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第1章 インターハイ予選

008  インターハイ予選Ⅷ

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 和弥はセンターマークに置かれてあるボールを拾い上げると、一球はズボンのポケットの中に入れて、ボールを地面にはずませながら、相手の立ち位置、風の向きなどを見ながら、どこに打つかをじっくりと決め、ボールを真っ直ぐ上にトスして、ラケットをスイングする時、回転力を上げるために左上に打つようなイメージを持ちながら、スイングした。
 ボールはワイドに入り、外にボールが逃げるように軌道きどうを変えた。
(よし!狙い通りだ‼)
 和弥はすぐにラリーの体勢に入る。ボールはリターンされ、浅く入ってくるのが分かる。前に出て、クロス側にバックハンドで軽くドロップショットをして、前に落とし相手の反応を遅らせる。
15—0フィフティーンラブ
 それからポイントを和弥は連取して、あっさりと自分のサービスゲームをキープした。次の白石のサービスゲームを40—40フォーティオールまでもつれ込み、大会ルール上3回戦までノーアドバンテージにより、次のポイントでゲームになる。白石はトスが乱れて、修正せずにそのままスイングをしてきた。ボールはネットに引っかかり、セカンドサーブに入るファーストサーブよりサーブの威力があまりにも違いすぎて、和弥にとってはチャンスである。フォア側に回って、思いっきり打つ。ボールはストレート側ギリギリに入り、ラインの上を通る。
「ゲーム優木。ゲームカウント3—4」
「よし!」
 和弥はガッツポーズをして、右手拳を握った。自分のリズムをつかみ、調子がどんどん良くなっていく。

「ようやく、自分のテニスを出来ているな。この調子を保てば勝てる」
「急によくなって、逆にこの後のサーブゲームを落とさなければいいけどな……」
 それぞれ思いながら、和弥の試合を見ていた。
 秀人はビデオカメラで和弥の試合データを取りながら、PCにそのデータをアップする。5ゲーム目以降のプレーが一気に変わったことに興味きょうみが湧き、さらにデータを入力していく。
「これを見ろ。あいつのラリーやサーブを数値化して、未だしたものだが、前半より後半の方が良くなっている。それによって、相手のコントロールや集中力が切れていっていることがわかる。これは面白い数値となっていることが分かる。人は感情により色々と左右されやすいがここでこんなデータが取れるということは今後の練習次第では面白い結果になるだろうな……」
 秀人しゅうとを囲むように皆がPCに注目するが、理解できない表情をして、首を傾げた。
「つまり、秀人が自分らしいテニスをしている事なのか?」
「そう言うことになるな……」
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