寝取られ予定のお飾り妻に転生しましたが、なぜか溺愛されています

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「ふぅ、今日も充実した家事が出来たわ」

　気付けば秋だった気候は冬に移り変わり、外は薄っすら雪が積もっている。
　ここランブルグ領では日本と同じく四季があるが、冬になると雪が積もる日がある。
　エステルがいたスターク領も四季があったが雪は積もらない場所だったし、場所によって多少の気候の違いはあるようだ。

　雪が降るとここランブルグ家の使用人達は玄関先など人が出入りする場所は雪かきをするのだが、漏れなく私も参加をしていたところだ。
　
「今日はそれなりに雪が積もっていましたね」
「奥様の作った雪だるま、とても可愛いです。私達の寮にも作ろうかしら」
「それいいわね！　今度積もった時は玄関先に作ってみましょうよ」

　ルネさんは怪我が心配な様でもちろん当初は止められたのだが、何もせずにいると前世の主婦魂が疼くのか、どうしても体が先に反応してしまうのよね。
　それに、家事をしていると「どの世界にいても、誰かの役に立つことが出来る」と思える。
　上手く言えないけど、誰かの役に立つことで「生きている実感」というか「異世界で生きる意味」というか、私という存在が認められたような……そんな気持ちになる。

　そんな私にルネさんは呆れつつも、危なくない作業なら大体見逃してくれているし、最初こそ遠慮がちだった使用人達も心を開いてくれてきているように思える。
　
　うんうん。優しい人達に恵まれて、私は幸せ者だなぁ。

「奥様、だいぶお身体も冷えていらっしゃるでしょうしまずは屋敷に戻りましょう」
「はーい」

　ルネさんとメイド達に促されるまま屋敷に戻り自室に向かおうとしたところ、クロード様とセバスさん、そして騎士達が神妙な面持ちで話しながら出てきた。
　そう、ここ数週間前からクロード様は自領の騎士達と何やら会議らしきものを開いているようで忙しそうなのだ。
　お陰で日課だった夕食後の晩酌も一週間前くらいからぱったり途絶え、ここ数日はちゃんと顔も合わせていないような状態だ。

　クロード様、少し顔色が悪いように見えるけどちゃんと休んでいるのかしら。
　大丈夫かな、ちょっと心配になってしまう。
　
　クロード様を遠目で見ていると私の視線に気付いたのか、クロード様とばっちり目があった。

　ああ、やっぱり、少しお疲れのように見えるわ。
　もし邪魔にならなければ後で何か差し入れを持っていこうかしら。

　そんな事を思っているとクロード様は周囲の人達に何かを話し、その場を離れてこちらに向かって来た。

「やぁ、可愛いエステル」
「クロード様、ごきげんよう」

　クロード様は優しく手を取って私の手の甲に口付ける。
　ってちょっと待って！　騎士のみなさんまだいるし！！

「ク、クロード様！？　あの、お仕事は大丈夫なのですか？」
「話は大方済んだし問題ない」

　クロード様はセバスさんに何やら手で合図をすると、セバスさんは騎士達を玄関先まで誘導し出した。
　ああ、私ったらやっぱりクロード様のお仕事の邪魔をしてしまったのかしら。

「申し訳ありません、お仕事の邪魔をしてしまったようで」
「邪魔になどなっていないし、エステル以上に大事な要件など有りはしない」

　クロード様はそう言うとそっと私を抱き寄せた。

　ひゃあああああ！　ほ、抱擁！？

「エステルとあまり距離を置きたくないのだが……暫く屋敷を離れることが決まった」

　クロード様は少し掠れた声でそう呟く。
　こちとらいきなりの抱擁でそれどころではないのですが！

　でも……暫く屋敷を空けるとは？