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第二部 絆ぐ伝説
第五話二章 強力な武器が
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タラの島の沖合い。
その位置に碇を降ろし、停泊している一隻の大型帆船。
名を『砂漠の踊り子』号。プリンスの乗る『黒の誇り』号と並び、自由の国において、いまのところたった二隻だけの三級艦である。
船長は〝ブレスト〟・ザイナブ。
二年ほど前にガレノア海賊団に入った人物で、ミッキーやプリンスに比べれば新参者と言っていい。しかし、その勇猛さ、冷静な判断力、現場における戦闘能力などは仲間内でも非常に高く評価されている。わずか二年の経歴で二隻しかない三級艦の指揮を任されているという事実がその評価の高さと、ガレノアからの信頼の厚さを物語っている。
年齢も、出生地も不明だが、もっぱらの噂としては二〇代前半の若い女性であり、ゴンドワナにほど近い砂漠の小国の出身だと言われている。しかも、その国の王女だったとも、国一番の踊り子だったとも噂されている。本人はそれらの噂に一切、答えることはなく、沈黙を貫いている。
本名は――と言うか、本人の名乗るところでは――『ザイナブ』なのだが、仲間内では『〝ブレスト〟』で通っている。
なぜ、そう呼ばれているかと言えば、ひとえにその服装にある。
常に長い布を顔に巻きつけ、ふたつの目以外の全体を隠している。体にピッタリした革の服を着ているのだがその胸元は大きく開けられ、腹から胸にかけて素肌がむき出しになっている。つまり、女性特有のふたつの胸のふくらみも丸出しになっているわけだ。
南国の日差しに鍛えられた赤銅色の肌。いかにも俊敏そうな引き締まった肉体。むき出しになった胸には無数の傷跡。とくに、みぞおちのあたりに大きな傷跡があり、それがまるで、飢えたオオカミの大きく開かれた顎のように見える。
乳房をむき出しにしていながら女性らしい色香よりもむしろ、獰猛な人食いオオカミのような猛々しさを感じさせる。まるで、その胸に、飢えたオオカミを埋め込んでいるかのような女。
それが、〝ブレスト〟・ザイナブだった。
その〝ブレスト〟・ザイナブはいま、『砂漠の踊り子』号の甲板に設置された一台の大砲に視線を注いでいる。メリッサを代表とする『もうひとつの輝き』によって作られたまったく新しい大砲である。
これから、『爆砕射』と名付けられたこの新型大砲の試射が行われるのだ。目標は『砂漠の踊り子』号からおよそ一〇〇〇メートル先にとめられた大型帆船。廃棄予定の老朽船である。
〝ブレスト〟は爆砕射を、そして、標的である老朽船をじっと見つめている。顔中に巻かれた布の間からのぞく切れ長の瞳は涼やかだが、そのなかには鉄さえも溶かしそうな熱い意思が宿っている。
〝ブレスト〟の横には開発者であるメリッサともうひとり、空狩りの行者が並んで様子を見守っていた。
メリッサは胸に添えた手をギュッと握りしめて不安そうに、行者は妖しいほどに紅い唇にかすかな微笑みを浮かべて面白そうに眺めている。結いあげられた白銀の髪には相変わらずかんざしが飾られ、銀片の飾りが風に揺れてシャラシャラと音を立てている。
まわりからは試射の瞬間を今かいまかとまちわびる船員たちのざわめきが聞こえてくる。
「……おい。本当に撃沈できると思うか?」
「無理に決まってるだろ。一〇〇〇メートルだぞ。撃沈どころか、狙って当てることだって出来やしないさ」
そうだ、そうだ、と、船員たちの間から同意のうなずきがもれる。
〝ブレスト〟はそれらの声には一切、耳を傾けることなく、自分の役割をまっとうした。しなやかな片腕をあげ、振りおろし、指示したのだ。
「撃て」
その声は大きくはなかったが、一流の歌手のようによく響いた。
指示を受けて担当の砲手が爆砕射を操作する。火薬に火がつけられ、轟音とともに一発の砲弾が撃ち出された。そのあまりの音の大きさ、砲弾の速度の速さに、大砲には慣れているはずの船員たちがこぞって仰天した。
撃ち出された砲弾は信じられないほどの直線軌道を描いて目標である老朽船に命中し、爆発した。炎が舞い、轟音が鳴り響き、海が揺れた。それが収まったあと――。
船員たちが見たものは、真っ二つに割れて海に沈もうとしている老朽船の姿だった。
「すげえっ! 本当に一発で沈めたぞ!」
「……嘘だろ。いくら、老朽船と言ったって、一〇〇〇メートルだぞ、一〇〇〇メートル」
「当たるだけでも奇跡だって言うのに……」
「おい、見たか? 本当に当たった瞬間、爆発したぞ。あんなの、はじめて見た……」
その光景を見た誰もが驚き、仰天し、声を失っていた。
大砲についてよく知らないものにはかの人たちがなにを驚いているのか理解出来ないだろう。現在、普通に使われている大砲は何種類かあるが原理はすべて同じ。球形の石や鉄の塊を火薬の力で撃ち出してぶつけるだけの、言わば『でっかい石つぶて』である。
最大射程はおよそ一五〇〇メールほど。しかし、これは本当に『そこまで飛ばすことは出来る』という距離に過ぎない。実際には三〇〇メートルを超えれば狙い通りに飛ばすことは出来なくなり、どんなに腕の良い砲手であっても狙って当てるなど不可能になる。
しかも、『でっかい石つぶて』をただぶつけるだけという原理上、距離がはなれるほど威力は絶対的に低くなっていく。二〇〇メートルもはなれれば大型船を破壊することなどまず出来なくなる。そのため、船同士の砲撃戦は通常五〇メートルから八〇メートルという『船と船がくっつきそうな』至近距離で行われる。
それなのに爆砕射は、『もうひとつの輝き』の手になるこの新型大砲は、一〇〇〇メートル先の大型船を――廃棄予定の老朽船とは言え――一撃で撃沈してのけたのだ。
それはつまり、敵船の攻撃範囲のはるか外から一方的に攻撃できると言うことであり、敵船団が近づいてくるまでに殲滅してしまえることを意味している。爆砕射を備えた船が一隻あるだけで一〇倍、二〇倍の敵を相手に勝利できるのだ。
それは、まさに時代の常識を超えた出来事であり、大砲についてくわしく知るものであればあるほど『信じられない!』という思いを強くするものだった。
この圧倒的な威力の差は設計思想から原理、砲弾にいたるまで、そのすべてにおいてのちがいから生まれるものだった。
一般的な大砲は砲口から火薬と砲弾を込めて発射する前装式である。爆砕射は砲身の後ろから火薬と砲弾を込める後装式であり、それだけで発射速度が飛躍的に速くなる。
さらに、使用される火薬も従来のものよりも高性能で、しかも、それを大量に使っている。そのために、桁違いの速度で砲弾が撃ち出される。これだけでも、射程距離、破壊力ともに格段に跳ねあがる。
その上、一般的な大砲は空気抵抗の大きい球形の砲弾をそのまま撃ち出すだけのものであり、弾道がぶれやすい。わずか三〇〇メートル先の標的に狙って当てることができないのはそのためだ。それに対し、爆砕射は空気抵抗の少ない流線型の砲弾を使用する。
しかも、砲身の内部には螺旋状の旋条が刻まれており、砲弾に回転を与える。それによって軌道が安定し、射程距離、命中精度ともに飛躍的に高まる。
そして、砲弾。空気抵抗の少ない流線型と言うだけではなく、その内部には高性能火薬が仕込まれており、着弾と同時に爆発し、標的を破壊する。こんな砲弾は始祖国家パンゲアにも、東の覇者・盤古帝国にも存在しない。まさに、世界でいま、ここだけに存在する砲弾なのだ。
それを目の当たりにした船員たちが目を丸くして驚き、声を失ったのも当然なのであった。
この砲弾であれば強靱な防御力を誇る天命船と言えど破壊できるはずだった。また、爆砕射の常識外れの発射速度は天命船の意識のなかにあるはずもなく、いかに自ら回避行動をとる天命船と言えど避けることはできないと思われた。
つまり、爆砕射の前では天命船と言えど『ただの標的』というわけだ。
もちろん、こんな画期的な大砲を作り出すのは簡単なことではない。
従来よりも高性能の火薬。
はるかに強力な爆発に耐えられるだけの強靱な砲。
それを作るための青銅や鍛鉄以上に強度ある材質を作るための技術。
作りの複雑な後装式の大砲を作るための細かな部品の数々、砲身内の旋条。それらを製作し、加工するための精緻な作業の出来る高性能な工作機械。
着弾と同時に確実に火薬に点火し、爆発させることの出来る仕組み。
それらのすべてがあってはじめて実現できる。
そして、それらすべては数百年にわたって人の世に隠れ、研究に研究を重ねてきた『もうひとつの輝き』だけがもつものだった。
まさにいま、このとき、この場にしか存在しない時代を超えた大砲。
それが爆砕射だった。
そして、これこそがガレノアの言う『とっておき』に他ならなかった。
「大したもんだぜ」
野太い声がした。
ノッシノッシと足音高く『砂漠の踊り子』号の甲板を震わせて、右目に眼帯、肩には鸚鵡、右手にはラム酒の大瓶という出で立ちのいかつい風貌をした海の漢がやってきた。
「ガレノア」
「……来ていたの」
その姿を見てメリッサと〝ブレスト〟が声をあげた。
「当たり前だろ。おれたちのとっておきの、はじめての試し打ちなんだ。やっぱ、この目で見なけりゃな」
ガレノアはそう言ってニイッと歯をむき出しにして笑った。その獰猛な気配に反応したのか、肩の鸚鵡が羽をバタつかせて鳴き叫んだ。
「しかしまあ、さすがに自信満々で売り込みに来ただけのことはあるな。さすがのおれさまでも度肝を抜かれる威力だったぜ」
「威力は計算通りよ。でも……」
と、メリッサは若干、表情を曇らせた。
「これは、あくまで試作品。いままで、小型の模型を作っての実験はしてきたけど、本物の大砲として作ったのは今回がはじめて。どんな不備があるかわからないわ。おまけに、使い方がいままでの大砲とはまったくちがう。その分、砲手だって不慣れだし、どんな事故が起きるかわからない。はっきり言って、そう長く使えるとは思えないわ」
「かまわねえよ」
メリッサの懸念に対し、ガレノアは太い唇を曲げて笑って見せた。
「相手の天命船を蹴散らす間だけ使えりゃいいんだ」
「でも……」
メリッサはさらに表情を曇らせた。
「ローラシアの船団はこちらよりずっと規模が大きいんでしょう? そんな相手に本当に勝てるの?」
「心配いらねえよ」
ガレノアは手にしたラム酒をラッパ飲みして答えた。
「天命船さえなけりゃあ、あとはこっちのもんさ。おれたちには勝つ理由があり、ローラシアの連中には負ける理由がきちんとあるからな」
「負ける理由?」
メリッサは首をかしげた。
「ところで……」
と、〝ブレスト〟が淡々とした口調で言った。
「なぜ、爆砕射をわたしの船に? なぜ、あなたの船に載せない?」
「仕方ねえだろ。おれさまの『海の女』号は小さすぎるし、強度も不安だからこんな強力な砲は載せられないって言うんだからよ」
それに、と、ガレノアはニヤリと笑いながらつづけた。
「〝ブレスト〟。おれの後釜はお前だ。おれの次に、自由の国の提督となって指揮するのはお前なんだ。だが、お前はうちに来てまだ二年だ。実際に指揮した経験もない。そのお前がおれの後釜だなんて言われても納得しないやつの方が多いだろう。
だから、今回の戦いで能力を見せてもらう。実績を作ってもらう。爆砕射を使ってローラシアの天命船をことごとく破壊するんだ。
今回の戦いはいかに早く相手の天命船を破壊するかにかかっている。それさえできりゃあ、こっちの勝利はまちがいねえ。そいつが出来れば、お前は勝利の立役者。お前がおれの後釜になることに文句をつけるやつもいなくなる。いいな、〝ブレスト〟。必ず、やり遂げろよ」
「了解」
〝ブレスト〟は短く答えた。
なんとも素っ気ない、淡々とした口調だったが、その声の質はとても透き通っており、『王女』だったとも『国一番の踊り子』だったとも言われるのも納得の美しいものだった。
「その件なんだけど……」
それまで黙っていた行者が口を開いた。
「今回の戦いは僕も参加させてもらうよ」
「お前も?」
意外だな、と言う表情でガレノアは尋ねた。
「ああ」
と、行者はうなずいた。
「僕も単なる客人扱いでは趣味のかんざし集めをするのも気が引けるんでね。今回の戦いで活躍して堂々とかんざし集めに励みたいのさ」
行者はそう言って髪をゆらし、かんざしの飾りを鳴らして見せた。
「そのために、『輝きは消えず』号を僕に預けてほしい」
「『輝きは消えず』号を?」
『輝きは消えず』号。
ロウワンの師である、いまは亡きハルキスが五〇〇年の過去に作りあげた天命船。いま現在、自由の国におけるただ一隻の天命船であり、言わば自由の国海軍の切り札とも言える船。
その船を自分に預けろ。
行者はそう言っているのだ。
つまり『最強戦力を自分に使わせろ』と。
「あの子とはお肌の手入れについての話で盛りあがってね。すっかり、仲良くなったんだよ。僕なら他の誰よりもあの子をうまく扱えるよ」
「ふむ……」
ガレノアは小首をひねった。
すると、メリッサが言った。
「『輝きは消えず』号は大きさとしては中型だけど、機動性と攻撃力は群を抜くわ。消耗していた天命砲も補充しておいたし、ローラシアの天命船に後れをとることはないでしょう」
でも、と、メリッサは小首をかしげながら尋ねた。
「行者。あなたには不思議な力があるじゃない。あの力があれば別に『輝きは消えず』号を使わなくてもいいんじゃないの?」
言われて行者は苦笑した。
「そこまで都合のいい力じゃないよ。そもそも、僕の力はこの世ならざる空を相手にするためのものだからね。この世界の存在が相手じゃうまく機能しない」
「そういうものなの?」
そういうものだよ、と、行者は片目をつぶりながら答えて見せた。
「ふむ。まあ、いいだろう」
ガレノアが言った。
「他の連中は自分の船の操作で手一杯だしな。だが、『輝きは消えず』号はおれたちの切り札だ。その切り札を預ける以上、お前には先陣を切ってもらうぜ。それでいいんだな?」
もちろん、と、行者はにこやかに答えた。
「趣味のかんざし集めがかかっているんだからね。大威張りでかんざし集めが出来るようになる程度には戦果をあげさせてもらうよ」
と、行者は頼りになるのかならないのかよくわからな言い方をした。
ともあれ、試射も無事にすんだし、話も決まったので、あとのことは船長である〝ブレスト〟に任せ、ガレノア、メリッサ、行者の三人は船をおりることになった。その途中、メリッサが若干の嫌悪感をにじませながら尋ねた。
「あの〝ブレスト〟っていう人、なんで、あんな胸を空けた格好をしているの?」
本人の前ではさすがに押さえていたが、『もうひとつの輝き』の秘密の隠れ家という、言わば温室で生まれ育ったメリッサである。女性の身でありながら胸をさらけ出すなどと言う〝ブレスト〟の粗暴さは受け入れられないのだろう。
「おまけに、顔を覆って。普通は逆でしょう」
ガレノアは答えた。
「ああ。ありゃあ、男どもを挑発するためさ」
「挑発?」
「顔を隠してりゃあ、はぎ取って顔を見たくなる。胸をさらけ出してりゃあ、襲いたくなる。そうして、自分のところに男どもを引きつけるためさ」
「……どうして、わざわざそんなことをするの?」
「復讐さ」
「復讐?」
「ああ。おれもあいつの過去についてくわしく知ってるわけじゃねえがよ。ま、海賊家業に行き着く程度にはつらい目に遭ってきたってわけさ。それも、男どものせいでな。だから、その男どもに復讐するために戦っている。顔を隠すのも、胸をさらけ出すのも、すべてはそのためさ」
「そう……」
メリッサはちょっと後悔しているような顔付きになった。〝ブレスト〟を服装だけで『粗暴な女』と決めつけたことを悔やんでいるのだ。
「ところで、相談なんだけど」
メリッサは口調を改めてそう言った。
「なんだ?」
「爆砕射を一刻も早く量産したいの。材料と技術者をこっちにまわしてもらえる?」
「おいおい。そんなに張り切らなくても、あの一台だけでも充分な威力はあるぜ?」
ガレノアの言葉に――。
メリッサは首を左右に振った。
「あいにくだけど、爆砕射は今回の戦いのために作ったものではないわ。今回の件は単なる試験運用。問題を探り、改良を加え、完成品とするための試験よ。爆砕射の本当の出番はこのあと」
「出番はこのあと? どういうことだ、そりゃあ」
ガレノアの言葉にメリッサは決意を込めた視線で答えた。
「……ロウワンたちとともに山のなかで出会った怪物。異形の胎児。あいつに攻め込まれたらいまの人類では太刀打ちできない。あの怪物に対抗し、いま、世界で起きようとしている異変に対処するためには強力な武器が必要なのよ。いままでに誰も見たことがないほどの強力な武器がね」
その位置に碇を降ろし、停泊している一隻の大型帆船。
名を『砂漠の踊り子』号。プリンスの乗る『黒の誇り』号と並び、自由の国において、いまのところたった二隻だけの三級艦である。
船長は〝ブレスト〟・ザイナブ。
二年ほど前にガレノア海賊団に入った人物で、ミッキーやプリンスに比べれば新参者と言っていい。しかし、その勇猛さ、冷静な判断力、現場における戦闘能力などは仲間内でも非常に高く評価されている。わずか二年の経歴で二隻しかない三級艦の指揮を任されているという事実がその評価の高さと、ガレノアからの信頼の厚さを物語っている。
年齢も、出生地も不明だが、もっぱらの噂としては二〇代前半の若い女性であり、ゴンドワナにほど近い砂漠の小国の出身だと言われている。しかも、その国の王女だったとも、国一番の踊り子だったとも噂されている。本人はそれらの噂に一切、答えることはなく、沈黙を貫いている。
本名は――と言うか、本人の名乗るところでは――『ザイナブ』なのだが、仲間内では『〝ブレスト〟』で通っている。
なぜ、そう呼ばれているかと言えば、ひとえにその服装にある。
常に長い布を顔に巻きつけ、ふたつの目以外の全体を隠している。体にピッタリした革の服を着ているのだがその胸元は大きく開けられ、腹から胸にかけて素肌がむき出しになっている。つまり、女性特有のふたつの胸のふくらみも丸出しになっているわけだ。
南国の日差しに鍛えられた赤銅色の肌。いかにも俊敏そうな引き締まった肉体。むき出しになった胸には無数の傷跡。とくに、みぞおちのあたりに大きな傷跡があり、それがまるで、飢えたオオカミの大きく開かれた顎のように見える。
乳房をむき出しにしていながら女性らしい色香よりもむしろ、獰猛な人食いオオカミのような猛々しさを感じさせる。まるで、その胸に、飢えたオオカミを埋め込んでいるかのような女。
それが、〝ブレスト〟・ザイナブだった。
その〝ブレスト〟・ザイナブはいま、『砂漠の踊り子』号の甲板に設置された一台の大砲に視線を注いでいる。メリッサを代表とする『もうひとつの輝き』によって作られたまったく新しい大砲である。
これから、『爆砕射』と名付けられたこの新型大砲の試射が行われるのだ。目標は『砂漠の踊り子』号からおよそ一〇〇〇メートル先にとめられた大型帆船。廃棄予定の老朽船である。
〝ブレスト〟は爆砕射を、そして、標的である老朽船をじっと見つめている。顔中に巻かれた布の間からのぞく切れ長の瞳は涼やかだが、そのなかには鉄さえも溶かしそうな熱い意思が宿っている。
〝ブレスト〟の横には開発者であるメリッサともうひとり、空狩りの行者が並んで様子を見守っていた。
メリッサは胸に添えた手をギュッと握りしめて不安そうに、行者は妖しいほどに紅い唇にかすかな微笑みを浮かべて面白そうに眺めている。結いあげられた白銀の髪には相変わらずかんざしが飾られ、銀片の飾りが風に揺れてシャラシャラと音を立てている。
まわりからは試射の瞬間を今かいまかとまちわびる船員たちのざわめきが聞こえてくる。
「……おい。本当に撃沈できると思うか?」
「無理に決まってるだろ。一〇〇〇メートルだぞ。撃沈どころか、狙って当てることだって出来やしないさ」
そうだ、そうだ、と、船員たちの間から同意のうなずきがもれる。
〝ブレスト〟はそれらの声には一切、耳を傾けることなく、自分の役割をまっとうした。しなやかな片腕をあげ、振りおろし、指示したのだ。
「撃て」
その声は大きくはなかったが、一流の歌手のようによく響いた。
指示を受けて担当の砲手が爆砕射を操作する。火薬に火がつけられ、轟音とともに一発の砲弾が撃ち出された。そのあまりの音の大きさ、砲弾の速度の速さに、大砲には慣れているはずの船員たちがこぞって仰天した。
撃ち出された砲弾は信じられないほどの直線軌道を描いて目標である老朽船に命中し、爆発した。炎が舞い、轟音が鳴り響き、海が揺れた。それが収まったあと――。
船員たちが見たものは、真っ二つに割れて海に沈もうとしている老朽船の姿だった。
「すげえっ! 本当に一発で沈めたぞ!」
「……嘘だろ。いくら、老朽船と言ったって、一〇〇〇メートルだぞ、一〇〇〇メートル」
「当たるだけでも奇跡だって言うのに……」
「おい、見たか? 本当に当たった瞬間、爆発したぞ。あんなの、はじめて見た……」
その光景を見た誰もが驚き、仰天し、声を失っていた。
大砲についてよく知らないものにはかの人たちがなにを驚いているのか理解出来ないだろう。現在、普通に使われている大砲は何種類かあるが原理はすべて同じ。球形の石や鉄の塊を火薬の力で撃ち出してぶつけるだけの、言わば『でっかい石つぶて』である。
最大射程はおよそ一五〇〇メールほど。しかし、これは本当に『そこまで飛ばすことは出来る』という距離に過ぎない。実際には三〇〇メートルを超えれば狙い通りに飛ばすことは出来なくなり、どんなに腕の良い砲手であっても狙って当てるなど不可能になる。
しかも、『でっかい石つぶて』をただぶつけるだけという原理上、距離がはなれるほど威力は絶対的に低くなっていく。二〇〇メートルもはなれれば大型船を破壊することなどまず出来なくなる。そのため、船同士の砲撃戦は通常五〇メートルから八〇メートルという『船と船がくっつきそうな』至近距離で行われる。
それなのに爆砕射は、『もうひとつの輝き』の手になるこの新型大砲は、一〇〇〇メートル先の大型船を――廃棄予定の老朽船とは言え――一撃で撃沈してのけたのだ。
それはつまり、敵船の攻撃範囲のはるか外から一方的に攻撃できると言うことであり、敵船団が近づいてくるまでに殲滅してしまえることを意味している。爆砕射を備えた船が一隻あるだけで一〇倍、二〇倍の敵を相手に勝利できるのだ。
それは、まさに時代の常識を超えた出来事であり、大砲についてくわしく知るものであればあるほど『信じられない!』という思いを強くするものだった。
この圧倒的な威力の差は設計思想から原理、砲弾にいたるまで、そのすべてにおいてのちがいから生まれるものだった。
一般的な大砲は砲口から火薬と砲弾を込めて発射する前装式である。爆砕射は砲身の後ろから火薬と砲弾を込める後装式であり、それだけで発射速度が飛躍的に速くなる。
さらに、使用される火薬も従来のものよりも高性能で、しかも、それを大量に使っている。そのために、桁違いの速度で砲弾が撃ち出される。これだけでも、射程距離、破壊力ともに格段に跳ねあがる。
その上、一般的な大砲は空気抵抗の大きい球形の砲弾をそのまま撃ち出すだけのものであり、弾道がぶれやすい。わずか三〇〇メートル先の標的に狙って当てることができないのはそのためだ。それに対し、爆砕射は空気抵抗の少ない流線型の砲弾を使用する。
しかも、砲身の内部には螺旋状の旋条が刻まれており、砲弾に回転を与える。それによって軌道が安定し、射程距離、命中精度ともに飛躍的に高まる。
そして、砲弾。空気抵抗の少ない流線型と言うだけではなく、その内部には高性能火薬が仕込まれており、着弾と同時に爆発し、標的を破壊する。こんな砲弾は始祖国家パンゲアにも、東の覇者・盤古帝国にも存在しない。まさに、世界でいま、ここだけに存在する砲弾なのだ。
それを目の当たりにした船員たちが目を丸くして驚き、声を失ったのも当然なのであった。
この砲弾であれば強靱な防御力を誇る天命船と言えど破壊できるはずだった。また、爆砕射の常識外れの発射速度は天命船の意識のなかにあるはずもなく、いかに自ら回避行動をとる天命船と言えど避けることはできないと思われた。
つまり、爆砕射の前では天命船と言えど『ただの標的』というわけだ。
もちろん、こんな画期的な大砲を作り出すのは簡単なことではない。
従来よりも高性能の火薬。
はるかに強力な爆発に耐えられるだけの強靱な砲。
それを作るための青銅や鍛鉄以上に強度ある材質を作るための技術。
作りの複雑な後装式の大砲を作るための細かな部品の数々、砲身内の旋条。それらを製作し、加工するための精緻な作業の出来る高性能な工作機械。
着弾と同時に確実に火薬に点火し、爆発させることの出来る仕組み。
それらのすべてがあってはじめて実現できる。
そして、それらすべては数百年にわたって人の世に隠れ、研究に研究を重ねてきた『もうひとつの輝き』だけがもつものだった。
まさにいま、このとき、この場にしか存在しない時代を超えた大砲。
それが爆砕射だった。
そして、これこそがガレノアの言う『とっておき』に他ならなかった。
「大したもんだぜ」
野太い声がした。
ノッシノッシと足音高く『砂漠の踊り子』号の甲板を震わせて、右目に眼帯、肩には鸚鵡、右手にはラム酒の大瓶という出で立ちのいかつい風貌をした海の漢がやってきた。
「ガレノア」
「……来ていたの」
その姿を見てメリッサと〝ブレスト〟が声をあげた。
「当たり前だろ。おれたちのとっておきの、はじめての試し打ちなんだ。やっぱ、この目で見なけりゃな」
ガレノアはそう言ってニイッと歯をむき出しにして笑った。その獰猛な気配に反応したのか、肩の鸚鵡が羽をバタつかせて鳴き叫んだ。
「しかしまあ、さすがに自信満々で売り込みに来ただけのことはあるな。さすがのおれさまでも度肝を抜かれる威力だったぜ」
「威力は計算通りよ。でも……」
と、メリッサは若干、表情を曇らせた。
「これは、あくまで試作品。いままで、小型の模型を作っての実験はしてきたけど、本物の大砲として作ったのは今回がはじめて。どんな不備があるかわからないわ。おまけに、使い方がいままでの大砲とはまったくちがう。その分、砲手だって不慣れだし、どんな事故が起きるかわからない。はっきり言って、そう長く使えるとは思えないわ」
「かまわねえよ」
メリッサの懸念に対し、ガレノアは太い唇を曲げて笑って見せた。
「相手の天命船を蹴散らす間だけ使えりゃいいんだ」
「でも……」
メリッサはさらに表情を曇らせた。
「ローラシアの船団はこちらよりずっと規模が大きいんでしょう? そんな相手に本当に勝てるの?」
「心配いらねえよ」
ガレノアは手にしたラム酒をラッパ飲みして答えた。
「天命船さえなけりゃあ、あとはこっちのもんさ。おれたちには勝つ理由があり、ローラシアの連中には負ける理由がきちんとあるからな」
「負ける理由?」
メリッサは首をかしげた。
「ところで……」
と、〝ブレスト〟が淡々とした口調で言った。
「なぜ、爆砕射をわたしの船に? なぜ、あなたの船に載せない?」
「仕方ねえだろ。おれさまの『海の女』号は小さすぎるし、強度も不安だからこんな強力な砲は載せられないって言うんだからよ」
それに、と、ガレノアはニヤリと笑いながらつづけた。
「〝ブレスト〟。おれの後釜はお前だ。おれの次に、自由の国の提督となって指揮するのはお前なんだ。だが、お前はうちに来てまだ二年だ。実際に指揮した経験もない。そのお前がおれの後釜だなんて言われても納得しないやつの方が多いだろう。
だから、今回の戦いで能力を見せてもらう。実績を作ってもらう。爆砕射を使ってローラシアの天命船をことごとく破壊するんだ。
今回の戦いはいかに早く相手の天命船を破壊するかにかかっている。それさえできりゃあ、こっちの勝利はまちがいねえ。そいつが出来れば、お前は勝利の立役者。お前がおれの後釜になることに文句をつけるやつもいなくなる。いいな、〝ブレスト〟。必ず、やり遂げろよ」
「了解」
〝ブレスト〟は短く答えた。
なんとも素っ気ない、淡々とした口調だったが、その声の質はとても透き通っており、『王女』だったとも『国一番の踊り子』だったとも言われるのも納得の美しいものだった。
「その件なんだけど……」
それまで黙っていた行者が口を開いた。
「今回の戦いは僕も参加させてもらうよ」
「お前も?」
意外だな、と言う表情でガレノアは尋ねた。
「ああ」
と、行者はうなずいた。
「僕も単なる客人扱いでは趣味のかんざし集めをするのも気が引けるんでね。今回の戦いで活躍して堂々とかんざし集めに励みたいのさ」
行者はそう言って髪をゆらし、かんざしの飾りを鳴らして見せた。
「そのために、『輝きは消えず』号を僕に預けてほしい」
「『輝きは消えず』号を?」
『輝きは消えず』号。
ロウワンの師である、いまは亡きハルキスが五〇〇年の過去に作りあげた天命船。いま現在、自由の国におけるただ一隻の天命船であり、言わば自由の国海軍の切り札とも言える船。
その船を自分に預けろ。
行者はそう言っているのだ。
つまり『最強戦力を自分に使わせろ』と。
「あの子とはお肌の手入れについての話で盛りあがってね。すっかり、仲良くなったんだよ。僕なら他の誰よりもあの子をうまく扱えるよ」
「ふむ……」
ガレノアは小首をひねった。
すると、メリッサが言った。
「『輝きは消えず』号は大きさとしては中型だけど、機動性と攻撃力は群を抜くわ。消耗していた天命砲も補充しておいたし、ローラシアの天命船に後れをとることはないでしょう」
でも、と、メリッサは小首をかしげながら尋ねた。
「行者。あなたには不思議な力があるじゃない。あの力があれば別に『輝きは消えず』号を使わなくてもいいんじゃないの?」
言われて行者は苦笑した。
「そこまで都合のいい力じゃないよ。そもそも、僕の力はこの世ならざる空を相手にするためのものだからね。この世界の存在が相手じゃうまく機能しない」
「そういうものなの?」
そういうものだよ、と、行者は片目をつぶりながら答えて見せた。
「ふむ。まあ、いいだろう」
ガレノアが言った。
「他の連中は自分の船の操作で手一杯だしな。だが、『輝きは消えず』号はおれたちの切り札だ。その切り札を預ける以上、お前には先陣を切ってもらうぜ。それでいいんだな?」
もちろん、と、行者はにこやかに答えた。
「趣味のかんざし集めがかかっているんだからね。大威張りでかんざし集めが出来るようになる程度には戦果をあげさせてもらうよ」
と、行者は頼りになるのかならないのかよくわからな言い方をした。
ともあれ、試射も無事にすんだし、話も決まったので、あとのことは船長である〝ブレスト〟に任せ、ガレノア、メリッサ、行者の三人は船をおりることになった。その途中、メリッサが若干の嫌悪感をにじませながら尋ねた。
「あの〝ブレスト〟っていう人、なんで、あんな胸を空けた格好をしているの?」
本人の前ではさすがに押さえていたが、『もうひとつの輝き』の秘密の隠れ家という、言わば温室で生まれ育ったメリッサである。女性の身でありながら胸をさらけ出すなどと言う〝ブレスト〟の粗暴さは受け入れられないのだろう。
「おまけに、顔を覆って。普通は逆でしょう」
ガレノアは答えた。
「ああ。ありゃあ、男どもを挑発するためさ」
「挑発?」
「顔を隠してりゃあ、はぎ取って顔を見たくなる。胸をさらけ出してりゃあ、襲いたくなる。そうして、自分のところに男どもを引きつけるためさ」
「……どうして、わざわざそんなことをするの?」
「復讐さ」
「復讐?」
「ああ。おれもあいつの過去についてくわしく知ってるわけじゃねえがよ。ま、海賊家業に行き着く程度にはつらい目に遭ってきたってわけさ。それも、男どものせいでな。だから、その男どもに復讐するために戦っている。顔を隠すのも、胸をさらけ出すのも、すべてはそのためさ」
「そう……」
メリッサはちょっと後悔しているような顔付きになった。〝ブレスト〟を服装だけで『粗暴な女』と決めつけたことを悔やんでいるのだ。
「ところで、相談なんだけど」
メリッサは口調を改めてそう言った。
「なんだ?」
「爆砕射を一刻も早く量産したいの。材料と技術者をこっちにまわしてもらえる?」
「おいおい。そんなに張り切らなくても、あの一台だけでも充分な威力はあるぜ?」
ガレノアの言葉に――。
メリッサは首を左右に振った。
「あいにくだけど、爆砕射は今回の戦いのために作ったものではないわ。今回の件は単なる試験運用。問題を探り、改良を加え、完成品とするための試験よ。爆砕射の本当の出番はこのあと」
「出番はこのあと? どういうことだ、そりゃあ」
ガレノアの言葉にメリッサは決意を込めた視線で答えた。
「……ロウワンたちとともに山のなかで出会った怪物。異形の胎児。あいつに攻め込まれたらいまの人類では太刀打ちできない。あの怪物に対抗し、いま、世界で起きようとしている異変に対処するためには強力な武器が必要なのよ。いままでに誰も見たことがないほどの強力な武器がね」
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