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第四章 新世界編

進級しました!

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☆ ☆ ☆

リスタリア王国に戻り一月が経過した。

疲れが出たのか、実家に戻ってからの数日間発熱で寝込んでしまった私。
発熱が治ってからはすっかり元気になったので学園に通いたかったんだけど……。

大事件の後ということと、学園が進級前の休暇(前世で言うところの春休みのようなもの)に入ってしまうということで、寮には戻らずそのまま実家で過ごすことになった。

生徒会メンバーや学友と会えないのは寂しかったけど、長期間実家にいるのも久々だったので至り尽くせりの実家ライフを満喫していた。

とは言っても、保育園の運営や孤児院の様子も気になり、領内を駆け回る日々ではあったのだけど。

前世でのワーママライフスタイルが骨の髄まで染み付いてしまっているせいか、何かしていないとどうも落ち着かないのよね。

私が忙しない日々を過ごす中、国民の生活にも変化が起こっていた。

まず、魔獣がいなくなったことで辺境地の結界が不要になり、人々の交流が増えたこと。
私からのお願い事の一つに「魔獣や魔王との交流を図ること」を提案したこともあり、魔獣の安全性について周知されたことも大きいだろう。
人々はまだまだ半信半疑なところもあるが、行動範囲が広くなったことにより近隣の領地との交易が増え、国全体が活性化してきているようだ。

それと、王都では平民用の保育園や学園の建設が進められている。
これも私からのお願い事として「教育改革」を挙げたことで実現に至ったのだ。
アルノ―領だけではなく国を挙げての事業に拡大出来たことはとても嬉しい。
これで少しでも多くの国民に教育が行き渡り、将来を担う子供達に職業選択の自由が生まれるといいのだけど……。

頑張れば自分の希望が叶う社会。
未来を自分で創造出来る社会の実現は、国の明るい未来のために必要なことだと思うから。

そうそう、それと私達が持っていた能力である魔法は「ギフト」という別の力に替わり、引き続き魔法のような能力が使えることで大きな混乱は生じなかった。
これも創造神様の能力なのだろうか? 新世界を間近で見届けた者以外は「魔法」という言葉を忘れており、「ギフト」という言葉を当たり前のように使っていた。
私も「ギフト」が何のことなのか、誰かに教えられたわけでもないのに自然と理解が出来たのだ。
それと、光や闇の魔力は代替えとして、全ての魔法要素を含んだ力へ変化した。
元々持っていた魔力量がそのまま引き継がれる形だったので私の力は依然として弱いままだけど、満遍なく能力が使えるようになったことで利便性も上がり、日常生活がより快適になって助かっている。

「お嬢様、もうすぐ到着いたします」
「ありがとうアニー」

車窓から学園の校門が見えて来る。
なんだかんだでもう二ヶ月近く学園に行けてなかったのよね。
久々で少し緊張するな。

そんなことを思いながら馬車から降りると、通いなれた教室を目指した。

☆ ☆ ☆

「イザベル様、お久しぶりです!」
「イザベル様、ごきげんよう」

教室に着くや否や、その場にいた生徒達は一斉に私に話し掛けて来る。
おおお、久々だから何を話したらいいか困ってしまう。

「皆さま、おはようございます」

気の利いた言葉の一つでも浮かべばいいけど、生憎私には適当な言葉が浮かばないので無難な挨拶を返す。
すると、近くにいたクラスメイトがそわそわした様子で何か言いたげな様子だ。

「あの、どうされましたか」

私の声がかかるとクラスメイトは嬉しそうな様子で矢継ぎ早に話し掛けてきた。

「あ、あの、イザベル様や生徒会員の皆様って隣国に留学されていたんですよね!? 私、この国から出た事がないので外国についてのお話が聞きたくて!」
「え!?」

私や生徒会メンバーが隣国に留学!? ……ああ! もしかして、いきなり学園を長期間休むことになったから不審に思われないように、関係者が教師や生徒達にそう説明したのかしら。さすがに私が魔王に攫われたなんて本当の話をしたら皆も混乱するだろうし。

うーーん、どうしよう。
隣国の事は書物で読んで知っているけど、実際に行ったことはないから下手なことも言えない。

「えっと……そ、そうですわね。実は部屋に籠って勉学に励むことが多くて、あまり外に出ていないの」

なんとかこの場を切り抜けるべく頭をフル回転させていると、トントンと背後から肩を叩かれる。
振り向くと金髪のキラキラ王子……じゃなかった。ヘンリー殿下がにっこり笑顔で私の後ろに立っていた。

「イザベル嬢おはよう」
「ヘンリー殿下、おはようございます」

おお、ヘンリー殿下、ナイスタイミング!

「さて、挨拶は済んだかな? もうすぐ進級式だし、そろそろ皆も移動しないと」

話し掛けてきたクラスメイト達は時計を確認する。

「あっ、本当ですね。もうこんな時間ですわ」
「イザベル様、またお時間ある時にお話を聞かせてください!」

クラスメイト達も移動の準備のため席に戻って行く。
ヘンリー殿下の耳元でそっと「あとで詳しく説明するけど、不在の理由を留学していたことにしたそうだ。もし会話に困った時は私も間に入る」と耳打ちする。ああ、やっぱり予想通りね。

「さて、そろそろ私達も移動しよう。今年は留年者もいないそうだし、皆で揃って進級出来るとは喜ばしいことだ」
「そうなのですね! それは良かったです」

進級式のあと、私達は一番上の学年になる。
本来なら私を含む生徒会メンバーは魔王の件で出席数が不足しているのだけど、特殊事案ということで特認で進級出来ることになったのよね。
この学園では勉学のための留学であれば授業に出席したことになるから、それもあって不在の理由を留学にしたのかも。

「進級式は講堂で行うそうだよ。行こうか」
「はい!」

ヘンリー殿下のエスコートで教室を出て講堂を目差すことにした。

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