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ルネさんと屋敷に戻り、与えられたばかりの自室に戻る途中で何やら美味しそうな匂いがしてきた。
外に出ていたから気付かなかったけてな、もうお昼時かしら?
「ねえルネさん。いい匂いがするけど、このあたりに厨房でもあるのかしら?」
「ええ、一階の一番端に厨房がありますわ」
へぇ、そうなんだ。
前世は主婦だったこともあり、どんな風に料理を作っているのか興味がある。
「ルネさん、お屋敷探索も兼ねて厨房を覗いてみたいんだけど良いかしら?」
「厨房……ですか? 中まで入らなければ大丈夫だと思いますが」
「どんな料理を作っているのか知りたいだけだから、ちょっと覗くだけです」
よし。ルネさんからの許可も貰ったし、ちょっと覗いてみよっと。
ルネさんと奥の扉前までやって来ると、何やら中からガヤガヤと賑やかな声が聞こえて来る。
扉を開けようとして手を伸ばした瞬間、バァンッと勢い良く扉が開いた。
「!?」
「うぉ、びっくりした! こんな所に突っ立ってたら危ないじゃねぇか」
「ご、ごめんなさい」
ああ、びっくりした!
全自動で扉が開いたかと思ったら、ガタイの良い男の人が目の前にいるんだもの。
「まぁ、ジャン! 奥様に向かってなんて口の聞き方ですか」
「え、奥様!? 昨日の話は本当だったのか……そ、そいつは大変失礼しました!」
そういえばドンさんも同じ反応をしていたっけ。
まぁ、私は昨日来たばかりだし、持ち場を離れられない使用人達は私のことを見ていないからそういった反応になるのはある意味普通なのかも。
「ルネさん、私は気にしていませんわ。昨日からクロード様の妻になりました、エステルと申します。よろしくお願いします」
「俺はジャンです。この厨房で料理長を務めています。……で、奥様がなぜこんなところに?」
「皆さんがどんなお料理を作っているのか気になったので見学に来たのです。仕事の邪魔はしないので、様子だけでも伺ってよろしいでしょうか」
「厨房見学? ははは、貴族のお嬢さんがそんな事を言うなんて面白いな」
「もう、ジャン! 申し訳ありません、奥様」
「ルネさん大丈夫ですよ。厨房ではジャンさんが一番偉い方なのですし、お屋敷の中では私は一番の新人ですわ。それより、どんな料理を作っているのですか?先程からとてもいい匂いがしますわ」
「ああ、今日は煮込み料理を作っていたんですよ。ただ、仕上げ用の飾り葉を切らしちまったからドンじいのとこの菜園で拝借しようと思ってたんです」
ドンじいってさっきお庭でお会いした庭師のドンさんの事かな。
「庭師のドンさんでしたら先程お庭にいましたよ」
「奥様、ドンじいにお会いしたんですか? ドンじいは偏屈なところがあるけど悪い人じゃないから、どうか気を悪くしないで下さいね」
「え? ドンさん凄く気さくで優しい方でしたよ?」
あれ、ジャンさんが固まったわ。
私何か変な事言ったかしら?
「あのドンじいが? 奥様一体ドンじいと何を話したのですか?」
「ええと、園芸の話ですが」
「園芸……。なるほど、それでか」
「どうかされました?」
ジャンさんは何か考え込む様子だったが、私の呼びかけに我に返ったようで、はっと顔を上げた。
「い、いや。何でもありません。それより初日でドンじいに気に入られるとは、きっと奥様の人柄が良いのでしょう」
「ふふ、お世辞は結構ですよ」
「やだなぁ、俺はお世辞なんか言いませんって。厨房は慌ただしい場所ですが、是非見学をして行って下さい」
「ジャンさんありがとうございます。ではお言葉に甘えて」
私とルネさんはジャンさんに促されて厨房の中へ入ることにした。
外に出ていたから気付かなかったけてな、もうお昼時かしら?
「ねえルネさん。いい匂いがするけど、このあたりに厨房でもあるのかしら?」
「ええ、一階の一番端に厨房がありますわ」
へぇ、そうなんだ。
前世は主婦だったこともあり、どんな風に料理を作っているのか興味がある。
「ルネさん、お屋敷探索も兼ねて厨房を覗いてみたいんだけど良いかしら?」
「厨房……ですか? 中まで入らなければ大丈夫だと思いますが」
「どんな料理を作っているのか知りたいだけだから、ちょっと覗くだけです」
よし。ルネさんからの許可も貰ったし、ちょっと覗いてみよっと。
ルネさんと奥の扉前までやって来ると、何やら中からガヤガヤと賑やかな声が聞こえて来る。
扉を開けようとして手を伸ばした瞬間、バァンッと勢い良く扉が開いた。
「!?」
「うぉ、びっくりした! こんな所に突っ立ってたら危ないじゃねぇか」
「ご、ごめんなさい」
ああ、びっくりした!
全自動で扉が開いたかと思ったら、ガタイの良い男の人が目の前にいるんだもの。
「まぁ、ジャン! 奥様に向かってなんて口の聞き方ですか」
「え、奥様!? 昨日の話は本当だったのか……そ、そいつは大変失礼しました!」
そういえばドンさんも同じ反応をしていたっけ。
まぁ、私は昨日来たばかりだし、持ち場を離れられない使用人達は私のことを見ていないからそういった反応になるのはある意味普通なのかも。
「ルネさん、私は気にしていませんわ。昨日からクロード様の妻になりました、エステルと申します。よろしくお願いします」
「俺はジャンです。この厨房で料理長を務めています。……で、奥様がなぜこんなところに?」
「皆さんがどんなお料理を作っているのか気になったので見学に来たのです。仕事の邪魔はしないので、様子だけでも伺ってよろしいでしょうか」
「厨房見学? ははは、貴族のお嬢さんがそんな事を言うなんて面白いな」
「もう、ジャン! 申し訳ありません、奥様」
「ルネさん大丈夫ですよ。厨房ではジャンさんが一番偉い方なのですし、お屋敷の中では私は一番の新人ですわ。それより、どんな料理を作っているのですか?先程からとてもいい匂いがしますわ」
「ああ、今日は煮込み料理を作っていたんですよ。ただ、仕上げ用の飾り葉を切らしちまったからドンじいのとこの菜園で拝借しようと思ってたんです」
ドンじいってさっきお庭でお会いした庭師のドンさんの事かな。
「庭師のドンさんでしたら先程お庭にいましたよ」
「奥様、ドンじいにお会いしたんですか? ドンじいは偏屈なところがあるけど悪い人じゃないから、どうか気を悪くしないで下さいね」
「え? ドンさん凄く気さくで優しい方でしたよ?」
あれ、ジャンさんが固まったわ。
私何か変な事言ったかしら?
「あのドンじいが? 奥様一体ドンじいと何を話したのですか?」
「ええと、園芸の話ですが」
「園芸……。なるほど、それでか」
「どうかされました?」
ジャンさんは何か考え込む様子だったが、私の呼びかけに我に返ったようで、はっと顔を上げた。
「い、いや。何でもありません。それより初日でドンじいに気に入られるとは、きっと奥様の人柄が良いのでしょう」
「ふふ、お世辞は結構ですよ」
「やだなぁ、俺はお世辞なんか言いませんって。厨房は慌ただしい場所ですが、是非見学をして行って下さい」
「ジャンさんありがとうございます。ではお言葉に甘えて」
私とルネさんはジャンさんに促されて厨房の中へ入ることにした。
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