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五章
氷の賢者は本気になれる夢を見たい
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……おれはじいさんの田んぼの前に立っていた。
そこはもう、以前のようなさびれた土地ではない。四季を問わず人が訪れ、くつろいでいく、そんな場所だ。春にはサクラ、夏にはホテイアオイの青紫の花が一面に咲き乱れ、秋には黄金の稲穂が辺りを埋め尽くす。冬は雪の舞い散るなかを白鳥たちがやってきて、水を張ったままの田んぼで羽を休める。
氷の張った溜め池の上では子供たちがスケートやアイスホッケーに興じ、楽しそうにはしゃいでいる。冬越し用の大きな温室のなかではおとなたちがさまざまな植物に囲まれながらジャングル風呂気分を味わっている。畦道の上では年配の老夫婦が丸テーブルを持ち出して、自ら摘んだ畦のハーブでいれたハーブティーを飲みながら田んぼを泳ぐ白鳥たちを見つめている。お茶うけとして並んでいるのはお抱えパティシエが地元の食材から作り上げた渾身のスイーツだ。遠くではドラマのロケが行なわれ、見物人たちで賑わっている。
田んぼには太陽電池の屋根。美しい緑色に輝き、太陽の光を浴びて電気を生み出しつづけてくれている。
ここはもう、小さな田畑で細々と作物を作るだけのさびれた田舎なんかじゃない。年間億単位の利益を生み出す宝の里だ。そして、ネットを通じて志を同じくする世界中の町とつながっている。
もう誰もここから出ていこうなんてしない。みんなで力を合わせてこの町に新しい暮らしを、新しい文化を作りあげ、世界に挑戦しよう。そう誓いあっている。
おれのそばには森崎先輩と雪森が立っていて慈愛のこもった視線でおれを見つめている。おれはふたりに向き直る。手をとって告げる。
「ありがとう」と。
「ふたりのおかげだよ。ふたりがおれを誘ってくれたからじいさんの田んぼを守ることができた。感謝している。本当に……」
不意にふたりの表情が変わる。慈愛に満ちた表情から見下すような顔へと。
「何を言っているの?」
雪森が冷たく言う。
森崎先輩があざ笑いながらつづけた。
「お前は私の誘いを断ったではないか。こんな未来を得られるわけがあるまい」
突然、世界が暗転する。
それまでの賑わいは嘘のように消え去り、辺りには人っ子ひとりいなくなった。
満々と水をたたえ、豊かな実りをつけていたはずのじいさんの田んぼは誰にも管理されないまま雑草だらけの荒れ地と化し――。
おれは悲鳴をあげた。そこで目を覚ました。布団を跳ねあげ、起きあがる。全身、汗でグッショリと濡れていた。肩で息をしていた。
「……夢か」
そう呟いた。
奥歯をギリッと噛みしめた。
「……全部、すてたはずなのに」
時計を見る。もう朝になっていた。シャワーを浴びて汗を流し、朝飯を食い、制服に着替えて学校に向かった。
あれから一週間がたっていた。平凡だけど平穏な日々がつづいていた。授業を受け、金子や新しいクラスメートたちとはしゃぎ、クラブに出る。
あれ以来、森崎先輩がおれの前に現れることはなかった。いまごろ、新しい協力者を求めて走り回っているのだろうか。おれ以外にも米農家の子供はいるはずだし、あの勢いなら校内に限るとも思えない。それこそ、手当たり次第に声をかけていることだろう。なかには興味をもつやつもいるはずだ。
それこそ何十ヘクタールもの田んぼをもっていて多額の初期投資を行なう余裕のあるような農家が。そして、そんな農家が新しい試みとして世間の注目を浴び、発展していく様を、おれは指をくわえて見ていなくてはならない……。
――金さえあればおれだって……。
って、いやいや、何を考えている。全部、すてたはずじゃないか。そうとも。何がどうなろうとおれには何の関係もないんだ。『やってみたかった』なんてそんなこと、いまさら思ってやしないんだ。本当に……。
もう一方の雪森は同じクラスでありながらおれを無視するような態度をとっていた。提案を断ったことできらわれたのかも知れない。といっても、雪森は誰に対してもこんな感じなわけだけど。
授業中など時折チラチラと視線を送ってみたりもするけれど、まるで気づきもしない。雪森にとっておれはもうこの世に存在しないかのようだ。
――まあ、そうだよな。もともとおれとは所属するリーグがちがうんだ。誘いを断った以上、おれに関わったりするはずがない……。
そう。それが当たり前だ。去年と同じ生活に戻った。それだけのことだ。ただ、それだけの。それだけのことなのに……何だか、ため息が出てしまう。
去年とは決定的にちがう点もあった。倉木麻由の存在だ。彼女はどうやらおれに気があるらしく、向こうから積極的によってくる。
「藤岡くんてさ~。勉強もスポーツもできてすごいよねえ~。あたしなんて運動音痴だから憧れちゃうなあ~」
そう言われればもちろん悪い気はしない。かわいいし、愛敬もある。性格もよさそうだ。この様子なら念願の彼女をようやく手に入れられるかも知れない。そんな予感がヒシヒシと感じられた。
「最近、何だか様子が変だな」
サッカー部の練習中、キャプテンにそう言われた。
「心ここにあらずって感じで……やっぱり、お前も受験準備組か?」
若竹は進学校だから早くから受験準備に入る生徒が多い。二年になった時点で部活をやめて、勉強一筋になるケースがよくあるのだ。
「いや、そんなんじゃないですよ」
「そうか。ならいいんだが……万年一回戦負けの弱小チームとはいえ、おれにとっては愛着がある。お前には抜けてほしくない。次期キャプテン候補のひとりだしな」
次期キャプテン候補⁉
このおれが?
そんな評価をされているとは知らなかった。驚きもしたけど、それ以上に素直にうれしかった。おれは思わず笑顔でガッツポーズを作っていた。
「大丈夫ですよ、キャプテン。サッカー部の将来は任せてください」
「ああ、頼む。といっても、いまは目先の大会が重要だけどな。今年はぜひ、一〇年振りの一回戦突破を実現させよう」
「はい!」
――これでいいじゃないか。彼女もできそうだし、サッカー部でも予想以上の評価をされている。何だか今年はいい年になりそうだ。そう。このまま波に合わせていればきっといい年になるだろう。何も、中二病患者に付き合っておれまで笑いものになることはない。なあ、そうだろう……?
練習を終えて帰ろうとするおれの背に、高く澄んだ声がかけられた。
「藤岡くん」
振り返ったおれの先に雪森弥生が立っていた。
モデル級の完璧なスタイル。抜けるような白い肌と赤い唇が目にまぶしい。
あの日以来、雪森と目を合わせたのははじめてだ。
「ちょっと、付き合ってくれない?」
「あ、ああ……」
クールだけど澄んだ視線に見つめられ、おれは催眠術にでもかけられたようにうなずいていた。
雪森は無言で歩き出した。前に立って進んでいく。こんな態度がモデル級のクールな美貌とあいまって近よりがたく感じさせる原因なのだろう。とにかく、おれは雪森について歩き出した。しかし――。
――やっぱり、きれいだよなあ。
つくづくとそう思った。
モデル級の容姿の持ち主である雪森は後ろ姿も完璧だった。スラリと伸びたスリムな肢体。しなやかな手足。背中から尻にかけての曲線は浅すぎず、深すぎず、見事なバランス。とくにミニスカートから伸びた生足の美しさは……いかん、いかん。思わずスカートから下を凝視してしまっていた。女の子の生足をジロジロ見るなど失礼だ。紳士のすることじゃない。まして、相手が気づけない後ろから眺めるのはフェアじゃない。
おれはかなりの努力をして雪森の足から視線を引きはがした。気をそらせるために頬をピシャピシャたたいた。その音は雪森にも聞こえたはずだけど、何も言ってこなかった。それどころか振り向きもしない。この際ばかりはそんなそっけない態度がありがたかった。
やがて、小さなアパートの前についた。おれは雪森に尋ねた。
「ここは?」
「わたしのアパート」
「えっ?」
って、ちょっとまて! おれはひょっとして女の子に自宅に招かれているわけか? いくらなんでもいきなりそれはまずくないか? ものには順序というものがあるわけで、自宅に招かれるにはまずその前段階として色々と、その……もちろん、SEED部がらみの用件であることはわかっている。いくら最近、追い風が吹いていると言っても、こんな美人に個人的に興味をもたれると思うほど自惚れてはいない。だけど、だからといって、これはやっぱり、その、なんだ……。
おれがひとりで静かに、しかし、限りないパニックに陥っていると、雪森がはじめて振り返った。ちょっとゾクゾクしてしまうぐらいクールな視線がおれを射抜いた。
「わたしが恐い?」
「えっ?」
「どんな噂をされているかぐらいは知っているわ」
「い、いや、それは……噂はしょせん、噂だし……」
「いいのよ。半分ぐらいは本当だから」
半分ぐらい?
ということはあとの半分は尾鰭ということか? とはいえ、話半分にしてもかなり恐い噂ではあるけれど……。
雪森はそれ以上、何も言わず、アパートに向かった。
――ついてくる度胸がないなら無理にとは言わない。
CMのワンシーンのような後ろ姿がそう言っていた。少なくともおれにはそう見えた。
これには少々ムッとした。子供扱いされているというか、男扱いされていないというか、そんな気がしたのだ。これはいかん。ここで引きさがっては男がすたる。おれは必要以上に胸を張りながら、雪森につづいた。
アパートの部屋は贅沢ではないけどキチンと掃除され、手入れの行き届いた清潔感あふれる場所だった。あちこちに飾られた小さな鉢植えが女の子らしさを醸し出している。雪森の母親はさぞ繊細できれい好きな人なのだろう。
……って、あれ? 他に人のいる気配が全然しないぞ。大して広くもないアパートだ。他に人がいれば気配ぐらいは感じるはずなんだけど……。
こ、これってまさか――。
おれは恐るおそる雪森に尋ねた。
「あの……家の人は?」
「いないわ」
やっぱりか⁉
ってことは、おれはいま雪森とふたりきり。ふたりきりでアパートの一室にいることになる。これはヤバい。かなりヤバい。本気でヤバい。問題だ!
「な、なあ、雪森……。アパートの一室でふたりっきりって、それはちょっと問題なんじゃ……」
「気にしないで」
おれの純情な男心は雪森のクールな一言で粉砕された。こんなシチュエーションには慣れているということか? やっぱり、ヤンキーだから……。
雪森がおれを見た。おれはギクリとした。
「悪いけど着替えさせてもらうわ。座ってまっていて」
「あ、ああ……」
おれはうなずいた。雪森は奥の部屋に入り、ドアを閉めた。おれはほとんど操り人形なぎこちない仕草で、テーブルの前のクッションに座った。カチンコチンにちぢこまって正座する。脂汗が流れ落ちる。すぐ隣の部屋で女の子――それも、モデル級の美少女――が生着替えの真っ最中……というのはかなり緊張するものがあった。
いや、もちろん、おれはのぞいたり、まして襲いかかったりはしない。するものか。そんなことは紳士のすることじゃない。絶対しないぞ。ああ、でも、だけど……。
ドアの向こうから着替えるかすかな音が聞こえてくるような気がした。多分、幻聴だ。まして、雪森のほのかな体臭が漂ってくるように感じられるのは……絶対におれの妄想にちがいない。
でも、その妄想の何てリアルなことか。ちょっと気を抜けば体が勝手にドアの前に動いてしまいそうだ。それをさせないためにおれは足をつねっていなくてはならなかった。
ドアが開き、着替えを終えた雪森が出てきた。おれは正直、ホッとした。雪森はそのままキッチンに入った。数分してから盆の上にふたつのティーカップとクッキーの入った皿を乗せて戻ってきた。
その立ち姿の何て様になることか。おれは思わず見惚れてしまった。白の開襟シャツにジーンズというシンプルな格好がビックリするほどよく似合う。体にピッタリした服装のせいでスタイルのよさが際立って見える。盆を片手に立つ姿はそれだけですでに一枚の絵になっていた。
雪森がおれの向かい側に両膝をついた。ティーカップとクッキーの入った皿を置いた。
「どうぞ」
静かに言う。それから盆を自分の横に置き、正座した。その姿がまた様になる。まるで茶道の心得でもあるかのようだ。
「……あ、ありがとう」
おれは言いながらティーカップを手にとった。やけに赤い液体を一口、飲んだ。何だか梅干しを溶いたような味がした。
「ええと、このお茶は……」
「ハーブティー。ローズヒップとハイビスカスのブレンド」
「あ、ああ、そう」
ハーブティーなんてシャレたものは生まれてはじめて飲む。家ではいつも寿司屋の湯飲むのような武骨な器になみなみと緑茶をついでガブ飲みしていたのだ。
雪森も一口、飲んだ。白いティーカップに赤い唇をつける仕草がやけになまめかしく見えた。
雪森は何も話そうとしない。しかし――。
こうしてみると雪森というやつ、やっぱり『白雪鬼姫』なんて呼ばれるこわもてには見えない。スリムだけど女の子らしくやわらかそうな体付き、清潔感と気品にあふれた容姿はまさにお姫さま。
『実は某国の王女さま』なんていうご都合主義のファンタジーみたいな話を聞かされてもつい信じてしまいそうだ。だけど、あの噂に関して『半分ぐらいは事実』と本人も言ったいたし、ということはやはり、ヤンキーのはずなのだが……。
――やっぱりあれかな? 家庭環境が悪くってさびしさのあまり……
「ちがうわ」
いきなり言われておれは驚いた。お茶を吹き出すところだった。あわてて口を押さえ、何度が咳き込む。
「な、なんで……!」
「そう思ったんでしょう? 『家庭環境が悪くてさびしさのあまり、ヤンキーをやっている』って」
テレパスか、こいつは⁉
「男性教師からよくそんなふうに言われたから。男の人ってそんなふうに思うんだろうなって」
「あ、ああ、そう……」
「でも、ちがう。わたしは別にさびしく感じたことなんてないし、不満もない。ただ、退屈だっただけ」
「退屈?」
「ええ」
雪森は静かに、でも、キッパリとうなずいた。
「あなたには何の関係もないと承知の上で言うんだけど……わたしは子供の頃から何でもできた。できないことなんて何もなかった。だから、毎日が退屈でしかたなかった。何でも簡単にできてしまうんだもの。何をやっても、喜びもなければ、達成感もない……」
その台詞を雪森以外が言ったのなら嫌味としか感じられなかっただろう。だけど、スポーツ万能、テストは常に満点の雪森が言うのだ。何となく納得してしまう。
才能がありすぎるというのも実はけっこうつらいものなのかも知れない。たとえば、高校生が小学校に通うことを強制されたらどうだろう。毎日が退屈でたいくつでしかたがないはずだ。雪森はそれと同じような感覚をずっと感じつづけていたのかも知れない。
「若竹に入ったのも進学校なら少しは苦労できるかもと思ったから。結局、同じ退屈がつづいただけだったけど。だから、いつもイラついていた。そのために、夜の町をうろついたり、喧嘩したりしていた。でも、そのうちに部長に会った」
「森崎先輩に?」
「ええ。バカでしょ、あの人」
「……いや、そこまでハッキリ言わなくても」
「事実だもの」
雪森はキッパリ言い切った。
う~む。このあたりはやっぱりヤンキーという感じがする。
「ただの高校生のくせに『世界をかえる』なんて言っているんだもの。バカ以外のなにものでもない。ただし、本気のバカ。本当にそう思っている。去年、一晩がかりで説得されて、何だかあてられちゃって」
ということは、クラスの女の子たちの言っていた『去年、森崎先輩は部員の勧誘のために他の生徒を一晩中、監禁した』というその相手はこの雪森のことだったのか。
「それで、付き合うことになったんだけど、それが楽しかったの」
雪森のクールな顔にほのかに楽しそうな表情が浮かんだ……ように見えた。
「一緒に勉強して、SEEDシステムを考案して……。生まれてはじめて本当に興味のもてることに出会えた。
わたしは部長とはちがう。『世界を救える』なんて思っているわけじゃない。でも、それでも、つづけていきたい。自分にどこまでできるか挑戦したい。協力……してくれない?」
雪森はジッとおれを見つめてそう言った。おれは思わずうつむいた。こんな美少女にこうまで懇願されて、どうして無下にできる? それに何より、本当はおれだって……。
「親父に……話してみるよ」
「ありがとう」
雪森の声がおれの頭のなかで天界の鐘のように響いた。
その夜。おれはさっそく親父に電話した。もちろん、承知するなんて思っていたわけじゃない。というより、断るものと確信していた。だって、そうだろう? こんな、海のものとも山のものともつかないような山師のようなことに真っ当な農家が関わるわけがない。電話したところで、
『バカを言うな。そんなことに金を出せるわけがないだろう。ガチャン』
それで終わりだ。その確信があったからこそ、おれは親父に話すことを引き受けたのだ。話した上で断られたのなら、森崎先輩や雪森だってそれ以上、何も言えないだろう。おれにしてもふたりに対して義理を果たしたことになるわけで、後ろめたい思いをしなくてすむようになる。
言ってみればおれにとって親父に話すということは、この件を終わらせるための儀式のようなものだったのだ。おれ自身、胸の奥にくすぶる思いを断ち切るためにそれが必要だったということもある。そして、この電話ですべては終わり、おれはおれ自身が想像していたとおりの平凡な学園生活に戻り、森崎先輩とも雪森とも関わることはなくなる。
あんな美人と関われなくなるなんて残念と言えば残念だけど……もともと、おれのような平凡な高校生とは所属するリーグがちがうのだ。高望みしても仕方がない。
そして、おれは親父にすべてを話した。何ひとつ包み隠さず。そして、断られるのをまった。ところが――。
信じられないことに親父はこう言ったのだ。
『その人たちを連れてきてくれ』
そこはもう、以前のようなさびれた土地ではない。四季を問わず人が訪れ、くつろいでいく、そんな場所だ。春にはサクラ、夏にはホテイアオイの青紫の花が一面に咲き乱れ、秋には黄金の稲穂が辺りを埋め尽くす。冬は雪の舞い散るなかを白鳥たちがやってきて、水を張ったままの田んぼで羽を休める。
氷の張った溜め池の上では子供たちがスケートやアイスホッケーに興じ、楽しそうにはしゃいでいる。冬越し用の大きな温室のなかではおとなたちがさまざまな植物に囲まれながらジャングル風呂気分を味わっている。畦道の上では年配の老夫婦が丸テーブルを持ち出して、自ら摘んだ畦のハーブでいれたハーブティーを飲みながら田んぼを泳ぐ白鳥たちを見つめている。お茶うけとして並んでいるのはお抱えパティシエが地元の食材から作り上げた渾身のスイーツだ。遠くではドラマのロケが行なわれ、見物人たちで賑わっている。
田んぼには太陽電池の屋根。美しい緑色に輝き、太陽の光を浴びて電気を生み出しつづけてくれている。
ここはもう、小さな田畑で細々と作物を作るだけのさびれた田舎なんかじゃない。年間億単位の利益を生み出す宝の里だ。そして、ネットを通じて志を同じくする世界中の町とつながっている。
もう誰もここから出ていこうなんてしない。みんなで力を合わせてこの町に新しい暮らしを、新しい文化を作りあげ、世界に挑戦しよう。そう誓いあっている。
おれのそばには森崎先輩と雪森が立っていて慈愛のこもった視線でおれを見つめている。おれはふたりに向き直る。手をとって告げる。
「ありがとう」と。
「ふたりのおかげだよ。ふたりがおれを誘ってくれたからじいさんの田んぼを守ることができた。感謝している。本当に……」
不意にふたりの表情が変わる。慈愛に満ちた表情から見下すような顔へと。
「何を言っているの?」
雪森が冷たく言う。
森崎先輩があざ笑いながらつづけた。
「お前は私の誘いを断ったではないか。こんな未来を得られるわけがあるまい」
突然、世界が暗転する。
それまでの賑わいは嘘のように消え去り、辺りには人っ子ひとりいなくなった。
満々と水をたたえ、豊かな実りをつけていたはずのじいさんの田んぼは誰にも管理されないまま雑草だらけの荒れ地と化し――。
おれは悲鳴をあげた。そこで目を覚ました。布団を跳ねあげ、起きあがる。全身、汗でグッショリと濡れていた。肩で息をしていた。
「……夢か」
そう呟いた。
奥歯をギリッと噛みしめた。
「……全部、すてたはずなのに」
時計を見る。もう朝になっていた。シャワーを浴びて汗を流し、朝飯を食い、制服に着替えて学校に向かった。
あれから一週間がたっていた。平凡だけど平穏な日々がつづいていた。授業を受け、金子や新しいクラスメートたちとはしゃぎ、クラブに出る。
あれ以来、森崎先輩がおれの前に現れることはなかった。いまごろ、新しい協力者を求めて走り回っているのだろうか。おれ以外にも米農家の子供はいるはずだし、あの勢いなら校内に限るとも思えない。それこそ、手当たり次第に声をかけていることだろう。なかには興味をもつやつもいるはずだ。
それこそ何十ヘクタールもの田んぼをもっていて多額の初期投資を行なう余裕のあるような農家が。そして、そんな農家が新しい試みとして世間の注目を浴び、発展していく様を、おれは指をくわえて見ていなくてはならない……。
――金さえあればおれだって……。
って、いやいや、何を考えている。全部、すてたはずじゃないか。そうとも。何がどうなろうとおれには何の関係もないんだ。『やってみたかった』なんてそんなこと、いまさら思ってやしないんだ。本当に……。
もう一方の雪森は同じクラスでありながらおれを無視するような態度をとっていた。提案を断ったことできらわれたのかも知れない。といっても、雪森は誰に対してもこんな感じなわけだけど。
授業中など時折チラチラと視線を送ってみたりもするけれど、まるで気づきもしない。雪森にとっておれはもうこの世に存在しないかのようだ。
――まあ、そうだよな。もともとおれとは所属するリーグがちがうんだ。誘いを断った以上、おれに関わったりするはずがない……。
そう。それが当たり前だ。去年と同じ生活に戻った。それだけのことだ。ただ、それだけの。それだけのことなのに……何だか、ため息が出てしまう。
去年とは決定的にちがう点もあった。倉木麻由の存在だ。彼女はどうやらおれに気があるらしく、向こうから積極的によってくる。
「藤岡くんてさ~。勉強もスポーツもできてすごいよねえ~。あたしなんて運動音痴だから憧れちゃうなあ~」
そう言われればもちろん悪い気はしない。かわいいし、愛敬もある。性格もよさそうだ。この様子なら念願の彼女をようやく手に入れられるかも知れない。そんな予感がヒシヒシと感じられた。
「最近、何だか様子が変だな」
サッカー部の練習中、キャプテンにそう言われた。
「心ここにあらずって感じで……やっぱり、お前も受験準備組か?」
若竹は進学校だから早くから受験準備に入る生徒が多い。二年になった時点で部活をやめて、勉強一筋になるケースがよくあるのだ。
「いや、そんなんじゃないですよ」
「そうか。ならいいんだが……万年一回戦負けの弱小チームとはいえ、おれにとっては愛着がある。お前には抜けてほしくない。次期キャプテン候補のひとりだしな」
次期キャプテン候補⁉
このおれが?
そんな評価をされているとは知らなかった。驚きもしたけど、それ以上に素直にうれしかった。おれは思わず笑顔でガッツポーズを作っていた。
「大丈夫ですよ、キャプテン。サッカー部の将来は任せてください」
「ああ、頼む。といっても、いまは目先の大会が重要だけどな。今年はぜひ、一〇年振りの一回戦突破を実現させよう」
「はい!」
――これでいいじゃないか。彼女もできそうだし、サッカー部でも予想以上の評価をされている。何だか今年はいい年になりそうだ。そう。このまま波に合わせていればきっといい年になるだろう。何も、中二病患者に付き合っておれまで笑いものになることはない。なあ、そうだろう……?
練習を終えて帰ろうとするおれの背に、高く澄んだ声がかけられた。
「藤岡くん」
振り返ったおれの先に雪森弥生が立っていた。
モデル級の完璧なスタイル。抜けるような白い肌と赤い唇が目にまぶしい。
あの日以来、雪森と目を合わせたのははじめてだ。
「ちょっと、付き合ってくれない?」
「あ、ああ……」
クールだけど澄んだ視線に見つめられ、おれは催眠術にでもかけられたようにうなずいていた。
雪森は無言で歩き出した。前に立って進んでいく。こんな態度がモデル級のクールな美貌とあいまって近よりがたく感じさせる原因なのだろう。とにかく、おれは雪森について歩き出した。しかし――。
――やっぱり、きれいだよなあ。
つくづくとそう思った。
モデル級の容姿の持ち主である雪森は後ろ姿も完璧だった。スラリと伸びたスリムな肢体。しなやかな手足。背中から尻にかけての曲線は浅すぎず、深すぎず、見事なバランス。とくにミニスカートから伸びた生足の美しさは……いかん、いかん。思わずスカートから下を凝視してしまっていた。女の子の生足をジロジロ見るなど失礼だ。紳士のすることじゃない。まして、相手が気づけない後ろから眺めるのはフェアじゃない。
おれはかなりの努力をして雪森の足から視線を引きはがした。気をそらせるために頬をピシャピシャたたいた。その音は雪森にも聞こえたはずだけど、何も言ってこなかった。それどころか振り向きもしない。この際ばかりはそんなそっけない態度がありがたかった。
やがて、小さなアパートの前についた。おれは雪森に尋ねた。
「ここは?」
「わたしのアパート」
「えっ?」
って、ちょっとまて! おれはひょっとして女の子に自宅に招かれているわけか? いくらなんでもいきなりそれはまずくないか? ものには順序というものがあるわけで、自宅に招かれるにはまずその前段階として色々と、その……もちろん、SEED部がらみの用件であることはわかっている。いくら最近、追い風が吹いていると言っても、こんな美人に個人的に興味をもたれると思うほど自惚れてはいない。だけど、だからといって、これはやっぱり、その、なんだ……。
おれがひとりで静かに、しかし、限りないパニックに陥っていると、雪森がはじめて振り返った。ちょっとゾクゾクしてしまうぐらいクールな視線がおれを射抜いた。
「わたしが恐い?」
「えっ?」
「どんな噂をされているかぐらいは知っているわ」
「い、いや、それは……噂はしょせん、噂だし……」
「いいのよ。半分ぐらいは本当だから」
半分ぐらい?
ということはあとの半分は尾鰭ということか? とはいえ、話半分にしてもかなり恐い噂ではあるけれど……。
雪森はそれ以上、何も言わず、アパートに向かった。
――ついてくる度胸がないなら無理にとは言わない。
CMのワンシーンのような後ろ姿がそう言っていた。少なくともおれにはそう見えた。
これには少々ムッとした。子供扱いされているというか、男扱いされていないというか、そんな気がしたのだ。これはいかん。ここで引きさがっては男がすたる。おれは必要以上に胸を張りながら、雪森につづいた。
アパートの部屋は贅沢ではないけどキチンと掃除され、手入れの行き届いた清潔感あふれる場所だった。あちこちに飾られた小さな鉢植えが女の子らしさを醸し出している。雪森の母親はさぞ繊細できれい好きな人なのだろう。
……って、あれ? 他に人のいる気配が全然しないぞ。大して広くもないアパートだ。他に人がいれば気配ぐらいは感じるはずなんだけど……。
こ、これってまさか――。
おれは恐るおそる雪森に尋ねた。
「あの……家の人は?」
「いないわ」
やっぱりか⁉
ってことは、おれはいま雪森とふたりきり。ふたりきりでアパートの一室にいることになる。これはヤバい。かなりヤバい。本気でヤバい。問題だ!
「な、なあ、雪森……。アパートの一室でふたりっきりって、それはちょっと問題なんじゃ……」
「気にしないで」
おれの純情な男心は雪森のクールな一言で粉砕された。こんなシチュエーションには慣れているということか? やっぱり、ヤンキーだから……。
雪森がおれを見た。おれはギクリとした。
「悪いけど着替えさせてもらうわ。座ってまっていて」
「あ、ああ……」
おれはうなずいた。雪森は奥の部屋に入り、ドアを閉めた。おれはほとんど操り人形なぎこちない仕草で、テーブルの前のクッションに座った。カチンコチンにちぢこまって正座する。脂汗が流れ落ちる。すぐ隣の部屋で女の子――それも、モデル級の美少女――が生着替えの真っ最中……というのはかなり緊張するものがあった。
いや、もちろん、おれはのぞいたり、まして襲いかかったりはしない。するものか。そんなことは紳士のすることじゃない。絶対しないぞ。ああ、でも、だけど……。
ドアの向こうから着替えるかすかな音が聞こえてくるような気がした。多分、幻聴だ。まして、雪森のほのかな体臭が漂ってくるように感じられるのは……絶対におれの妄想にちがいない。
でも、その妄想の何てリアルなことか。ちょっと気を抜けば体が勝手にドアの前に動いてしまいそうだ。それをさせないためにおれは足をつねっていなくてはならなかった。
ドアが開き、着替えを終えた雪森が出てきた。おれは正直、ホッとした。雪森はそのままキッチンに入った。数分してから盆の上にふたつのティーカップとクッキーの入った皿を乗せて戻ってきた。
その立ち姿の何て様になることか。おれは思わず見惚れてしまった。白の開襟シャツにジーンズというシンプルな格好がビックリするほどよく似合う。体にピッタリした服装のせいでスタイルのよさが際立って見える。盆を片手に立つ姿はそれだけですでに一枚の絵になっていた。
雪森がおれの向かい側に両膝をついた。ティーカップとクッキーの入った皿を置いた。
「どうぞ」
静かに言う。それから盆を自分の横に置き、正座した。その姿がまた様になる。まるで茶道の心得でもあるかのようだ。
「……あ、ありがとう」
おれは言いながらティーカップを手にとった。やけに赤い液体を一口、飲んだ。何だか梅干しを溶いたような味がした。
「ええと、このお茶は……」
「ハーブティー。ローズヒップとハイビスカスのブレンド」
「あ、ああ、そう」
ハーブティーなんてシャレたものは生まれてはじめて飲む。家ではいつも寿司屋の湯飲むのような武骨な器になみなみと緑茶をついでガブ飲みしていたのだ。
雪森も一口、飲んだ。白いティーカップに赤い唇をつける仕草がやけになまめかしく見えた。
雪森は何も話そうとしない。しかし――。
こうしてみると雪森というやつ、やっぱり『白雪鬼姫』なんて呼ばれるこわもてには見えない。スリムだけど女の子らしくやわらかそうな体付き、清潔感と気品にあふれた容姿はまさにお姫さま。
『実は某国の王女さま』なんていうご都合主義のファンタジーみたいな話を聞かされてもつい信じてしまいそうだ。だけど、あの噂に関して『半分ぐらいは事実』と本人も言ったいたし、ということはやはり、ヤンキーのはずなのだが……。
――やっぱりあれかな? 家庭環境が悪くってさびしさのあまり……
「ちがうわ」
いきなり言われておれは驚いた。お茶を吹き出すところだった。あわてて口を押さえ、何度が咳き込む。
「な、なんで……!」
「そう思ったんでしょう? 『家庭環境が悪くてさびしさのあまり、ヤンキーをやっている』って」
テレパスか、こいつは⁉
「男性教師からよくそんなふうに言われたから。男の人ってそんなふうに思うんだろうなって」
「あ、ああ、そう……」
「でも、ちがう。わたしは別にさびしく感じたことなんてないし、不満もない。ただ、退屈だっただけ」
「退屈?」
「ええ」
雪森は静かに、でも、キッパリとうなずいた。
「あなたには何の関係もないと承知の上で言うんだけど……わたしは子供の頃から何でもできた。できないことなんて何もなかった。だから、毎日が退屈でしかたなかった。何でも簡単にできてしまうんだもの。何をやっても、喜びもなければ、達成感もない……」
その台詞を雪森以外が言ったのなら嫌味としか感じられなかっただろう。だけど、スポーツ万能、テストは常に満点の雪森が言うのだ。何となく納得してしまう。
才能がありすぎるというのも実はけっこうつらいものなのかも知れない。たとえば、高校生が小学校に通うことを強制されたらどうだろう。毎日が退屈でたいくつでしかたがないはずだ。雪森はそれと同じような感覚をずっと感じつづけていたのかも知れない。
「若竹に入ったのも進学校なら少しは苦労できるかもと思ったから。結局、同じ退屈がつづいただけだったけど。だから、いつもイラついていた。そのために、夜の町をうろついたり、喧嘩したりしていた。でも、そのうちに部長に会った」
「森崎先輩に?」
「ええ。バカでしょ、あの人」
「……いや、そこまでハッキリ言わなくても」
「事実だもの」
雪森はキッパリ言い切った。
う~む。このあたりはやっぱりヤンキーという感じがする。
「ただの高校生のくせに『世界をかえる』なんて言っているんだもの。バカ以外のなにものでもない。ただし、本気のバカ。本当にそう思っている。去年、一晩がかりで説得されて、何だかあてられちゃって」
ということは、クラスの女の子たちの言っていた『去年、森崎先輩は部員の勧誘のために他の生徒を一晩中、監禁した』というその相手はこの雪森のことだったのか。
「それで、付き合うことになったんだけど、それが楽しかったの」
雪森のクールな顔にほのかに楽しそうな表情が浮かんだ……ように見えた。
「一緒に勉強して、SEEDシステムを考案して……。生まれてはじめて本当に興味のもてることに出会えた。
わたしは部長とはちがう。『世界を救える』なんて思っているわけじゃない。でも、それでも、つづけていきたい。自分にどこまでできるか挑戦したい。協力……してくれない?」
雪森はジッとおれを見つめてそう言った。おれは思わずうつむいた。こんな美少女にこうまで懇願されて、どうして無下にできる? それに何より、本当はおれだって……。
「親父に……話してみるよ」
「ありがとう」
雪森の声がおれの頭のなかで天界の鐘のように響いた。
その夜。おれはさっそく親父に電話した。もちろん、承知するなんて思っていたわけじゃない。というより、断るものと確信していた。だって、そうだろう? こんな、海のものとも山のものともつかないような山師のようなことに真っ当な農家が関わるわけがない。電話したところで、
『バカを言うな。そんなことに金を出せるわけがないだろう。ガチャン』
それで終わりだ。その確信があったからこそ、おれは親父に話すことを引き受けたのだ。話した上で断られたのなら、森崎先輩や雪森だってそれ以上、何も言えないだろう。おれにしてもふたりに対して義理を果たしたことになるわけで、後ろめたい思いをしなくてすむようになる。
言ってみればおれにとって親父に話すということは、この件を終わらせるための儀式のようなものだったのだ。おれ自身、胸の奥にくすぶる思いを断ち切るためにそれが必要だったということもある。そして、この電話ですべては終わり、おれはおれ自身が想像していたとおりの平凡な学園生活に戻り、森崎先輩とも雪森とも関わることはなくなる。
あんな美人と関われなくなるなんて残念と言えば残念だけど……もともと、おれのような平凡な高校生とは所属するリーグがちがうのだ。高望みしても仕方がない。
そして、おれは親父にすべてを話した。何ひとつ包み隠さず。そして、断られるのをまった。ところが――。
信じられないことに親父はこう言ったのだ。
『その人たちを連れてきてくれ』
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