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「私は後悔しました、なぜあの時想いを封じてしまったのだろうって。そして、不条理に姉を憎んだりもしました。姉も私も、お互い同じ相手を好きだったことは知らなかったのに。逆恨みもいいところですし、無駄な憎しみを胸の内に抱えて過ごすのは辛かったです」
「ルネさん……」
「そして、その時思ったのです。たとえ好きになってはいけないと思う相手でも、気持ちを伝えるのは自由なんだって。もちろん既婚者のように特定のパートナーのいるようなお相手でしたら想いを伝えることを躊躇うと思いますが、そうでなければはっきりと言ってしまった方が、たとえ結果がダメであっても後悔せずに前を向けると思うのです」

 確かに……それはあるかも。
 やらずに後悔するよりやって後悔した方が、その後悔の度合いは違ってくると思う。
 少なくても、前世でシンママやってた私の人生経験上はそうだったもの。

「奥様は……どなたか想い人がいらっしゃるのですか?」
「え!?」

 あ、そうだよね。こんな質問したらクロード様以外に好きな人がいるのかって思っちゃうよね。
 一応そこのところの誤解は解いておこう。

「えーと、すみません。ルネさんに変な誤解を与えていたら申し訳ないのですが、私が好きな人っていうのは、その……クロード様のことです。他に想っている方はおりませんわ」
「そうでしたか。不躾な質問をして大変失礼致しました。でも、それでしたら何も悩む必要はないかと思いますが」

 うーん、まさか『この世界が乙女ゲームの世界線で、私がヒロインに寝取られる役なので色々不安なんです』とは言えないしなぁ。
 少し言い方を変えてルネさんに伝えよう。

「そうなんですが……そもそもこの結婚は恋愛感情なしの政略的意図の強いものでしょう? それにほら、クロード様は素敵な方だから、恋する令嬢が他に現れてクロード様と恋仲になることもあると思うのです。そうしたら、私の存在が邪魔になって離縁を言い渡される可能性がありますし、その際にクロード様を想う気持ちがあると離縁する時に辛いだろうなと思って」

 私の発言を聞いたルネさんは唖然とした表情を浮かべている。
 ……あれ? 私、なんか変なことを言ったかしら?

「申し訳ありませんが、奥様のおっしゃる意味が分かりません」
「だから、今後クロード様から離婚って言われるかもしれないので、その心積もりを」
「その発言が全く持って意味不明ですわ」

 ルネさんは容赦なくバッサリと私の意見を切り捨てる。
 そ、そんなに否定しなくても……。





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