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* * *
「我が家から『能無し』が生まれるなんて……」
お母様、そんなに悲しい顔してどうしたの?
「お前は一家の恥よ! ああ、汚い手で触らないで頂戴!」
叩かれた手が痛い。
でも、汚い手で触った私が悪いの。
お母様、ごめんなさい、ごめんなさい。
「そんな目で見ないで! 早くこの部屋から出て行きなさい!」
ごめんなさい、お母様。
「お前なんて、生まれて来なければ良かったのよ!!」
ごめんなさい。
……生まれてきて、ごめんなさい。
ーーハッ!!
「うう……夢……?」
起き上がろうとすると、う、身体が怠い。
それに先ほどの夢のせいか、頭も重い。
いや、あれは『夢』ではなくて、もしかしたらエステルの記憶なのかも知れない。
重く感じる頭に手を当てつつ上体を起こすと、視界に入る物はどれも私の部屋にないものばかり。
あれ? もしかして、ここ私の部屋じゃない?
「ん……」
ん、なんか声がする。そういえばやけに布団が温かいな。
って、えええ!?
クロード様が隣で寝てる!?
「エステル……?」
クロード様は閉じていた瞼をゆっくり開け、紫色の瞳が私を映し出す。
「おはよう」
「オ、オハヨウゴザイマス」
うきゃぁぁぁぁあ!?
ちょっと待って! 暫く気付かなかったけどクロード様、上半身裸なんですけど!?
身体にあちこち古傷があるけど、引き締まって凄く良い身体付き。ごくり……。ってそうじゃなかった!
「おっと、もうこんな時間か」
えええっと、その……この状況は、つまり……。
朝チュン、というやつですか?
クロード様は私の動揺を他所に、ふぁっと欠伸をしながら椅子にかけてあるシャツを羽織る。
ど、どうしよう。
お酒が進んでふわふわした気分の中会話していた記憶はあるんだけど、そこから後の記憶が全くない。
「私はこれから仕事をするが、エステル嬢は暫く休んで行くか? 昨夜は酔ってそのままテーブルに突っ伏して眠ってしまったくらいだから、まだ身体に酒が残っていて怠いだろう」
「わ、私は大丈夫ですわ。それより昨夜は大変な粗相をしたようで申し訳ありません」
「ははは! 私が誘ったのだし、全く気にしなくて良い。それより酒を勧め過ぎてしまった様でこちらこそすまなかった、次回からは気をつける」
良かった、一先ずクロード様の気分を害したりはしていないようだわ。
そして、昨日はそのまま寝ちゃったのか! 勘違いで恥ずかしい!
「私は隣の部屋で仕事をしているから、少し寝てから出ると良い。身支度はクローゼットの中に姿見があるし、水桶はあっちにある。飲み水は机に置いてあるから好きに飲んでくれ」
「は、はい」
クロード様は簡単に身支度を済ませると、さっさと寝室を出て行ってしまった。
特に用事はないけど、ここに止まっているわけにもいかないし。
私も早く支度をしよう。
のそのそとベッドから這い降りて机にある水差しからコップに注ぐ。
ぷはぁ、さっきより頭がシャキッとしてきたわ。
軽く身支度を整えてそっと扉を開けると、机で書類を書いていたクロード様がふっと顔を上げた。
「まだ眠っていても良かったのに。身体は大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です。一旦自室に戻って着替えて参ります」
「そうか」
クロード様はそのまま自席から立ち上がると私の傍までやって来て、そのまま扉までエスコートをする。
その場でお別れからと思いきや、そのままクロード様は私について来た。
こんな時までエスコートしてくれなくて良いのに、律儀過ぎるでしょ!
そんな事を思いながら歩いているうちにあっという間に自室の前に着くと、クロード様は私の頭をそっと撫でながらふふっと笑った。
はわわわわ、クロード様が微笑を浮かべている!?
「ここ、まだ寝癖が付いてる」
「ふぁっ!?」
「このままでも可愛いけど、外に出るなら直した方が良いかも知れないな。後でルネに整えて貰うと良い」
「は、はぃぃ」
ンガァァァ! こんな至近距離からイケメンの笑顔とか福眼過ぎるぅ!!
ってそれより寝癖を指摘される令嬢って色んな意味でアウトよね…...は、ははは……。
色々やらかして、最早私のHPはゼロよ。
一先ずクロード様にお辞儀をしつつ自室の前でお別れをして、パタンと部屋の扉を閉めた。
っはぁぁぁぁ~、なんかどっと疲れた。
思わずソファに座り込んでいると、タイミング良くルネさんがやって来た。
「奥様、成功しましたね! あらあら、だいぶお疲れの様ですね。お身体に触るといけませんし、少しベッドでお休みになられては如何でしょうか」
残念な事にルネさんが想像しているような展開は何もないんだよね。
でも話をすると長くなりそうだし、少し休んでからにしよう。
「ありがとうございます。そうします」
ルネさんに寝巻きを用意してもらい、着替えるとさっさと布団に潜り込む。
ああ、ふかふかで気持ち良い~。
「では、食事の用意が出来ましたらまたお声掛けします。ゆっくりおやすみください」
「はぁい」
ふぁぁ、誰もいなくなったら本格的に眠くなって来た。
少し寝よう。おやすみなさい
「我が家から『能無し』が生まれるなんて……」
お母様、そんなに悲しい顔してどうしたの?
「お前は一家の恥よ! ああ、汚い手で触らないで頂戴!」
叩かれた手が痛い。
でも、汚い手で触った私が悪いの。
お母様、ごめんなさい、ごめんなさい。
「そんな目で見ないで! 早くこの部屋から出て行きなさい!」
ごめんなさい、お母様。
「お前なんて、生まれて来なければ良かったのよ!!」
ごめんなさい。
……生まれてきて、ごめんなさい。
ーーハッ!!
「うう……夢……?」
起き上がろうとすると、う、身体が怠い。
それに先ほどの夢のせいか、頭も重い。
いや、あれは『夢』ではなくて、もしかしたらエステルの記憶なのかも知れない。
重く感じる頭に手を当てつつ上体を起こすと、視界に入る物はどれも私の部屋にないものばかり。
あれ? もしかして、ここ私の部屋じゃない?
「ん……」
ん、なんか声がする。そういえばやけに布団が温かいな。
って、えええ!?
クロード様が隣で寝てる!?
「エステル……?」
クロード様は閉じていた瞼をゆっくり開け、紫色の瞳が私を映し出す。
「おはよう」
「オ、オハヨウゴザイマス」
うきゃぁぁぁぁあ!?
ちょっと待って! 暫く気付かなかったけどクロード様、上半身裸なんですけど!?
身体にあちこち古傷があるけど、引き締まって凄く良い身体付き。ごくり……。ってそうじゃなかった!
「おっと、もうこんな時間か」
えええっと、その……この状況は、つまり……。
朝チュン、というやつですか?
クロード様は私の動揺を他所に、ふぁっと欠伸をしながら椅子にかけてあるシャツを羽織る。
ど、どうしよう。
お酒が進んでふわふわした気分の中会話していた記憶はあるんだけど、そこから後の記憶が全くない。
「私はこれから仕事をするが、エステル嬢は暫く休んで行くか? 昨夜は酔ってそのままテーブルに突っ伏して眠ってしまったくらいだから、まだ身体に酒が残っていて怠いだろう」
「わ、私は大丈夫ですわ。それより昨夜は大変な粗相をしたようで申し訳ありません」
「ははは! 私が誘ったのだし、全く気にしなくて良い。それより酒を勧め過ぎてしまった様でこちらこそすまなかった、次回からは気をつける」
良かった、一先ずクロード様の気分を害したりはしていないようだわ。
そして、昨日はそのまま寝ちゃったのか! 勘違いで恥ずかしい!
「私は隣の部屋で仕事をしているから、少し寝てから出ると良い。身支度はクローゼットの中に姿見があるし、水桶はあっちにある。飲み水は机に置いてあるから好きに飲んでくれ」
「は、はい」
クロード様は簡単に身支度を済ませると、さっさと寝室を出て行ってしまった。
特に用事はないけど、ここに止まっているわけにもいかないし。
私も早く支度をしよう。
のそのそとベッドから這い降りて机にある水差しからコップに注ぐ。
ぷはぁ、さっきより頭がシャキッとしてきたわ。
軽く身支度を整えてそっと扉を開けると、机で書類を書いていたクロード様がふっと顔を上げた。
「まだ眠っていても良かったのに。身体は大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です。一旦自室に戻って着替えて参ります」
「そうか」
クロード様はそのまま自席から立ち上がると私の傍までやって来て、そのまま扉までエスコートをする。
その場でお別れからと思いきや、そのままクロード様は私について来た。
こんな時までエスコートしてくれなくて良いのに、律儀過ぎるでしょ!
そんな事を思いながら歩いているうちにあっという間に自室の前に着くと、クロード様は私の頭をそっと撫でながらふふっと笑った。
はわわわわ、クロード様が微笑を浮かべている!?
「ここ、まだ寝癖が付いてる」
「ふぁっ!?」
「このままでも可愛いけど、外に出るなら直した方が良いかも知れないな。後でルネに整えて貰うと良い」
「は、はぃぃ」
ンガァァァ! こんな至近距離からイケメンの笑顔とか福眼過ぎるぅ!!
ってそれより寝癖を指摘される令嬢って色んな意味でアウトよね…...は、ははは……。
色々やらかして、最早私のHPはゼロよ。
一先ずクロード様にお辞儀をしつつ自室の前でお別れをして、パタンと部屋の扉を閉めた。
っはぁぁぁぁ~、なんかどっと疲れた。
思わずソファに座り込んでいると、タイミング良くルネさんがやって来た。
「奥様、成功しましたね! あらあら、だいぶお疲れの様ですね。お身体に触るといけませんし、少しベッドでお休みになられては如何でしょうか」
残念な事にルネさんが想像しているような展開は何もないんだよね。
でも話をすると長くなりそうだし、少し休んでからにしよう。
「ありがとうございます。そうします」
ルネさんに寝巻きを用意してもらい、着替えるとさっさと布団に潜り込む。
ああ、ふかふかで気持ち良い~。
「では、食事の用意が出来ましたらまたお声掛けします。ゆっくりおやすみください」
「はぁい」
ふぁぁ、誰もいなくなったら本格的に眠くなって来た。
少し寝よう。おやすみなさい
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