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第9章 氷の女王
108 氷の女王Ⅺ
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引き金を引くと、弾は一直線に百メートル先の的に目掛けて飛んでいく。
軌道を描き、弾を的の右横に反れ、外れる。
「!」
エミリーは、外したことに違和感を覚えた。
いつもだったら百発百中のエミリーが、自ら外したのだ。
――――この私が外した? あり得ない‼
――――確かに標準を定めたはず……。
自分の右手を見ると、ぶるぶると震えている。
緊張ではない。
大きく深呼吸をする。
狙撃手は、一発で当てなければ意味が無い。自分の場所を教えると同時に、相手からの狙撃によって殺されるからだ。
――――大丈夫。次は当たる。
エミリーはもう一度、スコープを覗き込んで的の中央を睨みつける。
もう一度、集中する。
引き金を引くと、二発目の狙撃をする。
プシュ!
と、小さな音が鳴り、当たったか確認する。
スコープから見える的の中央に小さな穴が開いているのが見えた。
的に命中したのだ。
「すごっ!」
後ろで立って双眼鏡で的を眺めていたデミトロフが驚いた。
「あんな遠い所に当てるなんて本当にすごいよ! ぼ、僕にも教えてよ!」
デミトロフはさっきの事を忘れたかのようにはしゃいでいた。
――――え? もう忘れたの⁉
――――男の子って、違うものを見ると変わってしまうのね。
――――ほんと、男って生き物は単純……。
エミリーは、フッと笑みを浮かべてさっきまで変な事を考えていた自分が馬鹿馬鹿しくなった。
「でも、最初の一発目を外していますから今の私は死んでいるんですよ」
「どうして?」
エミリーが的中させたのに不思議な事を言いだし、デミトロフは疑問に思った。
「いいですか? 狙撃手というのは、一発で敵を仕留めなければなりません。例えば……そうですね、狩りをする時に動物は音に反応するのは知っていますよね?」
軌道を描き、弾を的の右横に反れ、外れる。
「!」
エミリーは、外したことに違和感を覚えた。
いつもだったら百発百中のエミリーが、自ら外したのだ。
――――この私が外した? あり得ない‼
――――確かに標準を定めたはず……。
自分の右手を見ると、ぶるぶると震えている。
緊張ではない。
大きく深呼吸をする。
狙撃手は、一発で当てなければ意味が無い。自分の場所を教えると同時に、相手からの狙撃によって殺されるからだ。
――――大丈夫。次は当たる。
エミリーはもう一度、スコープを覗き込んで的の中央を睨みつける。
もう一度、集中する。
引き金を引くと、二発目の狙撃をする。
プシュ!
と、小さな音が鳴り、当たったか確認する。
スコープから見える的の中央に小さな穴が開いているのが見えた。
的に命中したのだ。
「すごっ!」
後ろで立って双眼鏡で的を眺めていたデミトロフが驚いた。
「あんな遠い所に当てるなんて本当にすごいよ! ぼ、僕にも教えてよ!」
デミトロフはさっきの事を忘れたかのようにはしゃいでいた。
――――え? もう忘れたの⁉
――――男の子って、違うものを見ると変わってしまうのね。
――――ほんと、男って生き物は単純……。
エミリーは、フッと笑みを浮かべてさっきまで変な事を考えていた自分が馬鹿馬鹿しくなった。
「でも、最初の一発目を外していますから今の私は死んでいるんですよ」
「どうして?」
エミリーが的中させたのに不思議な事を言いだし、デミトロフは疑問に思った。
「いいですか? 狙撃手というのは、一発で敵を仕留めなければなりません。例えば……そうですね、狩りをする時に動物は音に反応するのは知っていますよね?」
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