我が家のベランダ菜園物語

藍条森也

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その三八

どうして、こうなった⁉

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 ナスが順調に出来ている。
 この時期は、ナスは主にヨーグルトスープに使うのだが、市販のナスだと大きすぎる。かと言って、野菜を半分に切ってとっておく……などということは鮮度の問題上、やりたくない。野菜はなるべく一回の料理で使いきりたい。キャベツのような大型野菜は仕方ないが。
 と言うわけで、木に成っている小ぶりのナスを毎朝、収穫して、その日の料理に使えるのはありがたい。無駄がないし、なにより、新鮮!
 というわけで、ナスが出来ているのは実に嬉しい。しかし――。
 不可解なことがひとつ。
 その場に並んだナスの木のなかでただひとつだけ、実をつけない。しかも、それは、幼苗時の育ちが一番、良かった木なのだ。この木が順調に育っている間、他の木は全然、育たなかった。
 「これで大丈夫か? 枯れてしまうんじゃないか?」
 と、心配になるぐらいだったが、気温の上昇とともにグングン成長。一番手とかわらない大きさにまで育ち、実をつけはじめた。それなのに、ああ、それなのに。
 一番、育ちの良かったこの木だけが実をつけないのだ。
 花は咲く。花は咲くのだが、実をつけない。実をつけることなくすべて根元から落ちてしまう。
 たしかに、この木は最初に咲いた花は雌しべの方が雄しべよりも短かった。ナスの花において雌しべの方が雄しべより短いのは肥料が足りないサイン。
 ナスは野菜のなかでも多くの肥料が必要なことで有名で肥料不足になりやすい。だから、最初のこの花が実をつけなかったのはわかる。
 それはわかるのだがしかし、すぐに肥料を与えたことでその後に咲いた花はちゃんと雌しべの方が長くなっていた。それなのに、実がつかない。
 まあ、最初のうちは肥料不足がたたっていて実をつけるほどの体力がなかったのだろうと考えることも出来る。
 しかし、いまだにひとつの実もつけないのはどういうことだ? 成長の遅かった他の木はすべて、ちゃんと実をつけているというのに。
 同じ場所に並べ、同じように扱っているというのに、一番、成長の早かった木だけが実をつけない……。
 なんだか、マンガによく出てくる、才能はあるのに主人公を舐めまくっているせいでやがて主人公に追い抜かれ、惨めな負け犬となる序盤のライバルキャラを見る思いである。
 ほんとに、どうしてこうなった⁉
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