上 下
11 / 16
第1章 インターハイ予選

006  インターハイ予選Ⅵ

しおりを挟む
 そう言い残すと、白石はベースラインに戻っていき、サーブ練習を二回ずつ右と左を終えると、和弥が次にサーブ練習に入る。全て、セカンドサーブの威力をセーブして、コントロールに集中した。
 宮崎県高校総体テニス競技シングルス1Rいちラウンド  優木和弥ゆうきかずや(桜坂)VS白石透しらいしとおるルビ(北王工)
「1セットマッチ、白石サービスプレイ————」
 主審が大声で腹から叫んだ。審判台に座っているのは前の試合で負けた高校の人と同じ高校の先輩らしき人が主審と副審を務める。
(さて、半年で変わった俺の強さを今、ここで力を発揮する時が来た。今日の俺は絶好調ぜっこうちょうだ。負ける気がしねぇ‼何処で何をしていたのかは知らねぇがやるからには勝つ‼)
 白石はボールをコートに弾ませながら、サーブに入る前の調整を行った。
(あんなこと言われて、同じ土俵に立ってはならない。この一回戦を勝ち抜かないと俺は上へと上がれないんだ。大丈夫、俺は自分を信じて自分なりのプレーをすればいい……)
 和弥はレシーブの立ち位置を考えながら、ベースラインから少し遠めの位置で構える。
 白石が、ボールをゆっくりと上へトスすると、スイングを素早くしてフラットサーブを打ってボディを狙って打ってくる。それをいつも通りにフォアハンドでリターンが始まろうとしたが、和弥は一発目からやらかして、ラケットのフレームの部分に当ててボールが高く上がり、桜坂高校の所へボールが言ってしまった。
「あ……!」
 和弥は口からやってしまったという声を出してしまい。それを見ていた桜坂高校の男子・女子たちは満場一致まんじょういっちで溜息を漏らした。
15―0フィフティーンラブ
 主審は何も言わずにコールだけしている。副審で出ている他校の生徒は聞こえないような小笑いをしていた。
 その後、1ポイント返し、再び相手にポイントを許す展開となっていった。和弥はリターンの簡単な処理で訳の分からないミスをしてしまい調子が乗ってこない。
30―15サーティフィフティーン
(うーん。いまいち、リターンのリズムが合わないな……。リズムを合わせようとしても噛み合わないし、凡ミスも多い。これはしょっぱらから不味い気がする……)
 和弥はラケットをくるくると回しながら、深呼吸をゆっくりとニ、三回して、リラックスする。自分の体のおかしさはとっくに分かっており、その対処法に追われているようなものだ。

 一方で、コートのすぐ隣の観客席である特等席で紀行は和弥の試合を見ながら、何かに気づいた口癖を言い出した。
「ありゃあ、不味い展開になったな。和弥が相手のサーブで良いようにポイントを取っていない。どこかで気持ちを変えないとまずいことになるぞ⁉」
「あれは、最初から飲み込まれたかな?よくあることなんだよね……」
 右隣で座っていた祐希が、微笑みながら面白そうに見ていた。
「どういうことなの?」
 理奈は解説している紀行に質問をしてみた。
「ああ、ポイントは一応取れているが、あれは相手のサーブミスで取れたもの。そして、残りの2ポイントは和弥のリターンミスで取られて、調子がどんどん悪化あっかしている証拠なんだよ。それにこのままいくと、あいつは次のゲームをブレイクされて一方的な試合になってしまう恐れがあるということさ……」
 紀行は自慢げに話して、ズレ落ちそうな眼鏡を鼻の元あった位置に直した。
「つまり、簡単に言うと和弥は一回戦敗退と言うわけになるんだよね!本当に内が起こるか分からないから怖いよね……」
 祐希が冷やかすように爽やかに言った。この中で、一番不気味で恐ろしいのはあんただと誰もが納得した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。

電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。 ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。 しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。 薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。 やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。

しゅうきゅうみっか!-女子サッカー部の高校生監督 片桐修人の苦難-

橋暮 梵人
青春
幼少の頃から日本サッカー界の至宝と言われ、各年代別日本代表のエースとして活躍し続けてきた片桐修人(かたぎり しゅうと)。 順風満帆だった彼の人生は高校一年の時、とある試合で大きく変わってしまう。 悪質なファウルでの大怪我によりピッチ上で輝くことが出来なくなった天才は、サッカー漬けだった日々と決別し人並みの青春を送ることに全力を注ぐようになる。 高校サッカーの強豪校から普通の私立高校に転入した片桐は、サッカーとは無縁の新しい高校生活に思いを馳せる。 しかしそんな片桐の前に、弱小女子サッカー部のキャプテン、鞍月光華(くらつき みつか)が現れる。 「どう、うちのサッカー部の監督、やってみない?」 これは高校生監督、片桐修人と弱小女子サッカー部の奮闘の記録である。

処理中です...