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第3章 三年後の世界
031 三年後の世界Ⅷ
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湯煙のせいで視界が濁っており、自分の顔がはっきりと鏡に映らない。
二葉は目の前にある鏡が毎回曇るたびにお湯をかけて、自分の顔が見えるようにしていた。
「二葉、そんな事をしてもすぐ曇るだけですよ」
「いい……。そこまで気にしていないから」
「いや、それって気にしすぎでしょ。顔なんて見なくたって洗えるでしょ」
「そーいう問題じゃない」
二葉は頭を洗い終えるとタオルをお湯に濡らし、石鹸で泡立てると体全体を隅々まで洗い始めた。
「明日はどこを調べるんだっけ?」
「たぶん協会とか遺跡みたいなところを調べるんじゃないの? ユーヤは、そういった所から敵の尻尾を見つけるのが得意だから……」
「ふーん。三久、あんたの方の研究はどうなっているの? もうそろそろじゃない?」
「ええ……そんなに研究がうまくいったのなら良かったんですけどね……。何しろこれを求めるにはもう少し時間がかかりそうです」
三久はお湯で体に付いた石鹸の泡を洗い流し、タオルを冷たい水でしっかりときれいに洗い終えると、風呂の中に足から入り、肩までゆっくりと浸かった。
一花も二葉も体を洗い終えると、風呂に浸かった。
その頃、裕也は一階のフロントで電話を借りていた。
ダイヤルを回し、電話回線がつながりだすと、相手が出るまで待ち続ける。
『はい、こちらセントラル中央司令部』
ようやくつながった。
「俺は桜井裕也。そっちにいるデミトロフ大佐と話がしたい」
『分かりました。それでは一番回線につなげますので少々お待ちください』
と、回線が変わる音が電話の向こう側で聞こえた。
『はい、こちらデミトロフ』
「よぉ、大佐。久しぶりだな……」
『げっ、その声はユウヤか……。お前が話す前に少し待て、お前の言いたいことはよく分かっている』
裕也と電話で話している相手はマリエスト国・セントラル中央司令部所属、ジョン・デミトロフ大佐だ。三年前から変わらず大佐であり、上に昇進していない人である。
能力はあるくせにそれをもっと有効活用としない大佐であり、その部下たちは毎度毎度、頭を悩まされているのだ。
『今は忙しい。後でかけ直す。だから待っていろ』
二葉は目の前にある鏡が毎回曇るたびにお湯をかけて、自分の顔が見えるようにしていた。
「二葉、そんな事をしてもすぐ曇るだけですよ」
「いい……。そこまで気にしていないから」
「いや、それって気にしすぎでしょ。顔なんて見なくたって洗えるでしょ」
「そーいう問題じゃない」
二葉は頭を洗い終えるとタオルをお湯に濡らし、石鹸で泡立てると体全体を隅々まで洗い始めた。
「明日はどこを調べるんだっけ?」
「たぶん協会とか遺跡みたいなところを調べるんじゃないの? ユーヤは、そういった所から敵の尻尾を見つけるのが得意だから……」
「ふーん。三久、あんたの方の研究はどうなっているの? もうそろそろじゃない?」
「ええ……そんなに研究がうまくいったのなら良かったんですけどね……。何しろこれを求めるにはもう少し時間がかかりそうです」
三久はお湯で体に付いた石鹸の泡を洗い流し、タオルを冷たい水でしっかりときれいに洗い終えると、風呂の中に足から入り、肩までゆっくりと浸かった。
一花も二葉も体を洗い終えると、風呂に浸かった。
その頃、裕也は一階のフロントで電話を借りていた。
ダイヤルを回し、電話回線がつながりだすと、相手が出るまで待ち続ける。
『はい、こちらセントラル中央司令部』
ようやくつながった。
「俺は桜井裕也。そっちにいるデミトロフ大佐と話がしたい」
『分かりました。それでは一番回線につなげますので少々お待ちください』
と、回線が変わる音が電話の向こう側で聞こえた。
『はい、こちらデミトロフ』
「よぉ、大佐。久しぶりだな……」
『げっ、その声はユウヤか……。お前が話す前に少し待て、お前の言いたいことはよく分かっている』
裕也と電話で話している相手はマリエスト国・セントラル中央司令部所属、ジョン・デミトロフ大佐だ。三年前から変わらず大佐であり、上に昇進していない人である。
能力はあるくせにそれをもっと有効活用としない大佐であり、その部下たちは毎度毎度、頭を悩まされているのだ。
『今は忙しい。後でかけ直す。だから待っていろ』
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