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第8章 若き魔導士の追憶
088 若き魔導士の追憶Ⅰ
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マリエスト国・セントラル中央司令部――――
この司令部のある部屋に一人の男が昼間から自分の席に座り、書類を飲みながらコーヒーを飲んでいた。
男の名は、ジョン・デミトロフ。
マリエスト国軍の大佐の地位に在籍しており、魔導士である。
二つ名は『氷結の魔導士』。
名前の通り、氷系統に詳しい魔導士である。そしてもう一つ、彼もまた、裕也と同じ錬金術師でもある。
彼に目の前には部下であるエミリー・ウィリアム大尉が立っていた。
「大佐。書類はお早めに目を通してもらわないと困りますよ。部下たちが、いつも忙しそうに机に向かって頑張っていましたけど……」
「ああ……」
「聞いているんですか?」
「聞いてる」
「じゃあ、なんでそんなにボーっと、しているのですか?」
エミリーは、心配そうにデミトロ不を見つめる。
「雨、止まないな……」
デミトロフは椅子を回転させ、窓の外を見る。
セントラルには、雨が降っていた。
今日の予報では一日中雨らしい。冷たい雨がこのセントラルに降っている。
「そうですね……」
エミリーは何か察したかのように遠い目をしながらセントラルの雨を見つめる。
――――そうか。今日は……。
「大尉。今日と明日、共に休暇を取らないか?」
「今からですか?」
「そうだ。今すぐに行きたいところがある」
デミトロフは立ち上がって、書類を机の上に置き、残りのコーヒーを一気に飲み干す。
「分かりました。一度家に帰って支度をします。それに部下たちにもしっかりと言っておきますから、帰ったら全て大佐がしてくれるって……」
「おいおい、それはないだろ……」
「ふふふ……。冗談ですよ」
この司令部のある部屋に一人の男が昼間から自分の席に座り、書類を飲みながらコーヒーを飲んでいた。
男の名は、ジョン・デミトロフ。
マリエスト国軍の大佐の地位に在籍しており、魔導士である。
二つ名は『氷結の魔導士』。
名前の通り、氷系統に詳しい魔導士である。そしてもう一つ、彼もまた、裕也と同じ錬金術師でもある。
彼に目の前には部下であるエミリー・ウィリアム大尉が立っていた。
「大佐。書類はお早めに目を通してもらわないと困りますよ。部下たちが、いつも忙しそうに机に向かって頑張っていましたけど……」
「ああ……」
「聞いているんですか?」
「聞いてる」
「じゃあ、なんでそんなにボーっと、しているのですか?」
エミリーは、心配そうにデミトロ不を見つめる。
「雨、止まないな……」
デミトロフは椅子を回転させ、窓の外を見る。
セントラルには、雨が降っていた。
今日の予報では一日中雨らしい。冷たい雨がこのセントラルに降っている。
「そうですね……」
エミリーは何か察したかのように遠い目をしながらセントラルの雨を見つめる。
――――そうか。今日は……。
「大尉。今日と明日、共に休暇を取らないか?」
「今からですか?」
「そうだ。今すぐに行きたいところがある」
デミトロフは立ち上がって、書類を机の上に置き、残りのコーヒーを一気に飲み干す。
「分かりました。一度家に帰って支度をします。それに部下たちにもしっかりと言っておきますから、帰ったら全て大佐がしてくれるって……」
「おいおい、それはないだろ……」
「ふふふ……。冗談ですよ」
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