256 / 411
第二部 絆ぐ伝説
第一〇話一三章 トウナと非戦場の戦士たち
しおりを挟む
イスカンダル城塞群。
かつては、始祖国家パンゲアとローラシア大公国の国境に位置し、パンゲアの侵略からローラシアを守る最初の砦として幾度となく歴史的な戦いが繰り広げられた場所。
そして、いまでは、プリンスが作りあげた新国家、平等の国リンカーンの本拠地として元海賊の兵士たちが我が物顔でうろつきまわっている場所。
元海賊の兵士たちの集まりだけあって酒と賭博と喧嘩が絶えない、活気はあるけれど野蛮そのものな喧噪に包まれたその城塞群のなかでただ一カ所、静けさに包まれた場所がある。
静けさ、と言ってもそれは、人気がないとか、寂れているとか、そういう意味での静けさではない。人はいるし、一日のうちに何人もの客がやってくる。
しかし、それが、他の場所のような底抜けの騒ぎには発展しない。常にビシッとした緊張感が漂い、生真面目な空気が支配している。それゆえの静けさ。
言ってみれば、己のすべてを神に捧げ日々、修身に励む禁欲的な修道僧たちの集う場所。
そんな雰囲気の場所だった。
時も場所もわきまえずに繰り広げられる酒と肉と踊り子たちを交えたらんちき騒ぎ。そんなものはここにだけは寄りつくことすらできない。酒と火薬の匂いの混じった空気すら寄りつけないようで、あたりには一種、宗教的と言ってもいいぐらいの静謐な空気が漂っている。
それはひとえに、その場を治めるひとりの人物の影響によるものだった。
トウナ。
平等の国リンカーンの王プリンスの妻であり、医療都市イムホテピアの市長であり、ロウワンが不在の間、かの人にかわって自由の国とそして、都市網社会の代表を務める……と、いくつもの肩書きをもつ女性。
そのトウナが自らの執務室として使っている一角、そここそが平等の国リンカーンの本拠地となったイスカンダル城塞群で唯一、生真面目な落ちつきと静けさに包まれた場所だった。
本来であれば、医療都市イムホテピアの市長としてイムホテピアが建設されたタラの島において政務を執り行っているべきなのだが、なにしろ、いまは妊娠中。腹のなかには夫であり、平等の国リンカーンの王たるプリンスの子が宿っている。
それだけに、たとえ短い時間であっても船旅は危険。それになにより、夫であるプリンスの『自分の近くにいてほしい』という願いによって、イスカンダル城塞群の一角に臨時の執務室を設けて日々の仕事をこなしている。
今日もきょうとてトウナの執務室には何人もの人間が訪れていた。
自由の国の医師であり医療都市イムホテピアに作られた医療学校の責任者であるドク・フィドロ。
かつてはガレノアにつきっきりの料理長であったが、ガレノア亡きあと第二代提督に就任した〝ブレスト〟・ザイナブの補佐官の立場にあるミッキー。
財政担当のタングスと教育担当のパット。それに、スポーツを通じてより良い未来を作ろうと望むフーマン。
海上鉄道建設の責任者である建築技師〝ビルダー〟・ヒッグス。
『もうひとつの輝き』の長代理セアラ。
大陸日報の記者であるハーミド。
実戦以外の面において、自由の国を支え人類と世界の未来を守るべく活動する人間たち。トウナはいま、執務室に集まったかの人たちから様々な報告を受けているところだった。
「生徒たちの数は着実に増えつづけています」
胸を張り、誇らしげにそう語ったのは教育担当のパットである。
もともとはローラシアの下級貴族の出身だが奴隷制には断固として反対で、以前から自宅に逃亡奴隷をかくまってはこっそりと知識と教養を分け与えてきた。
自由の国がローラシアの奴隷階級の人間たちをその立場から解放し、『人間らしく』生きていけるように学校を作る……と宣言したとき、その理念に共感し、矢も楯もたまらずにやって来て参加した。いまでは、その目的のために作られた天詠みの学究院の責任者を務めている。
堂々たる体格の中年女性であり、理想に燃えるその瞳は、いかにも『理想主義者!』という印象を万人に与える。
そのパットが堂々たる体格を揺らしながらつづけた。
「ローラシアが壊滅したことで、奴隷階級に押し込められていた人々が一斉にその立場から逃れることができました。おかげで自由に教育を受け、より良い将来を手に入れる機会を得ることができるようになったのです。こうしているいまも多くの奴隷階級であった人々が勉学に励み、より良い将来を手に入れようとしています。かの人たちが新たな時代の担い手となってくれることでしょう」
限りなき誇りを込めてパットは言う。
自由の国に参加した時点でローラシアは捨てている。ローラシア貴族としての立場も、ローラシア人としての意識も捨て、あくまでも自由の国の教育担当として生きると決めた。
しかし、だとしても、ローラシアが自分の生まれ故郷だという事実はかわらない。そうである以上、ローラシアが壊滅し、数多くの被害が出たことには胸が張り裂ける思いがする。そのような事態を招いた〝賢者〟たちに対しては、教育者にあるまじきどす黒い憎悪の念が渦巻くほど。しかし、その〝賢者〟たちの野望が結果として数多くの奴隷階級の人間たちに逃亡の機会を与え、人間らしい将来を手に入れることのできる好機を与えた。
――その点だけは評価してやってもいい。
そう皮肉交じりに思っている。
「多くの人間に教育を与えるためには、充分な財政的余力が必要なわけですが……」
そう言ったのは財政担当のタングスである。
教育には金がかかる。充分な指導を行うためには質量共にそろった講師陣をそろえなくてはならない。かの人たちに支払う給料だけでも莫大な金額になる。その上に、校舎をはじめとする各種設備の維持費、教科書やノート、ペンといった備品の代金……とにかく、金がかかる。
と言って、生徒たちに学費を支払わせて賄うということはできない。なにしろ、天詠みの学究院の生徒たちはそのほとんどが逃亡奴隷であり、学費を納めるための金など最初からもってはいないのだから。
将来的には学究院を卒業して仕事に就き、充分な収入を得られるようになったら教育費を支払ってもらう……ということもできるかも知れない。しかし、それができるようになるとしてもまだまだ先の話。現状では教育に関わるすべての資金を自由の国が出さなくてはならず、そのためには自由の国に豊かな財源が必要なのだった。
その重要な役職を負うタングスは、清潔感あふれる紳士といった風貌にふさわしい気持ちのいい声でつづけた。
「幸いなことに、自由の国、ひいては、都市網社会の財政はきわめて健全です。各地に建設したコーヒーハウスの経営は順調であり、新規開店数も増加の一途。収入は確実に増えています。ローラシアが壊滅したことによりこの方面での収入は途絶えたわけですが、ゴンドワナやレムリア伯爵領での業績が補ってあまりあるだけの成長を遂げています」
タングスはいったん、言葉を切ってからさらにつづけた。
「また、南の海における鉱山開発や農園の整備も順調です。この点に関してはもともとの資源の豊かさもさることながらやはり、ローラシアの壊滅によって数多くの人物が移住してきており、充分な人手を確保できたという面が大きいと言えます」
ここでもやはり、ローラシアの壊滅が役に立っている。未来永劫、世界を支配しようとしてローラシアを壊滅させた〝賢者〟たちの野望は、自由の国に数多くの人手を渡し、大規模な成長発展を可能にするという皮肉な結果も生みだしていた。
「ただし……」
と、タングスはさらにつづけた。
「問題となるのはやはり、輸送です。どんなに良質の鉱石を採掘し、どんなに良質の食品を生産したところで、人のいる場所に運べなくては意味がない。そのために船による大規模な輸送が必要なわけですが、この点で危険が多すぎます。
初代提督のガレノア卿、その跡を継いだ〝ブレスト〟・ザイナブ卿の尽力によって、辺り一帯の海賊たちはほぼ駆逐されました。その意味では船による輸送は格段に安全になったと言えます。なにしろ、最大の懸念であった海賊による襲撃がなくなったのですから。
それでも、急な天候の変化、荒波、その他、想像もつかない海の怪異による沈没事故の危険は常に存在します。その点でどうしても不安はつきまといます。なにしろ、船による輸送は一度に大量の荷を運べるのが最大の利点ですがその分、一度の事故で失われる量も多いわけですから。その点を解決しない限り、順調と言える経済成長も一気に頓挫する危険は常に存在します」
「その点はおれが解決できる。いや、してみせる」
タングスの発言を受けて胸を張り、力強く発言したのは〝ビルダー〟・ヒッグスである。
かつては『その道の人間で知らないものはいない』とまで言われた凄腕の技師だったが、いつの頃からか海上鉄道の夢に取り憑かれた。
「危険の多い船にかわる交通手段として、海の上に鉄道を敷き詰めて列車を走らせる。そうすれば、人も物もずっと安全に運ぶことができる!」
その思いの実現のために技師としての地位も立場もすべて捨て、海上鉄道の研究に没頭した。しかし、『海上鉄道を走らせるためには強力な動力源が必要』という点を解決できず、いくら研究しようとも計画は一向に進まない。そのなかで歳をとり、財産を失い、失意に失意を重ね、ついには生きた屍のごとき薄汚れた中年男となってくすぶっていた。
しかし、いまではまったくの別人。いや、本来の姿を取り戻したと言うべきだろう。自由の国に招かれ、『もうひとつの輝き』の作りあげた強力な蒸気機関を手に入れたことで海上鉄道の実現が可能になった。以来、すっかりかつての姿を取り戻し、情熱の赴くままに海上鉄道の建設に邁進している。
「海上鉄道の建設は順調だ。すでに、タラの島とその周辺のいくつかの島とをつなぐ海上鉄道が整備されている。このまま海上鉄道を延ばしていけば、南の海の島々と北の大陸とを海上鉄道で結びつけることができる。そうなれば、船よりもはるかに安全で確実な輸送が可能になる」
〝ビルダー〟・ヒッグスは力強くそう断言した。
すでに五〇代だが歳を感じさせない若々しい活力。生気に満ちた瞳。なによりも、自らの理想を実現させようという断固たる意思。はじめて会ったときのヒッグスとは同一人物とも思えないその姿。その姿を見るだけで『不可能などない!』と未来への可能性を信じることができる。そんな姿だった。
かつては、始祖国家パンゲアとローラシア大公国の国境に位置し、パンゲアの侵略からローラシアを守る最初の砦として幾度となく歴史的な戦いが繰り広げられた場所。
そして、いまでは、プリンスが作りあげた新国家、平等の国リンカーンの本拠地として元海賊の兵士たちが我が物顔でうろつきまわっている場所。
元海賊の兵士たちの集まりだけあって酒と賭博と喧嘩が絶えない、活気はあるけれど野蛮そのものな喧噪に包まれたその城塞群のなかでただ一カ所、静けさに包まれた場所がある。
静けさ、と言ってもそれは、人気がないとか、寂れているとか、そういう意味での静けさではない。人はいるし、一日のうちに何人もの客がやってくる。
しかし、それが、他の場所のような底抜けの騒ぎには発展しない。常にビシッとした緊張感が漂い、生真面目な空気が支配している。それゆえの静けさ。
言ってみれば、己のすべてを神に捧げ日々、修身に励む禁欲的な修道僧たちの集う場所。
そんな雰囲気の場所だった。
時も場所もわきまえずに繰り広げられる酒と肉と踊り子たちを交えたらんちき騒ぎ。そんなものはここにだけは寄りつくことすらできない。酒と火薬の匂いの混じった空気すら寄りつけないようで、あたりには一種、宗教的と言ってもいいぐらいの静謐な空気が漂っている。
それはひとえに、その場を治めるひとりの人物の影響によるものだった。
トウナ。
平等の国リンカーンの王プリンスの妻であり、医療都市イムホテピアの市長であり、ロウワンが不在の間、かの人にかわって自由の国とそして、都市網社会の代表を務める……と、いくつもの肩書きをもつ女性。
そのトウナが自らの執務室として使っている一角、そここそが平等の国リンカーンの本拠地となったイスカンダル城塞群で唯一、生真面目な落ちつきと静けさに包まれた場所だった。
本来であれば、医療都市イムホテピアの市長としてイムホテピアが建設されたタラの島において政務を執り行っているべきなのだが、なにしろ、いまは妊娠中。腹のなかには夫であり、平等の国リンカーンの王たるプリンスの子が宿っている。
それだけに、たとえ短い時間であっても船旅は危険。それになにより、夫であるプリンスの『自分の近くにいてほしい』という願いによって、イスカンダル城塞群の一角に臨時の執務室を設けて日々の仕事をこなしている。
今日もきょうとてトウナの執務室には何人もの人間が訪れていた。
自由の国の医師であり医療都市イムホテピアに作られた医療学校の責任者であるドク・フィドロ。
かつてはガレノアにつきっきりの料理長であったが、ガレノア亡きあと第二代提督に就任した〝ブレスト〟・ザイナブの補佐官の立場にあるミッキー。
財政担当のタングスと教育担当のパット。それに、スポーツを通じてより良い未来を作ろうと望むフーマン。
海上鉄道建設の責任者である建築技師〝ビルダー〟・ヒッグス。
『もうひとつの輝き』の長代理セアラ。
大陸日報の記者であるハーミド。
実戦以外の面において、自由の国を支え人類と世界の未来を守るべく活動する人間たち。トウナはいま、執務室に集まったかの人たちから様々な報告を受けているところだった。
「生徒たちの数は着実に増えつづけています」
胸を張り、誇らしげにそう語ったのは教育担当のパットである。
もともとはローラシアの下級貴族の出身だが奴隷制には断固として反対で、以前から自宅に逃亡奴隷をかくまってはこっそりと知識と教養を分け与えてきた。
自由の国がローラシアの奴隷階級の人間たちをその立場から解放し、『人間らしく』生きていけるように学校を作る……と宣言したとき、その理念に共感し、矢も楯もたまらずにやって来て参加した。いまでは、その目的のために作られた天詠みの学究院の責任者を務めている。
堂々たる体格の中年女性であり、理想に燃えるその瞳は、いかにも『理想主義者!』という印象を万人に与える。
そのパットが堂々たる体格を揺らしながらつづけた。
「ローラシアが壊滅したことで、奴隷階級に押し込められていた人々が一斉にその立場から逃れることができました。おかげで自由に教育を受け、より良い将来を手に入れる機会を得ることができるようになったのです。こうしているいまも多くの奴隷階級であった人々が勉学に励み、より良い将来を手に入れようとしています。かの人たちが新たな時代の担い手となってくれることでしょう」
限りなき誇りを込めてパットは言う。
自由の国に参加した時点でローラシアは捨てている。ローラシア貴族としての立場も、ローラシア人としての意識も捨て、あくまでも自由の国の教育担当として生きると決めた。
しかし、だとしても、ローラシアが自分の生まれ故郷だという事実はかわらない。そうである以上、ローラシアが壊滅し、数多くの被害が出たことには胸が張り裂ける思いがする。そのような事態を招いた〝賢者〟たちに対しては、教育者にあるまじきどす黒い憎悪の念が渦巻くほど。しかし、その〝賢者〟たちの野望が結果として数多くの奴隷階級の人間たちに逃亡の機会を与え、人間らしい将来を手に入れることのできる好機を与えた。
――その点だけは評価してやってもいい。
そう皮肉交じりに思っている。
「多くの人間に教育を与えるためには、充分な財政的余力が必要なわけですが……」
そう言ったのは財政担当のタングスである。
教育には金がかかる。充分な指導を行うためには質量共にそろった講師陣をそろえなくてはならない。かの人たちに支払う給料だけでも莫大な金額になる。その上に、校舎をはじめとする各種設備の維持費、教科書やノート、ペンといった備品の代金……とにかく、金がかかる。
と言って、生徒たちに学費を支払わせて賄うということはできない。なにしろ、天詠みの学究院の生徒たちはそのほとんどが逃亡奴隷であり、学費を納めるための金など最初からもってはいないのだから。
将来的には学究院を卒業して仕事に就き、充分な収入を得られるようになったら教育費を支払ってもらう……ということもできるかも知れない。しかし、それができるようになるとしてもまだまだ先の話。現状では教育に関わるすべての資金を自由の国が出さなくてはならず、そのためには自由の国に豊かな財源が必要なのだった。
その重要な役職を負うタングスは、清潔感あふれる紳士といった風貌にふさわしい気持ちのいい声でつづけた。
「幸いなことに、自由の国、ひいては、都市網社会の財政はきわめて健全です。各地に建設したコーヒーハウスの経営は順調であり、新規開店数も増加の一途。収入は確実に増えています。ローラシアが壊滅したことによりこの方面での収入は途絶えたわけですが、ゴンドワナやレムリア伯爵領での業績が補ってあまりあるだけの成長を遂げています」
タングスはいったん、言葉を切ってからさらにつづけた。
「また、南の海における鉱山開発や農園の整備も順調です。この点に関してはもともとの資源の豊かさもさることながらやはり、ローラシアの壊滅によって数多くの人物が移住してきており、充分な人手を確保できたという面が大きいと言えます」
ここでもやはり、ローラシアの壊滅が役に立っている。未来永劫、世界を支配しようとしてローラシアを壊滅させた〝賢者〟たちの野望は、自由の国に数多くの人手を渡し、大規模な成長発展を可能にするという皮肉な結果も生みだしていた。
「ただし……」
と、タングスはさらにつづけた。
「問題となるのはやはり、輸送です。どんなに良質の鉱石を採掘し、どんなに良質の食品を生産したところで、人のいる場所に運べなくては意味がない。そのために船による大規模な輸送が必要なわけですが、この点で危険が多すぎます。
初代提督のガレノア卿、その跡を継いだ〝ブレスト〟・ザイナブ卿の尽力によって、辺り一帯の海賊たちはほぼ駆逐されました。その意味では船による輸送は格段に安全になったと言えます。なにしろ、最大の懸念であった海賊による襲撃がなくなったのですから。
それでも、急な天候の変化、荒波、その他、想像もつかない海の怪異による沈没事故の危険は常に存在します。その点でどうしても不安はつきまといます。なにしろ、船による輸送は一度に大量の荷を運べるのが最大の利点ですがその分、一度の事故で失われる量も多いわけですから。その点を解決しない限り、順調と言える経済成長も一気に頓挫する危険は常に存在します」
「その点はおれが解決できる。いや、してみせる」
タングスの発言を受けて胸を張り、力強く発言したのは〝ビルダー〟・ヒッグスである。
かつては『その道の人間で知らないものはいない』とまで言われた凄腕の技師だったが、いつの頃からか海上鉄道の夢に取り憑かれた。
「危険の多い船にかわる交通手段として、海の上に鉄道を敷き詰めて列車を走らせる。そうすれば、人も物もずっと安全に運ぶことができる!」
その思いの実現のために技師としての地位も立場もすべて捨て、海上鉄道の研究に没頭した。しかし、『海上鉄道を走らせるためには強力な動力源が必要』という点を解決できず、いくら研究しようとも計画は一向に進まない。そのなかで歳をとり、財産を失い、失意に失意を重ね、ついには生きた屍のごとき薄汚れた中年男となってくすぶっていた。
しかし、いまではまったくの別人。いや、本来の姿を取り戻したと言うべきだろう。自由の国に招かれ、『もうひとつの輝き』の作りあげた強力な蒸気機関を手に入れたことで海上鉄道の実現が可能になった。以来、すっかりかつての姿を取り戻し、情熱の赴くままに海上鉄道の建設に邁進している。
「海上鉄道の建設は順調だ。すでに、タラの島とその周辺のいくつかの島とをつなぐ海上鉄道が整備されている。このまま海上鉄道を延ばしていけば、南の海の島々と北の大陸とを海上鉄道で結びつけることができる。そうなれば、船よりもはるかに安全で確実な輸送が可能になる」
〝ビルダー〟・ヒッグスは力強くそう断言した。
すでに五〇代だが歳を感じさせない若々しい活力。生気に満ちた瞳。なによりも、自らの理想を実現させようという断固たる意思。はじめて会ったときのヒッグスとは同一人物とも思えないその姿。その姿を見るだけで『不可能などない!』と未来への可能性を信じることができる。そんな姿だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる