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「私達はお見合いの初日で入籍という異例の結婚であり、色々順序が逆になってしまってすまなかった。それに、この結婚に政略的意図があった事は事実ではあるが、私は初日から貴女に惹かれていたし、その選択は間違いではなかったと思っている」
クロード様は上目遣いで私を見上げる。
ああ、こんなシチュエーションで愛の言葉を囁かれると心臓が爆発してしまいそう。
どうしよう。
すごく、すごく……嬉しい。
「だが、エステルからしてみれば見ず知らずの男といきなり結婚することになったのだ。不安を抱えるのは当然だし、気持ちが追い付いていないことも理解している」
それは……違う。
私もクロード様が好き。
それこそ、クロード様の事を考えるだけで、食事が通らなくなってしまう程に。
「だから、ゆっくりでいい。少しずつ私の方を向いてくれるよう、これからも努力していくつもりだ」
クロード様はどこか寂しそうな様子で私を見つめる。
ずっと孤独と闘って来た貴方に、もうそんな顔をさせたくない。
私も、貴方に想いを伝えたい。
「クロード様、それは違いますわ」
「エステル?」
クロード様は私の否定に驚いたような様子だけど、構わずに話続けることにした。
「私も、クロード様をお慕いしております。ただ、お恥ずかしながらはっきり気持ちを自覚したのは昨日になりますが……」
そうなんだよね、『好きになってはいけない』という気持ちがあったから余計になんだけど、ハッキリ恋心を自覚したのが昨日だった。
前世では長年シンママで恋愛なんて何十年もしてこなかったし、現世では恋愛自体したことなかったから、どうも私は普通の人よりその手のことに疎いようだ。
って、なんだか改めて非リアである現実を突き付けられたようで悲しくなってくるわね、とほほ。
「では、私達は両想いだったにも関わらず、お互いの気持ちに気付いていなかったのか?」
「ええ、そういうことになりますね」
こんなに近くにいてお互い好きなのにその気持ちに気付かないなんて、何だかコントみたいな展開だわ。
思わずふふ、と笑いがこみ上げるとクロード様も同じ気持ちだったようで、ははっと笑った。
「はは、こんなに近くにいながら気持ちがすれ違っていたとは。やはり、夫婦といえどはっきり言わなければ伝わらないものなのだな」
「ふふ、そうですね」
クロード様は私の手を離さずにその場で立ち上がる。
私も一緒に立ち上がってお互い見つめ合う。
「では、改めて。エステル……愛しているよ」
クロード様はそのままそっと優しく私を抱き締めた。
服越しに伝わるその温もりが気持ちよくて、私もクロード様の背に手を回してぎゅっと抱き付く。
「私も、クロード様をお慕いしております」
クロード様は一瞬私を抱く腕に力を籠めると、そっと私から身を離し大きな手で私の頬を優しく包み込む。
その綺麗な紫眼は、私を捉えて離さない。
この至近距離から見つめられたら、それだけで私の思考は止まってしまいそうだ。
そのままクロード様の顔がゆっくり近付いてくる。
そして、後数センチで唇が触れるか、というところでふっと先ほどの既視感を感じたシーンが脳裏を過る。
小さいゲームの画面越しに映し出されるオープニングのシーン。
そしてその中にあるクロード様の姿。
そうか! あのシーンはオープニングのチラ見せスチルだったんだ!!
クロード様は上目遣いで私を見上げる。
ああ、こんなシチュエーションで愛の言葉を囁かれると心臓が爆発してしまいそう。
どうしよう。
すごく、すごく……嬉しい。
「だが、エステルからしてみれば見ず知らずの男といきなり結婚することになったのだ。不安を抱えるのは当然だし、気持ちが追い付いていないことも理解している」
それは……違う。
私もクロード様が好き。
それこそ、クロード様の事を考えるだけで、食事が通らなくなってしまう程に。
「だから、ゆっくりでいい。少しずつ私の方を向いてくれるよう、これからも努力していくつもりだ」
クロード様はどこか寂しそうな様子で私を見つめる。
ずっと孤独と闘って来た貴方に、もうそんな顔をさせたくない。
私も、貴方に想いを伝えたい。
「クロード様、それは違いますわ」
「エステル?」
クロード様は私の否定に驚いたような様子だけど、構わずに話続けることにした。
「私も、クロード様をお慕いしております。ただ、お恥ずかしながらはっきり気持ちを自覚したのは昨日になりますが……」
そうなんだよね、『好きになってはいけない』という気持ちがあったから余計になんだけど、ハッキリ恋心を自覚したのが昨日だった。
前世では長年シンママで恋愛なんて何十年もしてこなかったし、現世では恋愛自体したことなかったから、どうも私は普通の人よりその手のことに疎いようだ。
って、なんだか改めて非リアである現実を突き付けられたようで悲しくなってくるわね、とほほ。
「では、私達は両想いだったにも関わらず、お互いの気持ちに気付いていなかったのか?」
「ええ、そういうことになりますね」
こんなに近くにいてお互い好きなのにその気持ちに気付かないなんて、何だかコントみたいな展開だわ。
思わずふふ、と笑いがこみ上げるとクロード様も同じ気持ちだったようで、ははっと笑った。
「はは、こんなに近くにいながら気持ちがすれ違っていたとは。やはり、夫婦といえどはっきり言わなければ伝わらないものなのだな」
「ふふ、そうですね」
クロード様は私の手を離さずにその場で立ち上がる。
私も一緒に立ち上がってお互い見つめ合う。
「では、改めて。エステル……愛しているよ」
クロード様はそのままそっと優しく私を抱き締めた。
服越しに伝わるその温もりが気持ちよくて、私もクロード様の背に手を回してぎゅっと抱き付く。
「私も、クロード様をお慕いしております」
クロード様は一瞬私を抱く腕に力を籠めると、そっと私から身を離し大きな手で私の頬を優しく包み込む。
その綺麗な紫眼は、私を捉えて離さない。
この至近距離から見つめられたら、それだけで私の思考は止まってしまいそうだ。
そのままクロード様の顔がゆっくり近付いてくる。
そして、後数センチで唇が触れるか、というところでふっと先ほどの既視感を感じたシーンが脳裏を過る。
小さいゲームの画面越しに映し出されるオープニングのシーン。
そしてその中にあるクロード様の姿。
そうか! あのシーンはオープニングのチラ見せスチルだったんだ!!
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