32 / 55
第三章 魔王編
41
しおりを挟む
え、まさか、近くに何かいるの?
「ポチ、我の近くに来い」
威嚇をしながらポチがラウルの側へ寄ると、ガサガサと藪が揺れた。
そして、中から鋭い鉤爪のついた熊の様な動物が姿を出した。
これ、きっと魔獣だよね?
「我に何の様だ」
「グルルル……にん、げん……」
「我もイザベルもお前達を束ねる立場。お前はそれを理解した上での行動か」
「にん、げん……くう……!」
えええ、ちょっと待って。
人間食うって、もしかして私を食べる気!?
どうしよう、とアワアワしている私を他所に、ラウルはため息を吐くと私の手を強く握った。
「ダメだ、先程から我の魔力を流しているが統率が出来ん。イザベル、悪いがお前の力を借りるぞ」
「え!? わ、私!?」
いきなり話振られても、私は一体どうしたらいいの!?
ただでさえ目の前に現れた魔獣でパニック状態なのに!
「落ち着け。ただ魔力を出すだけで良い。後は我が何とかする、発動方法は分かるだろう?」
「は、はい!」
「よし、では出してみろ」
えーっと、確か……内にある熱を意識して、身体を巡り、手から出す……!
「えいや!!」
「そうだ、それで良い」
うっ!? 身体の熱が吸い取られる!
急激な脱力感に見舞われながらも必死に魔力を出し続ける。
ラウルは反対の手を前へ翳すと辺りが一瞬黒い光りで覆われた。
わっ! 凄い!!
そうこうしている内に黒い光はパンッと弾け跡形もなく消えていった。
「さぁ、森へ帰れ」
ラウルが再び魔獣へ話しかける。
すると、目の前の魔獣は威嚇を止め、再び森へと帰って行った。
「イザベル、見ていただろう。これがお前が必要な理由だ」
なるほど、魔力の増大とは本当の事だったのね。目の前で見せつけられては、その話が嘘だとはもう言えないわ。
「……はい」
「さ、これでもう周囲の魔獣達は我に近寄らないから安心しろ。ポチ、もう先へ行っても大丈夫だが先に行き過ぎて迷子になるなよ」
「分かった!」
ポチはウォン! と元気良く鳴き、再び森の中へと進んで行った。
「ポチ、我の近くに来い」
威嚇をしながらポチがラウルの側へ寄ると、ガサガサと藪が揺れた。
そして、中から鋭い鉤爪のついた熊の様な動物が姿を出した。
これ、きっと魔獣だよね?
「我に何の様だ」
「グルルル……にん、げん……」
「我もイザベルもお前達を束ねる立場。お前はそれを理解した上での行動か」
「にん、げん……くう……!」
えええ、ちょっと待って。
人間食うって、もしかして私を食べる気!?
どうしよう、とアワアワしている私を他所に、ラウルはため息を吐くと私の手を強く握った。
「ダメだ、先程から我の魔力を流しているが統率が出来ん。イザベル、悪いがお前の力を借りるぞ」
「え!? わ、私!?」
いきなり話振られても、私は一体どうしたらいいの!?
ただでさえ目の前に現れた魔獣でパニック状態なのに!
「落ち着け。ただ魔力を出すだけで良い。後は我が何とかする、発動方法は分かるだろう?」
「は、はい!」
「よし、では出してみろ」
えーっと、確か……内にある熱を意識して、身体を巡り、手から出す……!
「えいや!!」
「そうだ、それで良い」
うっ!? 身体の熱が吸い取られる!
急激な脱力感に見舞われながらも必死に魔力を出し続ける。
ラウルは反対の手を前へ翳すと辺りが一瞬黒い光りで覆われた。
わっ! 凄い!!
そうこうしている内に黒い光はパンッと弾け跡形もなく消えていった。
「さぁ、森へ帰れ」
ラウルが再び魔獣へ話しかける。
すると、目の前の魔獣は威嚇を止め、再び森へと帰って行った。
「イザベル、見ていただろう。これがお前が必要な理由だ」
なるほど、魔力の増大とは本当の事だったのね。目の前で見せつけられては、その話が嘘だとはもう言えないわ。
「……はい」
「さ、これでもう周囲の魔獣達は我に近寄らないから安心しろ。ポチ、もう先へ行っても大丈夫だが先に行き過ぎて迷子になるなよ」
「分かった!」
ポチはウォン! と元気良く鳴き、再び森の中へと進んで行った。
41
お気に入りに追加
3,804
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ
饕餮
ファンタジー
書籍発売中!
詳しくは近況ノートをご覧ください。
桐渕 有里沙ことアリサは16歳。天使のせいで異世界に転生した元日本人。
お詫びにとたくさんのスキルと、とても珍しい黒いにゃんこスライムをもらい、にゃんすらを相棒にしてその世界を旅することに。
途中で魔馬と魔鳥を助けて懐かれ、従魔契約をし、旅を続ける。
自重しないでものを作ったり、テンプレに出会ったり……。
旅を続けるうちにとある村にたどり着き、スキルを使って村の一番奥に家を建てた。
訳アリの住人たちが住む村と、そこでの暮らしはアリサに合っていたようで、人間嫌いのアリサは徐々に心を開いていく。
リュミエール世界をのんびりと冒険したり旅をしたりダンジョンに潜ったりする、スローライフ。かもしれないお話。
★最初は旅しかしていませんが、その道中でもいろいろ作ります。
★本人は自重しません。
★たまに残酷表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
表紙は巴月のんさんに依頼し、有償で作っていただきました。
黒い猫耳の丸いものは作中に出てくる神獣・にゃんすらことにゃんこスライムです。
★カクヨムでも連載しています。カクヨム先行。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。