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第1部4章 親友であって親友じゃない

10 好きだ◆

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「サマーホリデーなのに、寮にものを取りに行くってなんだか不思議な感覚だよね。だって、誰もいないんだよ?」
「ああ、そうだな。サマーホリデーか……」
「サマーホリデーでしょ? ああ、でも、そっか。セシルは家に帰ってもいろいろと大変だもんね。休みって感じしないか」


 俺がそういうと、頭が痛い、というようにセシルはうなって、持っていた寮のカギをぐるぐると回していた。

 学園創立記念パーティーが終わり、そして一週間ほど眠っている間に終業式が終わり、モントフォーゼンカレッジにサマーホリデーがやってきた。
 サマーホリデーに活動しているのは運動部くらいで、寮には人がいない。皆、忘れ物がないようにと確認したのち施錠をしてサマーホリデーに入ったため、寮に行くにはカギを借りる必要があった。
 俺の荷物はサマーホリデーに入る前に持ち帰れなかったこともあり、セシルについてきてもらって寮に取りに行くことになった。
 もうすっかり体調も回復して手足も十分に動かせるようになったのだが、魔力のほうは戻りが遅く、防御魔法が十分に使えるかわからないくらいだった。それもあって、セシルについてきてもらっているのだが、護衛する対象に護衛してもらうという申し訳なさと、情けなさでいっぱいになった。魔力がなくとも、剣の腕が……とも思ったが、病み上がりということもあって、セシル同行が余儀なくされた。

 セシルとしてはむしろそっちのほうがいいと、俺にべったりなのだが、あの日からさらに過保護が加速して、風呂まで一緒に入ることになった。
 意識が回復してまだ間もないころは、セシルに全身洗ってもらったし、何だったらそのせいで勃起してしまったペニスをしごいてもらって……死にたいくらい恥ずかしいし、羞恥心以外にも複雑な感情が頭を回って沸騰しかけた。だが、すべて善意でやってくれているのを知っていたので、変に意識するのもあれかと、俺は心を無にするしかなかった。


(でも、告白、聞けてないんだよな……)


 リューゲの襲撃がなければ、俺は何事もなくセシルに告白されて付き合って、恋人になって、そしてあの日抱かれるはずだった。それから、一週間以上もたってしまった。しかし! セシルは過保護になったくらいで恋人らしいことも、告白もしてくれていない。もしかしたら、俺が死にかけたことで、そんなことよりも! と、告白することが頭から抜けてしまっているのかもしれないけど。


「はあ……」
「どうした。荷物はこれくらいか?」
「え、ああ、うん。といっても、あんまり持ち帰るものなかったから」


 寮のカギを開けて、部屋の中に入る。
 部屋の中は、いつも通りきちんと整頓してあり、持ち帰るものはすべてそろえた。といっても、本当に持ち帰るものといったら課題と本くらいで、大きな荷物はなかった。一通り見終えて片づけて、俺は息を吐く。
 ちらりと、俺はベッドの上に置いた相棒の剣をみる。この剣にもお世話になったし、定期的にメンテナンスを続けていこうと思った。思えば、この剣を買いに行ってからか、少しずつ物語にずれを感じたのは。


(いや、ストーリー上のニルはこの剣を買ったかもしれない。だけど、それを握る前に死んじゃって……)


 なぜ生きているのか、二度も死にかけたのか。
 自身が狙われている理由について、全く心当たりがなかった。何もわからずじまい。

 深く考えず、そういう運命の元、ニル・エヴィヘットが生まれたからなのではないかと思うことにした。しっくりはこないが、生きているのなら問題ないじゃないかと。
 それか、もしくは死神に魅せられた、死に近い存在なのかもしれない。徒花のような――


「――ニル」
「何、セシル?」


 ちょっとの間、静寂が俺たちの間に流れる。ここまで気を張ってきたから、セシルは疲れたのだろうと思っていたが、それまでの空気が一変し、彼の夜の瞳が俺を射抜いた。
 あっ、という間もなく、距離を縮められ、セシルに手を握られる。セシルの手は熱くて、やけどしそうだった。


「ニル……あの日言えなかったこと、言っていいか?」
「え、ちょ、え……この、タイミング、で。ずるい」


 いきなりの告白宣言に、俺はたじろぐしかなかった。
 まさかこのタイミングで、と、俺は息をのむ。うまくつばが飲み込めなくて、むせそうになってグっとらえ、もう一度セシルのほうを見た。真剣な瞳が俺を射抜いている。

 ああ、忘れらていなかったんだと安心しつつ、俺はうん、と答えた。でも、ずるいという気持ちは正直あって、複雑だ。
 けれど、セシルはよかったというように笑うのだ。本当に都合のいい……けど、それがセシルだし、と微笑み返す。すると、セシルは少し待ってろと言って、詠唱を唱えた。なぜ魔法を? と思っていると、一瞬のうちに、俺たちの身体は魔法陣に包まれ、ふわりと風の吹く屋外へと転移する。


「……ここって」
「あの日、ここで告白しようとしていたんだ。全て台無しになってしまったが」
「……いいの? というか、魔法は」


 転移した場所は、時計塔の最上階だった。学園創立記念パーティーの日しか施錠が解かれない特別な場所で、普段は入れないようにと魔法までかかっているのに。


「魔法を分析して細工した」
「それ、皇太子が……学生がやっていいことなの?」
「いいだろ。そういう校則違反ができるのは学生のうちだ」
「……もう、都合のいい」


 セシルはしっかりと規律を守る性格だと思っていたが、ちゃっかりした学生だったのだと俺は思い知った。まあ、皇太子という堅苦しい責任の重い身でいるよりかは、ずっとセシルが生き生きとしている。こっちが本来のセシルなのだろう。

 吹き付ける風は涼しく、夏の照り付ける太陽を少しだけ冷ましてくれる。それでも、これから告白されるのだと、内側は暑くなり、心臓の鼓動が早くなる。
 俺は髪を耳にかけて、赤くなった耳に手を当てながらセシルを見る。


「てっきり、忘れてるかと思ってた」
「忘れるわけないだろう。ただ、タイミングを逃しただけだ」


 と、セシルは頬をかく。

 確かに、セシルはしっかり者でもあったな、と俺は苦笑する。いろんな面があって、でもそれがすべてセシルという人間を構築する要素なのだ。そう、全部セシルだ。俺の知っているセシル。俺しか知らないセシルだ。
 セシルは笑う俺を見て、むすっとした顔になったが、咳ばらいをすると、夜色の瞳をすっと俺に向けてきた。昼間の太陽の光を帯びたその瞳には、月が宿り、星が流れるような美しさを放っている。


「……ニル、俺はお前が好きだ」
「う、うん」
「小さいころからお前を見てきた。お前とずっと一緒に生きてきた。はじめは、親友のような兄弟のような関係だった。だが、いつの間にか、お前を目で追っていて、お前が隣にいないと寂しいと感じるようになった。俺を皇太子として扱わないお前が、護衛であり周りにはしっかりしていようと見せるお前が、たまらなく愛しくなった。俺の中で特別になっていた……」


 セシルは、思い出を語るように言う。


「ニルが俺にだけ向ける笑顔が好きだ。俺にだけ照れて、恥ずかしがってごまかすような顔も、寝顔も……これからも俺だけに見せてほしい。お前が特別だ。愛している……俺と付き合ってほしい、俺の隣に生涯ずっといてほしい。ニル・エヴィヘット。俺は、お前を一生愛すると誓う。愛している、ニル」
「もう、恥ずかしい。溢れすぎてるよ……セシル」


 愛が。愛おしい。

 俺は、彼がいい終わる前にセシルに抱き着いていた。本当はちゃんと最後まで聞いてからはい、といいたいのに、駆け出した身体とともに、返事をする。もちろん、はい、に決まってる。俺も一生セシルの隣にいたい。彼に愛される俺であり続け、俺の愛する彼の隣に。


「もちろんだよ、セシル。俺も、愛してる」


 好きを通り越して、愛おしすぎる。

 愛があふれて仕方がなかった。好きだ、大好きだ。これまで閉じ込めていたものがすべて溢れ出し、それをこぼさないようにと俺たちはキスをする。貪るように、もっととほしがるように。口を開いて、舌を絡めて、お互いの唾液を流し込んで。息ができなくなるほどキスをして、俺たちは名残惜しくも離れる。恥ずかしくて嬉しくて幸せで、死んでしまいそうだ。
 本当は、前世の記憶が戻る二年前から、この気持ちに気づいていたはずなのに。それが、遅れて、遠回りして今やっと通じ合って、両思い。長い両片思いはもうこれで終わりだ。

 セシルの名前を呼ぶと、彼は嬉しそうに笑うから。それで俺は満たされて、ああ、幸せだなって感じられる。
 生きていられる。セシルがいるだけで。何年も、何十年だって。


 それから俺たちは、教師に見つかる前に、寮に戻った。寮のカギを返すのは夕方まででいいし、それまで……ということで、約束していたあれをすることになった。
 俺のベッドに上がってきたセシルは、もう一度優しく俺にキスをする。そして、キスをしながら器用に俺の服を脱がせていく。あまりに手慣れたその動作に、「練習した?」と聞くと「イメージトレーニングは」と正直に答えるセシルが愛おしい。
 そんな会話をしながら、セシルは、さらけ出された俺の乳首にチョンと指の腹をつけた。


「前から思っていたがニル……お前、乳首がピンク過ぎないか?」
「ぴっ……そ、そうかな。自分ではわからないけど……セシルがいうなら、そうなの、かも?」
「ああ、ピンクだ。それに、少し大きい気がする。吸っていいか?」


 と、セシルは恥ずかしげもなく言う。まじまじと見るものだから、恥ずかしくて目があけていられない。
 俺は、ひっと、声が漏れそうなのをこらえて、セシルがしたいことならとこくりと首を縦に振った。セシルは、ごくりとつばを飲み込んで、口を近づけてくる。俺は彼が俺の乳首を吸いやすいように胸を突き出した。


「んっ……んん……」


 ちゅうっ、ちうっと、俺は吸われる感覚に思わず声が漏れてしまう。胸を舐められるのも、乳首をこねられるのも慣れていないはずなのに、そこはずっと待っていたというように、じんと強すぎる刺激を受けて震えていた。
 強く吸引されるのに弱い。セシルが一生懸命吸っているのを見てしまったら、もう愛おしさと恥ずかしさで頭がショートしそうだった。なんでそんな、一生懸命になっているんだと、突っ込みたいのに、刺激が言葉を遮る。


「あっ……あ、せ、しる。そんな強く吸っちゃダメ」
「かわいいピンク色が、赤くなってしまったな。すまない」
「何、に、たいしてあやまってんの」


 恥ずかしいから、そういうこと口にしないでほしい。てか、俺の乳首に謝らないでほしい。
 セシルはよだれで濡れた口を離して、口元を手で拭いながら言う。彼が離れたからといって、俺の乳首はツンと上を向いてじんじんと先ほどまでの刺激を思い出すようにわなないていた。セシルのいった通り、彼に吸われて、ピンクから赤に変色した気がしてはずかしい。もう人まで服は脱げないかもしれない。そんなことを思っていると、セシルは、俺のベルトに手をかける。


「いいか?」
「や、やるんでしょ。でも、自分で脱げるから」


 そこまでしてもらわなくても、と思って自分で脱いでみるが、その間もじっと見られてしまい俺は恥ずかしくて仕方がなかった。まるで、命令されて脱いでいるような気もして、視姦されている気分になる。
 おずおずと俺は脱いで、パンツ一枚になれば、セシルはそれも脱げと俺に言ってきた。圧倒的攻めのオーラに俺は押されて、最後の砦であるパンツさえ脱いでしまう。すでに、パンツにシミを作るほど先走りがあふれており、糸を引いていて恥ずかしかった。濡れたパンツはベッドの端へと投げ捨てる。
 俺だけ裸になって、セシルは上半身だけ脱いで、なんだか不公平な気がした。


「セシルも脱いでよ」
「あとで脱ぐ。まずは、お前のを解させてくれ」
「解すって……じ、自分でやるから」
「見せてくれるってことか?」
「え、いや…………うう、じゃ、じゃあ、セシルが」


 なんでこんなことまで言わなければならないのだろうか。
 本番行為までに俺は羞恥心に殺されてしまうかもしれない。さすがに恥ずかしくて、俺はひっくり返ると、尻だけをセシルに突き出す形で枕に顔を埋めた。顔を見ながらなんて、今の俺には無理だ。
 しばらくして、タラリと尻の割れ目に何かが垂れ、それが俺の縁をなぞる。ぞわぞわっとした何とも言えない感覚が這い上がり、俺はシーツを握りしめた。


「指を入れるぞ」
「うん……」


 くぷっと指が入っていくのがわかった。第一関節、第二関節と、ゆっくりだから彼の指の動きがダイレクトにわかる。一本だった、それでも、彼の指をすんなりと飲み込んでしまったのは、以前抱かれると思ってそこを弄っていたから。一週間以上あいたが、かなり丹念に弄ったこともあって、慣れたようにすんなりと指が入ってしまう。
 指摘されませんようにと、祈っていたが、それはむなしく打ち砕かれることとなった。


「こんなに、簡単にはいるものなのか?」
「……ち、が」
「何が違うんだ?」


 ぐぷ、と二本目を埋めながらセシルは俺に聞いてくる。口から、漏れた声はすでに高くなっており、枕にもう一度顔を埋めた。
 否定しなければよかった。口が裂けても言わないでおこうと思ったのに、ぐちゅぐちゅと自白を迫るセシルの指の動きに負け、俺は口を開かざるを得なくなった。


「あの日……っ、抱かれると思って。準備、してた……」
「俺を思ってか?」
「当たり前じゃん、他に誰が……ああっ!」
「かわいすぎるだろ。ニル。だが、これからは俺にやらせてくれ……で? ここが、ニルの弱いところだな」


 ぐぐっ、とある一点をかすめ取ると、身体に電流が走って、脳を刺激する。きっと前立腺といわれるところを押されたのだろう。BLでよく見るやつ。
 セシルはそこを重点的に押したりつねったりして、俺の反応を楽しんでいた。それだけでも、耐えきれない快楽に、俺は腰を震わせ、息も絶え絶えだ。


「あっ……ああっ! せ、しるっ!」
「かわいいな、ニル。もう少ししたら、挿入るからな」


 はあ……とうっとりとした声が鼓膜を刺激する。俺の尻は浮いてしまって、もう足ががくがくと小鹿のように震えていた。
 もうやめてくれと俺が懇願しても、セシルは聞いてくれない。むしろ俺の反応を見て喜んでいるような気さえしてくる。三本目が追加されて、俺の中でバラバラに動く彼の指の感覚を必死に快楽として俺は耐えていたが、短時間で彼に開発された身体はもう限界だった。


「だめ……あぁあああああぁあ!!」


 身体が震え、熱くなっていたものがはじけた。ぴゅ、どぴゅっ、とシーツを汚す。そういえば、シーツを洗うなんて考えが全くなかったので、どうしようと、一度出したばかりの頭が考える。だが、そんな考えさえもかき消すように、セシルが俺の身体の向きを変えた。


「せし……」
「ニル」


 見上げれば、自身の大きなモノを掲げたセシルが俺を見下ろしていた。紅潮した顔に、荒っぽい息。そして、反り上がったそれを俺の穴へと押し当てる。


「挿入れていいか、ニル?」
「う、うん。お手やわらかに」
「善処はするが……ニルが可愛いからな、止められないかもしれない」 


 グッと押し込まれる感覚がした。それは指なんかと比べ物にならないほど質量があって、ゆっくりと俺の中に侵入してくる。カリ首がぐぷりと入って、それから長くて太い肉棒が俺の中に押し込まれる。はじめこそ、呼吸を忘れそうになったが、息を吐け、とセシルに耳元でささやかれ、俺は呼吸の仕方を思い出した。
 そうしているうちに、セシルは俺の中に押し入って、ぴたりと止まった。おなかの中がいっぱいになるほど、セシルが俺の中に入っている。動かなくても、ドクドクと脈打っていた。


「あっつ……」
「はっ……挿入ったぞ、ニル。動いていいか?」
「ま、って。まだ、熱くて。セシルが、ここに入ってるんだって、ちょっと、感じてたいかも」


 初めては痛いと聞くが、苦しみはあったが、彼がすっぽりと俺の中に納まった瞬間多幸感に包まれた。待ちわびていたものというか、好きな人とつながれた喜びをかみしめていたい。始まったばっかりなのに、もうすでにセシルでいっぱいになっていた。
 俺は、するりと彼が入ったところまで腹を撫でてうっとりと見ていたら、俺の細い腰をセシルが掴んでいきなりどちゅんと俺をつきあげた。


「かっ、はっ……せし……?」
「今のはお前が悪いっ」


(待って、今、全部入ってなかったの?)


 根元まで入れ込むように突きあげた動き。そして、脳天を刺激した快楽に俺は頭が追い付かない。それに、一度達していた身体は簡単に陥落したようで、軽く突かれただけなのにビクビクと俺の腰は痙攣していた。
 腹に自分の生暖かい精液がかかっている。二度の射精でペニスはくったりとしているのに、中は元気に、ぎゅうぎゅうとセシルを食い絞めている。


「あっ……あっ……」
「……に、るっ」
「や、まって、まだ、俺っ!」


 もう無理だと俺が言ってもセシルは聞いてくれない。むしろ、彼はより激しく腰を振り始める。ずちゅん、ずちゅんと結合部から音が響く。滑りが良くなったのか、スムーズにセシルのが出たり入ったりする。
 パンパンと、肉がぶつかり合う音が鳴り、そのたびに俺は喘ぎ声をあげてしまった。今、許容量を超えているのに、セシルは止まってくれない。


「あ……っ! ああぁ!」 


 もう、気持ちいいしか考えられなかった。

 さっきまで、セシルは童貞……だったくせに、まるで慣れているかのように俺のいいところをえぐり取って、突き上げる。腰使いは荒いもののそれが俺にはよくて……よくなくて! 一度の突きですぐに達してしまうほどだった。また、むくりと息子が立ち上がるが、三度目ということもあって少し元気がない。けれど、身体は足りないと、セシルのを搾り取ろうとしている。まるで、セシルのを受け入れるのを慣れているようなそんな身体だ。


「ニル、好きだ」
「あっ……お、俺も……好きぃい!」
「ああ……一緒だな」


 彼はそう答えると、さらに激しく俺の中を突き始めた。
 無意識のうちに、俺はセシルの背中に手を回していた。力が入らなくて、どうにか抱きしめようとしては彼の背中に爪を立ててしまう。あ、と思ったときにはかなり深くひっかいてしまっていた。


「ごめ、せしるっ」
「大丈夫だ。ほら、こうやって密着すれば抱きしめられるだろ?」
「う、うんっ。セシル、ありがと……すきぃっ」


 彼から、俺が抱き着きやすいようにと密着してくれた。これはこれで恥ずかしいのだが、同じように早くなった心臓の音を近くで聞けるのが嬉しくて、俺は無我夢中で彼に抱き着いた。すると、セシルのが俺の中でまた一段と大きくなった気がしたのだ。あれよりも大きくなるのかと、先ほど見たそそり立つセシルのペニスを思い出しては、ぎょっとする。腹がパンパンに膨れ上がって、彼の形に腹が変形してしまったように錯覚しそうになった。


「あっ、んっ……せ、せしるっ」
「はっ……もうすこし、ゆるめてくれ!」
「む、むりぃ……セシルのがデカいからあぁっ!」
「食いちぎる気か……っ、クソ、ニル。それ以上、かわいくならないでくれ」
「かわいくって、なにっ!? あ、っ、やあっ、ああっ!」


 彼に抱き着いたせいで余計に距離が近くなって、耳元で彼の吐息が聞こえる。必死になって腰を振って、離さないって俺を抱きしめて。
 俺は、腰を反らせて快楽から逃げようとしてしまうが、セシルはそれを許してくれない。逃げようとした罰とでもいうように彼は俺の首を甘噛みした。


「ああぁっ! ん、ああぁ!」
「クッ、出すぞ。ニル、受け止めてくれっ」
「ぁえ? んっ、い、いよ……っ、あああっ!」


 びゅるるっ、と中に熱い飛沫が注がれる。内側からやけどしそうで、俺は身を震わせる。そんな俺の身体に擦り付けるように、セシルは最後の一滴まで俺に注ぎ込んで腰を動かした。
 しばらくして、俺の中からで彼は出ていくと、ぽっかりと栓を失ったそこからどろりとセシルのが垂れる。俺はそれを感じながら、セシルを見上げた。彼は何も言わなくても、チュッと俺のおでこにキスをして、一瞬だけ違う方向を見てからまたこちらを見た。


「夕方までもう少しある。少し、寝てろ。ニル」
「でも……」
「どこにもいかないから、安心しろ」


 そうじゃないんだけど、といいたかったが、疲労感から睡魔が襲ってき、俺は自分を抱きしめるセシルの温もりに浸りながら目を閉じた。胸の中は熱くて、幸せでいっぱいに満たされていた。


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