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妃といえど
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(タタタタっ!ドン)
その瞬間、ドアを勢いよく開けて男性が入って来たのであった。
「陛下!」
「大声が聞こえましたが大丈夫ですか!」
それは部屋前で見張りをしていた臣下であり前帝の代から右腕として働いている李尚書だった。
すると目の前には壁の前で後頭部を触る滄波の姿があり、必死に謝る香蘭の姿が。
苦虫を噛み潰したかの様な顔に眉間のシワはこの国の皇帝に対する香蘭への怒りが前面に出ていた。
一歩一歩と二人に近づぐ足音は怒りにまみれ床の前に着く。
(ドン!)
勢いよく床の前にお茶等が置かれている机を叩く音は大きく、しばらく沈黙が流れた。
「この娘!!自分が何をしたか分かっているのか!」
「陛下に向かって大声を出すとは無礼も甚だしい!」
「それから何故に陛下は後頭部を押えてらっしゃるのです?まさか小娘…」
布をまっていない香蘭をお構いなしに寝床から引きずり降ろそうと腕を掴む力は強く、まるで今すぐにでも腕をへし折ろうとでもするかの勢いである。
「きゃあ!い…痛い…痛いです…」
”がしっ”
(…え…力が緩んだ?)
痛みが緩み閉じていた目を開ける。
自分の右腕を掴んでいた李尚書の腕を今度は滄波が掴みあげており、無言で睨みつけている彼の目からは殺気だっている。
「これだから他の国の者など妃に何て反対なんです!」
それは自国の黎耀国出身ではない香蘭を妃に立てた滄波に対して忠告だった
すっと香蘭から離れる李尚書。
「これで隠しておけ」
そう言われ布に包まる香蘭の体は、とんでもない事をしてしまった重圧から震えが止まらず唇も小刻みに動く程であった。
しかし一国の皇帝に対しての無礼は妃といえど取り締まるのが尚書として先帝から仕えてきた役目だと。
「その女をお渡し下さい」
横目で見た香蘭は俯いており光沢のある黒い髪の横髪が流れ、顔を隠して表情が見えないが震えている口元。
「ふう…」
ため息を一度つき嫌味っぽく、そして怒りに満ちた口調で李尚書に問いかける。
「誰が勝手に入って来いと言った」
寝床の長枕の下から皇帝として忍ばしてあった護身用の中国刀を取り、鞘をとる。
それを李尚書に向ける姿は怒りに満ちていた。
「…へ…陛下…」
香蘭から見れは背を向け立っている陛下の後姿で李尚書の姿が見えないようになっていた。
それは怖がっている香蘭を案じて、あえて見えないようにしていたのだ。
「陛下!」
「その者は無礼を働いたのですよ!宰相として官僚として見過ごすわけにはいきません」
李宰相の瞳に一点、映るのは陛下の姿。
それはひとえに彼女に対する憎悪の様な感情、絶対に香蘭を受け入れはしないとの決意の様なものがかもし出されていた。
「その女は、妃となる人物だ。尚書といえど体に触れるなど、今すぐお前を罰するぞ」
怒りに満ちた鋭い目つきが、一瞬にして皇帝としての威厳を放っていた。
「陛下…」
そっと立ち上がろうとする香蘭に腰に当てていた左腕を横に伸ばし、踏み込んでくるべきではないと止める。
前帝から仕えて来た事による人脈も含め、彼自身にもそれなりの権力があるのか全くひるむ気配などない。
二人とも言葉は発さない。
だが目を互いに一切そらさない強姿勢。
息をのむ様な二人の間には誰も立ち入れるような雰囲気はなく、一歩でも彼らの間合いに入ろうものなら取り殺されそうな殺伐とした空間だった。
「彼女は他国の娘です。皇太后、つまり陛下の生母さまのお言葉で後宮入りは承諾しましたが、皇后にはくれぐれも国内の者でお願い致します!」
陛下を通し、その先に見える香蘭に対する警告でもある。
(ドクン)
体にまとっている衣を掴む手に「ぎゅ」と力がはいる。
「これは他の臣下の目もあるのです!」
「没落寸前の下位の王族の娘が皇妃など、あってはならないです」
二人の会話をうつむいて聞く姿は、自分の身分という物のを突きつけられた瞬間でもあった。
その瞬間、ドアを勢いよく開けて男性が入って来たのであった。
「陛下!」
「大声が聞こえましたが大丈夫ですか!」
それは部屋前で見張りをしていた臣下であり前帝の代から右腕として働いている李尚書だった。
すると目の前には壁の前で後頭部を触る滄波の姿があり、必死に謝る香蘭の姿が。
苦虫を噛み潰したかの様な顔に眉間のシワはこの国の皇帝に対する香蘭への怒りが前面に出ていた。
一歩一歩と二人に近づぐ足音は怒りにまみれ床の前に着く。
(ドン!)
勢いよく床の前にお茶等が置かれている机を叩く音は大きく、しばらく沈黙が流れた。
「この娘!!自分が何をしたか分かっているのか!」
「陛下に向かって大声を出すとは無礼も甚だしい!」
「それから何故に陛下は後頭部を押えてらっしゃるのです?まさか小娘…」
布をまっていない香蘭をお構いなしに寝床から引きずり降ろそうと腕を掴む力は強く、まるで今すぐにでも腕をへし折ろうとでもするかの勢いである。
「きゃあ!い…痛い…痛いです…」
”がしっ”
(…え…力が緩んだ?)
痛みが緩み閉じていた目を開ける。
自分の右腕を掴んでいた李尚書の腕を今度は滄波が掴みあげており、無言で睨みつけている彼の目からは殺気だっている。
「これだから他の国の者など妃に何て反対なんです!」
それは自国の黎耀国出身ではない香蘭を妃に立てた滄波に対して忠告だった
すっと香蘭から離れる李尚書。
「これで隠しておけ」
そう言われ布に包まる香蘭の体は、とんでもない事をしてしまった重圧から震えが止まらず唇も小刻みに動く程であった。
しかし一国の皇帝に対しての無礼は妃といえど取り締まるのが尚書として先帝から仕えてきた役目だと。
「その女をお渡し下さい」
横目で見た香蘭は俯いており光沢のある黒い髪の横髪が流れ、顔を隠して表情が見えないが震えている口元。
「ふう…」
ため息を一度つき嫌味っぽく、そして怒りに満ちた口調で李尚書に問いかける。
「誰が勝手に入って来いと言った」
寝床の長枕の下から皇帝として忍ばしてあった護身用の中国刀を取り、鞘をとる。
それを李尚書に向ける姿は怒りに満ちていた。
「…へ…陛下…」
香蘭から見れは背を向け立っている陛下の後姿で李尚書の姿が見えないようになっていた。
それは怖がっている香蘭を案じて、あえて見えないようにしていたのだ。
「陛下!」
「その者は無礼を働いたのですよ!宰相として官僚として見過ごすわけにはいきません」
李宰相の瞳に一点、映るのは陛下の姿。
それはひとえに彼女に対する憎悪の様な感情、絶対に香蘭を受け入れはしないとの決意の様なものがかもし出されていた。
「その女は、妃となる人物だ。尚書といえど体に触れるなど、今すぐお前を罰するぞ」
怒りに満ちた鋭い目つきが、一瞬にして皇帝としての威厳を放っていた。
「陛下…」
そっと立ち上がろうとする香蘭に腰に当てていた左腕を横に伸ばし、踏み込んでくるべきではないと止める。
前帝から仕えて来た事による人脈も含め、彼自身にもそれなりの権力があるのか全くひるむ気配などない。
二人とも言葉は発さない。
だが目を互いに一切そらさない強姿勢。
息をのむ様な二人の間には誰も立ち入れるような雰囲気はなく、一歩でも彼らの間合いに入ろうものなら取り殺されそうな殺伐とした空間だった。
「彼女は他国の娘です。皇太后、つまり陛下の生母さまのお言葉で後宮入りは承諾しましたが、皇后にはくれぐれも国内の者でお願い致します!」
陛下を通し、その先に見える香蘭に対する警告でもある。
(ドクン)
体にまとっている衣を掴む手に「ぎゅ」と力がはいる。
「これは他の臣下の目もあるのです!」
「没落寸前の下位の王族の娘が皇妃など、あってはならないです」
二人の会話をうつむいて聞く姿は、自分の身分という物のを突きつけられた瞬間でもあった。
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