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「奥様は当事者ですから客観的に見れていないのかも知れませんが、当主様は間違いなく奥様を溺愛していらっしゃいますし、ご結婚を決断されたのも奥様に一目惚れされたからだと思います。そもそもお見合い初日で結婚を決断されるなんて、普通はしないことですし」
「で、でも」
「奥様は何を以って当主様が心変わりされるとお思いなのかは存じ上げませんが、これだけ奥様にぞっこんの当主様が他に目が行くとは到底思えません」

 ここまではっきり言われてしまうと、私の意見に自信がなくなってくる。
 それに、クロード様が私にぞっこん?
 ま、まぁ確かに日を追う毎にあまあまになっていく態度やらセリフやらで、思い当たる節はたくさんあるんだけども。

「そ、そうかしら?」
「ええ、他の使用人から見ても当主様が奥様にぞっこんなのは一目瞭然かと。でも、そうですね……それでも不安ということでしたら、直接当主様に聞いてみたらどうでしょう」

 クロード様に気持ちを聞く!?
 それ、なかなかハードルが高い気がするんですが。

「きっとその方がお互いの気持ちを再確認できると思います。そうですね、奥様の体調が良くなったら当主様のお部屋に行ってみてはどうでしょう? 昨日から奥様と会えずにしょんぼりしていらっしゃいましたから、きっと喜んで迎い入れてくれるはずですよ、ふふふ」

 確かに私から面会を拒否されたクロード様の声は元気がなかったように思える。
 でも、それは単純に私のことを心配しているだけかと思っていたけど、違うのだろうか。

「それに、奥様は嫁がれてまだ半年も経っていないのですから不安な事があって当然ですし、その気持ちを抱えて過ごすくらいでしたら、当主様に想いをぶつけてみてもいいと思うのです。……私のように、行動せずに後々になって後悔することのないように」

 ルネさんは、きっと過去を思い出しているのだろう。
 どこか寂しそうな目をしながら私から視線を反らし、丁寧なお辞儀をした。 
 
 クロード様の気持ちを聞いてみて、自分の気持ちを伝える……か。
 でも、もし、気持ちを伝えて受け入れて貰えなかったら? そう思うと自分の気持ちを伝えるのはまだまだ勇気がいるなぁ。
 でも……クロード様の気持ちは気になる。
 このまま何もしないでいるよりは、思い切って聞いてみてもいいのかも知れない。 

「自分語りが過ぎた事をお許しください」
「ルネさん、顔を上げてください。質問をしたのは私ですし、ルネさんに話を聞いて貰ったら、元気が出てきたように思います」
「それは良かったです。食事は召し上がれそうですか?」

 食事……そうだった。
 ルネさん、軽食持って来てくれていたんだっけ。

 悩みを聞いて貰って気持ちが軽くなったせいか急に食欲が出てきたようで、ぐぅっとお腹が鳴った。

 ぎゃあ! お腹鳴っちゃった、恥ずかしい!!

「は、はは。急にお腹空いてきちゃったみたいです」
「ふふふ、それは良かったです」

 うう、なんと現金な私のお腹め。
 しかし、食欲には勝てない……今は美味しそうな食事を有り難くいただこう。

 そんな事を思いながら、ベットから立ち上がった。
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