我が家のベランダ菜園物語

藍条森也

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その六四

2024初キュウリ!

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 今日、今年初のキュウリを収穫した。
 はじめての実なので木に負担をかけないよう、小さめで収穫。先っぽにまだしなびたオレンジ色の花がついている状態。その花の部分を切り取り、さらに、実を半分に切って丸かじり。
 うまい。
 やはり、うまい。
 水っぽさがまったくなく、しっかりとしまった実。シャキシャキとした食感。口のなかいっぱいに広がる高い香り、豊かなコク。そして、ほのかな甘味。まさに、
 身が震えるほどの感動を!
 その叫びが似合う世界。
 もう何度もあちこちで同じことを言っている気がするが、それでもなお、

 あえて言おう、これは甘くないメロンであると!

 いや、本当。毎年、うちのキュウリを食べるたびにそう思う。このキュウリを食べたら市販のキュウリなんぞ食べられない。実際、もう何年、市販のキュウリを食べていないだろう。ああいや、漬け物なら食べてるよ? 『生のキュウリは食べていない』という意味ね。
 ところで、このキュウリ。種を蒔いて育てたものではない。かと言って、苗を買ってきて植えつけたのでもない。プランターから勝手に生えてきた。
 去年か、その前か、さらにその前か、プランターの上に放り出しておいた実のなかの種が土のなかに残っていて、それが芽吹いたわけた。いわゆる『こぼれ種』というやつである。
 このこぼれ種キュウリがいやまあ、よく育っている。買ってきた種を蒔いた苗よりも早く、大きく、よく育っているのだ。前にも書いたが、私は作物の残りをそのままプランターの上に放り出しておくのであれやこれやが勝手に生えてくる。今年もキュウリの他にトマト、シソ、エゴマ……と、本当にまあ、いろいろと勝手に生えてくる。もはや、ほとんど雑草である。
 こうなると、考え込んでしまうことがある。
 こぼれ種から勝手に生えてきた苗がこれだけ育つなら、わざわざ種を買ってくる必要なくない?
 いや、実際、その通りなのだし、自家採種を繰り返していると段々とその土地の気候風土に馴染んで品質が良くなっていくと聞く。ならば、我が家のベランダ菜園でも同じ。こぼれ種による栽培をつづけていれば、いずれはこの場の環境に並んでオリジナル品種が育つにちがいない。それは、まちがいなく面白い!
 とは言え――。
 問題はこぼれ種の場合、確実に芽を出してくれるかどうかわからないということ。確実性をとるならやはり、買ってきた種を蒔いて苗作りをした方がいい。いや、もちろん、種を採って保存しておき、その種を蒔いて苗作りをする……という手もあるのだが、それはそれで手間がかかる。
 極力、手間を省いた自然任せ。
 それが、自然観察を兼ねた我が家のベランダ菜園の基本方針であるしなあ。
 しかし、それならなおのこと、こぼれ種による栽培を繰り返し、自然の流れに任せるべきかも知れない。来年はもう、キュウリの種は買わずにいようか……。
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