子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました

あさひな

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第三章 魔王編

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ラウルはそう言い、ヘンリー殿下の背を叩く。
ヘンリー殿下は迷惑そうな顔をしていたが、ラウルに後押しされたように私達の元へ戻ってきた。

「さて、魔王との和解も成立したことだ。我々も故郷に戻ろう」

ああ、これで全てが終わったのね。
魔獣達と人間が共存出来る様になって、本当に良かった。
「世界の理」を変えてしまったことに実感が湧かないけど、魔獣にも……いや、魔獣だけじゃない。この世界の生き物にとってより生きやすい新世界が出来たことは嬉しいし、皆無事に危機を切り抜けることが出来てほっと安堵する。

それに……この出来事のおかげで、私は前世の後悔を吹っ切ることが出来た。
あの子達にいつ会えるのか、それはまだ分からない。
でも、この世界でまたあの子達に会えると分かった今は、現世と向かい合う決心が付いた。
もう、運命から逃げない。私の人生の責任は、私が持つ!
そう心に誓うことが出来たのだ。

さ、ここからもう一仕事。
皆と一緒にリスタリア王国に帰るんだ!

☆ ☆ ☆

ラウルに近道を教えてもらい、山道を越えて辺境近くの村へ辿り着く。
そこから数日間、馬車に揺られてリスタリア王国の王宮まで戻ってきた。
ああーー、座りっぱなしでお尻が痛い……。
令嬢である私に配慮してか1日の移動時間を少なくして貰っていたようだけど、どうしても揺れる馬車に乗りっぱなしだとお尻も痛いし身体が疲れる。

王宮の門前に馬車が止まり、相乗りしていたヘンリー殿下とアルフ義兄様と共に外に出ると、他の皆は先に到着していたようで、既に何台かの馬車が止まっていた。

んーー! っと腕を伸ばして身体の緊張をほぐしていると、「イザベル!」と聞き覚えのある声に呼び止められる。

この声は……お父様?
振り向くと、見覚えのあるイケオジがこちらに向かって来かって突進してきている。

「イザベル! ああ、無事で良かった!」
「お父様!? うぐっ!」

脇目も振らずに突進してきたお父様に勢いよく抱きしめられる。
ぐぇっ!? そんなに強い力で抱きしめられたら呼吸が出来ない!

「お、おどうざま……ぐるじぃ……」

抗議の意を込めてパンパンと軽くお父様の背を叩くと、お父様はハッとした様子で力を緩める。

「イザベル、すまない!ああ、元気そうで何よりだ。よかった、本当に無事で……ぐすっ」
「ああっ、お父様泣かないで。心配かけてごめんなさい」

ど、どうしよう、お父様を泣かせてしまったわ。
私を抱き締めながら男泣きをするお父様をあやすように、大きい背中をよしよしと撫でていると、アルフ義兄様が私の元へ寄ってきた。

「義父上、王宮にいらしていたのですね」
「ぐすっ、ああ。速伝が来たので居ても立ってもいられなくてな。アルフ、お前も無事で本当に良かった!」

お父様は泣き腫らした目で、わしゃわしゃと豪快にお義兄様の頭を撫でる。
ああ、こうやって家族と再会出来ると、故郷へ帰ってきたんだって実感する。

「義父上、こんな場所では皆に見られますよ。それに、ヘンリー殿下は先に国王陛下の執務室へ報告に行ったようですが」
「おっと、そうだった。ゆっくりと再会の喜びを分かち合いたいところだが国王陛下へ無事な姿を見せに行かないとな」

お父様は涙を拭いながらそう言うと、私たちと国王陛下のいる執務室を目指した。

☆ ☆ ☆

執務室ではすでに生徒会メンバーが揃っており、私達が最後のようだった。

「全員揃ったな。まずは全員無事でいてくれたことに安堵しておる。皆良く帰って来てくれた!」

国王陛下はそう言うとくしゃりと笑顔になる。

「報告についてはヘンリーや騎士団から伺っている。まさか『世界の理』を変えてしまうとは驚いた。これは国、いや世界を挙げて称賛すべき事柄だ。特にイザベル嬢とマリア嬢、お二人には国から褒章を授けたいと思う。金、地位、それ以外でも構わん。何か願い事はないだろうか」

いきなり褒章と言われても困ったなぁ。
同じことを思ったようで、困り顔のマリア様と目が合う。
マリア様は沈黙のまま固まってしまっている。

ううーーん、どうしようかな。
ここで二人から全く意見が出ないと逆に失礼な気もするし……あ、そうだ!

「では、お言葉に甘えてもよろしいでしょうか」
「ああ、遠慮せず何でも言ってみるが良い」

私は、以前から考えていたある提案をすることにした。
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