21 / 55
第三章 魔王編
35
しおりを挟む
「んぶっ!」
「その威勢の良さ、気に入った」
「んぶふっ!!」
「我は抵抗する者程服従させたくなる性分でな。イザベル、お前を我の虜にさせてみせよう」
ラウルは顔の潰れた私の顔を見ながらふっと鼻で笑った。
「公爵令嬢もこうやって潰れた顔をすると、そこら辺の小娘と大して変わらんな」
私はラウルの手を引っ剥がすと、キッと睨み付けた。
「ぶっ、はぁ! 淑女の顔になんて事をっ!」
「お前みたいなじゃじゃ馬が淑女だと? はっ、笑わせる」
「じゃ、じゃじゃ馬ですって!? 失礼な!」
「お前みたいな女をじゃじゃ馬と表現して何が悪い。それより、話は終わったことだし、さっさと思考遮断の魔術を教えるぞ。一度しか教えんから死ぬ気で覚えろ」
はぁ!? 初めて習うのに、たったの一度だけで覚えろですって!?
そんなの無理よ!
「初めから出来ぬと思っていたら覚えられんぞ。我もイザベルの思考が煩くて敵わんから、一発でマスターせよ」
ラウルはスッとその場に立ち上がるとその場で魔術を教え始めた。
「イザベルはただでさえ脆弱な魔力なのだ、まずは魔力の流れに集中しろ。目を閉じ、鼓動を意識していれば己の中に眠る熱を感じるはずだ。その熱がお前の持つ魔力だ」
その教え方……! リュカ先生も同じ事を言っていたわ。
「リュカ・エスタも闇の魔力の保持者ゆえ、発動方も似通っているのだろうな。あの男も思考遮断の魔術くらい教えてやれば良かろうに、全く面倒事を増やしおって。さ、話を戻すぞ」
「は、はい」
「熱を感じたら、それを己の身体に纏う様なイメージを持て。そして、己の意識を外部と遮断するように、熱の層を作るのだ」
熱……これね。これを全身に広げて、外から守るようなイメージ……
「ほう、初めてにしては筋が良い。だが、層がまだ薄い、もうニ、三重に纏うイメージを持て」
え、もう熱を出し切ってしまったのだけど。
「意識をすればまだ奥に熱があるだろう。それを引っ張り出して纏え」
熱、熱……あ、これか。これを、更に纏う……。
「それで完成だ。我が言ったとおり、出来ただろう?」
「は、はい」
凄い、たった一度教えて貰っただけで……
「この部屋程度の距離にいると、お前の思考が勝手に入ってくる。我に思考を読まれたく無ければ、この距離に我がいる時は思考遮断の魔術を使え」
「はい」
「よし、よく出来たな」
ラウルはふっと柔らかい笑みを浮かべると、冷たくて大きい手でそっと私の頭を撫でた。
ちょっ! 私は子供じゃないのに!!
「思考が読めずとも、イザベルはすぐ顔に出るから分かりやすいな。では、我は一旦自室に戻る。食事の用意が出来たら呼ぶから、お前も自室に戻れ」
くっ、いちいち癪に障る奴ね!
私はラウルをキッと睨み付けたが、ラウルはそんな事などお構いなしにさっさと部屋を出て行ってしまった。
すると入れ違うように先程の侍女が入ってきて私に向かって話しかけた。
「イザベル様、食事の支度が終わるまで自室で待機するよう指示が出ております。お部屋で温かいお茶を用意致しますので、まずは私と共に参りましょう」
「は、はい」
私は席を立ち、侍女の後について行くことにした。
「その威勢の良さ、気に入った」
「んぶふっ!!」
「我は抵抗する者程服従させたくなる性分でな。イザベル、お前を我の虜にさせてみせよう」
ラウルは顔の潰れた私の顔を見ながらふっと鼻で笑った。
「公爵令嬢もこうやって潰れた顔をすると、そこら辺の小娘と大して変わらんな」
私はラウルの手を引っ剥がすと、キッと睨み付けた。
「ぶっ、はぁ! 淑女の顔になんて事をっ!」
「お前みたいなじゃじゃ馬が淑女だと? はっ、笑わせる」
「じゃ、じゃじゃ馬ですって!? 失礼な!」
「お前みたいな女をじゃじゃ馬と表現して何が悪い。それより、話は終わったことだし、さっさと思考遮断の魔術を教えるぞ。一度しか教えんから死ぬ気で覚えろ」
はぁ!? 初めて習うのに、たったの一度だけで覚えろですって!?
そんなの無理よ!
「初めから出来ぬと思っていたら覚えられんぞ。我もイザベルの思考が煩くて敵わんから、一発でマスターせよ」
ラウルはスッとその場に立ち上がるとその場で魔術を教え始めた。
「イザベルはただでさえ脆弱な魔力なのだ、まずは魔力の流れに集中しろ。目を閉じ、鼓動を意識していれば己の中に眠る熱を感じるはずだ。その熱がお前の持つ魔力だ」
その教え方……! リュカ先生も同じ事を言っていたわ。
「リュカ・エスタも闇の魔力の保持者ゆえ、発動方も似通っているのだろうな。あの男も思考遮断の魔術くらい教えてやれば良かろうに、全く面倒事を増やしおって。さ、話を戻すぞ」
「は、はい」
「熱を感じたら、それを己の身体に纏う様なイメージを持て。そして、己の意識を外部と遮断するように、熱の層を作るのだ」
熱……これね。これを全身に広げて、外から守るようなイメージ……
「ほう、初めてにしては筋が良い。だが、層がまだ薄い、もうニ、三重に纏うイメージを持て」
え、もう熱を出し切ってしまったのだけど。
「意識をすればまだ奥に熱があるだろう。それを引っ張り出して纏え」
熱、熱……あ、これか。これを、更に纏う……。
「それで完成だ。我が言ったとおり、出来ただろう?」
「は、はい」
凄い、たった一度教えて貰っただけで……
「この部屋程度の距離にいると、お前の思考が勝手に入ってくる。我に思考を読まれたく無ければ、この距離に我がいる時は思考遮断の魔術を使え」
「はい」
「よし、よく出来たな」
ラウルはふっと柔らかい笑みを浮かべると、冷たくて大きい手でそっと私の頭を撫でた。
ちょっ! 私は子供じゃないのに!!
「思考が読めずとも、イザベルはすぐ顔に出るから分かりやすいな。では、我は一旦自室に戻る。食事の用意が出来たら呼ぶから、お前も自室に戻れ」
くっ、いちいち癪に障る奴ね!
私はラウルをキッと睨み付けたが、ラウルはそんな事などお構いなしにさっさと部屋を出て行ってしまった。
すると入れ違うように先程の侍女が入ってきて私に向かって話しかけた。
「イザベル様、食事の支度が終わるまで自室で待機するよう指示が出ております。お部屋で温かいお茶を用意致しますので、まずは私と共に参りましょう」
「は、はい」
私は席を立ち、侍女の後について行くことにした。
89
お気に入りに追加
3,804
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ
饕餮
ファンタジー
書籍発売中!
詳しくは近況ノートをご覧ください。
桐渕 有里沙ことアリサは16歳。天使のせいで異世界に転生した元日本人。
お詫びにとたくさんのスキルと、とても珍しい黒いにゃんこスライムをもらい、にゃんすらを相棒にしてその世界を旅することに。
途中で魔馬と魔鳥を助けて懐かれ、従魔契約をし、旅を続ける。
自重しないでものを作ったり、テンプレに出会ったり……。
旅を続けるうちにとある村にたどり着き、スキルを使って村の一番奥に家を建てた。
訳アリの住人たちが住む村と、そこでの暮らしはアリサに合っていたようで、人間嫌いのアリサは徐々に心を開いていく。
リュミエール世界をのんびりと冒険したり旅をしたりダンジョンに潜ったりする、スローライフ。かもしれないお話。
★最初は旅しかしていませんが、その道中でもいろいろ作ります。
★本人は自重しません。
★たまに残酷表現がありますので、苦手な方はご注意ください。
表紙は巴月のんさんに依頼し、有償で作っていただきました。
黒い猫耳の丸いものは作中に出てくる神獣・にゃんすらことにゃんこスライムです。
★カクヨムでも連載しています。カクヨム先行。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。