一席お付き合い

那偽沙

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夏の落語会

寿限無 1

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出囃子と拍手が鳴り、何文太は高座に上がり拍手が鳴りやんだ頃合いをみて客席に一礼をする

「え~本日は蝉がミンミンと騒がしくしているなかをお越しいただきますありがとうございます、今は夏休みと言うことで、こうして少し高い所から右から左へずらっと見渡しましても、お子さまがちらほらと見受けられます、余程暇なのかそれとも夏休みの宿題のネタ探しなのか、そこのお子さんは夏休みの宿題終わったかい?え?まだ、それは帰ったらやんなきゃいけないね、もうすぐ夏休み終わるからさ、と言ってもまだ半月ほど残ってるけれどね」

マクラを話しながら客席にいる子供に話しかけ夏休みの宿題の進展をきっかけにに興味をもって貰うつもりようだ

「まぁ、かくいう私もね宿題は夏休みの終わる直前までほとんど手を付けなかったんですけどね、そのせいで教師とか親に拳骨を食らった事もあるんですけど、まぁ面倒な事はなかなか手をつけられないってのは人情ですんでね、致し方ないかとおもいますが、名前ってのはそうも行かない」  

マクラを終え羽織を脱ぎ、話しに入っていく

「さて、とある長屋に一つの夫婦がおりました、この夫婦、子供がおぎゃあと生まれて七日立つというのに、夫婦が不精ぶしょうなせいかまだまだ名前がつかない」
 
「『ちょいと、ちょいとあんた、起きとくれよ』」 

人を起こす仕草をしながら女房を演ずる

「『んだよ…うるせぇな、』

『なんだよじゃないよ、名前だよ名前』  

『名前?おらぁ、熊だよ知ってんだろ』 

『あんたの名前じゃないよ、子供の名前だよいつまでも名無しの権部ごんべって訳にいかないだろ、もう産まれてから七日も立つんだよ、いい加減決めないと』 

『あ~初七日しょなのかだっけか?』

『縁起の悪いこと言うんじゃないよ、お七夜おしちやって言うんだよ』

『急に言われてもねぇ、直ぐには思い付かねぇよ』 

9じゃなくて七日だって言ってんだろ、仕方ないねぇ、裏のご隠居ごいんきょさんの所行っといで』

『なんで隠居の所になんかいかなきゃなんねぇんだよ』

『あのご隠居さん、物知りで有名だろ、だからさちょいと、行っていい案を貰って来なさいな、ただ行って【名前考えて頂戴よ】じゃいけないよ、あの人は自分は生き字引いきじびきを自称してるからね、適当に煽てておだててやったら名前の一つや二つ考えてくれるよ、ほら行ってきな』

『わかったよ、行ってくるよ』

ってんで、この熊さん家を出ると、裏隣うらどなりのご隠居さんの所に行った」


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