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歩み始めの一歩

紐解く秘密

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12:00 ルルディ神殿 インタカエルム(天空の間)
 

                                                                    『 يرجى تقديم صوتي للآلهة』


シャラーン シャラーン リーンリーンリンリン


『 久しいなアレク、息災にしていたかい?』


アゲットの呪文にしか聞こえない呼びかけに前回同様現れたのは6柱の神々。言葉通りの神々しさを纏って姿を現すと、まず始めに美形さんへと声がかかる。



『ディオ様、神々に戴きました祝福の御陰。健康そのものにございます』


『やだぁ、うふふ、小生意気な坊主が私達を敬っているわよ! これが日本界でいうシャッターチャンス? っていうタイミングかしら?』


『成長の記録のような場合ではビデオも効果的よ! 動画で記録するのよ』


『……もう子供ではないのだ……時と場合くらい見極める』



昨日も思ったが、神々に弄られる美形さんは口を尖らせ明らかにムスーっといじけている様子が子供のよう。



『そう膨れるな、可愛いお前が堅苦しく話すから我らも弄りたくなるのだぞ? 嫌だったら普通に話なさい』



『……承知した……』


『うふふ、それでいいのよ小坊主アレク!』


『何でも良いから自己紹介してくれ! ルナが呆然としすぎて顎が外れたら大変だからな!』



〈さすがにその程度で顎は外れないですよ。美形さんのなかでの私は酷くか弱い設定なのか? 実際はここ2年は風邪も病気も縁遠いのだけどな>



『ああ、そうだね。ようやく……ようやく会えた、愛し子……


ひとまずそこの椅子に座って話そうか』



いつの間にやら設置されていたひとり掛けソファが6脚、大人数座れるソファーがひとつ。ひとり掛けは神々が使い、私達は長ソファーに腰かける。


『改めまして、我はディユス神界を束ねる四天王の主神 ディオ』


『俺は、太陽神 昼の地上の統括神 キイルだ


そして、こっちが月の神 夜の地上の統括神 ミルス』


『私は冥界パラインフェロスの主神 輪廻を司る神 グレスよ


私達四柱がこの国というか、この世界の神。四天王神よ』



すべてをひっくるめた謂わば会長は四天王の主神 ディオ神で、恐らく世界の中にある世界、ディオ神と同等程の力をもつのが冥界の主神 グレス神。彼女は副会長。太陽と月という地上に直接関係する神のキイルとミルスは社長といった感じだろうか。



『そして、こちらが日本の神 天照殿と伊邪那美殿である』


『礼を欠きまして失礼致しました。私はルナンクトゥス 第一皇子アレキサンド ルナンクトゥスです』


急に膝をつき礼をしだす美形さんと私以外の方々の行動に追い付けず中腰で固まってしまう。どうするべきか……。取り残さないでもらいたい!


「あ、あぅあぅ……」



『おっほっほ、瑠奈は礼などとる必要もないというのに可愛らしいの? 慌てふためく姿が萌え~じゃのう? なあ、天照!』


〈萌えっ?!〉


『……また貴女は、そのように混乱させるような事を……、それに“萌え~”は近頃使われていないようですよ。



それに、ルナンクトゥスの皇太子も従者も礼は不要ですよ。これよりの時は瑠奈に関すること、過剰な敬いは話の流れを乱す。楽にしなさい』



〈天照様の微笑みは優しい春の日差しのような柔らかなもので、声もシャラーンと綺麗な凛の音のよう。この美貌で男性とは、どいつも……どなたもそなたも嘗め腐りやがってぇー!ちくしょう!


って、そうじゃなくて!!〉


「あの、神様は私の名前を知っていたのですか?」


『『『『『『(沈黙)』』』』』』


〈え、沈黙って何か変なこと言った?!〉


『おお! すまぬすまぬ! ふふ、此処に居る皆が神だからな、ふふふ』



さっきから気になる。昨日同様、一挙手一投足じっと視られているような。それも、気のせいか、酷く慈愛の篭ったむず痒くなる視線。それを、神々から受けているような。



「あ、あー、そうでした。皆様神さまでした。すみません。


名前の事は置いておきます!」



〈話が進まないので……。〉



『あらそう? いいでしょう。私が占領してはいけませんね、失礼しましたディユス神』



『いいえ、気になさらないでください、伊邪那美殿。


さて、今度こそ本題に入ろう。……アレク達もいつまでそうしているのだ? 座りなさい』



すっかり瑠奈の目に入っていなかったが、未だに礼をやめた状態で床にいた皇太子御一行はようやくもとの位置につく。



『仕切るものが居ないと話が脱線するから……キイル頼む』



『ハイハイ。承知しましたー!


サクッといくからな? まずは、アレク! 何が聞きたい?』


『ルナの事を。日本という場所から来たというので、神々にお伺いをしようとと。どのような訳にしろ、幼子が突然消えたとなればルナの父母は心配でしょう。それを踏まえて御相談をと思いまして』



『まったく、固く話すなと言うに……。ひとつ、ルナの秘密。ひとつ、ルナが突然現れた理由。ひとつ、今後のこと……。


では、ミルスと天照殿にルナについて任せます 』



『わかった。まず、ルナと我々の神界ディユ カルティネンスについてから。


数年前のこと、我々は久しく作らなかった子神を望んだ。今だかつてない数の神が参加して祈り願い実らせた…………


≪内容は第11部12部へどうぞ≫


嬉しくて愛しくて浮かれ気分で早々に名前もつけた。皆が譲らないから結局のところジャンケンというもので決めたが……選ばれたのは私の“ルナ”だった。月にも色々な名があるけれど響きが良くて決めた。それに、他の月名よりも加護が強いと月占いにも出たからね。特に太陽と水は守護が高い。



しかし、不足の事態がおこりルナの魂を日本の人魂として旅に出すことになってしまった。



≪内容は約11部12部をどうぞ≫



人と神とでは寿命が違う。日本では寿命は100歳ほどで大往生とされると聞いたが、こちらは300~500歳と何倍にもなる。さらに上回る永遠に等しい命をもつのが我々神となる。だから、瞬きほどの時間だと日本神界へと渡らせ我々だけでなく日本神界の神々にも祝福を授かり“優月ルナ”として月神の末裔のお子として産まれたのがそなた』



「……本当の両親じゃなかったということですか?」



『日本へ渡ってからの事になるね、私が話しましょう。


キミは親と呼べる存在が沢山いる。ひとつは、優月を求め祈った神々すべての力が融合されキミの魂が産まれた。つまり、その神々は親神である。神々にとって優月は愛し子。



もうひとつ、瑠奈の疑問になる月神の子孫の娘と旦那。もちろん両親と呼べるだろう。魂の状態から月の儀式を経て胎児からと十月十日の流れで生まれてきたからね。もちろん望まれてたからこそ実ったから心配いらないよ。血は人のそれとは違うけれど気にするかは自分次第としか言えない。



最後に、我々日本神界からも多くの神が優月を愛しく思い加護を与えた。月は勿論のこと太陽の私やら大地やらと、ふふふ、私達からしても優月は可愛い子神、愛し子なのだよ』



「普通の人ではない? 私は何者……」


愛し子と呼ばれ、人ではなく子神、なんとなくしっくりくる感覚はあるものの上手く噛み砕けない。神々が嫌なわけではない、むしろ好意的に接してくださる事にも感謝しかないが、親と言われ自分の正体を神だと伝えられて“なるほど”とはならない。何を発言すべきかもわからない。混乱している。



『失礼、少々……思考を整える時間を頂けますか。天照神、伊邪那美神は本日は滞在されるご予定で?』


美形さんが静かに背を撫でてくれたことで自分が震えていることに気づく。顔色も酷いのだろう。美形さんの形のよい眉がハの字に下がってしまって、更にはフィーさんが膝へと飛び乗り癒してくれる。



『妾たちは今日を含め四日こちらへくるとた伝えてきた。そうさな、皇子の申す通り、突然のことに戸惑うのも無理もなかろう……、ディオ殿、今日のところはここまでとして明日再びというのは如何だろうか……』



神々が互いに首肯く。そして、真面目に話はじめてから黙りこんで、ずっと涙目でこちらを見つめていた冥界の女神が歩み寄る。



『ルナ、沢山混乱させてごめんなさいね。けれど、貴女に会えたことが嬉しくて喜んでしまったわ。ごめんなさい。


明日も貴女には戸惑う内容になるわ。けれど、皆等しく貴女が大好きよ、独りではないの。それだけは覚えておいてちょうだい?』



「……はい……」



優しい温もりに抱き締められ、ちょっとばかし孤独感とドクドクと妙に大きく感じた鼓動がトクンッと優しく包まれた気がした。


“独りではない”


離れた温もりのあと、間をおかず引き継いだ美形さんに抱かれ城内へと帰るのだった。



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