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さて、せっかくだし読んでいくか。
部屋の端にある椅子に腰掛け、パラパラと頁を捲る。
この小説は、異世界から来たヒロインと、とある貴族の主人公の恋愛模様の書かれたラブロマンスだ。
そう、前世でいう『異世界転移要素を含んだラノベ』に近いものである。
あー、そうそう、この挿絵も懐かしいなぁ。
綺麗な挿絵付きの小説だったため、エステルはこの挿絵が好きで読み始めたんだっけ。
そんなことを思い出しながら読み進めていくとあっという間に一巻を読み終えてしまった。
この小説は長編なのだが、エステルの実家では途中で購入しなくなったのか最終話まで揃っていなかった。
もしかしたらここでは全部揃っているかも。
試しに先ほど本を取った場所に戻ると、エステルが見たことのない巻まで揃っている。
おお! 嬉しい、続編がある!!
続編の巻の部分をごっぞり抜き取り、再び机に戻ると、そのまま読書の没頭する。
そのまま続編を読んでいるとついに最終章に突入した。
ああ、最後はヒロインと主人公は一緒に暮らせることになったのね、良かった~。
最後まで読み終えた満足感と、物語の余韻に浸っていると急に外から足音が聞こえてきた。
外でしばらく話声が聞こえたかと思うとコンコンという扉を叩く音と共に扉が開いた。
「エステル、体調は大丈夫か?」
えええ、クロード様!? 今日家空けるって言ってなかったっけ?
ていけない、ボーッと座ってないで何か返事をしなきゃ!
「クロード様、お、おかえりなさいませ。あの、王宮への報告は?」
「移動は魔法を使ったし、報告は簡潔に済ませて来た」
クロード様は私の質問に答えながらずんずんと部屋の中に入ると、大きな手でそっと頬を包み込んだ。
「顔色は昨日よりも良いようだが、無理はいけないぞ」
「は、はい」
ひゃぁぁぁ、何の準備もなく至近距離は心臓に悪い!
「こんな別館の狭い部屋に籠って居ては身体に触るといけない。気になる本があれば自室に持って行かせよう」
クロード様は積んである小説を手に取ると「懐かしいな」と独り言を漏らした。
おや? クロード様もこの小説読んだことがあるのかしら?
「クロード様もこちらの小説を読んだことがあるですか?」
「ああ、子供の時に読んだことがある」
「そうだったのですね! 実は私も読んだことがあったのですが、実家では途中で続刊を買わなくなったようで途中までしか話が読めなかったのです。こちらの本棚に最後まで揃っていたものですから、つい没頭して読んでしまいました」
「そうか」
クロード様は何かを考えているのか、暫くの沈黙の後、私の手を握りながら再び口を開いた。
部屋の端にある椅子に腰掛け、パラパラと頁を捲る。
この小説は、異世界から来たヒロインと、とある貴族の主人公の恋愛模様の書かれたラブロマンスだ。
そう、前世でいう『異世界転移要素を含んだラノベ』に近いものである。
あー、そうそう、この挿絵も懐かしいなぁ。
綺麗な挿絵付きの小説だったため、エステルはこの挿絵が好きで読み始めたんだっけ。
そんなことを思い出しながら読み進めていくとあっという間に一巻を読み終えてしまった。
この小説は長編なのだが、エステルの実家では途中で購入しなくなったのか最終話まで揃っていなかった。
もしかしたらここでは全部揃っているかも。
試しに先ほど本を取った場所に戻ると、エステルが見たことのない巻まで揃っている。
おお! 嬉しい、続編がある!!
続編の巻の部分をごっぞり抜き取り、再び机に戻ると、そのまま読書の没頭する。
そのまま続編を読んでいるとついに最終章に突入した。
ああ、最後はヒロインと主人公は一緒に暮らせることになったのね、良かった~。
最後まで読み終えた満足感と、物語の余韻に浸っていると急に外から足音が聞こえてきた。
外でしばらく話声が聞こえたかと思うとコンコンという扉を叩く音と共に扉が開いた。
「エステル、体調は大丈夫か?」
えええ、クロード様!? 今日家空けるって言ってなかったっけ?
ていけない、ボーッと座ってないで何か返事をしなきゃ!
「クロード様、お、おかえりなさいませ。あの、王宮への報告は?」
「移動は魔法を使ったし、報告は簡潔に済ませて来た」
クロード様は私の質問に答えながらずんずんと部屋の中に入ると、大きな手でそっと頬を包み込んだ。
「顔色は昨日よりも良いようだが、無理はいけないぞ」
「は、はい」
ひゃぁぁぁ、何の準備もなく至近距離は心臓に悪い!
「こんな別館の狭い部屋に籠って居ては身体に触るといけない。気になる本があれば自室に持って行かせよう」
クロード様は積んである小説を手に取ると「懐かしいな」と独り言を漏らした。
おや? クロード様もこの小説読んだことがあるのかしら?
「クロード様もこちらの小説を読んだことがあるですか?」
「ああ、子供の時に読んだことがある」
「そうだったのですね! 実は私も読んだことがあったのですが、実家では途中で続刊を買わなくなったようで途中までしか話が読めなかったのです。こちらの本棚に最後まで揃っていたものですから、つい没頭して読んでしまいました」
「そうか」
クロード様は何かを考えているのか、暫くの沈黙の後、私の手を握りながら再び口を開いた。
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