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第三章 魔王編
【ヘンリー視点】
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学園の目前だったため、私はどこか油断をしていた。
貴女の背後には漆黒の闇が広がり、私が急いで手を伸ばした時には……貴女は、闇ごと消え去っていた。
「イザベル! イザベルーーっ!!」
貴女がいないという事実を認め切れず、何度も名前を呼ぶ。
しかし、貴女からの返事は……ない。
「イザベル……っ!」
貴女がいない。
この現実が急に私の心に重くのし掛かる。
どうか、全て夢であってくれ。
脚の力が抜けていき、支えられなくなった身体はその場に崩れ落ちた。
「くっ……そ……ヤローーっ!!」
やり切れない思いから、這いつくばったままの状態で、拳を力一杯地面に叩きつけた。
ダンッ!
爪が拳に食い込む。
ダンッ!
拳から血が滲んだ。
ダンッ!
貴女を守れないこの手など……!
「何事だ!? って、ヘンリー殿下!!」
遠くから声が聞こえる。
「何してるんですか!? ダメですよ、そんな事をしたら手が……!」
子供サイズの手が視界に入った。
「離せ」
「ヘンリー殿下! 仕方ないなぁ、もう」
途端に強い力で身体が拘束された。
「くっ!」
「ヘンリー殿下、まずは落ち着いて下さい」
這いつくばったまま俯く私の顔を、少年は覗き込んだ。
「エスタ卿か。これは、何の真似だ」
「今のヘンリー殿下では話が通じなさそうだったので、拘束魔法を使いました。まずは落ち着いて下さい」
「……」
「闇の魔力の反応があったので駆け付けたんですが……この様子だと、間に合わなかったようですね」
貴女の髪
貴女の声
貴女の笑顔
その一つ一つが鮮明に浮かぶ。
「魔王がいるのは魔の森の中にある魔王城ですし、作戦を練らなければイザベル君を取り返しに行くことは難しいでしょうね」
イザベル……
「はぁ、やれやれ。ちょっと、失礼☆」
スパーンッ!!
うっ!?
子供の手からは想像も付かないような怪力で、思いっきり頬を叩かれた。
「! エスタ卿、いきなり何をする!?」
「あ、ちょっと正気に戻りました?」
「ふざけるな!」
「むむ? 気合いが足りないなら、もう一発注入してあげますよ☆ せーの」
「わ、分かった! 一旦立ち上がりたいから、まずは拘束魔法を解いてくれ」
「ぐふふっ、りょーかいです☆」
エスタ卿はすっと手を翳すと、途端に身体がふっと軽くなった。
魔法が外れたか。
試しに血が滲む拳を動かし、動くことを確認するとその場に立ち上がった。
「リュカ流の気合い注入法です☆ あ、良かった。いつものヘンリー殿下に戻ったみたいですね」
「ああ。エスタ卿、すまなかった。この借りは必ず返す」
「ぐふふ、王族に恩を売っておくのも悪くないですね」
「ふん、戯けが」
私はイザベル嬢がいなくなった場所まで行き、そっと地面を撫でた。
イザベル嬢……必ず、迎えに行く。
それまで、どうか無事でいてくれ。
「王宮に行くぞ。早急に対策を立てる」
「りょーかいです☆」
私は再び立ち上がり、王宮へと急いだ。
貴女の背後には漆黒の闇が広がり、私が急いで手を伸ばした時には……貴女は、闇ごと消え去っていた。
「イザベル! イザベルーーっ!!」
貴女がいないという事実を認め切れず、何度も名前を呼ぶ。
しかし、貴女からの返事は……ない。
「イザベル……っ!」
貴女がいない。
この現実が急に私の心に重くのし掛かる。
どうか、全て夢であってくれ。
脚の力が抜けていき、支えられなくなった身体はその場に崩れ落ちた。
「くっ……そ……ヤローーっ!!」
やり切れない思いから、這いつくばったままの状態で、拳を力一杯地面に叩きつけた。
ダンッ!
爪が拳に食い込む。
ダンッ!
拳から血が滲んだ。
ダンッ!
貴女を守れないこの手など……!
「何事だ!? って、ヘンリー殿下!!」
遠くから声が聞こえる。
「何してるんですか!? ダメですよ、そんな事をしたら手が……!」
子供サイズの手が視界に入った。
「離せ」
「ヘンリー殿下! 仕方ないなぁ、もう」
途端に強い力で身体が拘束された。
「くっ!」
「ヘンリー殿下、まずは落ち着いて下さい」
這いつくばったまま俯く私の顔を、少年は覗き込んだ。
「エスタ卿か。これは、何の真似だ」
「今のヘンリー殿下では話が通じなさそうだったので、拘束魔法を使いました。まずは落ち着いて下さい」
「……」
「闇の魔力の反応があったので駆け付けたんですが……この様子だと、間に合わなかったようですね」
貴女の髪
貴女の声
貴女の笑顔
その一つ一つが鮮明に浮かぶ。
「魔王がいるのは魔の森の中にある魔王城ですし、作戦を練らなければイザベル君を取り返しに行くことは難しいでしょうね」
イザベル……
「はぁ、やれやれ。ちょっと、失礼☆」
スパーンッ!!
うっ!?
子供の手からは想像も付かないような怪力で、思いっきり頬を叩かれた。
「! エスタ卿、いきなり何をする!?」
「あ、ちょっと正気に戻りました?」
「ふざけるな!」
「むむ? 気合いが足りないなら、もう一発注入してあげますよ☆ せーの」
「わ、分かった! 一旦立ち上がりたいから、まずは拘束魔法を解いてくれ」
「ぐふふっ、りょーかいです☆」
エスタ卿はすっと手を翳すと、途端に身体がふっと軽くなった。
魔法が外れたか。
試しに血が滲む拳を動かし、動くことを確認するとその場に立ち上がった。
「リュカ流の気合い注入法です☆ あ、良かった。いつものヘンリー殿下に戻ったみたいですね」
「ああ。エスタ卿、すまなかった。この借りは必ず返す」
「ぐふふ、王族に恩を売っておくのも悪くないですね」
「ふん、戯けが」
私はイザベル嬢がいなくなった場所まで行き、そっと地面を撫でた。
イザベル嬢……必ず、迎えに行く。
それまで、どうか無事でいてくれ。
「王宮に行くぞ。早急に対策を立てる」
「りょーかいです☆」
私は再び立ち上がり、王宮へと急いだ。
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