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 食事を取ったあと、手持無沙汰になった私は屋敷内を散策することにした。
 いつも通りに家事をしたかったのだけど、ルネさんから「まだ病み上がりだから」と禁止されてしまったのよね。
 本当は体調不良ではなかったのだけど「クロード様に会いたくないから言い訳に使っていました」とも言えないので、今日はルネさん従い大人しく過ごすことにしたのだ。

 しっかし、改めて歩いてみると屋敷の広さに驚く。
 前世の部屋の広さなんて、なんてここの玄関にも満たないんじゃないかしら。
 そんなことを思いつつ、ルネさんと長い連絡通路を歩く。

 実はランブルグ家には本館の他に小さい別館がある。
 生活する場所が本館なので今まで別館に入ったことがなかったが、せっかくなので今日は別館の散策をすることにしたのだ。
 
「ここはもうあまり使われていませんが、本館の書庫に入りきらなかった資料、先代当主様の趣味で使用していた道具の置き部屋、そして大規模のパーティが開かれた際の招待客用の控え部屋がございます」
「へぇ、そうなのですね」

 ふーん、そうなのか。
 でも、滅多に使わない場所と言いつつもきちんと清掃が行き届いている辺りはさすがだわ。
 ま、ランブルグ家の使用人達はシゴデキな人たちばかりだから、屋敷の管理もしっかりしている。
 
 そんな事を思いつつ歩いていると早速扉が見えてきた。
 ここは何の部屋なのかしら。

「こちらは先ほどお伝えした、本館に入りきらなかった資料がある書物庫になります」
「中に入っても大丈夫でしょうか」
「ええ。こちらには機密文書以外の物しか置いていないので出入りは自由になっております」

 ふんふん、そうなのか。
 
 試しにそっと扉を開けると、丸い机と小さめの椅子がいくつかあり、壁に備え付けられた本棚には綺麗に本が陳列されている。
 本宅に比べるとこじんまりした作りではあるが、だだっ広い空間にいるよりこのくらいの広さの方がかえって落ち着く。

 お、あの背表紙見覚えがある。
 たしか、エステルの実家にもあった大衆小説だわ。

 そっと手に取りパラパラ捲るとエステルの記憶も蘇って来る。
 
 そうだった、エステルはこの小説が好きで何度も読み返していたっけ。
 
「ルネさん、少しここで本を読んでもいいでしょうか」
「ええ、大丈夫です。私は外で待機しておりますので、何かありましたらお声がけください」
「ありがとうございます」

 ルネさんは私の読書の邪魔をしないよう気を利かせてくれたようで、部屋から出て行ってしまった。
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