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「あらぁ、お姉様。ずいぶん遅いから徒歩でいらっしゃったのかと思いましたわ」
マーガレットの言葉にクスクスと令嬢達が笑う。
私は今までお茶会にも出席させて貰えなかったから、この令嬢達が誰なのかは知らない。
ただ、ひとつ言えるのは、この令嬢達は全てマーガレットの取り巻き達であり、この空間で私を擁護する令嬢は誰一人いないということだ。
「マーガレット、久しぶりね。今日はお茶会の招待ありがとう。ただ、招待状には午後二時からだと記載があったけど」
「まぁ、お姉様はわたくしが嘘を付いたとでも言うの!? 優しい婚約者と結婚が決まって羨ましいからってそんな言い掛かり付けてくるなんて……ぐすっ」
ああ、始まった。マーガレットお得意のウソ泣き芸。
このウソ泣きのせいで、いつもエステルは悪者扱いをされてきた。
そう、何も悪い事をしていなくても、マーガレットが泣けば全てエステルが悪いとされ、『能無し』のくせに性格まで悪いなんて! と、よくお母様や使用人に叩かれたっけ。
マーガレットの涙を見た取り巻き達は早速私を責め始める。
「まぁ、エステル様酷いですわ! マーガレット様に謝ってください!」
「そうですわ、マーガレット様に言い掛かりをつけるなんてあんまりです」
「実の姉の癖に妹を祝福できないなんて、なんて歪んだ性格の御方なのかしら。マーガレット様が不憫でなりませんわ」
マーガレットは取り巻き達をたしなめるように立ち上がる。
「皆様、ありがとうございます。わたくしはいつもお姉様に泣かされてきましたので慣れておりますわ。それに……」
マーガレットは扇で口元を覆いながら話を続ける。
まぁ、扇で隠したって、その下には歪んだ笑顔があることくらい知っている。
そう、私が虐げられるところを見る時、貴女はいつもその顔だったものね。
「お姉様は、あの『紅の閣下』に嫁いで苦労されているようですし、きっとわたくしに辛く当たることで憂さ晴らしをしたいのだと思います。……まぁ、『能無し』のお姉様を受け入れた御方ですから、お姉様は『紅の閣下』には感謝しないといけませんけども」
エステルの言葉を聞いた取り巻き達は驚いた様子で私を見る。
「ええ!? 紅の閣下と結婚!?」
「エステル様が『能無し』という噂は伺っておりましたけど、やはり本当なのですね。身内にお荷物がいらっしゃるマーガレット様が不憫でなりませんわ」
「でも、エステル様と紅の閣下は結婚式をまだされていらっしゃいませんよね?」
通常であれば、入籍前後で結婚式とお披露目パーティーを執り行うけど、私とクロード様はお見合い初日で入籍を済ませた出会ってゼロ日婚という特殊事例なので、結婚の事実を知る者はそう多くはない。
だから、こうやって驚かれることは想定内ではあるけども。
「それが、紅の閣下は未だに結婚式を開いてくれなくて。両親が心配して式のことについて触れても、魔獣討伐が始まるからとか言い訳をされてはぐらかされてしまったようなんですの。紅の閣下は結婚式も挙げられない経済状況が悪いようで、わたくしは心配しておりますわ」
それはクロード様の説明したとおり、魔獣討伐という辺境伯としての特殊任務のために暫く家を空けざる得なかっただけだ。
首都が魔獣の侵略を受けずに平和を保てているのだって、クロード様率いる討伐隊が活躍しているお陰なのに。
それを、言い訳? 経済状況が悪い?
この女は何を言っているのだろう。
「今日のその素敵なドレスも、きっとランブルグ家にとっては一張羅の代物だったのでしょう? そんな貧乏な家に嫁いで哀れなお姉様の心が少しでも晴れるように、幸せの御裾分けをしてあげようと思いまして。ふふふ、わたくしの未来の旦那様が、お姉様に比べて優しくて良い方で良かった」
取り巻き達もうんうん、と深く頷いている。
……さて、茶番劇に付き合うのはこのくらいでいいかしら。
沸々と湧き上がる怒りを鎮めるべく、深呼吸をするとマーガレットの目を見据える。
挑発に動じない様子の私を見たマーガレットは何かを感じ取ったようで、みるみる表情が険しくなって行く。
マーガレットの言葉にクスクスと令嬢達が笑う。
私は今までお茶会にも出席させて貰えなかったから、この令嬢達が誰なのかは知らない。
ただ、ひとつ言えるのは、この令嬢達は全てマーガレットの取り巻き達であり、この空間で私を擁護する令嬢は誰一人いないということだ。
「マーガレット、久しぶりね。今日はお茶会の招待ありがとう。ただ、招待状には午後二時からだと記載があったけど」
「まぁ、お姉様はわたくしが嘘を付いたとでも言うの!? 優しい婚約者と結婚が決まって羨ましいからってそんな言い掛かり付けてくるなんて……ぐすっ」
ああ、始まった。マーガレットお得意のウソ泣き芸。
このウソ泣きのせいで、いつもエステルは悪者扱いをされてきた。
そう、何も悪い事をしていなくても、マーガレットが泣けば全てエステルが悪いとされ、『能無し』のくせに性格まで悪いなんて! と、よくお母様や使用人に叩かれたっけ。
マーガレットの涙を見た取り巻き達は早速私を責め始める。
「まぁ、エステル様酷いですわ! マーガレット様に謝ってください!」
「そうですわ、マーガレット様に言い掛かりをつけるなんてあんまりです」
「実の姉の癖に妹を祝福できないなんて、なんて歪んだ性格の御方なのかしら。マーガレット様が不憫でなりませんわ」
マーガレットは取り巻き達をたしなめるように立ち上がる。
「皆様、ありがとうございます。わたくしはいつもお姉様に泣かされてきましたので慣れておりますわ。それに……」
マーガレットは扇で口元を覆いながら話を続ける。
まぁ、扇で隠したって、その下には歪んだ笑顔があることくらい知っている。
そう、私が虐げられるところを見る時、貴女はいつもその顔だったものね。
「お姉様は、あの『紅の閣下』に嫁いで苦労されているようですし、きっとわたくしに辛く当たることで憂さ晴らしをしたいのだと思います。……まぁ、『能無し』のお姉様を受け入れた御方ですから、お姉様は『紅の閣下』には感謝しないといけませんけども」
エステルの言葉を聞いた取り巻き達は驚いた様子で私を見る。
「ええ!? 紅の閣下と結婚!?」
「エステル様が『能無し』という噂は伺っておりましたけど、やはり本当なのですね。身内にお荷物がいらっしゃるマーガレット様が不憫でなりませんわ」
「でも、エステル様と紅の閣下は結婚式をまだされていらっしゃいませんよね?」
通常であれば、入籍前後で結婚式とお披露目パーティーを執り行うけど、私とクロード様はお見合い初日で入籍を済ませた出会ってゼロ日婚という特殊事例なので、結婚の事実を知る者はそう多くはない。
だから、こうやって驚かれることは想定内ではあるけども。
「それが、紅の閣下は未だに結婚式を開いてくれなくて。両親が心配して式のことについて触れても、魔獣討伐が始まるからとか言い訳をされてはぐらかされてしまったようなんですの。紅の閣下は結婚式も挙げられない経済状況が悪いようで、わたくしは心配しておりますわ」
それはクロード様の説明したとおり、魔獣討伐という辺境伯としての特殊任務のために暫く家を空けざる得なかっただけだ。
首都が魔獣の侵略を受けずに平和を保てているのだって、クロード様率いる討伐隊が活躍しているお陰なのに。
それを、言い訳? 経済状況が悪い?
この女は何を言っているのだろう。
「今日のその素敵なドレスも、きっとランブルグ家にとっては一張羅の代物だったのでしょう? そんな貧乏な家に嫁いで哀れなお姉様の心が少しでも晴れるように、幸せの御裾分けをしてあげようと思いまして。ふふふ、わたくしの未来の旦那様が、お姉様に比べて優しくて良い方で良かった」
取り巻き達もうんうん、と深く頷いている。
……さて、茶番劇に付き合うのはこのくらいでいいかしら。
沸々と湧き上がる怒りを鎮めるべく、深呼吸をするとマーガレットの目を見据える。
挑発に動じない様子の私を見たマーガレットは何かを感じ取ったようで、みるみる表情が険しくなって行く。
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