寝取られ予定のお飾り妻に転生しましたが、なぜか溺愛されています

あさひな

文字の大きさ
上 下
28 / 62

27

しおりを挟む
 飲みかけのお茶もそのままに、ソファから立ち上がり急いでセバスさんと門前へ向かう。
 うわわわ、どうしよう。本当に帰って来てる!

「はぁ、はぁっ……ク、クロード様、お帰りなさいませ」
「ははは、そんなに急いで来なくても良かったのに。いつもだったら魔法は使わずに帰るのだが、早くエステルに会いたくてつい魔法を使ってしまった」
「そ、そうだったのですね」

 クロード様は討伐隊に向かって声を上げた。

「皆の者、ご苦労だった! 今回は屋敷の準備が整っていない故、帰還の宴は後日追って通達するが、腹の減っている者や瞬間移動で体調が悪くなった者がいれば遠慮せず屋敷内で寛いでから帰宅すると良い。では、解散とする!!」

 ザザッと一斉に敬礼を取る討伐隊。
 おおお、みんな疲れているだろうに一糸乱れぬ敬礼は流石だわ。

「さぁエステル、外は寒いから中へ入ろう」

 クロード様はそっと私の手を取り反対の手で腰に手を回すと優しくエスコートをする。
 うう、みんな見ているところでエスコート(しかも密着バージョン)扱いを受けるのはちょっと恥ずかしい。
 でも、意識すると余計恥ずかしくなるので何か話題を振ってみようかしら。

「クロード様、魔法を使って帰ってこられたようですが、疲れたりはしていませんか?」
「まあ、疲れるな。だが、今回は小規模の討伐隊だったから大丈夫だ」
「そうなのですね、では少しベッドでお休みになられた方がいいのでは」
「気遣ってくれてありがとう。だが、今はエステルとの時間を存分に堪能したいし、体力はある方だから大丈夫だ」
「そ、そうですか」

 なんとなく照れ臭くてふっと視線を下方に移すと……あれ? 足元の布が赤くなっている。
 も、もしかしてクロード様、足に怪我している!?

「クロード様! 大変、足元に血が……!」

 クロード様は自身の足元を見ると「ああ、本当だ」と何ともないような様子だ。
 大丈夫なのかしら、早く手当しないと!

「エステル、大丈夫だよ。これは魔獣の返り血だ」
「ああ、良かった! 怪我しているわけではなかったのですね」
「前日に着替えたのだが、こちらに帰る前に一体倒してきたから、きっとそこで付いてしまったのだろう。気味の悪いものを見せてしまってすまない」

 魔獣の返り血は確かに怖いけど、それはクロード様が私達の安全を守るために闘って来た証でもある。
 それを『気味の悪いもの』だなんて、全く思わない。

「クロード様は謝る必要なんてありません」
「エステル?」
「この汚れはクロード様が頑張ってきた証拠ではありませんか。自らの危険を冒してまで私達を守って下さった証です。それを『気味の悪いもの』だなんてクロード様に対して失礼だと思いますし、私はそのようには感じません」
「エステル……」

 クロード様は何かをぐっとこらえるように立ち止まった。

「本当はこの場でエステルを抱き締めたいが、今の私は汚れているからな。軽く湯あみをしてくる」

 まだ門前で討伐隊の人達が敬礼したまま私達が屋敷内に入るの見届けているものだから、ここで公開抱擁された日には羞恥心で私の心は爆発してしまうわ。

「分かりました。どうぞ、ごゆっくりなさってくださいませ」
「ありがとう」

 そんな会話を交わしつつ、私達は屋敷に入っていった。
 
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!

あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】 小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。 その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。 ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。 その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。 優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。 運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。 ※コミカライズ企画進行中 なろうさんにも同作品を投稿中です。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

処理中です...