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第1章 インターハイ予選
006 インターハイ予選Ⅵ
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そう言い残すと、白石はベースラインに戻っていき、サーブ練習を二回ずつ右と左を終えると、和弥が次にサーブ練習に入る。全て、セカンドサーブの威力をセーブして、コントロールに集中した。
宮崎県高校総体テニス競技シングルス1R 優木和弥(桜坂)VS白石透しらいしとおる(北王工)
「1セットマッチ、白石サービスプレイ————」
主審が大声で腹から叫んだ。審判台に座っているのは前の試合で負けた高校の人と同じ高校の先輩らしき人が主審と副審を務める。
(さて、半年で変わった俺の強さを今、ここで力を発揮する時が来た。今日の俺は絶好調だ。負ける気がしねぇ‼何処で何をしていたのかは知らねぇがやるからには勝つ‼)
白石はボールをコートに弾ませながら、サーブに入る前の調整を行った。
(あんなこと言われて、同じ土俵に立ってはならない。この一回戦を勝ち抜かないと俺は上へと上がれないんだ。大丈夫、俺は自分を信じて自分なりのプレーをすればいい……)
和弥はレシーブの立ち位置を考えながら、ベースラインから少し遠めの位置で構える。
白石が、ボールをゆっくりと上へトスすると、スイングを素早くしてフラットサーブを打ってボディを狙って打ってくる。それをいつも通りにフォアハンドでリターンが始まろうとしたが、和弥は一発目からやらかして、ラケットのフレームの部分に当ててボールが高く上がり、桜坂高校の所へボールが言ってしまった。
「あ……!」
和弥は口からやってしまったという声を出してしまい。それを見ていた桜坂高校の男子・女子たちは満場一致で溜息を漏らした。
「15―0」
主審は何も言わずにコールだけしている。副審で出ている他校の生徒は聞こえないような小笑いをしていた。
その後、1ポイント返し、再び相手にポイントを許す展開となっていった。和弥はリターンの簡単な処理で訳の分からないミスをしてしまい調子が乗ってこない。
「30―15」
(うーん。いまいち、リターンのリズムが合わないな……。リズムを合わせようとしても噛み合わないし、凡ミスも多い。これはしょっぱらから不味い気がする……)
和弥はラケットをくるくると回しながら、深呼吸をゆっくりとニ、三回して、リラックスする。自分の体のおかしさはとっくに分かっており、その対処法に追われているようなものだ。
一方で、コートのすぐ隣の観客席である特等席で紀行は和弥の試合を見ながら、何かに気づいた口癖を言い出した。
「ありゃあ、不味い展開になったな。和弥が相手のサーブで良いようにポイントを取っていない。どこかで気持ちを変えないとまずいことになるぞ⁉」
「あれは、最初から飲み込まれたかな?よくあることなんだよね……」
右隣で座っていた祐希が、微笑みながら面白そうに見ていた。
「どういうことなの?」
理奈は解説している紀行に質問をしてみた。
「ああ、ポイントは一応取れているが、あれは相手のサーブミスで取れたもの。そして、残りの2ポイントは和弥のリターンミスで取られて、調子がどんどん悪化している証拠なんだよ。それにこのままいくと、あいつは次のゲームをブレイクされて一方的な試合になってしまう恐れがあるということさ……」
紀行は自慢げに話して、ズレ落ちそうな眼鏡を鼻の元あった位置に直した。
「つまり、簡単に言うと和弥は一回戦敗退と言うわけになるんだよね!本当に内が起こるか分からないから怖いよね……」
祐希が冷やかすように爽やかに言った。この中で、一番不気味で恐ろしいのはあんただと誰もが納得した。
宮崎県高校総体テニス競技シングルス1R 優木和弥(桜坂)VS白石透しらいしとおる(北王工)
「1セットマッチ、白石サービスプレイ————」
主審が大声で腹から叫んだ。審判台に座っているのは前の試合で負けた高校の人と同じ高校の先輩らしき人が主審と副審を務める。
(さて、半年で変わった俺の強さを今、ここで力を発揮する時が来た。今日の俺は絶好調だ。負ける気がしねぇ‼何処で何をしていたのかは知らねぇがやるからには勝つ‼)
白石はボールをコートに弾ませながら、サーブに入る前の調整を行った。
(あんなこと言われて、同じ土俵に立ってはならない。この一回戦を勝ち抜かないと俺は上へと上がれないんだ。大丈夫、俺は自分を信じて自分なりのプレーをすればいい……)
和弥はレシーブの立ち位置を考えながら、ベースラインから少し遠めの位置で構える。
白石が、ボールをゆっくりと上へトスすると、スイングを素早くしてフラットサーブを打ってボディを狙って打ってくる。それをいつも通りにフォアハンドでリターンが始まろうとしたが、和弥は一発目からやらかして、ラケットのフレームの部分に当ててボールが高く上がり、桜坂高校の所へボールが言ってしまった。
「あ……!」
和弥は口からやってしまったという声を出してしまい。それを見ていた桜坂高校の男子・女子たちは満場一致で溜息を漏らした。
「15―0」
主審は何も言わずにコールだけしている。副審で出ている他校の生徒は聞こえないような小笑いをしていた。
その後、1ポイント返し、再び相手にポイントを許す展開となっていった。和弥はリターンの簡単な処理で訳の分からないミスをしてしまい調子が乗ってこない。
「30―15」
(うーん。いまいち、リターンのリズムが合わないな……。リズムを合わせようとしても噛み合わないし、凡ミスも多い。これはしょっぱらから不味い気がする……)
和弥はラケットをくるくると回しながら、深呼吸をゆっくりとニ、三回して、リラックスする。自分の体のおかしさはとっくに分かっており、その対処法に追われているようなものだ。
一方で、コートのすぐ隣の観客席である特等席で紀行は和弥の試合を見ながら、何かに気づいた口癖を言い出した。
「ありゃあ、不味い展開になったな。和弥が相手のサーブで良いようにポイントを取っていない。どこかで気持ちを変えないとまずいことになるぞ⁉」
「あれは、最初から飲み込まれたかな?よくあることなんだよね……」
右隣で座っていた祐希が、微笑みながら面白そうに見ていた。
「どういうことなの?」
理奈は解説している紀行に質問をしてみた。
「ああ、ポイントは一応取れているが、あれは相手のサーブミスで取れたもの。そして、残りの2ポイントは和弥のリターンミスで取られて、調子がどんどん悪化している証拠なんだよ。それにこのままいくと、あいつは次のゲームをブレイクされて一方的な試合になってしまう恐れがあるということさ……」
紀行は自慢げに話して、ズレ落ちそうな眼鏡を鼻の元あった位置に直した。
「つまり、簡単に言うと和弥は一回戦敗退と言うわけになるんだよね!本当に内が起こるか分からないから怖いよね……」
祐希が冷やかすように爽やかに言った。この中で、一番不気味で恐ろしいのはあんただと誰もが納得した。
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