5 / 24
四章 スーパーフードでもりあがる
しおりを挟む
「趣味?」
「そう。新道の趣味。どんなのがあるの?」
笑苗は樹にそう尋ねた。
罰ゲームで嘘告してから三日目。すでに定番となりつつあるふたりでの帰り道。その途中でのことだった。
――しょせん、演技ではあるけど、悪いやつじゃないものね。『短い間だったけど、本当に付き合ったんだ』って思わせてあげたいもんね。
そのためには『あなたのこと知りたいの!』アピールがいちばん! との計算からだった。笑苗としては一応『良い思い出を作ってあげよう』との最大限の善意なのだった。
言われて樹は小首をひねった。二、三秒、考え込んでから答えた。
「趣味と言っていいのかどうかはわからないけど……カフェやファミレスでの食べ歩きはよくするな」
「へえ、なんか意外。自分で料理する人はファミレスとか行かないと思ってた」
「逆だよ。自分で作るからこそ、プロの作る料理はどんなものなのか興味がわく」
まあ、いままで、おれの作る野菜以上にうまい野菜に出会ったことはないけどね。
と、素直に胸を張る態度が清々しい。
「たしかに、新道の作る野菜っておいしいもんね。食べ歩きって言えば、あたしもよく、コンビニスイーツを食べ比べてるなあ」
「コンビニ? 専門店のとかじゃなくて?」
「うん。いまどきのコンビニスイーツはなかなか侮れないから。それこそ、下手な専門店より豪華なスイーツとかもあるのよ」
「へえ。それは知らなかったな」
「それに……」
と、笑苗は身をちぢ込ませて言った。
「……専門店とか高いから」
「……わかる」
と、樹も真摯な表情でうなずいた。
しょせん、高校生。懐加減が厳しいのはふたりとも同じである。
「でも、コンビニスイーツか。そう言えば、菓子類はあんまり食べたことないな。一応、菓子も作るんだけど……」
「新道、お菓子まで作れるの⁉」
「それはまあ。菓子作りの材料で、うちの畑でとれないのは塩と砂糖とバターぐらいだから。簡単なものぐらいなら作るよ」
「へえ。新道の作るお菓子かあ。食べてみたい」
パンや野菜はあんなにおいしいのだ。スイーツだってきっと、おいしいにちがいない。
「あんまり期待されても困るけどね。しょせん、男の作る菓子だ。見た目はよくない。女子が好むような可愛いものは作れない」
「見た目なんて二の次だって。それより、味でしょ」
「味か。となると、君の言うコンビニスイーツがどの程度のものか気になってきたな。本当におれの作る菓子よりうまいのか……」
「それじゃ、いまから試してみない? お勧めのスイーツがいくつもあるわ」
「面白そうだな。案内、頼めるか?」
「任せて!」
と、笑苗は大きさは並だけど形の良さが自慢の胸を叩いて請け負った。
それから、ふたりで何軒かのコンビニをまわった。笑苗は行く先々で商品一つひとつを手にとっては、使われている材料、カロリー、商品の特徴に至るまで事細かに解説した。
「このケーキなんて特にお勧めね。豆乳を使っているからカロリー低めだし、大豆イソフラボンの効果で肌に良いのも嬉しいところね」
と、カロリーや美容に関する効果を気にしているあたりが年頃の女子らしい。
いくつかのスイーツを籠に入れ、レジに向かい、会計をすませる。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
「ありがとうございます」
と、レジ係が礼を言い、頭をさげるつど、律儀に礼を言い返す樹だった。
――ふうん。やっぱり、新道って礼儀正しいのよね。どのお店に行ってもきちんと店員さんにお礼、言うもん。
いままで何人もの男子と付き合ってきた。長続きさせたことは一度もないが――『長続きしたことがない』ではなく『長続きさせたことがない』ここ重要――そのなかには自分にはやたらと優しげに振る舞うくせに、店員相手だといきなり横柄な態度をとったりするタイプもいた。そういうタイプは下心で優しくしているのが透けて見えて、すぐにお引き取り願った。その点、誰に対してもきちんと礼儀正しく振る舞う樹には好感がもてた。
――はあ~。やっぱり、だましてるのはちょっと気が引けるわ。
いまさらながらに罪悪感を覚える笑苗だった。
ともかく、ふたりはいくつかのコンビニをハシゴし、スイーツを買いあさった。ついでに、コーヒーも淹れて公園に向かう。ベンチに並んで腰掛け、スイーツパーティーと相成った。
目の前に並べられたスイーツの数々に樹は目を見張った。
「へえ。なにかすごい豪華な感じだな。コンビニって安くて便利なかわりに高級品はないイメージだったから意外だよ」
「チッチッチッ。いまどきのコンビニを舐めちゃいけねえぜ」
と、指など振りながら気取って言ってのける笑苗だった。
「スイーツは女子客をゲットするための大切な戦略商品だもの。どこのコンビニでも力を入れているんだから」
「なるほど。コンビニにとって女子客を取り込むのはそれだけ大切なことなのか」
「そりゃあね。コンビニに限らず、女子客が来れば男子客も一緒に来るから」
「なるほど。そう言えば、女子客にはいろいろとサービスする店って言うのはよく聞くな」
「そういうこと。それに、最近は健康志向が強いから、その点でも力を入れているのよ。スーパーフードを加えたりしてね」
「スーパーフード? ああ、アサイーとか、チアシードとかか」
「そうそう。よく知ってるわね。普通、男子って『食えればいい!』って感じだから、カロリーとか、栄養とかはあんまり気にしないんだけど」
慶吾なんてその典型。弁当と言えばいつだって『米と肉!』ばかりで潔いことこの上ない。野菜なんて食べているところは一度も見たことがない。雅史はそれほどではないがやはり、米と肉の賛歌。野菜は申し訳程度にほんのちょっぴり入っているだけだ。
樹は答えた。
「それはまあ、自分でも野菜や穀物を作っている身だから。『スーパーフード』と聞けば興味は出るよ」
「なるほどねえ」
「まあ、さすがにスーパーフードの栽培までは出来ないけど。いや、でも、アサイーならできるかな? あれってブルーベリーの仲間だっけ?」
「見た目は同じっぽいからそう思われがちだけどね。ブルーベリーはツツジ科、アサイーはヤシ科で全然、別の種類よ」
「くわしいな」
「そりゃあ、女の子だもん。美容効果の高い食べ物のことは知っておかなきゃ。とくに、アサイーは鉄分が多いから貴重なのよ。女の子って貧血になりやすいから」
「それは、ダイエットのやりすぎなんじゃ……」
「それ、禁句!」
「……はい」
鋭く指摘されて樹は口をつぐんだ。
それから、小首をかしげた。
「でも、ヤシ科って言うことはやっぱり、南の方の植物なのかな?」
「そこまでは知らないけど……」
「案外、ブルーベリーより作りやすいかもな。苗が手に入るようなら試してみるかな」
「ブルーベリーって育てるの、むずかしいの?」
「いや、そういうわけじゃない。むしろ、果樹としては手間がかからなくて簡単な方だよ。ただ、土質の問題があるんだ」
「土質?」
「ブルーベリーは酸性土壌を好む。ところが、たいていの野菜は中性から弱アルカリ性の土を好む。酸性土壌では野菜はうまく育たないんだ。だから、野菜とブルーベリーではちがう土作りが必要なんだよ」
「へえ、そうなんだ」
「まあ、鉢植えにしておけば大して手間はないし、実際、鉢植えのブルーベリーも置いてあるけどね。でも、畑にデン! と植えておけたら大きく育てられるし、その分、収量も増えるだろうから……」
「そうなったら、アサイー食べ放題かあ。いいなあ。うまくいったら、あたしにもわけてね」
「了解」
そんな調子で話が弾む。美容に関することでは男子とはなかなか話が合わないので、こうして普通に話せるのは新鮮だった。
会話が弾むついでにスイーツもポンポンふたりの口に消えていく。山ほどあったスイーツがすっかり消えていた。そして、ふたりは――。
「……ゲプ」
と、すっかりふくらんだ腹をなでながらゲップをするという、付き合いはじめのカップルにしては少々はしたない姿を見せていた。
「さ、さすがに、食べ過ぎたな……」
「……そうね。調子に乗りすぎたわ」
ふたりは顔を見合わせて苦笑した。
「でも、たしかにどれもおいしかったな。見た目も豪華で高級品ぽかったし」
「『でしょう? いまどきのコンビニスイーツは侮れないのよ」
「たしかにそうだな。コーヒーもうまかったし」
「いまどきのコンビニコーヒーは、ホテルで出るコーヒーよりおいしいって噂もあるぐらいだしね」
「なるほどな。安くて便利、しかも、うまい、か。たしかにコンビニは侮れないな」
空き袋などは樹がすべて自分のバッグにつめた。家できちんと分別してゴミに出すという。
会話と色とりどりのスイーツを満喫したあと、ふたりは帰路についた。いつもの分かれ道でお別れする。
「それじゃ」
「うん、また明日ね」
と、笑苗は笑顔で手を振った。
小さくなっていく樹の後ろ姿を見送りながら小さく溜め息をついた。
――三日目クリア。これであと七日。七日……かあ。
「そう。新道の趣味。どんなのがあるの?」
笑苗は樹にそう尋ねた。
罰ゲームで嘘告してから三日目。すでに定番となりつつあるふたりでの帰り道。その途中でのことだった。
――しょせん、演技ではあるけど、悪いやつじゃないものね。『短い間だったけど、本当に付き合ったんだ』って思わせてあげたいもんね。
そのためには『あなたのこと知りたいの!』アピールがいちばん! との計算からだった。笑苗としては一応『良い思い出を作ってあげよう』との最大限の善意なのだった。
言われて樹は小首をひねった。二、三秒、考え込んでから答えた。
「趣味と言っていいのかどうかはわからないけど……カフェやファミレスでの食べ歩きはよくするな」
「へえ、なんか意外。自分で料理する人はファミレスとか行かないと思ってた」
「逆だよ。自分で作るからこそ、プロの作る料理はどんなものなのか興味がわく」
まあ、いままで、おれの作る野菜以上にうまい野菜に出会ったことはないけどね。
と、素直に胸を張る態度が清々しい。
「たしかに、新道の作る野菜っておいしいもんね。食べ歩きって言えば、あたしもよく、コンビニスイーツを食べ比べてるなあ」
「コンビニ? 専門店のとかじゃなくて?」
「うん。いまどきのコンビニスイーツはなかなか侮れないから。それこそ、下手な専門店より豪華なスイーツとかもあるのよ」
「へえ。それは知らなかったな」
「それに……」
と、笑苗は身をちぢ込ませて言った。
「……専門店とか高いから」
「……わかる」
と、樹も真摯な表情でうなずいた。
しょせん、高校生。懐加減が厳しいのはふたりとも同じである。
「でも、コンビニスイーツか。そう言えば、菓子類はあんまり食べたことないな。一応、菓子も作るんだけど……」
「新道、お菓子まで作れるの⁉」
「それはまあ。菓子作りの材料で、うちの畑でとれないのは塩と砂糖とバターぐらいだから。簡単なものぐらいなら作るよ」
「へえ。新道の作るお菓子かあ。食べてみたい」
パンや野菜はあんなにおいしいのだ。スイーツだってきっと、おいしいにちがいない。
「あんまり期待されても困るけどね。しょせん、男の作る菓子だ。見た目はよくない。女子が好むような可愛いものは作れない」
「見た目なんて二の次だって。それより、味でしょ」
「味か。となると、君の言うコンビニスイーツがどの程度のものか気になってきたな。本当におれの作る菓子よりうまいのか……」
「それじゃ、いまから試してみない? お勧めのスイーツがいくつもあるわ」
「面白そうだな。案内、頼めるか?」
「任せて!」
と、笑苗は大きさは並だけど形の良さが自慢の胸を叩いて請け負った。
それから、ふたりで何軒かのコンビニをまわった。笑苗は行く先々で商品一つひとつを手にとっては、使われている材料、カロリー、商品の特徴に至るまで事細かに解説した。
「このケーキなんて特にお勧めね。豆乳を使っているからカロリー低めだし、大豆イソフラボンの効果で肌に良いのも嬉しいところね」
と、カロリーや美容に関する効果を気にしているあたりが年頃の女子らしい。
いくつかのスイーツを籠に入れ、レジに向かい、会計をすませる。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
「ありがとうございます」
と、レジ係が礼を言い、頭をさげるつど、律儀に礼を言い返す樹だった。
――ふうん。やっぱり、新道って礼儀正しいのよね。どのお店に行ってもきちんと店員さんにお礼、言うもん。
いままで何人もの男子と付き合ってきた。長続きさせたことは一度もないが――『長続きしたことがない』ではなく『長続きさせたことがない』ここ重要――そのなかには自分にはやたらと優しげに振る舞うくせに、店員相手だといきなり横柄な態度をとったりするタイプもいた。そういうタイプは下心で優しくしているのが透けて見えて、すぐにお引き取り願った。その点、誰に対してもきちんと礼儀正しく振る舞う樹には好感がもてた。
――はあ~。やっぱり、だましてるのはちょっと気が引けるわ。
いまさらながらに罪悪感を覚える笑苗だった。
ともかく、ふたりはいくつかのコンビニをハシゴし、スイーツを買いあさった。ついでに、コーヒーも淹れて公園に向かう。ベンチに並んで腰掛け、スイーツパーティーと相成った。
目の前に並べられたスイーツの数々に樹は目を見張った。
「へえ。なにかすごい豪華な感じだな。コンビニって安くて便利なかわりに高級品はないイメージだったから意外だよ」
「チッチッチッ。いまどきのコンビニを舐めちゃいけねえぜ」
と、指など振りながら気取って言ってのける笑苗だった。
「スイーツは女子客をゲットするための大切な戦略商品だもの。どこのコンビニでも力を入れているんだから」
「なるほど。コンビニにとって女子客を取り込むのはそれだけ大切なことなのか」
「そりゃあね。コンビニに限らず、女子客が来れば男子客も一緒に来るから」
「なるほど。そう言えば、女子客にはいろいろとサービスする店って言うのはよく聞くな」
「そういうこと。それに、最近は健康志向が強いから、その点でも力を入れているのよ。スーパーフードを加えたりしてね」
「スーパーフード? ああ、アサイーとか、チアシードとかか」
「そうそう。よく知ってるわね。普通、男子って『食えればいい!』って感じだから、カロリーとか、栄養とかはあんまり気にしないんだけど」
慶吾なんてその典型。弁当と言えばいつだって『米と肉!』ばかりで潔いことこの上ない。野菜なんて食べているところは一度も見たことがない。雅史はそれほどではないがやはり、米と肉の賛歌。野菜は申し訳程度にほんのちょっぴり入っているだけだ。
樹は答えた。
「それはまあ、自分でも野菜や穀物を作っている身だから。『スーパーフード』と聞けば興味は出るよ」
「なるほどねえ」
「まあ、さすがにスーパーフードの栽培までは出来ないけど。いや、でも、アサイーならできるかな? あれってブルーベリーの仲間だっけ?」
「見た目は同じっぽいからそう思われがちだけどね。ブルーベリーはツツジ科、アサイーはヤシ科で全然、別の種類よ」
「くわしいな」
「そりゃあ、女の子だもん。美容効果の高い食べ物のことは知っておかなきゃ。とくに、アサイーは鉄分が多いから貴重なのよ。女の子って貧血になりやすいから」
「それは、ダイエットのやりすぎなんじゃ……」
「それ、禁句!」
「……はい」
鋭く指摘されて樹は口をつぐんだ。
それから、小首をかしげた。
「でも、ヤシ科って言うことはやっぱり、南の方の植物なのかな?」
「そこまでは知らないけど……」
「案外、ブルーベリーより作りやすいかもな。苗が手に入るようなら試してみるかな」
「ブルーベリーって育てるの、むずかしいの?」
「いや、そういうわけじゃない。むしろ、果樹としては手間がかからなくて簡単な方だよ。ただ、土質の問題があるんだ」
「土質?」
「ブルーベリーは酸性土壌を好む。ところが、たいていの野菜は中性から弱アルカリ性の土を好む。酸性土壌では野菜はうまく育たないんだ。だから、野菜とブルーベリーではちがう土作りが必要なんだよ」
「へえ、そうなんだ」
「まあ、鉢植えにしておけば大して手間はないし、実際、鉢植えのブルーベリーも置いてあるけどね。でも、畑にデン! と植えておけたら大きく育てられるし、その分、収量も増えるだろうから……」
「そうなったら、アサイー食べ放題かあ。いいなあ。うまくいったら、あたしにもわけてね」
「了解」
そんな調子で話が弾む。美容に関することでは男子とはなかなか話が合わないので、こうして普通に話せるのは新鮮だった。
会話が弾むついでにスイーツもポンポンふたりの口に消えていく。山ほどあったスイーツがすっかり消えていた。そして、ふたりは――。
「……ゲプ」
と、すっかりふくらんだ腹をなでながらゲップをするという、付き合いはじめのカップルにしては少々はしたない姿を見せていた。
「さ、さすがに、食べ過ぎたな……」
「……そうね。調子に乗りすぎたわ」
ふたりは顔を見合わせて苦笑した。
「でも、たしかにどれもおいしかったな。見た目も豪華で高級品ぽかったし」
「『でしょう? いまどきのコンビニスイーツは侮れないのよ」
「たしかにそうだな。コーヒーもうまかったし」
「いまどきのコンビニコーヒーは、ホテルで出るコーヒーよりおいしいって噂もあるぐらいだしね」
「なるほどな。安くて便利、しかも、うまい、か。たしかにコンビニは侮れないな」
空き袋などは樹がすべて自分のバッグにつめた。家できちんと分別してゴミに出すという。
会話と色とりどりのスイーツを満喫したあと、ふたりは帰路についた。いつもの分かれ道でお別れする。
「それじゃ」
「うん、また明日ね」
と、笑苗は笑顔で手を振った。
小さくなっていく樹の後ろ姿を見送りながら小さく溜め息をついた。
――三日目クリア。これであと七日。七日……かあ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ほつれ家族
陸沢宝史
青春
高校二年生の椎橋松貴はアルバイトをしていたその理由は姉の借金返済を手伝うためだった。ある日、松貴は同じ高校に通っている先輩の永松栗之と知り合い仲を深めていく。だが二人は家族関係で問題を抱えており、やがて問題は複雑化していく中自分の家族と向き合っていく。
Cutie Skip ★
月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。
自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。
高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。
学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。
どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。
一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。
こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。
表紙:むにさん
イルカノスミカ
よん
青春
2014年、神奈川県立小田原東高二年の瀬戸入果は競泳バタフライの選手。
弱小水泳部ながらインターハイ出場を決めるも関東大会で傷めた水泳肩により現在はリハビリ中。
敬老の日の晩に、両親からダブル不倫の末に離婚という衝撃の宣告を受けた入果は行き場を失ってしまう。
僕たち
知人さん
青春
主人公の男子高校生が幼い頃、
亡くなったはずの兄弟と再会するが、
再会できた場所は心、精神の中で
自由に自分の身体に兄弟を呼び出す事が
可能。
だけど身体を使わせるたびに体調が
悪化していき、主人公の男性は
ある日、学校で倒れてしまう。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
人魚のカケラ
初瀬 叶
青春
あの娘は俺に言ったんだ
『もし私がいなくなっても、君は……君だけには覚えていて欲しいな』
父親と母親が離婚するらしい。
俺は父親、弟は母親が引き取るんだと。……俺等の気持ちなんてのは無視だ。
そんな中、弟が入院した。母親はまだ小学生の弟にかかりきり、父親は仕事で海外出張。
父親に『ばあちゃんの所に行け』と命令された俺は田舎の町で一ヶ月を過ごす事になる。
俺はあの夏を忘れる事はないだろう。君に出会えたあの夏を。
※設定は相変わらずふんわりです。ご了承下さい。
※青春ボカロカップにエントリーしております。
月夜の理科部
嶌田あき
青春
優柔不断の女子高生・キョウカは、親友・カサネとクラスメイト理系男子・ユキとともに夜の理科室を訪れる。待っていたのは、〈星の王子さま〉と呼ばれる憧れの先輩・スバルと、天文部の望遠鏡を売り払おうとする理科部長・アヤ。理科室を夜に使うために必要となる5人目の部員として、キョウカは入部の誘いを受ける。
そんなある日、知人の研究者・竹戸瀬レネから研究手伝いのバイトの誘いを受ける。月面ローバーを使って地下の量子コンピューターから、あるデータを地球に持ち帰ってきて欲しいという。ユキは二つ返事でOKするも、相変わらず優柔不断のキョウカ。先輩に贈る月面望遠鏡の観測時間を条件に、バイトへの協力を決める。
理科部「夜隊」として入部したキョウカは、夜な夜な理科室に来てはユキとともに課題に取り組んだ。他のメンバー3人はそれぞれに忙しく、ユキと2人きりになることも多くなる。親との喧嘩、スバルの誕生日会、1学期の打ち上げ、夏休みの合宿などなど、絆を深めてゆく夜隊5人。
競うように訓練したAIプログラムが研究所に正式採用され大喜びする頃には、キョウカは数ヶ月のあいだ苦楽をともにしてきたユキを、とても大切に思うようになっていた。打算で始めた関係もこれで終わり、と9月最後の日曜日にデートに出かける。泣きながら別れた2人は、月にあるデータを地球に持ち帰る方法をそれぞれ模索しはじめた。
5年前の事故と月に取り残された脳情報。迫りくるデータ削除のタイムリミット。望遠鏡、月面ローバー、量子コンピューター。必要なものはきっと全部ある――。レネの過去を知ったキョウカは迷いを捨て、走り出す。
皆既月食の夜に集まったメンバーを信じ、理科部5人は月からのデータ回収に挑んだ――。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる