60 / 75
その五八
連れて行こうか、アスパラ天国
しおりを挟む
春の日差しのベランダ
芽吹く姿に釘付け
一日ごとに伸びていき
緑が広がる
見た目なんてどうでも
味が良ければ最高
形のそろった売り物も出る幕がないよ
菜園は芽吹きと生命を連れてレビューを見せに来る
生命の息吹に浸れば地球はしばらくとまってる
きらめく鈴みたいな小花
ハイな気分にさせるよ
連れて行こうか、これから
アスパラ天国へ
と言うわけで、今回はアスパラガス。
今年はアスパラガスの出来が良い。種から育てて、すでに数年。アスパラガスの寿命は一〇年程度だと言うから、いよいよ全盛期に入ったのかも知れない。
とは言え、アスパラガスというものはもともと何本もまとめて芽吹く、というものではない。毎日、少しずつ芽吹くものだ。と言うわけで、いくら出来が良いと言っても食卓の主役にできるほどの本数が一日のうちに収穫できるわけではない。
が、逆に言えば、毎日二~三本は収穫できると言うこと。メインの付け合わせには充分だし、採れたての本物野菜は調理などせずにそのまま食べるのが一番おいしい。よって、
これでいいのだ!
と言うわけで最近は、毎日のようにアスパラガスを堪能している。朝のうちに根元からはさみで切り取って、保存袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。天然ものなので細いのも、太いのもある。細いものは本当に紐のように細いのだが、太いものはちゃんとスーパーで見かける市販品と同等のレベルである。
夕食の際に取り出し、タジン鍋に放り込んでレンジでさっと蒸す。一緒にわさわさ生えているハコベを蒸すこともある。そして、他の野菜と一緒にメインの皿の付け合わせの座へ。エゴマ油とレモン汁、それに岩塩をミルで砕いて振りかける。食すとレモンの酸味の奥から、柔らかい食感と野菜ならではの自然な甘味が口のなかいっぱいに広がる。
そのうまさよ。
まさに、『歩いて一歩』の距離にある産地から届く、究極の地場野菜ならではのおいしさ。この味わいを毎日のように堪能できる。これこそ、ベランダ菜園ならではの楽しみ。
そして、幸せである。
ただし、問題がひとつ。
最近、急に気温があがったせいか、薹立ちが早い。さほど伸びていないので『まだ大丈夫だろう』と思って収穫せずにいると、次の日にはもう茎葉を伸ばしはじめている。そのたびに、
「惜しいことをした!」
と、思うのだが、伸びてしまったものは仕方がない。
それに、これはこれでひとつの栽培法。通常、アスパラガスというものは六月までは芽吹いたものをすべて収穫し、七月からは茎葉を伸ばして栄養を蓄えさせ、来年の収穫に備える……という栽培法である。
しかし、これ、せまいベランダ菜園では効率が悪い。春の二ヶ月程度の収穫期のために一年中、限りあるプランターを占拠されてしまうのだから。
そこで、もうひとつの栽培法。
春のうちから茎葉を伸ばして栄養を作らせつつ、長期に渡って収穫する、である。
つまり、芽吹いたもののうち一定数はそのまま茎葉を伸ばして光合成を行わせ、残りを収穫すると言うことである。栄養の補充と収穫を同時に行うので『六月を境に栄養の補充に切り替え』の必要がなく、長期に渡って収穫できる。
この栽培法、最近ではプロ農家の間でも流行りつつあるらしい。プロ農家だからこそ、少しでも収穫量を増やしたいと望むのは当たり前。通常なら六月いっぱいの収穫で終わるところが八月、九月まで収穫できる……と言うことになれば、収穫量は激増。その分、収入も増えるのだから長期採りに挑戦するのは理の当然。
さて、我が家のアスパラガス。今年はいつまで収穫できるだろう。願わくば一日でも長く、このおいしさを味わいたいものである。
あ、ちなみに『鈴のような小花』とは、アスパラガスの花。
アスパラガスというのものは、ベル型の細かい花を無数に――本当に数えきれないほど――茎葉の間につけるのである。
芽吹く姿に釘付け
一日ごとに伸びていき
緑が広がる
見た目なんてどうでも
味が良ければ最高
形のそろった売り物も出る幕がないよ
菜園は芽吹きと生命を連れてレビューを見せに来る
生命の息吹に浸れば地球はしばらくとまってる
きらめく鈴みたいな小花
ハイな気分にさせるよ
連れて行こうか、これから
アスパラ天国へ
と言うわけで、今回はアスパラガス。
今年はアスパラガスの出来が良い。種から育てて、すでに数年。アスパラガスの寿命は一〇年程度だと言うから、いよいよ全盛期に入ったのかも知れない。
とは言え、アスパラガスというものはもともと何本もまとめて芽吹く、というものではない。毎日、少しずつ芽吹くものだ。と言うわけで、いくら出来が良いと言っても食卓の主役にできるほどの本数が一日のうちに収穫できるわけではない。
が、逆に言えば、毎日二~三本は収穫できると言うこと。メインの付け合わせには充分だし、採れたての本物野菜は調理などせずにそのまま食べるのが一番おいしい。よって、
これでいいのだ!
と言うわけで最近は、毎日のようにアスパラガスを堪能している。朝のうちに根元からはさみで切り取って、保存袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。天然ものなので細いのも、太いのもある。細いものは本当に紐のように細いのだが、太いものはちゃんとスーパーで見かける市販品と同等のレベルである。
夕食の際に取り出し、タジン鍋に放り込んでレンジでさっと蒸す。一緒にわさわさ生えているハコベを蒸すこともある。そして、他の野菜と一緒にメインの皿の付け合わせの座へ。エゴマ油とレモン汁、それに岩塩をミルで砕いて振りかける。食すとレモンの酸味の奥から、柔らかい食感と野菜ならではの自然な甘味が口のなかいっぱいに広がる。
そのうまさよ。
まさに、『歩いて一歩』の距離にある産地から届く、究極の地場野菜ならではのおいしさ。この味わいを毎日のように堪能できる。これこそ、ベランダ菜園ならではの楽しみ。
そして、幸せである。
ただし、問題がひとつ。
最近、急に気温があがったせいか、薹立ちが早い。さほど伸びていないので『まだ大丈夫だろう』と思って収穫せずにいると、次の日にはもう茎葉を伸ばしはじめている。そのたびに、
「惜しいことをした!」
と、思うのだが、伸びてしまったものは仕方がない。
それに、これはこれでひとつの栽培法。通常、アスパラガスというものは六月までは芽吹いたものをすべて収穫し、七月からは茎葉を伸ばして栄養を蓄えさせ、来年の収穫に備える……という栽培法である。
しかし、これ、せまいベランダ菜園では効率が悪い。春の二ヶ月程度の収穫期のために一年中、限りあるプランターを占拠されてしまうのだから。
そこで、もうひとつの栽培法。
春のうちから茎葉を伸ばして栄養を作らせつつ、長期に渡って収穫する、である。
つまり、芽吹いたもののうち一定数はそのまま茎葉を伸ばして光合成を行わせ、残りを収穫すると言うことである。栄養の補充と収穫を同時に行うので『六月を境に栄養の補充に切り替え』の必要がなく、長期に渡って収穫できる。
この栽培法、最近ではプロ農家の間でも流行りつつあるらしい。プロ農家だからこそ、少しでも収穫量を増やしたいと望むのは当たり前。通常なら六月いっぱいの収穫で終わるところが八月、九月まで収穫できる……と言うことになれば、収穫量は激増。その分、収入も増えるのだから長期採りに挑戦するのは理の当然。
さて、我が家のアスパラガス。今年はいつまで収穫できるだろう。願わくば一日でも長く、このおいしさを味わいたいものである。
あ、ちなみに『鈴のような小花』とは、アスパラガスの花。
アスパラガスというのものは、ベル型の細かい花を無数に――本当に数えきれないほど――茎葉の間につけるのである。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


BL書籍の印税で娘の振り袖買うつもりが無理だった話【取らぬ狸の皮算用】
月歌(ツキウタ)
エッセイ・ノンフィクション
【取らぬ狸の皮算用】
書籍化したら印税で娘の成人式の準備をしようと考えていましたが‥‥無理でした。
取らぬ狸の皮算用とはこのこと。
☆書籍化作家の金銭的には夢のないお話です。でも、暗い話じゃないよ☺子育ての楽しさと創作の楽しさを満喫している貧弱書籍化作家のつぶやきです。あー、重版したいw
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる