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第9章  氷の女王

103  氷の女王Ⅵ

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「おい、ハウロック。お前がこんな奴の戦いを観戦に来るとはな。氷結の秀才が何の吹き回しだ?」


 ハウロックと同じ魔法科の男子生徒が声をかけてきた。


「ああ。面白いから見に来ただけだ。まぁ、賭け事はそのついでだ。それよりもお前はこの戦いをどう思う?」


「そうだな。戦いも中盤。体力的には男があると言うが、どちらともほぼ互角。まあ、ここからは運次第じゃないのか?」


「本当にそう思うか?」


 ハウロックは、確証があるかのような言い方をする。


「はぁ? お前、どちらが勝つか分かっているのかよ!」


「ああ、そう言ったつもりだが?」


「じゃあ、どっちが勝つって言うんだよ!」


「それは……」


 ハウロックはコインを見せ、フッと笑った。


「おいおい……マジで言っているのかよ……」


 男子生徒は、ハウロックが出した答えを見て言葉を失った。





 エミリーは建物を伝ってデミトロフを探していた。


「ここまで姿を隠しているということは、罠を張っているかもしれませんね」

 エミリー、双眼鏡を使って、周囲を確認した。


 ――――つまりは地上を移動しているって事ですか。


 ――――私と狙撃戦に持ち込むというわけですね。


 もし、時計塔から狙われるとするならば、角度が四十五度の位置。つまりは相手から見える場所で構えるしかありませんね。


 エミリーは建物の屋上を軽々と、飛び越えながら狙撃ポイントに向かう。


 時刻は開始して三十分が過ぎていた。


 観客席は少しずつ静まり返る。


 最初の激闘が凄すぎて、ほとんどの人が飽きてきたのだ。


 だが、一部の生徒は真剣に二人の動きを観戦している。


 ――――弾は十分にある。でも、狙撃は一発勝負。


 ――――やるしかないわね。


 エミリーは、建物の屋上を草原のように飛び越えながら走り回る。





 ――――やはり、狙撃戦に持ち込まれたか……。
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