我が家のベランダ菜園物語

藍条森也

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その六三

アリよ。お前の仕業か?

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 先日、紹介した食用ホオズキ、スウィートジュエリー。
 外の袋がいい感じに黄色くなっていた実があったので収穫した。指でつまんで、ちょっと力を入れるとほとんど抵抗もなくポロリと採れる。
 よろしい。
 やはり、食べ頃だった。
 そう思い、外側の袋をむくと――。
 手遅れだった。
 実には穴が開いていた。
 穴が開き、内部を食い荒らされていた。そして、なかには数匹のアリ……。
 残念ながら今回は、アリたちに先を越されてしまった。いやまあ、残念なのは残念だが、それはいいのだ。虫や鳥に食べられるのは承知の上でやっている。虫たちに食べられる分は自然界に対する恩返し。
 それでいい。
 が、問題は『アリたちが実に穴を開けたのか?』と言うこと。
 ツルツルの実の表面を食い破って穴を開け、中身を食い荒らす。
 アリの顎でそこまでできるのか? アリなんてしょっちゅう見るし、いままで何度もプランターのなかに巣を作られたが、実を食われたことなんて一度もないぞ。
 いや、もちろん。一口にアリと言っても色々な種類がいるし、種類ごとに習性もちがえば、食べるものだってちがうわけだから一概には言えないわけだが。
 それにしても、不可解ではある。なにか、他の生き物が穴を開けて、そのあとにアリたちがなかに入った……という方がやはり、考えやすいのだが。
 しかし、その『他の生き物』とやらも当たらないしなあ。
 『実を食い荒らす』となれば一番、怪しいのはやはり、イモムシの類。とくに、ヨトウムシ。ヨトウムシには以前、ミニトマトを食い荒らされたこともある。だから、もし、ヨトウムシが土のなかに住み着いているのなら実に穴を開けられてもおかしくない。
 しかし、ヨトウムシならば、あちこちに糞を残しているはず。それに、実だけではなく葉っぱも食い荒らしているはず。そして、実の方もいくつも同じようにかじっているはず。しかし、そんな様子もない。たったひとつの実だけが食い荒らされていた。これは、ヨトウムシとは考えにくい。
 となると、どうなる?
 「簡単なことだよ、ワトソン君」
 ホームズならそう言うだろうか。
 「実に穴が開けられ、そこにいたのは数匹のアリだけ。ならば、そのアリが犯人と言うことだよ」と。
 しかし、やはり、いままで一度もアリに実を食われたことなんてないのに、今回に限ってと言うのもなあ。今回はじめて、そういう習性のアリがはるばる旅してやってきたということか? それとも、スウィートジュエリーが特別、アリに好かれやすい果菜なのか? と言って、アリが茎葉に群がっているわけでもないしなあ。
 ともあれ、現状では犯人は不明。そもそも、スウィートジュエリー自体、はじめての作物。どんな特徴があり、どんな生き物に食われるかもわからない。実に穴を開けた犯人がなんなのかは今後も観察をつづけないとわからないだろう。ところで――。
 なんで、人間って、アリとか見つけると反射的に指で潰すんだろうね?
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