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二七章
開幕! 宣伝用ゲリライベント
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そして、おれたちの宣伝用ゲリライベントははじまった。
鈴沢の親から運転手込みで貸してもらったバンに乗り込み、仙台駅前に乗り付け、屋台に、子供用のプールに水を張って魚を入れた魚のつかみ取り体験版、やはり子供用のプールに泥と水を入れ、田んぼを再現した田んぼバレーの体験場を用意し、ビラを配りながら声のかぎりに叫ぶ。
「SEED部主催、未に来な祭、よろしくっ~!」
森崎陽芽、雪森弥生、鈴沢鈴果。いずれ劣らぬ美少女三人がスクール水着姿でビラを配るのだ。目立つ、目立つ、とにかく目立つ。あっという間に黒山の人だかりだ。
夏の日差しと屈託のない笑顔のせいか、スクール水着姿がちっともいやらしく見えない。それどころか、明るく健康的。そのせいか、若い男だけでなく、主婦層もけっこう集まっていた。子供連れもいるのが雰囲気の明るさのなによりの証拠だ。
『未に来な祭』という名前やビラは金子が作った。さすがに小学校時代から同人活動に参加しているだけあってこの手の作業は手慣れている。ビラは素人が作ったとは思えない見事なできだった。ちなみにどんな同人誌を作っているかというと……女性陣にはとてもではないが見せられない。人格を疑われる。
おれはといえばメイド姿で屋台に立ち、料理に精を出していた。その前にはあっという間に長蛇の列ができていた。
「お帰りなさいませ、ご主人さま」
「ありがとうございます、お嬢さま」
独特のメイド言語と営業スマイルを駆使して、ザリガニ天ぷらやら、鯉濃やら、さまざまな料理を作っては出していく。その姿を携帯でパシャパシャ撮っている男も多い。……正直、まんざらでもない気分だったりするのが恐い。
屋台には一〇〇円ショップで買ってきた水槽に、田んぼの生き物を入れた生き物セットも置いてある。宣伝用なので料理も生き物セットも無料である。そのせいか、どちらもあっという間に配り終わった。魚のつかみ取りには子供だけでなく、おとなも参加していた。田んぼバレーは女性陣が交代でひとりずつ相手をした。スクール水着の美少女相手とあって若い男たちが殺到している。
大盛況。
まさにそう言ってよかった。噂が噂を呼び、どんどん人が集まってくる。料理も生き物セットもとうになくなったし、陽芽姉ちゃんたちもかなり疲れていたのに、人はどんどん増えるばかり。
「これより先は未に来な祭で! またお会いしましょ~!」
の一言を残し、逃げ出す用にしてバンに乗り込み、その場を去った。みんな、バンのなかで眠り込んでしまうほど疲れていたが、こんなに心地いい疲れははじめてだった。
それから何日かぶっつづけで、県内各地で宣伝用イベントを行なった。その成果をふまえ、部室で会議を行なった。
「宣伝としては大成功と言っていいだろうな」
と、陽芽姉ちゃん。誇らしげに胸をそらしながら言う。
「魚のつかみ取りは子供だけでなく、おとなにも人気があったわね」
「うむ。『子供の頃を思い出した』という声が多かったな」
「田んぼバレーもやってみるとみんなけっこう、真剣になってたわ」
「生き物セットの人気も高かったな。それに川魚は『自分で料理してみたい』という声もけっこうあった。本番ではレシピをそえて、さばいた魚を売ろうかと思う」
「イベントの出し物は万事、順調。めでたし、めでたしですな」
と、金子がメガネを光らせながら悪徳商人になりきって算盤を弾いている。
「ところでさ」
と、鈴沢。両腕を組んで口をはさんだ。
「田んぼバレーの相手をあたしたち三人だけでするのはきつくない? ウエイトレス役がいなくなっちゃうし」
「そうだな。もう少し、人手がほしいところだな」
「けど、他に部員なんていないし……」
おれの言葉に鈴沢がキッとにらみつけた。
「なに言ってんの。いまいないなら、これからふやすのよ」
「そうだな。それぞれに声をかけてみよう」
「そうね」
雪森もうなずいた。
――それは無理だろ……?
この三人、どう見てもそれぞれの理由で友だちなどいそうにない。さすがにそれを口にするわけはいかないが。
「後は当初の目的であるテレビ進出をなんとしても果たしたいところだが……」
「ふっふっ、ご安心ください、お姉さま。この金子の不断の努力によってついに! 地元のケーブルテレビ局の注意を引くことに成功しました。次のイベントに同行し、その結果次第では放映するとのことです!」
「おおっ!」
「でかした、少年! さすがは我がSEED部のイベント担当。頼りになる」
「なんの。お姉さまのためでしたらこれぐらい」
気取った様子で目を閉じて顔をそらせ、『ふっふっ』などと笑ってみせる金子である。だが、この際、どんなに気取っても許すとしよう。たしかに、メディアの取材が入ればその効果ははかり知れない。
「テレビの効果は大きいもんな。放映してもらえれば祭りにくる人たちもずっと増えるだろう」
「ほう。テレビのインタビューを受けるというのに落ち着いたものだな、藤岡よ。鈴さまの指導よろしきをえて人前に出るのにも慣れたということか」
「そりゃこれだけやってりゃ慣れも……」
するさ、と言おうとしておれは口を閉ざした。金子の言葉に聞き逃せないものがあったことに気がついたのだ。
「ちょっとまて、金子。いま『テレビのインタビューを受ける』とか言ったか?」
「言った」
「おれが受けるのかよ⁉」
思わず絶叫するおれの前で、金子は『当然』とばかりにうなずいた。腕を組んで、目を閉じて、ウンウンとうなずくその姿がやはり、マンガのキャラクターそのもの。やっぱり、こいつは二次元の住人だ。いや、そんなことはどうでもよくて……!
「もちろんだ。お前がインタビューを受けるという条件でようやく動かしたのだからな」
「ちょっとまて! なんでそうなる⁉ なんでおれだ⁉ そう言うことは部長の陽芽姉ちゃんか、設計者の雪森がやるべきことだろう!」
思わずパニクって叫ぶおれに、鈴沢の『これぞ軽蔑』と言わんばかりの声が降り注いだ。
「なにをオタオタしてるのよ、情けないわね。テレビのインタビューぐらいで。そうと決まったら覚悟決めなさいよ」
「おれはお前とちがって一般人なんだよ! インタビューなんか受けたことないんだ!」
「私もないぞ」
「わたしもない」
叫ぶおれに陽芽姉ちゃんと雪森が口々に言った。
「いや、雪森たちならインタビューぐらいこなせるだろ。けど、おれは……」
「ええい、往生際が悪いぞ、藤岡! さっさと覚悟を決めろ。この金子さまの苦労を無にする気か⁉」
「元凶が威張るな! だいたい、なんでおれがインタビューすることが条件なんだ⁉ どう考えてもおかしいだろ!」
「SEEDシステムなどという誰も知らない、見たこともない代物でテレビ局を動かせると思うか! 『そのケのない男がメイドさんになってまでがんばっている』。その点を強調することでようやく興味をもたせることに成功したのだ! お前がインタビューを受けなければ意味はない!」
「なっ……!」
おれは絶句した。とすると何か? おれがインタビューを受けなければテレビの取材はなしと言うことか? ちょっとまて、ふざけるな! いくら何でもそこまで責任もてるか!
「ああもう、ウジウジと。情けないやつね!」
鈴沢が『もう我慢できない!』と言わんばかりの声で叫び、おれの足を勢いよく蹴りつけた。勢いといい、鋭さといい、その小さな足からは想像もつかないような一撃だった。普通ならあまりの痛みに飛びあがっていたはずだ。しかし、そのときのおれは痛いとも思わなかった。そんなことを感じている余裕などなかったのだ。
「け、けど……」
「『けど』じゃない! あんたいったい、何のためにメイドさんなんかになってまでやってるのよ。成功させなきゃいけないんでしょ。ビビってる場合じゃないでしょうが!」
「そ、そんなこと言ったって……それで失敗したら……」
おれが下手したせいで放映されないなんてことになったら、そのせいで祭りに人がこなくて失敗なんてことになったら……なったら……。
雪森や陽芽姉ちゃんはどうなるんだ⁉
ふたりともこんなに真剣に取り組んでいるのに。鈴沢だって関係ないはずなのにこんなにも協力してくれているのに。……金子に関してはまあ、美少女に囲まれたくてやっているだけだから気にしなくていいとして――。
おれのせいで台無しになったりしたら顔向けできないじゃないか!
「や、やっぱりおれには無理だよ、そんなの……。陽芽姉ちゃんか雪森に……」
「ああもう、グダグダうるさい!」
鈴沢が最後の審判とばかりに叫んだ。
「あんたみたいな素人が、失敗したときのことなんか考えてビビってんじゃないわよ! そこでフォローするためにあたしがいるんでしょ。不安に思っている暇があったらとっととインタビューの練習しなさい!」
「そう言うことだな」
と、陽芽姉ちゃん。ミサイルのように突き出した胸の下で両腕を組んでウンウンとうなずいている。
「安心しろ、弟よ。何もお前ひとりに責任を押しつけるつもりはない。お前が下手をしたら私たち全員でカバーするから気楽にやれ」
「とりあえず練習ね。どんな質問がされるかは見当がつくからそれぞれの答えを用意して……」と、雪森。
「うむ。心配いらんぞ、弟よ。私と雪森はSEEDシステムを説明するために幾度となくシミュレーションを繰り返してきた。考え得るあらゆる質問に対する答えは用意してある。SEEDシステムの目的、理念、何のために行うのか、どうやって実現させるのか。そのすべてをみっちり叩きこんでやる。わたしたちの講義を受けた後なら、どんな意地の悪いリポーターが相手でも闘牛士よろしく華麗にかわせるようになること請け合いだ。さっそく今夜からはじめるぞ」
――陽芽姉ちゃんのその宣告通り。
おれはその日から眠れない日々を過ごすことになるのだった。
鈴沢の親から運転手込みで貸してもらったバンに乗り込み、仙台駅前に乗り付け、屋台に、子供用のプールに水を張って魚を入れた魚のつかみ取り体験版、やはり子供用のプールに泥と水を入れ、田んぼを再現した田んぼバレーの体験場を用意し、ビラを配りながら声のかぎりに叫ぶ。
「SEED部主催、未に来な祭、よろしくっ~!」
森崎陽芽、雪森弥生、鈴沢鈴果。いずれ劣らぬ美少女三人がスクール水着姿でビラを配るのだ。目立つ、目立つ、とにかく目立つ。あっという間に黒山の人だかりだ。
夏の日差しと屈託のない笑顔のせいか、スクール水着姿がちっともいやらしく見えない。それどころか、明るく健康的。そのせいか、若い男だけでなく、主婦層もけっこう集まっていた。子供連れもいるのが雰囲気の明るさのなによりの証拠だ。
『未に来な祭』という名前やビラは金子が作った。さすがに小学校時代から同人活動に参加しているだけあってこの手の作業は手慣れている。ビラは素人が作ったとは思えない見事なできだった。ちなみにどんな同人誌を作っているかというと……女性陣にはとてもではないが見せられない。人格を疑われる。
おれはといえばメイド姿で屋台に立ち、料理に精を出していた。その前にはあっという間に長蛇の列ができていた。
「お帰りなさいませ、ご主人さま」
「ありがとうございます、お嬢さま」
独特のメイド言語と営業スマイルを駆使して、ザリガニ天ぷらやら、鯉濃やら、さまざまな料理を作っては出していく。その姿を携帯でパシャパシャ撮っている男も多い。……正直、まんざらでもない気分だったりするのが恐い。
屋台には一〇〇円ショップで買ってきた水槽に、田んぼの生き物を入れた生き物セットも置いてある。宣伝用なので料理も生き物セットも無料である。そのせいか、どちらもあっという間に配り終わった。魚のつかみ取りには子供だけでなく、おとなも参加していた。田んぼバレーは女性陣が交代でひとりずつ相手をした。スクール水着の美少女相手とあって若い男たちが殺到している。
大盛況。
まさにそう言ってよかった。噂が噂を呼び、どんどん人が集まってくる。料理も生き物セットもとうになくなったし、陽芽姉ちゃんたちもかなり疲れていたのに、人はどんどん増えるばかり。
「これより先は未に来な祭で! またお会いしましょ~!」
の一言を残し、逃げ出す用にしてバンに乗り込み、その場を去った。みんな、バンのなかで眠り込んでしまうほど疲れていたが、こんなに心地いい疲れははじめてだった。
それから何日かぶっつづけで、県内各地で宣伝用イベントを行なった。その成果をふまえ、部室で会議を行なった。
「宣伝としては大成功と言っていいだろうな」
と、陽芽姉ちゃん。誇らしげに胸をそらしながら言う。
「魚のつかみ取りは子供だけでなく、おとなにも人気があったわね」
「うむ。『子供の頃を思い出した』という声が多かったな」
「田んぼバレーもやってみるとみんなけっこう、真剣になってたわ」
「生き物セットの人気も高かったな。それに川魚は『自分で料理してみたい』という声もけっこうあった。本番ではレシピをそえて、さばいた魚を売ろうかと思う」
「イベントの出し物は万事、順調。めでたし、めでたしですな」
と、金子がメガネを光らせながら悪徳商人になりきって算盤を弾いている。
「ところでさ」
と、鈴沢。両腕を組んで口をはさんだ。
「田んぼバレーの相手をあたしたち三人だけでするのはきつくない? ウエイトレス役がいなくなっちゃうし」
「そうだな。もう少し、人手がほしいところだな」
「けど、他に部員なんていないし……」
おれの言葉に鈴沢がキッとにらみつけた。
「なに言ってんの。いまいないなら、これからふやすのよ」
「そうだな。それぞれに声をかけてみよう」
「そうね」
雪森もうなずいた。
――それは無理だろ……?
この三人、どう見てもそれぞれの理由で友だちなどいそうにない。さすがにそれを口にするわけはいかないが。
「後は当初の目的であるテレビ進出をなんとしても果たしたいところだが……」
「ふっふっ、ご安心ください、お姉さま。この金子の不断の努力によってついに! 地元のケーブルテレビ局の注意を引くことに成功しました。次のイベントに同行し、その結果次第では放映するとのことです!」
「おおっ!」
「でかした、少年! さすがは我がSEED部のイベント担当。頼りになる」
「なんの。お姉さまのためでしたらこれぐらい」
気取った様子で目を閉じて顔をそらせ、『ふっふっ』などと笑ってみせる金子である。だが、この際、どんなに気取っても許すとしよう。たしかに、メディアの取材が入ればその効果ははかり知れない。
「テレビの効果は大きいもんな。放映してもらえれば祭りにくる人たちもずっと増えるだろう」
「ほう。テレビのインタビューを受けるというのに落ち着いたものだな、藤岡よ。鈴さまの指導よろしきをえて人前に出るのにも慣れたということか」
「そりゃこれだけやってりゃ慣れも……」
するさ、と言おうとしておれは口を閉ざした。金子の言葉に聞き逃せないものがあったことに気がついたのだ。
「ちょっとまて、金子。いま『テレビのインタビューを受ける』とか言ったか?」
「言った」
「おれが受けるのかよ⁉」
思わず絶叫するおれの前で、金子は『当然』とばかりにうなずいた。腕を組んで、目を閉じて、ウンウンとうなずくその姿がやはり、マンガのキャラクターそのもの。やっぱり、こいつは二次元の住人だ。いや、そんなことはどうでもよくて……!
「もちろんだ。お前がインタビューを受けるという条件でようやく動かしたのだからな」
「ちょっとまて! なんでそうなる⁉ なんでおれだ⁉ そう言うことは部長の陽芽姉ちゃんか、設計者の雪森がやるべきことだろう!」
思わずパニクって叫ぶおれに、鈴沢の『これぞ軽蔑』と言わんばかりの声が降り注いだ。
「なにをオタオタしてるのよ、情けないわね。テレビのインタビューぐらいで。そうと決まったら覚悟決めなさいよ」
「おれはお前とちがって一般人なんだよ! インタビューなんか受けたことないんだ!」
「私もないぞ」
「わたしもない」
叫ぶおれに陽芽姉ちゃんと雪森が口々に言った。
「いや、雪森たちならインタビューぐらいこなせるだろ。けど、おれは……」
「ええい、往生際が悪いぞ、藤岡! さっさと覚悟を決めろ。この金子さまの苦労を無にする気か⁉」
「元凶が威張るな! だいたい、なんでおれがインタビューすることが条件なんだ⁉ どう考えてもおかしいだろ!」
「SEEDシステムなどという誰も知らない、見たこともない代物でテレビ局を動かせると思うか! 『そのケのない男がメイドさんになってまでがんばっている』。その点を強調することでようやく興味をもたせることに成功したのだ! お前がインタビューを受けなければ意味はない!」
「なっ……!」
おれは絶句した。とすると何か? おれがインタビューを受けなければテレビの取材はなしと言うことか? ちょっとまて、ふざけるな! いくら何でもそこまで責任もてるか!
「ああもう、ウジウジと。情けないやつね!」
鈴沢が『もう我慢できない!』と言わんばかりの声で叫び、おれの足を勢いよく蹴りつけた。勢いといい、鋭さといい、その小さな足からは想像もつかないような一撃だった。普通ならあまりの痛みに飛びあがっていたはずだ。しかし、そのときのおれは痛いとも思わなかった。そんなことを感じている余裕などなかったのだ。
「け、けど……」
「『けど』じゃない! あんたいったい、何のためにメイドさんなんかになってまでやってるのよ。成功させなきゃいけないんでしょ。ビビってる場合じゃないでしょうが!」
「そ、そんなこと言ったって……それで失敗したら……」
おれが下手したせいで放映されないなんてことになったら、そのせいで祭りに人がこなくて失敗なんてことになったら……なったら……。
雪森や陽芽姉ちゃんはどうなるんだ⁉
ふたりともこんなに真剣に取り組んでいるのに。鈴沢だって関係ないはずなのにこんなにも協力してくれているのに。……金子に関してはまあ、美少女に囲まれたくてやっているだけだから気にしなくていいとして――。
おれのせいで台無しになったりしたら顔向けできないじゃないか!
「や、やっぱりおれには無理だよ、そんなの……。陽芽姉ちゃんか雪森に……」
「ああもう、グダグダうるさい!」
鈴沢が最後の審判とばかりに叫んだ。
「あんたみたいな素人が、失敗したときのことなんか考えてビビってんじゃないわよ! そこでフォローするためにあたしがいるんでしょ。不安に思っている暇があったらとっととインタビューの練習しなさい!」
「そう言うことだな」
と、陽芽姉ちゃん。ミサイルのように突き出した胸の下で両腕を組んでウンウンとうなずいている。
「安心しろ、弟よ。何もお前ひとりに責任を押しつけるつもりはない。お前が下手をしたら私たち全員でカバーするから気楽にやれ」
「とりあえず練習ね。どんな質問がされるかは見当がつくからそれぞれの答えを用意して……」と、雪森。
「うむ。心配いらんぞ、弟よ。私と雪森はSEEDシステムを説明するために幾度となくシミュレーションを繰り返してきた。考え得るあらゆる質問に対する答えは用意してある。SEEDシステムの目的、理念、何のために行うのか、どうやって実現させるのか。そのすべてをみっちり叩きこんでやる。わたしたちの講義を受けた後なら、どんな意地の悪いリポーターが相手でも闘牛士よろしく華麗にかわせるようになること請け合いだ。さっそく今夜からはじめるぞ」
――陽芽姉ちゃんのその宣告通り。
おれはその日から眠れない日々を過ごすことになるのだった。
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