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「先日通達書で伝えたとおり、スターク家とランブルグ家は絶縁としたはずだ。それにも関わらずに披露宴に乱入するとは何事だ」
「殿下、先度妻からもお伝えいたしましたとおり、あのお茶会での出来事は子供たちの些細な喧嘩でございます。そんな理由で絶縁だなんて聞いたことがないですし、私達は家族です。な、エステラ、そうだろ?」

 エステラって……この父親、自分の子供の名前すら憶えていないのか。
 呆れ果てていると、クロード様が静かに口を開く。  

「実の娘の名前を間違えるとは何事だ。それに、あの件は私がこの目でしかと見届けている。言い逃れしようとしても無駄だ」
「ひいいいい!」

 クロード様の殺気立ったオーラにすっかり怯え切っている家族。
 このままだと話が進まないと思ったのか、王太子殿下はクロード様を窘める。

「クロード、そんなに殺気立っていたら相手が怯えてしまうだろう。正直僕もこの場にいて足が震えるくらいなんだから、少し魔力の放出を抑えてくれないか」
「殿下、失礼いたしました」
「やれやれ、クロードがそんなに取り乱すとはよっぽど奥方に惚れているのだな。さて、話を続けるか。通達書の内容を破った挙句に上流の者に対する不敬な態度を繰り返すとは、貴族の風上にも置けぬ行為だ。貴族としての務めが果たせぬ者に爵位を与えることは出来ぬ。よって、そなた達は爵位をはく奪のうえ、国外追放とする」

 王太子殿下の言葉に家族は悲鳴のような声を漏らす。
 まぁ、平民落ちした貴族の末路など大体が悲惨なものだ。
 ぬくぬくと過ごしていた生活力のない者が、全てを剥ぎ取られていきなり外へ放り出されるのだから。
 今まで領地経営を怠り贅沢をすることに熱心だった家族だもの。国外での貧困生活にどれだけ耐えられるかしら。
 
「殿下、どうかお考え直し下さい!! 私達は何もしていません!!」
「貴様、私の言葉が聞こえなかったか? 私に逆らうようなら反逆罪でこの場でその煩い口を封じることも出来るが」
「ひい!? そ、それだけは何卒ご勘弁を!!」
「なら、受け入れるということで良いな? では本日を以ってこの者達は男爵としての地位をはく奪し、領地を全て没収とする。ああ、もし国に戻って来た場合はその場で処刑してやるから、死にたくなったら戻って来るといい」
「う、うう……うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 お父様の悲鳴と、お母様とマーガレットのむせび泣く声が辺りを包む。

 その光景を見ていると、ふとエステルが今まで受けて来た仕打ちが脳裏を過る。

 屋敷からは一歩も出してもらえず、食事はいつだって家族の食べ散らかした残り物ばかり。
 気分次第で家族や使用人達から殴られ、事ある毎に『能無し』と虐げられて来た日々。

 それらの仕打ちを繰り返してきた家族が目の前で断罪されようとも、もはや何の感情も湧かない。
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