26 / 55
第三章 魔王編
【ヘンリー視点】1
しおりを挟む
* * *
エスタ卿と共に王宮までやって来た。
そして、今いるこの場は国王陛下の執務室だ。
「何っ!? イザベル嬢が攫われただと!?」
「はい」
「お前は、イザベル嬢の近くにいながら一体何をしていたんだ!」
「申し訳ありません、父上」
父上はイライラしながら私の失態を責め立てる。
貴重な闇の魔力を失った上に、奪われた相手が魔王。
国の脅威になる存在に手駒を奪われたのだ、責められても仕方ない。
側にいたエスタ卿は、私に助け船を出した。
「陛下、僕も油断していました。まさか結界の境目をピンポイントで狙ってくるとは」
「二人もいながら、全く情けない! 魔王は魔獣を統率する人物だ。下手に力を付けて魔獣ごと国に攻め込まれてはひとたまりも無い。何としてもイザベル嬢を奪還し、魔王を力を削げ! 奴の自由にさせてなるものか!」
「畏まりました。父上、イザベル嬢の救出に当たっては魔の森を通らねばなりません。道中は魔獣を斬滅しながら進まねばならず、兵力が必要になるでしょう。つきましては、幾らか兵をいただきたいのですが宜しいでしょうか」
「うむ、やむを得んな。宰相や騎士団長とも相談した上で調整しよう」
「ありがとうございます」
よし、これで兵力の確保は問題ないだろう。
後は、魔王城までの最短ルートの確認と、魔王に関する詳しい情報だ。
「待て、ヘンリー。お前が行くつもりなのか」
「はい、私の油断が引き金になった事件です。ぜひ挽回のチャンスをいただきたく存じます」
「……そうか。お前に死なれては困るからな。それなら、魔法省からも人を出そう」
「ありがとうございます」
「エスタ卿、悪いが息子と共にイザベル嬢の奪還に当たってくれ」
「畏まりました☆ 僕、やられっぱなしは嫌いだから、ちゃちゃっと奪い返してきますよ」
「うむ、頼んだぞ」
父上に深くお辞儀をし、執務室の扉を閉じる。回廊に出てすぐ、私はエスタ卿に話しかけた。
「エスタ卿、魔王城はどの辺にあるのか、詳しく話を聞かせてくれ。それと、魔王に関する知識を知っている限り全て話してほしい」
「りょーかいでっす☆ あ、僕の執務室に魔王に関する書籍が多数あるんですけど、良かったら来ますか?」
「うっ、あそこか……」
エスタ卿の執務室は雑然としており、落ち着かないがそんな事を言っている時間も惜しい。
「分かった。すぐに向かおう」
「ヘンリー殿下、今凄い嫌そうな顔していませんでした? 僕、あれでも来客用のソファ周りは綺麗にしている方なんですけどねぇ」
「あれでか……」
「あ、そう言えば、この前生徒から差し入れ貰ったんですよ。話も長くなりそうですし、お茶と一緒に用意しますね☆」
気持ちは有難いが、流石にあの場で飲食する気にはなれない。
「エスタ卿、気持ちは有難いが、私に気遣いは不要だ。茶はまたの機会にする」
「そうですかぁ。じゃ、部下達にお裾分けしてあげよっと☆」
「ああ、そうしてあげてくれ。では、行くか」
身を翻し、エスタ卿と共に魔法省へと歩き出す。
暫くすると魔法省の建物が見えてきた。
壮大な空間に足を踏み入れ、大理石の床を歩けば、コツコツと小気味良い足音が響く。
職員が忙しそうに働く傍ら、私はエスタ卿と執務室へ向かった。
エスタ卿と共に王宮までやって来た。
そして、今いるこの場は国王陛下の執務室だ。
「何っ!? イザベル嬢が攫われただと!?」
「はい」
「お前は、イザベル嬢の近くにいながら一体何をしていたんだ!」
「申し訳ありません、父上」
父上はイライラしながら私の失態を責め立てる。
貴重な闇の魔力を失った上に、奪われた相手が魔王。
国の脅威になる存在に手駒を奪われたのだ、責められても仕方ない。
側にいたエスタ卿は、私に助け船を出した。
「陛下、僕も油断していました。まさか結界の境目をピンポイントで狙ってくるとは」
「二人もいながら、全く情けない! 魔王は魔獣を統率する人物だ。下手に力を付けて魔獣ごと国に攻め込まれてはひとたまりも無い。何としてもイザベル嬢を奪還し、魔王を力を削げ! 奴の自由にさせてなるものか!」
「畏まりました。父上、イザベル嬢の救出に当たっては魔の森を通らねばなりません。道中は魔獣を斬滅しながら進まねばならず、兵力が必要になるでしょう。つきましては、幾らか兵をいただきたいのですが宜しいでしょうか」
「うむ、やむを得んな。宰相や騎士団長とも相談した上で調整しよう」
「ありがとうございます」
よし、これで兵力の確保は問題ないだろう。
後は、魔王城までの最短ルートの確認と、魔王に関する詳しい情報だ。
「待て、ヘンリー。お前が行くつもりなのか」
「はい、私の油断が引き金になった事件です。ぜひ挽回のチャンスをいただきたく存じます」
「……そうか。お前に死なれては困るからな。それなら、魔法省からも人を出そう」
「ありがとうございます」
「エスタ卿、悪いが息子と共にイザベル嬢の奪還に当たってくれ」
「畏まりました☆ 僕、やられっぱなしは嫌いだから、ちゃちゃっと奪い返してきますよ」
「うむ、頼んだぞ」
父上に深くお辞儀をし、執務室の扉を閉じる。回廊に出てすぐ、私はエスタ卿に話しかけた。
「エスタ卿、魔王城はどの辺にあるのか、詳しく話を聞かせてくれ。それと、魔王に関する知識を知っている限り全て話してほしい」
「りょーかいでっす☆ あ、僕の執務室に魔王に関する書籍が多数あるんですけど、良かったら来ますか?」
「うっ、あそこか……」
エスタ卿の執務室は雑然としており、落ち着かないがそんな事を言っている時間も惜しい。
「分かった。すぐに向かおう」
「ヘンリー殿下、今凄い嫌そうな顔していませんでした? 僕、あれでも来客用のソファ周りは綺麗にしている方なんですけどねぇ」
「あれでか……」
「あ、そう言えば、この前生徒から差し入れ貰ったんですよ。話も長くなりそうですし、お茶と一緒に用意しますね☆」
気持ちは有難いが、流石にあの場で飲食する気にはなれない。
「エスタ卿、気持ちは有難いが、私に気遣いは不要だ。茶はまたの機会にする」
「そうですかぁ。じゃ、部下達にお裾分けしてあげよっと☆」
「ああ、そうしてあげてくれ。では、行くか」
身を翻し、エスタ卿と共に魔法省へと歩き出す。
暫くすると魔法省の建物が見えてきた。
壮大な空間に足を踏み入れ、大理石の床を歩けば、コツコツと小気味良い足音が響く。
職員が忙しそうに働く傍ら、私はエスタ卿と執務室へ向かった。
60
お気に入りに追加
3,798
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
異世界で捨て子を育てたら王女だった話
せいめ
ファンタジー
数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。
元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。
毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。
そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。
「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」
こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが…
「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?
若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」
孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…
はあ?ムカつくー!
だったら私が育ててやるわ!
しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。
誤字脱字、いつも申し訳ありません。
ご都合主義です。
第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。
ありがとうございました。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される
雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。
スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。
※誤字報告、感想などありがとうございます!
書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました!
電子書籍も出ました。
文庫版が2024年7月5日に発売されました!
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。