うっ、悪い……部屋まで持ちそうにない」
「だよね……いいよ、ここでも」
本当か? とセシルは俺に聞いてくる。その状態で部屋まで戻れるのかと逆に俺は聞きたかった。そんなおったてて廊下を歩かないでほしい。
俺が同意と首を縦に振れば、セシルはごくりと喉仏を上下させる。それから、俺の頬を撫でてキスをせがんできたが、俺はさすがに止めた。なぜだと睨まれたが、セシルのを飲んだ後でキスはさすがにまずいだろうと、俺は拒否したのだ。セシルは、別にいいのにといった感じだったが、俺が頑なに拒否し続けたら折れてくれたみたいで、仕方なく俺の胸に手を当てる。
「冷めたな」
「湯冷めはしちゃうかもね。でも、熱くしてくれるんでしょ?」
「ああ。だが、もしものことがあってはいけないからな――」
「はへっ?」
ひょいと体が持ち上げられたかと思えば、セシルはお風呂に向かって歩いていく。ゆっくりと、一歩ずつ湯船に足を踏み入れて、そのまますとんと腰を下ろした。温まってからするのだろうか? と俺が疑問に思っていれば、セシルは、俺を膝の上に乗せ、尻の割れ目に指を這わせた。
「あぁっ」
「湯船につかりながらなら、湯冷めしないだろ?」
「そういうっ、問題じゃぁああっ」
どんな発想だと、抗議の声を上げたが、セシルの指が中に入ってきたところで、俺は抵抗もむなしく、彼にもたれかかった。抱き合う形で、座っていることもあって、密着度がすごい。中に入ってくる指が一本から二本に増える。
湯船の中ということもあり、浮遊感と、指が入ってくることに、お湯も中に入ってくる。その何とも言えない感覚に俺は身をよじる。
「は、あぁっ」
「ニルの中も温かいな……」
「うそっ、絶対お湯のせい……っ、ひっ、あっ、セシルのチンコ、ふやければいいのにっ」
悪態をついても、かわいいものだと流されてしまう。
ゆっくり出し入れされながら、中を広げられる感覚に俺は喘ぐことしかできない。くぽ、こぽこぽと、中にお湯が入ってきて、お腹がもうすでにいっぱいだ。
そして、気づかぬうちにいつの間にか三本になっていた指をバラバラと動かされていて、俺は、入っている本数と、不思議な感覚に翻弄されていた。もうすでにイキそうなのだが、セシルがそれを許してはくれなくて。少し緩んできたら指を抜いたかと思えば、すぐにもセシルは自身のそれを俺の尻たぶにこすりつけ、穴を探るよう腰を動かした。多分、お湯の中だから、擦り付けられないんだろうなというのが分かる。それでも、的確に当てぬいて、ちゅぷ、と俺のアナルに先端を当てる。
「ニル、挿入るぞ」
耳元で、セシルのくぐもった声が聞こえる。ふやけた耳から、ダイレクトに伝わってくるセシルの低音に、身体がぶるりと震える。だがしかし、そんなことかまわずセシルは思いっきり下から突きさした。かはっ、と呼吸が一瞬飛ぶ。勢いよく入れられ、かつ、奥をつかれたため、俺はプルプルと震えたまま、セシルの肩につかまるしかなかった。ようやく戻ってきた呼吸も、不規則になって、うまく息が吸えない。
それに気づいたらしく、セシルは少しの間止まってくれていたが、しびれを切らしたように「もういいか?」といって、俺の腰を掴む。半分外へ出ていたものが、また引き戻されてドチュンと突かれる。
「な……んっ! ああぁっ!」
「……っ」
お湯とともに入ってきたそれに、俺の身体がのけぞる。お湯がばしゃりと波打ち、その場に飛び散る。 どうにもこうにも、動きにくい。でも、いつもはこんなふうに抱き合ってなんてしない。俺が重いから膝の上に乗せるなと言ってしまうからだ。でも、湯船の中では少しだけ浮遊感があって、セシルへの負担も少ないだろうと、俺はセシルの首に腕を回す。
下から突かれるたび、もっといいところにあてたくて、自ら腰を動かしてしまう。
「あっ、ああ」
「ニル……奥、に挿入るからなっ!」
「んあぁっ、あっ、あぁっ。ま、待って、まてぇ、せしる」
待たない、というように、セシルは最奥を穿つ。その瞬間、目の前に星が飛んで、腰から頭にかけて、ビリビリとしたものが走っていった。頭までセシルに犯されているみたいで、目の前にハートが浮かんでしまう。だが、この奥があることを俺は知っていた。まだ、入りきらないけど、いずれは……
セシルは、その最奥をあけようとノックするが、俺は「まだ怖いから」と言ってしまい、セシルはそこでストップをかける。だが、最奥への攻撃はやむことなく、手加減しつつも、容赦ない腰を打ち付ける。そのたびに、俺の口からは嬌声が上がってしまう。その声を抑えたくても抑えきれない。風呂場だからというのもあって、自分の喘ぎ声が反響して恥ずかしい。羞恥心も相まって、俺は顔が真っ赤になる。のぼせたのか、それとも熱でか、羞恥心か。全てぐちゃぐちゃになって、流れていく。
そして、だんだんと激しくなっていく動きに、俺はただ喘ぐことしかできなくなってしまうのだ。バシャン、バシャンと波打つ湯舟。半分以上湯船から出てしまっていたし、何だったら、身体も寒いのか温かいのかわからなくなっていった。でも、目の前の熱を、与えられるこの熱が、内側から俺を温める。
「ああっ! あッ! やぁああッ! あっ!」
「は、あ……っ」
頭がくらくらする。セシルのが奥に当たるたびに、俺は彼の名前を呼びながら喘ぐことしかできない。
「ああっ! ああぁっ! しぇぃるぅ……!」
「ニル……っ」
呂律なんてもう回らない。セシル、セシルって名前を呼びたいのに、キスも何度かされて、ふやけた舌は回らなくなっていた。
舌足らずな俺を愛おしそうに、さらにセシルが俺の舌をチュッと吸うものだから、舌先の感覚なんてない。もう、何をされてもピクンピクンと体が反応してしまう。
そして、もう限界だとばかりに、セシルが俺の身体をさらに強く抱きしめた。俺は振り落とされないようにと、彼の首に手を回した。そして、俺の腰を掴むと、彼はラストスパートをかけるように、さらに激しく腰を動かした。
「あッ! ああぁッ! い、イク、イっちゃう、からああっ!」
「クッ、ニル……っ、俺も」
俺も限界だと、彼のそれを締め付ければ、彼は苦しげにうめいて、俺の中に熱いものを放った。飛沫が、中を汚していく。まだ、ドクドクとでているし、ゆっくりとしぼんでいくそれを、俺は中で感じていた。セシルの精と、お風呂のお湯で、お腹はちゃぽちゃぽだ。
「はあっ……はー……んっ」
「は、はぁ……ニル……」
ずるりと中からそれが引き抜かれていく感覚に俺は身震いする。セシルは、そんな俺の声に反応を示しつつも、これ以上は無理できないというように、俺から出ていくと、きゅっと優しく抱きしめた。
「悪い、無理させたな」
「……んー? んん、大丈夫。今日も気持ちよかったし……で、でも、声響くから、しばらくは禁止で」
「あ、ああ……すごい声だったな」
いうな、と俺はセシルの乳首をつねってやれば「痛い」とセシルは顔を歪めた。俺は、そこを触られたら気持ちいいと感じてしまうようセシルに開発されたというのに憎たらしい。でも、悪態をつく余裕もなければ、まだぽわぽわと余韻から降りてこれない。
セシルのほうを見れば、まだしたいと顔に書いてあるから、これは二回戦だな、と俺はくすりと笑うしかなかった。
まあ、こういうのもたまにはいいと思う。
「じゃあ、十数えたら出るか。冷えただろ、ニル」
「まあね。ちょっと休憩してからね」
体の半分以上がお湯から出て入れたため、俺は肩までつかりなおす。そうして、俺たちは、互いの指を折り曲げながら、十数えて、ベッドへと直行したのだった。
「ニル、さっきの動きはよかったぞ。一本取られたな」
「あはは、それこそセシルとゼラフが戦ったみたいに、タッチの差だったよ。少しでも剣をふるうのが遅かったら、俺は確実に負けていたし。まあ、久しぶりにセシルに勝ったって感じがしてよかったけど」
「久しぶりだったか? ああ、確かに最近はしていなかったからな」
医師には様子見と言われたが、身体を動かしてもいいという許可はもらえたので、俺たちはこそこそと稽古場に足を運び手合わせをした。久しぶりということもあって入念に準備体操を行ってから、セシルと向かいあう。この手合わせのピリリとした空気かんは好きで、まっすぐと彼と向き合うこの瞬間が何よりもよかった。いつもは、言葉で通じ合っている俺たちだけど、ここでは剣を交え通わせあうことができる。相手の考えていることが、剣を通して伝わってくるのが何とも不思議で、心地がいい。
それで、久しぶりだったのにも関わらず、勝負は俺の勝ち。もちろん、セシルが手を抜いたからというのではなく、本当にタッチの差。
あの日、俺はセシルと戦うことなく棄権を余儀なくされた。そして、見た決勝戦。セシルとゼラフの戦いを目で追っているうちに、ああなりたいという理想像が形成されていった。そして、研究に研究を重ねた結果が、今日出たというわけだ。
そりゃ勝ったら心地いいわけで、アドレナリンがまだ出ているような気もする。いわゆる、興奮状態。もう一戦やりたかったが、さすがに体に来るので、それはやめにし、早めに風呂に入ることにした。だが、セシルと話しているうちに、春休みみたいだ問う話になって、大浴場に入ることになった。思えば、そこから今の俺が始まっているというか……
(そうか、もう半年くらいたつのか……)
前世を思い出してから怒涛の日々。
本来ならば、春休み中に退場する予定だった死にキャラ。だが、いろいろあって生き残って、今に至る。その間に、ゼラフに追っかけまわされたり、これまた本来なら攻略キャラじゃないはずなのに、主人公アイネの攻略キャラになってしまったり。リューゲ・ライデンシャフトという後輩に敵意と殺意を向けられて、心中しかけてしまったり。
本当にこれが数か月の間に起こった出来事とは思えないほど濃厚だ。だが、セシルと一緒にいなかった日はなくて、毎日のように昨日も、おとといも思い出せるからこれも不思議だ。
俺は、うーんと湯船につかりながら伸びる。ちょっと熱いくらいのお湯も心地がいい。自分の黒髪から滴る水滴を眺めながら、ふと、鬱陶しい……熱烈な視線に気づいて、横を向いてやる。
「なーに、みてんの。セシルのエッチ」
「え……っ、じゃない、いや。その、ニル」
「エッチしてる時に、俺の身体みてるじゃん。今さらでしょ」
セシルは、バッと両手で顔を覆いながらフルフルと首を横に振った。今さら何を恥ずかしがっているのだろうか。
(かくいう俺も、恥ずかしいけど)
あまりに熱烈に、嫌らしい目を向けられるので鈍感でも気づく。
こういうことがあるからと、俺たちは一応、夏休み前につながってから今日まで風呂を別々にしてきた。いろんな理由はあるが、一番はそこで盛らないため、もう一つはゆっくりと入れないから。お風呂は基本的にリラックスできる空間だし、日々の疲れをとるには、心拍数の上がる互いがいるよりも、一人のほうがいいと持ったのだ。だが、今日は流れで入ってしまったわけで。
それがだめだとは一言も言っていないけど。
「に、ニルはエッチとかいうんだな」
「いや、いうけど? 俺も健全な男子だし……というか、そんな目で見られてたら、うかつに一緒に入れないじゃん」
「仕方ないだろ! 俺は、春休みからずっと我慢していたんだからな!」
「へ?」
なぜそこで春休みの話が出てきたのだろうか。
俺が口をぽかんと開けていれば、セシルはしまったといわんばかりに口を閉じる。これは問い詰めなければいけない案件な気がしてきた。
「セシル~白状したほうが楽になるけどどうする?」
「ぐっ……ニルは尋問が得意だな」
「いや、得意じゃないけど。セシルが、俺に弱いだけでしょ?」
「それも、事実だが」
まあ、俺の弱点もセシルなわけだが。互いが互いの特攻になっているのは笑えない。どちらかが倒れれば共倒れになってしまう関係では意味ないのだ。一人でも生きていける……本来であればセシルはそうだったはずなのに。俺が生きていることによって、その矢印も感情もすべて俺に注がれている。独占できてうれしいという反面、俺がもしまた死にかけたらセシルのガラスのハートは木っ端みじんに吹き飛んでしまうだろう。そうなったとき、どうやって彼は立ち直るのだろうか。
アイネが彼を支えてくれるとは思わないし。ここまで、俺に依存しているセシルは、代わりに依存できるものがいないように思う。
――と、いうのはいいのだが。
「春休みに、ほら、お前が頭をぶつけたことがあっただろ? あの日も、同じように風呂に入ったなと……その話は先ほどしただろ」
「うん、したね。だから一緒に風呂に入ってるんでしょ?」
「そうだ……そのときかずっと思っていたんだ。ニルは気にしているようだが、お前の肌も、その程よい筋肉のつき方も、全部えろ……その、だな、と思って」
「濁したね? てか、そのときからずっとそう思っていたの?」
「あ、ああ。気の迷いかと思った。あの時までは親友という認識で。でも、お前は俺の中で一番だったし、特別だったし。それと、下半身が反応しそうでまずかった」
と、セシルは正直に白状した。そういえば思い出したのだが、セシルはあのときも確かにしどろもどろだった気がする。
『セシルがいう? というか、男同士だし。てか、そっち?』
『……か』
『何?』
『いや、何でもない。その通りだと思っただけだ』
よくよく思い出せば、あのときの「か」はかわいいとか言いかけていたのかもしれない。未だに、何でかわいく見えるのかは知らない。セシルフィルターを通すと、俺はかわいく見えるらしい。
まあ、あの日俺も前世を思い出したばかりで混乱していて、変な気を起こしそうになったし。セシルの身体を見て、鼻血を出しかけたのでおあいこだが。
「そろそろ出るか。変な気が起きないうちに」
「そ、だね……というか、そういったってことは、ここじゃなく? ってこと」
「バレたか……いいか?」
セシルは、夜色の瞳を俺に向けて問いかけてきた。嫌じゃない、というのを言葉で返さず、セシルの手を自分の頬に持っていく。しっとりと濡れた手が俺の頬を撫でるのが気持ちいい。
「……っ、く、そうやって、ニルは俺を煽って。どうしたいんだ」
「セシルの反応が面白いから」
「悪魔か、ニルは! 優しくできなくても、お前のせいだからな!」
お手柔らかに、と俺は言って湯船から上がる。体にまとわりついたお湯が一気にざぶんと下に落ちていき、ペタペタと大理石の床を踏みしめれば音が鳴る。
そうやって、出口に向かって歩いていると、先ほどどこかに行ってしまった石鹸があろうことか足元に落ちていた。俺はそれに気づかずに、踏んづけてしまう。
「っ」と声を発した時にはすでに遅く、後ろへ倒れかける。だが「ニル!」と、声が後ろから声が聞こえ、気づけばつるりと足を滑らせた俺はセシルの腕の中にいた。
「あ、ごめん……ありがとう、セシル」
「いいや。でも、ニルが怪我をしたら……おわっ!?」
「へっ?」
受け止めてくれたはいいものの、まだぬるついた床に足をとられ、俺たちはそのまま倒れてしまう。体を打ち付けつつも、セシルは大丈夫かと彼の身を案じ顔を上げると、そこには、タオルが落ちさらけ出されたセシルのアレが目の前にあった。
「な、あ、あ、あ……っ」
「す、すまない、ニル。にっ……!?」
痛そうに頭を押さえながら、セシルは俺に謝罪の言葉を述べる。しかし、自分の息子と向かい合っている俺を眼前に顔を真っ赤に染めた。
俺はすぐに退こうとしたが、むくりとセシルのそれが立ち上がったので、ひっと悲鳴を当てる。あまりにも近い距離で、いつもはしない石鹸の匂いと雄の匂いにあてられくらくらとする。
「に、ニル……あの、今だけは顔をずらしてくれないか。このままだと、その、だな」
「あ、ぇ……っ?」
セシルは恥じらいの表情で俺を見下ろしていた。とろりと垂れた欲の目が俺を射抜く。
いや、顔……と言いかけて、俺はごくりとつばを飲んだ。
ずれろとか、どけとかいう割に反応しているセシルのペニスを見て、俺は好奇心に勝てなかった。するりと、指を這わせば、わかりやすくセシルの身体震える。そして、自分の頬にセシルのペニスを当てれば、さらにセシルは声にならない悲鳴を上げた。
「や、やめろ、ニル!」
「やめろって、感じじゃ……いてっ」
動いた拍子に、さらに硬さを増したセシルのペニスが、俺の頬を叩く。元気がいいなって騒ぎじゃない。
すでに熱を持ち、がちがちに上に向かって勃ち上がっている。俺は、恐る恐るもう一度指先でペニスをつんと触れば「ニル……」と切羽詰まった声が降ってくる。
「セシルの、もうガチガチじゃん」
「……っ、だから、そういうことを言うな!」
「でも、俺のせいでこんなになったんでしょ? 期待してるってバレバレ」
「そ、そうだが……って、おい!?」
俺はセシルの制止の声を無視して、彼のそれを口に含んだ。石鹸の味はしないが、匂いは爽やかで、でも雄特有の匂いと混ざって今まで嗅いだことのない匂いが鼻腔を通り抜けていく。
熱を持った、それは堅いし、大きいから口に入り切るかわからない。そういえば、セシルのを口でしたことはなかったと、初体験が風呂場よかったのかはおいて置いて、貴重な体験だと思っていた。他の人は舐めたいと思わないけど、セシルのだし。
はむはむと唇で軽く食みながら、舌で裏筋をなぞれば「ん……っ」とセシルの声が漏れた。
「に、る、本当にやめてくれ。これ以上は……」
「なんれ?」
「……部屋まで待て」
「俺だけがやりたいみたいで、癪だなあ……」
俺は口にくわえたままもごもごとしゃべれば、さらにそれは質量を増していく。そして、俺の頭を離そうと手を置いてくるが、力が入らないのか添えているだけになっているし、むしろもっとしてとねだるように頭を押し付けてくるようにも感じる。
「あ……っ、ニル、はあ」
「ん……んん……しょっぱ……」
あふれてきた先走りがもったいなくて、舐めれば何とも言えない味がした。味と言っていいのかわからない。でも、それと自分の唾液を絡めて、下を這わす。全部口に入れてみようかと試みてみたが、質量を増したセシルのは、口に収まりきらない。
「に、る、も……でる、離せ」
「いいよ、口に出しなよ」
気持ち的には、あの日拘束プレイした時のお返しだ。あの日は、自分の精液を舐めさせられたけど、セシルにフェラしてもらったわけで。今度は俺が、と意気込んで、頑張って入るところまで口に入れてみる。だが、やはりどうも口に入りきらなくて、残りの部分は扱こうかと思ったとき、ガッとセシルに頭を掴まれた。先ほどは、弱々しく添えていただけのそれは、今は明らかに俺の頭を固定して自分の好きなように動かしている。
「ん、ンんー! ンーッ! ンンンッ!」
「は、あ……ニルっ」
(バカセシル!)
入っちゃいけないところまではいってる。喉の奥をトントンと犯され、呼吸ができない。セシルので串刺しになっている感覚だ。
苦しいし、息ができない。目もほとんど上に向いちゃっている。焦点が合わない。
必死になって、俺の頭を掴んで動かして。口の中でさらに膨張していくのが分かった。俺の口で気持ちよくなっているんだと、バカになった頭がそれも含めて快感ととらえる。
だが、苦しさもあった。
「ン、ンンプッ、ンンンッ!」
あまりの息苦しさに涙が浮かんできたころ、俺の口内に熱いものが流れ込んできた。
「ん……っ」
「はあ、はー……すまない、ニル」
ずるりと口からセシルのペニスが抜かれる。俺はむせながらも必死に酸素を肺に取り込むと、セシルが頭を撫でてきた。
「ひど、俺がしたかったのに」
「してくれただろ? だが、あんな一生懸命頬張るニルを見ていると、抑えがきかなかった」
「……もう」
俺が始めたことなので、文句は言えない。そのため、俺は、口の端から垂れた精液を手で拭って、セシルを見上げる。セシルは、呼吸を整えるよう息を吸っていたが、その下半身は、先ほど出したくせにもう立ち上がっていた。
「元気なことで……」
「うっ、悪い……部屋まで持ちそうにない」
「だよね……いいよ、ここでも」
本当か? とセシルは俺に聞いてくる。その状態で部屋まで戻れるのかと逆に俺は聞きたかった。そんなおったてて廊下を歩かないでほしい。
俺が同意と首を縦に振れば、セシルはごくりと喉仏を上下させる。それから、俺の頬を撫でてキスをせがんできたが、俺はさすがに止めた。なぜだと睨まれたが、セシルのを飲んだ後でキスはさすがにまずいだろうと、俺は拒否したのだ。セシルは、別にいいのにといった感じだったが、俺が頑なに拒否し続けたら折れてくれたみたいで、仕方なく俺の胸に手を当てる。
「冷めたな」
「湯冷めはしちゃうかもね。でも、熱くしてくれるんでしょ?」
「ああ。だが、もしものことがあってはいけないからな――」
「はへっ?」
ひょいと体が持ち上げられたかと思えば、セシルはお風呂に向かって歩いていく。ゆっくりと、一歩ずつ湯船に足を踏み入れて、そのまますとんと腰を下ろした。温まってからするのだろうか? と俺が疑問に思っていれば、セシルは、俺を膝の上に乗せ、尻の割れ目に指を這わせた。
「あぁっ」
「湯船につかりながらなら、湯冷めしないだろ?」
「そういうっ、問題じゃぁああっ」
どんな発想だと、抗議の声を上げたが、セシルの指が中に入ってきたところで、俺は抵抗もむなしく、彼にもたれかかった。抱き合う形で、座っていることもあって、密着度がすごい。中に入ってくる指が一本から二本に増える。
湯船の中ということもあり、浮遊感と、指が入ってくることに、お湯も中に入ってくる。その何とも言えない感覚に俺は身をよじる。
「は、あぁっ」
「ニルの中も温かいな……」
「うそっ、絶対お湯のせい……っ、ひっ、あっ、セシルのチンコ、ふやければいいのにっ」
悪態をついても、かわいいものだと流されてしまう。
ゆっくり出し入れされながら、中を広げられる感覚に俺は喘ぐことしかできない。くぽ、こぽこぽと、中にお湯が入ってきて、お腹がもうすでにいっぱいだ。
そして、気づかぬうちにいつの間にか三本になっていた指をバラバラと動かされていて、俺は、入っている本数と、不思議な感覚に翻弄されていた。もうすでにイキそうなのだが、セシルがそれを許してはくれなくて。少し緩んできたら指を抜いたかと思えば、すぐにもセシルは自身のそれを俺の尻たぶにこすりつけ、穴を探るよう腰を動かした。多分、お湯の中だから、擦り付けられないんだろうなというのが分かる。それでも、的確に当てぬいて、ちゅぷ、と俺のアナルに先端を当てる。
「ニル、挿入るぞ」
耳元で、セシルのくぐもった声が聞こえる。ふやけた耳から、ダイレクトに伝わってくるセシルの低音に、身体がぶるりと震える。だがしかし、そんなことかまわずセシルは思いっきり下から突きさした。かはっ、と呼吸が一瞬飛ぶ。勢いよく入れられ、かつ、奥をつかれたため、俺はプルプルと震えたまま、セシルの肩につかまるしかなかった。ようやく戻ってきた呼吸も、不規則になって、うまく息が吸えない。
それに気づいたらしく、セシルは少しの間止まってくれていたが、しびれを切らしたように「もういいか?」といって、俺の腰を掴む。半分外へ出ていたものが、また引き戻されてドチュンと突かれる。
「な……んっ! ああぁっ!」
「……っ」
お湯とともに入ってきたそれに、俺の身体がのけぞる。お湯がばしゃりと波打ち、その場に飛び散る。 どうにもこうにも、動きにくい。でも、いつもはこんなふうに抱き合ってなんてしない。俺が重いから膝の上に乗せるなと言ってしまうからだ。でも、湯船の中では少しだけ浮遊感があって、セシルへの負担も少ないだろうと、俺はセシルの首に腕を回す。
下から突かれるたび、もっといいところにあてたくて、自ら腰を動かしてしまう。
「あっ、ああ」
「ニル……奥、に挿入るからなっ!」
「んあぁっ、あっ、あぁっ。ま、待って、まてぇ、せしる」
待たない、というように、セシルは最奥を穿つ。その瞬間、目の前に星が飛んで、腰から頭にかけて、ビリビリとしたものが走っていった。頭までセシルに犯されているみたいで、目の前にハートが浮かんでしまう。だが、この奥があることを俺は知っていた。まだ、入りきらないけど、いずれは……
セシルは、その最奥をあけようとノックするが、俺は「まだ怖いから」と言ってしまい、セシルはそこでストップをかける。だが、最奥への攻撃はやむことなく、手加減しつつも、容赦ない腰を打ち付ける。そのたびに、俺の口からは嬌声が上がってしまう。その声を抑えたくても抑えきれない。風呂場だからというのもあって、自分の喘ぎ声が反響して恥ずかしい。羞恥心も相まって、俺は顔が真っ赤になる。のぼせたのか、それとも熱でか、羞恥心か。全てぐちゃぐちゃになって、流れていく。
そして、だんだんと激しくなっていく動きに、俺はただ喘ぐことしかできなくなってしまうのだ。バシャン、バシャンと波打つ湯舟。半分以上湯船から出てしまっていたし、何だったら、身体も寒いのか温かいのかわからなくなっていった。でも、目の前の熱を、与えられるこの熱が、内側から俺を温める。
「ああっ! あッ! やぁああッ! あっ!」
「は、あ……っ」
頭がくらくらする。セシルのが奥に当たるたびに、俺は彼の名前を呼びながら喘ぐことしかできない。
「ああっ! ああぁっ! しぇぃるぅ……!」
「ニル……っ」
呂律なんてもう回らない。セシル、セシルって名前を呼びたいのに、キスも何度かされて、ふやけた舌は回らなくなっていた。
舌足らずな俺を愛おしそうに、さらにセシルが俺の舌をチュッと吸うものだから、舌先の感覚なんてない。もう、何をされてもピクンピクンと体が反応してしまう。
そして、もう限界だとばかりに、セシルが俺の身体をさらに強く抱きしめた。俺は振り落とされないようにと、彼の首に手を回した。そして、俺の腰を掴むと、彼はラストスパートをかけるように、さらに激しく腰を動かした。
「あッ! ああぁッ! い、イク、イっちゃう、からああっ!」
「クッ、ニル……っ、俺も」
俺も限界だと、彼のそれを締め付ければ、彼は苦しげにうめいて、俺の中に熱いものを放った。飛沫が、中を汚していく。まだ、ドクドクとでているし、ゆっくりとしぼんでいくそれを、俺は中で感じていた。セシルの精と、お風呂のお湯で、お腹はちゃぽちゃぽだ。
「はあっ……はー……んっ」
「は、はぁ……ニル……」
ずるりと中からそれが引き抜かれていく感覚に俺は身震いする。セシルは、そんな俺の声に反応を示しつつも、これ以上は無理できないというように、俺から出ていくと、きゅっと優しく抱きしめた。
「悪い、無理させたな」
「……んー? んん、大丈夫。今日も気持ちよかったし……で、でも、声響くから、しばらくは禁止で」
「あ、ああ……すごい声だったな」
いうな、と俺はセシルの乳首をつねってやれば「痛い」とセシルは顔を歪めた。俺は、そこを触られたら気持ちいいと感じてしまうようセシルに開発されたというのに憎たらしい。でも、悪態をつく余裕もなければ、まだぽわぽわと余韻から降りてこれない。
セシルのほうを見れば、まだしたいと顔に書いてあるから、これは二回戦だな、と俺はくすりと笑うしかなかった。
まあ、こういうのもたまにはいいと思う。
「じゃあ、十数えたら出るか。冷えただろ、ニル」
「まあね。ちょっと休憩してからね」
体の半分以上がお湯から出て入れたため、俺は肩までつかりなおす。そうして、俺たちは、互いの指を折り曲げながら、十数えて、ベッドへと直行したのだった。
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