寝取られ予定のお飾り妻に転生しましたが、なぜか溺愛されています

あさひな

文字の大きさ
上 下
37 / 62

36

しおりを挟む
「私達はお見合いの初日で入籍という異例の結婚であり、色々順序が逆になってしまってすまなかった。それに、この結婚に政略的意図があった事は事実ではあるが、私は初日から貴女に惹かれていたし、その選択は間違いではなかったと思っている」

 クロード様は上目遣いで私を見上げる。
 ああ、こんなシチュエーションで愛の言葉を囁かれると心臓が爆発してしまいそう。
 どうしよう。
 すごく、すごく……嬉しい。

「だが、エステルからしてみれば見ず知らずの男といきなり結婚することになったのだ。不安を抱えるのは当然だし、気持ちが追い付いていないことも理解している」

 それは……違う。
 私もクロード様が好き。
 それこそ、クロード様の事を考えるだけで、食事が通らなくなってしまう程に。

「だから、ゆっくりでいい。少しずつ私の方を向いてくれるよう、これからも努力していくつもりだ」

 クロード様はどこか寂しそうな様子で私を見つめる。
 ずっと孤独と闘って来た貴方に、もうそんな顔をさせたくない。
 私も、貴方に想いを伝えたい。

「クロード様、それは違いますわ」
「エステル?」

 クロード様は私の否定に驚いたような様子だけど、構わずに話続けることにした。

「私も、クロード様をお慕いしております。ただ、お恥ずかしながらはっきり気持ちを自覚したのは昨日になりますが……」

 そうなんだよね、『好きになってはいけない』という気持ちがあったから余計になんだけど、ハッキリ恋心を自覚したのが昨日だった。
 前世では長年シンママで恋愛なんて何十年もしてこなかったし、現世では恋愛自体したことなかったから、どうも私は普通の人よりその手のことに疎いようだ。
 って、なんだか改めて非リアである現実を突き付けられたようで悲しくなってくるわね、とほほ。

「では、私達は両想いだったにも関わらず、お互いの気持ちに気付いていなかったのか?」
「ええ、そういうことになりますね」

 こんなに近くにいてお互い好きなのにその気持ちに気付かないなんて、何だかコントみたいな展開だわ。
 思わずふふ、と笑いがこみ上げるとクロード様も同じ気持ちだったようで、ははっと笑った。

「はは、こんなに近くにいながら気持ちがすれ違っていたとは。やはり、夫婦といえどはっきり言わなければ伝わらないものなのだな」
「ふふ、そうですね」

 クロード様は私の手を離さずにその場で立ち上がる。
 私も一緒に立ち上がってお互い見つめ合う。

「では、改めて。エステル……愛しているよ」

 クロード様はそのままそっと優しく私を抱き締めた。
 服越しに伝わるその温もりが気持ちよくて、私もクロード様の背に手を回してぎゅっと抱き付く。

「私も、クロード様をお慕いしております」
 
 クロード様は一瞬私を抱く腕に力を籠めると、そっと私から身を離し大きな手で私の頬を優しく包み込む。
 その綺麗な紫眼は、私を捉えて離さない。
 この至近距離から見つめられたら、それだけで私の思考は止まってしまいそうだ。

 そのままクロード様の顔がゆっくり近付いてくる。
 そして、後数センチで唇が触れるか、というところでふっと先ほどの既視感を感じたシーンが脳裏を過る。
 
 小さいゲームの画面越しに映し出されるオープニングのシーン。
 そしてその中にあるクロード様の姿。

 そうか! あのシーンはオープニングのチラ見せスチルだったんだ!!
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

処理中です...