我が家のベランダ菜園物語

藍条森也

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その一〇の二

青いイチジク食べてみた

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 昨日、記したとおり、まだ青くて固いままのイチジクの実を食べてみた。
 ので、その結果報告。
 青くて固いままの実を手にもって、枝から引きちぎる。昨日の熟した実は引きちぎろうなどと思うまでもなく簡単にポロッと外れたのに、こちらはかなり力が必要だった。やはり、熟す前の果物は外れずらい。
 引きちぎった跡からは白くてベタベタする乳液があふれ出た。なるほど。これが、イチジクに含まれるというタンクパク質分解酵素か。人間の手もタンパク質なのでこのままにしておいては手が溶けてしまう(んな訳はない)。とりあえず、きれいに拭き取ってキッチンへ。
 包丁でふたつに切ってみる。すると、どうだろう。周囲の白い部分は広いものの、なかはちゃんと色づいている。たしかに、昨日の熟した実に比べれば色は薄い。それでもちゃんとピンク色に色づいているのだ。
 ――なんだ。これなら意外と青いままの実でも普通に食べられるのかも。
 そんなことを思いながらかじりついた。すると――。
 おお、これは! 
 ……ハズレ。
 まずかった。
 しみじみとまずかった。
 皮が固くて、厚くて、苦い。よく噛めばイチジクの味もほんのりとはするのだが、皮の苦みが圧倒的なのでその味ばかりが口のなかに広がる。やはり、果物は熟してから食べるのが正解だと思い知った(誰だ? 『当たり前だ!』と笑っているのは?)。
 まあ、味という点ではこの通り大ハズレだったわけだが、それでもこれも貴重な体験。自分で栽培していなければ決して味わえない体験だ。それが味わえただけでも苦い皮を食べた甲斐はある。
 それにしても、熟すことで実が甘くなるだけならともかく、皮の味までこんなにかわるというのには驚いた。熟したイチジクの皮には苦みなんてまったくないのに、青いままのイチジクの皮だとこんなに苦いとは。
 これはやはり、熟す前に動物に食べられないための防御機能なのだろう。熟して種が育つまでは皮を苦くしておいて食べられないようにし、種が育ったあとは苦みを消して動物に食べてもらい、種を遠くまで運んでもらうというわけだ。
 実によくできている。誰かがデザインしたわけでものに(と、思う。多分)こんな仕組みが出来上がっているとは、自然というのは不思議なものだとつくづく思う。
 ともあれ、青くて固いイチジクを食べてみた結果はこの通り。まだいくつか実が付いているので今度は逆に、充分に完熟させてから食べてみようと思う。天候か回復し、晴れが続けば、実のなかの水分が多くなりすぎることもなく凝縮された甘味を味わえるだろう。涼しくなってきたので以前ほど頻繁に水やりをする必要もないし(何しろ、果樹は水切れに弱いので夏の盛りは水やりに気を使う。せっかく育った実が水やりを忘れたばかりに『しぼんでしまった!』などと言うことになってしまっては泣くに泣けない)。
 果たして、本で読んだような『蕩けるような濃厚な甘味』を味わえるかどうか、いまか楽しみだ。
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