12 / 16
第1章 インターハイ予選
007 インターハイ予選Ⅶ
しおりを挟む
「ゲーム白石。ゲームカウント4—1」
主審は記録用紙に細かく一試合の流れを書き込みながら、試合の審判をするのは大変である。それに比べて副審はボールがしっかりとコート内に入っているかどうかをボールをしっかりと目で追いかけながら判断する。
「はぁ……。水、水……」
白石はベンチにぐったりと座りながら、タオルで汗をしっかりと拭いて、ラケットのグリップに染み付いた汗も一緒に拭き取った。その後、ペットボトルに残っている少量の水を飲みほして、新しいペットボトルのふたを開けた。
(しかし、1ブレイクアップで助かった……。この後、1ゲームキープされたとしても俺がこのまま自分のサーブゲームをキープさえしておけば勝機は見えてくるが……それよりもあいつの動きは最初から硬かったな。俺と試合する前に2戦をしていたら、疲れが見えてくるらしい)
白石は主審の向こうに座っている和弥の横眼で見ながらそう思った。
(……不味いかな?1ゲームはキープしたものの、この展開はやっぱり駄目だ。あいつらの声は聞こえてくるがここからどうすればいい。何か、逆転する手はないのか?いや、絶対に相手にも隙があるはずだ。どうする……何をすればいい‼)
頭の思考をフル展開させながら、ゲーム展開の想像をしながら、口にスポーツドリンクを流し込む。
太陽も西に沈みだして、ボールの動きが少しずつ見えづらくなってきている頃である。もうそろそろ仕掛けなければ、和弥の負けは確定してしまうのだ。つまり、次のサービスゲームで体をリフレッシュし、リズムを変えるべきである。
「タイム」
審判がそう言うと、和弥は3戦目になって負担がくる体を立ち上がらせながらベンチの後ろに回り、ゆっくりと歩き出した。右を振り向くと仲間の声援が聞こえてくる。
「リラックスして、試合に集中しろ!先の事を考えるな!」
「ほら、深呼吸、深呼吸。ここが正念場だぞ。しっかりしろ‼」
「優木君、ここ頑張って‼皆応援しているよ‼」
桜坂高校の皆が和弥に声をかけてくる。試合中は声に出して応援できないから、休憩中に言ってくれるのだ。ありがたいことである。応援してくれる人、こうやってアドバイスをくれる人がいると肩の荷が下りてくるような感じがしてくる。
「ああ」
和弥は手を軽く振りながら、向こうのコートへと一人で歩いていく。自分が上に行くことしか考えていなくプレーが疎かになっているのは事実である。それに今日は2戦とも勝って、自分が天狗になっていたのが一番の原因であろう。そう思ってくると、なんだか恥ずかしくなってきた。
(先の事を考えるな……か。確かにそうだ‼目の相手は俺よりも強いことを自覚しないとな‼俺は今、負けていて、誰よりも弱い。この中で一番の怖がりな奴だ。負けていることを恐れている選手だ。自分の目で見てきたことに自信を持て、それを試合に生かさない選手がどこにいる‼俺はこの試合、一球、一球。相手に対して、自分の力をぶつけてやる!)
主審は記録用紙に細かく一試合の流れを書き込みながら、試合の審判をするのは大変である。それに比べて副審はボールがしっかりとコート内に入っているかどうかをボールをしっかりと目で追いかけながら判断する。
「はぁ……。水、水……」
白石はベンチにぐったりと座りながら、タオルで汗をしっかりと拭いて、ラケットのグリップに染み付いた汗も一緒に拭き取った。その後、ペットボトルに残っている少量の水を飲みほして、新しいペットボトルのふたを開けた。
(しかし、1ブレイクアップで助かった……。この後、1ゲームキープされたとしても俺がこのまま自分のサーブゲームをキープさえしておけば勝機は見えてくるが……それよりもあいつの動きは最初から硬かったな。俺と試合する前に2戦をしていたら、疲れが見えてくるらしい)
白石は主審の向こうに座っている和弥の横眼で見ながらそう思った。
(……不味いかな?1ゲームはキープしたものの、この展開はやっぱり駄目だ。あいつらの声は聞こえてくるがここからどうすればいい。何か、逆転する手はないのか?いや、絶対に相手にも隙があるはずだ。どうする……何をすればいい‼)
頭の思考をフル展開させながら、ゲーム展開の想像をしながら、口にスポーツドリンクを流し込む。
太陽も西に沈みだして、ボールの動きが少しずつ見えづらくなってきている頃である。もうそろそろ仕掛けなければ、和弥の負けは確定してしまうのだ。つまり、次のサービスゲームで体をリフレッシュし、リズムを変えるべきである。
「タイム」
審判がそう言うと、和弥は3戦目になって負担がくる体を立ち上がらせながらベンチの後ろに回り、ゆっくりと歩き出した。右を振り向くと仲間の声援が聞こえてくる。
「リラックスして、試合に集中しろ!先の事を考えるな!」
「ほら、深呼吸、深呼吸。ここが正念場だぞ。しっかりしろ‼」
「優木君、ここ頑張って‼皆応援しているよ‼」
桜坂高校の皆が和弥に声をかけてくる。試合中は声に出して応援できないから、休憩中に言ってくれるのだ。ありがたいことである。応援してくれる人、こうやってアドバイスをくれる人がいると肩の荷が下りてくるような感じがしてくる。
「ああ」
和弥は手を軽く振りながら、向こうのコートへと一人で歩いていく。自分が上に行くことしか考えていなくプレーが疎かになっているのは事実である。それに今日は2戦とも勝って、自分が天狗になっていたのが一番の原因であろう。そう思ってくると、なんだか恥ずかしくなってきた。
(先の事を考えるな……か。確かにそうだ‼目の相手は俺よりも強いことを自覚しないとな‼俺は今、負けていて、誰よりも弱い。この中で一番の怖がりな奴だ。負けていることを恐れている選手だ。自分の目で見てきたことに自信を持て、それを試合に生かさない選手がどこにいる‼俺はこの試合、一球、一球。相手に対して、自分の力をぶつけてやる!)
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
しゅうきゅうみっか!-女子サッカー部の高校生監督 片桐修人の苦難-
橋暮 梵人
青春
幼少の頃から日本サッカー界の至宝と言われ、各年代別日本代表のエースとして活躍し続けてきた片桐修人(かたぎり しゅうと)。
順風満帆だった彼の人生は高校一年の時、とある試合で大きく変わってしまう。
悪質なファウルでの大怪我によりピッチ上で輝くことが出来なくなった天才は、サッカー漬けだった日々と決別し人並みの青春を送ることに全力を注ぐようになる。
高校サッカーの強豪校から普通の私立高校に転入した片桐は、サッカーとは無縁の新しい高校生活に思いを馳せる。
しかしそんな片桐の前に、弱小女子サッカー部のキャプテン、鞍月光華(くらつき みつか)が現れる。
「どう、うちのサッカー部の監督、やってみない?」
これは高校生監督、片桐修人と弱小女子サッカー部の奮闘の記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる