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第1章 インターハイ予選

010  インターハイ予選Ⅹ

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「……って、光介は温泉の中で鼻血はなぢを出すな‼汚れるだろうが!」
 湯に浸かりながら妄想もうそうをしていた光介から血が流れ出すのを見ていた秀人はさっとおけを顔の下に持って来て垂れだす血を湯につけないようにブロックした。
「それにしても、向こう側に行くにはどうすればいい……」
 和弥が女子風呂を覗くことしか考えていなかった。今日は運よく、桜坂高校が温泉を貸し切っている。だから、今しか覗くことしかできないのだ。
「ふっ、ふふふ……。お前ら、女子風呂を覗きたいと?そう、それは男の夢、いや、誰もが思っているはずだ!その夢を俺が叶えてやらんでもない!」
 二年の先輩の高橋健人たかはしけんとが、下半身にタオルを巻いて、頭には桶をかぶりながら、一年四人の前に堂々と立っていた。
「マジっすか⁉ま、まさか、覗いたことが‼」
 光介が健人の話に乗ってくる。
「ああ、だが、去年は防御が固すぎて、その線を突破することが出来なかった。しかし、今回は一年が四人もいて、こちらは攻撃力が大幅に上がった。こちらが負けることは天文学的数字に等しい‼あれを見ろ!」
 健人は叫びながら奥の扉を指差す。あれが何なのか、和弥たちは知らない。
「あれは、ボイラー室と言ってな。昔、東京の下町の銭湯では、男湯と女湯を繋いでいると俺の親父は言っていた。それで、去年‼俺はあいつらを誘ったのに乗って来たのは功一だけだった。この悔しさを胸に今年こそ、女子に勝つ!」
 男湯と女湯を結ぶ懸け橋のボイラー室に功一が先に立っているのを健人は見てしまい。自分の特攻隊長とっこうたいちょうの異名が盗られたがっくりときた。
「……ん?早く行くぞ?」
「な、なんで功一が一番最初にいるんだよ‼この作戦を考えたのはこの俺だぞ!」
「だから?」
「……はぁ、分かった。もう、いいから行こうか……。お前たちも着いてこい!」
 健人はフル装備をしたまま、功一の後にボイラー室に入っていった。その後に和弥かずや紀行のりゆき光介こうすけが続いて入っていった。
「あれ?秀人は一緒に行かなくてもいいのかな?」
「ええ、だって、これだけ大きな声を出していたら絶対に失敗する確率は99%ですから行く必要ないですよ……。天津先輩はいかないんですか?」
「僕?そうだね……覗くことより功一たちが逆に女子に仕返しされる方を見る方が面白いよ」
 祐希は人の弱みを握る方が生き生きして面白いと思っている。
「まあ、見ててよ。あと少しで、こっちに戻って来くるから……」
 そう微笑みながら言った。去年も同じ光景を見たからこそ言えることだ。
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