40 / 75
その三八
どうして、こうなった⁉
しおりを挟む
ナスが順調に出来ている。
この時期は、ナスは主にヨーグルトスープに使うのだが、市販のナスだと大きすぎる。かと言って、野菜を半分に切ってとっておく……などということは鮮度の問題上、やりたくない。野菜はなるべく一回の料理で使いきりたい。キャベツのような大型野菜は仕方ないが。
と言うわけで、木に成っている小ぶりのナスを毎朝、収穫して、その日の料理に使えるのはありがたい。無駄がないし、なにより、新鮮!
というわけで、ナスが出来ているのは実に嬉しい。しかし――。
不可解なことがひとつ。
その場に並んだナスの木のなかでただひとつだけ、実をつけない。しかも、それは、幼苗時の育ちが一番、良かった木なのだ。この木が順調に育っている間、他の木は全然、育たなかった。
「これで大丈夫か? 枯れてしまうんじゃないか?」
と、心配になるぐらいだったが、気温の上昇とともにグングン成長。一番手とかわらない大きさにまで育ち、実をつけはじめた。それなのに、ああ、それなのに。
一番、育ちの良かったこの木だけが実をつけないのだ。
花は咲く。花は咲くのだが、実をつけない。実をつけることなくすべて根元から落ちてしまう。
たしかに、この木は最初に咲いた花は雌しべの方が雄しべよりも短かった。ナスの花において雌しべの方が雄しべより短いのは肥料が足りないサイン。
ナスは野菜のなかでも多くの肥料が必要なことで有名で肥料不足になりやすい。だから、最初のこの花が実をつけなかったのはわかる。
それはわかるのだがしかし、すぐに肥料を与えたことでその後に咲いた花はちゃんと雌しべの方が長くなっていた。それなのに、実がつかない。
まあ、最初のうちは肥料不足がたたっていて実をつけるほどの体力がなかったのだろうと考えることも出来る。
しかし、いまだにひとつの実もつけないのはどういうことだ? 成長の遅かった他の木はすべて、ちゃんと実をつけているというのに。
同じ場所に並べ、同じように扱っているというのに、一番、成長の早かった木だけが実をつけない……。
なんだか、マンガによく出てくる、才能はあるのに主人公を舐めまくっているせいでやがて主人公に追い抜かれ、惨めな負け犬となる序盤のライバルキャラを見る思いである。
ほんとに、どうしてこうなった⁉
この時期は、ナスは主にヨーグルトスープに使うのだが、市販のナスだと大きすぎる。かと言って、野菜を半分に切ってとっておく……などということは鮮度の問題上、やりたくない。野菜はなるべく一回の料理で使いきりたい。キャベツのような大型野菜は仕方ないが。
と言うわけで、木に成っている小ぶりのナスを毎朝、収穫して、その日の料理に使えるのはありがたい。無駄がないし、なにより、新鮮!
というわけで、ナスが出来ているのは実に嬉しい。しかし――。
不可解なことがひとつ。
その場に並んだナスの木のなかでただひとつだけ、実をつけない。しかも、それは、幼苗時の育ちが一番、良かった木なのだ。この木が順調に育っている間、他の木は全然、育たなかった。
「これで大丈夫か? 枯れてしまうんじゃないか?」
と、心配になるぐらいだったが、気温の上昇とともにグングン成長。一番手とかわらない大きさにまで育ち、実をつけはじめた。それなのに、ああ、それなのに。
一番、育ちの良かったこの木だけが実をつけないのだ。
花は咲く。花は咲くのだが、実をつけない。実をつけることなくすべて根元から落ちてしまう。
たしかに、この木は最初に咲いた花は雌しべの方が雄しべよりも短かった。ナスの花において雌しべの方が雄しべより短いのは肥料が足りないサイン。
ナスは野菜のなかでも多くの肥料が必要なことで有名で肥料不足になりやすい。だから、最初のこの花が実をつけなかったのはわかる。
それはわかるのだがしかし、すぐに肥料を与えたことでその後に咲いた花はちゃんと雌しべの方が長くなっていた。それなのに、実がつかない。
まあ、最初のうちは肥料不足がたたっていて実をつけるほどの体力がなかったのだろうと考えることも出来る。
しかし、いまだにひとつの実もつけないのはどういうことだ? 成長の遅かった他の木はすべて、ちゃんと実をつけているというのに。
同じ場所に並べ、同じように扱っているというのに、一番、成長の早かった木だけが実をつけない……。
なんだか、マンガによく出てくる、才能はあるのに主人公を舐めまくっているせいでやがて主人公に追い抜かれ、惨めな負け犬となる序盤のライバルキャラを見る思いである。
ほんとに、どうしてこうなった⁉
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
BL書籍の印税で娘の振り袖買うつもりが無理だった話【取らぬ狸の皮算用】
月歌(ツキウタ)
エッセイ・ノンフィクション
【取らぬ狸の皮算用】
書籍化したら印税で娘の成人式の準備をしようと考えていましたが‥‥無理でした。
取らぬ狸の皮算用とはこのこと。
☆書籍化作家の金銭的には夢のないお話です。でも、暗い話じゃないよ☺子育ての楽しさと創作の楽しさを満喫している貧弱書籍化作家のつぶやきです。あー、重版したいw
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる