ダサいモブ令嬢に転生して猫を救ったら鉄仮面公爵様に溺愛されました

あさひな

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第三章

マクシム様の弟!?

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⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

「はい、オリエンテーションは以上です。明日からは通常授業に移りますので教本を忘れないように」

 今日は初日だからいつもより早く終わったなぁ。
 そんな事を思いつつ配布された紙を鞄に仕舞っていると、前席に座っているドロテア様が声を掛けて来た。

「セリーヌ様、一緒に生徒会室に行きましょう♡」
「あ、はい!」

 ラッキー、実は生徒会室って行ったことがなくて場所が分からなかったから丁度良かった。
 そんな私達の会話を聞いていたのか、マクシム様が会話に加わって来た。

「二人とも、生徒会室に行くのは初めてでしょう? 僕は引き継ぎで何度か足を運んでいるので案内します」

 そういえば、マクシム様は首席で新入生代表の挨拶もしているし試験ではいつも学年一位だった。
 そんな秀才だから、きっと生徒会役員になるのは事前に決まっていたのだろう。

「はい、是非!」
「ま……まぁ道案内役は必要ですわね。では、案内はマクシム様にお任せして私達はおしゃべりでもしながら行きましょう♡」

 ドロテア様はガシッと私の腕に絡みついてきたので、鞄を反対の手に持ちガタガタと椅子から立ち上がる。
 マクシム様はやれやれと言った様子で「生徒会室までは近いので今回はドロテア嬢に譲りますよ。では、行きましょうか」と私達を先導した。
 
 暫く廊下を歩くと、教室の簡素な扉とは違い、しっかりした造りの扉が見えて来た。
 あ、もしかしてここかな?
 私の予想通りだったようでマクシム様はコンコンッと扉をノックして「失礼します」と扉を開けた。

 おおお、生徒会室に初潜入!!

 ドキドキしながら中に入ると、シャンデリアに重厚なソファと、何だか貴族の応接間のような空間が広がっている。
 ソワソワしていると「おや、人が来たみたいだな」「そうですね」「誰だろうな」と、何だか聞き覚えのある声が。

 暫くするとゾロゾロと奥から見覚えのある顔達が……って、クリス殿下、アリスちゃん、オリバー様!? なんだ、みんな知ってる人ばかりじゃん!
 隣にいたドロテア様も同じ事を思ったらしく、思わず心の声が漏れてしまったようだ。

「あら、いつもの顔触れですわね」

 初潜入でドキドキしていたのにいつもの顔触れに囲まれて、なんだか肩透かしを食らった気分だ。
 そんな事を思っていると、お菓子らしき物を手に持ったオリバー様が私達に話しかけて来た。

「何だ、いつものメンバーか。まぁ、そんなところに立ってないでソファに座って下さい。この菓子と同じやつがあるんで今そっちに持って行きますね」

 オリバー様は手に持ったお菓子をひょいと口に放り込み、ボリボリ食べながら再び奥へ引っ込んでしまった。

「もう、オリバー様ったら早速つまみ食いして! あ、皆様、今お茶の用意しますから待っていて下さいね」

 そうそう、最近オリバー様とアリスちゃんはペアで行動する事が多いんだよね。
 動物好きのオリバー様と猫好きのアリスちゃんだから気が合うのかな?
 そんな事を思っているとクリス殿下は一番広いソファを陣取り「皆も座ったらいい。ドロテア嬢、茶が出るまで私の隣でリリィとアースの話でもしよう」と手招きをした。

「とりあえず我々も座りましょうか」
「そうですね」

 ドロテア様はクリス殿下の隣、私はマクシム様と共にソファに座ると、コンコンッと扉を叩く音がした。

 もしかして、私達以外にも役員に選ばれた人がいるのかな?

 四人の中で一番扉から近かった私が立ち上がり扉を開けると、スラリとした長身の男性が立っていた。

 うっわ、すっごい美形! でも、目元が何処となくマクシム様に似ている気が……?
 
「やっほ~☆ ここ生徒会室だよね?」
「は、はい」
「んん~? 君って」

 その美男子は急に私をじーっと見つめて来た。
 え、何だろう? マクシム様でだいぶ免疫が付いたとはいえ、こんな美形にいきなり見つめられるとドキッとしてしまう。

「もしかして、君が兄さんの……?」
「???」

 兄さん? 誰かの弟さんかしら? それに、なんかよく分からないけどこんなにジロジロ見られると品定めされているみたいであんまりいい気分はしない。
 そう思っていると後ろからニュッと手が伸びて、私をそっと抱き締めてきた。

「アレク、何故お前がここにいる」
「やあ、兄さん」

 に、兄さん!? まさか、マクシム様の弟さん!?
 そう言えば、マクシム様にはご兄弟がいるけど、婚約の顔合わせの時は海外留学中だったみたいでその場に居なかったからどんな人か知らなかったんだよね。

「実は父上が『入学試験で首席を取れなければまお前を勘当する』とか言い出してさぁ。流石に今家追い出されたら食い扶持に困るし、仕方なく本気出して試験受けて首席になったんだけど『今年度は生徒会の数が不足しているから君も生徒会に入ってくれ』って教師に頼まれちったんだよねぇ。あー、ほんとついてねぇわ」

 なんか、マクシム様とは正反対の喋り方にチャラい雰囲気だなぁ。
 同じ環境に育ったはずなのに兄弟でもこうも違うものか、と思っているとマクシム様は深いため息を吐いた。

「全くお前は。その喋り方は止めろと散々注意しただろう」
「なぁに、兄さんまで父上みたいな説教すんの止めてよね~」
「それよりアレク、まずはセリーヌ嬢に挨拶をしなさい。紹介が遅れてすいません。弟のアレクシです」
「やあ、将来の義姉さん⭐︎ 初めまして、アレクシと申します、以後お見お知りおきを」

 アレクシ様は丁寧な挨拶と共に私の手を取るとチュッと口付けを落とした。
 うひゃぁああ! この挨拶はいつまで経っても慣れない!!

「ア、アレクシ様、初めまして。セリーヌ・ド・ラルミナルと申します」
「ふふ。義姉さん、耳が赤いよ? ひょっとして俺っちに惚れちゃった?」
「んなっ!?」

 確かにアレクシ様はチャラいけどマクシム様に似て美形だし、家柄だって良い。
 しかし、私は美形だったら誰でも良いわけではないし、元からマクシム様推しだった私はそう容易く誰かに心が揺れたりはしない。
 オタクの推し愛をなめるなよ!
 
「アレク、いい加減にしなさい。いくら弟でもセリーヌ嬢に手を出したらタダじゃ済まさない」

 アレクシ様は「おぉ、怖っ!」と私の手を離した。

「何だよ兄さん。初対面だから緊張しないようにちょっとふざけただけだろ? そんなに怒らないでよ~。おっ、菓子と茶があんじゃん。丁度腹減ってたんだよねいっただき~!」
「あ、こらっ!」

 マクシム様の静止をスルーして弟さんは中に入って行った。
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