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飲みかけのお茶もそのままに、ソファから立ち上がり急いでセバスさんと門前へ向かう。
うわわわ、どうしよう。本当に帰って来てる!
「はぁ、はぁっ……ク、クロード様、お帰りなさいませ」
「ははは、そんなに急いで来なくても良かったのに。いつもだったら魔法は使わずに帰るのだが、早くエステルに会いたくてつい魔法を使ってしまった」
「そ、そうだったのですね」
クロード様は討伐隊に向かって声を上げた。
「皆の者、ご苦労だった! 今回は屋敷の準備が整っていない故、帰還の宴は後日追って通達するが、腹の減っている者や瞬間移動で体調が悪くなった者がいれば遠慮せず屋敷内で寛いでから帰宅すると良い。では、解散とする!!」
ザザッと一斉に敬礼を取る討伐隊。
おおお、みんな疲れているだろうに一糸乱れぬ敬礼は流石だわ。
「さぁエステル、外は寒いから中へ入ろう」
クロード様はそっと私の手を取り反対の手で腰に手を回すと優しくエスコートをする。
うう、みんな見ているところでエスコート(しかも密着バージョン)扱いを受けるのはちょっと恥ずかしい。
でも、意識すると余計恥ずかしくなるので何か話題を振ってみようかしら。
「クロード様、魔法を使って帰ってこられたようですが、疲れたりはしていませんか?」
「まあ、疲れるな。だが、今回は小規模の討伐隊だったから大丈夫だ」
「そうなのですね、では少しベッドでお休みになられた方がいいのでは」
「気遣ってくれてありがとう。だが、今はエステルとの時間を存分に堪能したいし、体力はある方だから大丈夫だ」
「そ、そうですか」
なんとなく照れ臭くてふっと視線を下方に移すと……あれ? 足元の布が赤くなっている。
も、もしかしてクロード様、足に怪我している!?
「クロード様! 大変、足元に血が……!」
クロード様は自身の足元を見ると「ああ、本当だ」と何ともないような様子だ。
大丈夫なのかしら、早く手当しないと!
「エステル、大丈夫だよ。これは魔獣の返り血だ」
「ああ、良かった! 怪我しているわけではなかったのですね」
「前日に着替えたのだが、こちらに帰る前に一体倒してきたから、きっとそこで付いてしまったのだろう。気味の悪いものを見せてしまってすまない」
魔獣の返り血は確かに怖いけど、それはクロード様が私達の安全を守るために闘って来た証でもある。
それを『気味の悪いもの』だなんて、全く思わない。
「クロード様は謝る必要なんてありません」
「エステル?」
「この汚れはクロード様が頑張ってきた証拠ではありませんか。自らの危険を冒してまで私達を守って下さった証です。それを『気味の悪いもの』だなんてクロード様に対して失礼だと思いますし、私はそのようには感じません」
「エステル……」
クロード様は何かをぐっとこらえるように立ち止まった。
「本当はこの場でエステルを抱き締めたいが、今の私は汚れているからな。軽く湯あみをしてくる」
まだ門前で討伐隊の人達が敬礼したまま私達が屋敷内に入るの見届けているものだから、ここで公開抱擁された日には羞恥心で私の心は爆発してしまうわ。
「分かりました。どうぞ、ごゆっくりなさってくださいませ」
「ありがとう」
そんな会話を交わしつつ、私達は屋敷に入っていった。
うわわわ、どうしよう。本当に帰って来てる!
「はぁ、はぁっ……ク、クロード様、お帰りなさいませ」
「ははは、そんなに急いで来なくても良かったのに。いつもだったら魔法は使わずに帰るのだが、早くエステルに会いたくてつい魔法を使ってしまった」
「そ、そうだったのですね」
クロード様は討伐隊に向かって声を上げた。
「皆の者、ご苦労だった! 今回は屋敷の準備が整っていない故、帰還の宴は後日追って通達するが、腹の減っている者や瞬間移動で体調が悪くなった者がいれば遠慮せず屋敷内で寛いでから帰宅すると良い。では、解散とする!!」
ザザッと一斉に敬礼を取る討伐隊。
おおお、みんな疲れているだろうに一糸乱れぬ敬礼は流石だわ。
「さぁエステル、外は寒いから中へ入ろう」
クロード様はそっと私の手を取り反対の手で腰に手を回すと優しくエスコートをする。
うう、みんな見ているところでエスコート(しかも密着バージョン)扱いを受けるのはちょっと恥ずかしい。
でも、意識すると余計恥ずかしくなるので何か話題を振ってみようかしら。
「クロード様、魔法を使って帰ってこられたようですが、疲れたりはしていませんか?」
「まあ、疲れるな。だが、今回は小規模の討伐隊だったから大丈夫だ」
「そうなのですね、では少しベッドでお休みになられた方がいいのでは」
「気遣ってくれてありがとう。だが、今はエステルとの時間を存分に堪能したいし、体力はある方だから大丈夫だ」
「そ、そうですか」
なんとなく照れ臭くてふっと視線を下方に移すと……あれ? 足元の布が赤くなっている。
も、もしかしてクロード様、足に怪我している!?
「クロード様! 大変、足元に血が……!」
クロード様は自身の足元を見ると「ああ、本当だ」と何ともないような様子だ。
大丈夫なのかしら、早く手当しないと!
「エステル、大丈夫だよ。これは魔獣の返り血だ」
「ああ、良かった! 怪我しているわけではなかったのですね」
「前日に着替えたのだが、こちらに帰る前に一体倒してきたから、きっとそこで付いてしまったのだろう。気味の悪いものを見せてしまってすまない」
魔獣の返り血は確かに怖いけど、それはクロード様が私達の安全を守るために闘って来た証でもある。
それを『気味の悪いもの』だなんて、全く思わない。
「クロード様は謝る必要なんてありません」
「エステル?」
「この汚れはクロード様が頑張ってきた証拠ではありませんか。自らの危険を冒してまで私達を守って下さった証です。それを『気味の悪いもの』だなんてクロード様に対して失礼だと思いますし、私はそのようには感じません」
「エステル……」
クロード様は何かをぐっとこらえるように立ち止まった。
「本当はこの場でエステルを抱き締めたいが、今の私は汚れているからな。軽く湯あみをしてくる」
まだ門前で討伐隊の人達が敬礼したまま私達が屋敷内に入るの見届けているものだから、ここで公開抱擁された日には羞恥心で私の心は爆発してしまうわ。
「分かりました。どうぞ、ごゆっくりなさってくださいませ」
「ありがとう」
そんな会話を交わしつつ、私達は屋敷に入っていった。
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